コミックナタリー PowerPush - きらたかし「凸凹 DEKOBOKO」
「赤灯えれじい」作者のニューヒロインはバイクレースに打ち込む少女
「赤灯えれじい」や「ケッチン」で知られるきらたかしが、イブニング(講談社)で連載中の「凸凹 DEKOBOKO」。バイクレースに打ち込む少女の姿を描いた同作の第1巻が、本日10月23日に発売された。
コミックナタリーではこれを記念し、きらたかしを招いた対談をセッティングした。お相手は、主人公と同姓同名のモデル・三原勇希。不思議な縁で結ばれた2人に、作品の魅力を大いに語ってもらった。
取材・文/ツクイヨシヒサ 撮影/佐藤類
主人公との同姓同名は、まったくの偶然だった
──今回は主人公とまったく同じ名前ということで、三原勇希さんをお招きしたわけですが、きら先生はもともと彼女の存在を知っていらしたのでしょうか?
きら いえ、知らなかったんです。もし知っていたら、逆に付けられないというか……。
三原 私は連載が始まる前に、ファンの方からTwitterで「三原勇希っていう女の子が主人公のマンガが始まるよ」と教えてもらい、「えーっ!」と驚いて。もちろん第1話から毎号チェック。大阪にいた女の子が関東へ引っ越してくる話で、私も大阪出身の上京組だし、漢字まで一緒の三原勇希だし、「これは絶対、私のファンの方が描いているんだ!」と思ってたら、きら先生から「偶然なんですけど」と言われて。「偶然かーいっ」と(笑)。
きら いや、でもうれしかったですよ。僕が勇希ちゃんのことを知ったのもTwitterで、確か連載が始まった頃に「凸凹 イブニング」とかで検索してたら、彼女のつぶやきが引っかかってきて……。
三原 私が「凸凹読んでます」ってアップしてたんですよ。そこへ先生が返信をくださったので驚きました。
きら 聞いたら、大阪にいたときも東大阪のほうで、町工場の娘さんだって言うし。それって僕がヤンマガで描いていた「赤灯えれじい」のヒロイン、チーコと同じだし、すごく縁みたいなものを感じましたね。
三原 私も先生と知り合ってから「赤灯えれじい」を見て、チーコちゃんの設定だったり、周りの風景だったり、色々なところが自分と被っていて、「これは運命だな」と思いました。
三原勇希の名は、「野球狂の詩」の水原勇気から
──三原勇希という名前は、どちらも水島新司先生の「野球狂の詩」に登場する水原勇気から取った、という話は本当ですか?
きら 本当です。お互いに水原勇気から名前を取っていて、しかも勇気の「気」を「希」に換えているところまで一緒だという。
三原 怖いぐらいの偶然ですよね。
きら 僕のほうは、やっぱり女だてらに男と対等にやり合うところがマンガの設定に近いと思ったから。あとは、姪っ子がユウキという名前なので。
三原 過去の有名作品から登場人物の名前をもらうってこともあるんですね。
きら 同じ名前をそのまま、というのはあんまりないけど、自分がずっと好きだった作家さんの要素を何かちょっと分けてほしい……みたいな気持ちとかはあるかな。
三原 そうなんですね。私のほうは芸名なんですけど、前にいた事務所の社長が野球ファンで、名前を付けてもらった1年後ぐらいに水原勇気から取ったことを教えてもらいました。そのときはまだ中学生だったので、「マンガから取るなんて簡単だなー」と思って(笑)。でも、きら先生と出会う少し前に、たまたま「野球狂の詩」を読んだら、水原勇気さんが素直で我慢強くて頑張り屋さんで……惚れました。もっと男らしい子なのかと思ったら、中身はめちゃくちゃ女の子で、とても魅力的な人ですよね。
コラボポスターの撮影で、初めての対面
──まったくの偶然が引きあわせた出会いだったようですが、では実際におふたりが初めて顔を合わせられたのはいつ頃ですか?
きら 1巻の発売に合わせて、コラボポスターを撮影したときです。
──三原さんにはどのような印象を持たれましたか。
きら 何かもう「眩しい」って感じでした。やっぱり普通に街中を歩いている人とは違いますよね。バイクスーツを着た撮影だったんですけど、レース会場にいる女性たちともまた違う雰囲気が漂っていて、「絵になるなあ」と思いました。
三原 いや、そんな……。私はマンガ家さんに会うのも初めてで、「もしかして気難しい人なのかな」とか、あれこれ考えていたんですけど、きら先生が最初からフランクに優しく接してくださったのでうれしかったです。
──撮影のほうはどうでしたか?
三原 私はバイクスーツを着るのも初めてだったので、興奮してテンションが上がりましたね。無敵になった気分というか。左右でカラーが違ったりして、デザイン性も高くて、オシャレだなーと思いました。ヘルメットはかなり重くて大変でしたけど。
きら レースとかに使うヘルメットだから、これでも軽いほうなんだけどね。
三原 えー、軽いほうなんですか。でも激しいスポーツだから仕方ないですよね。
きら 危ないからね。しかも1回レースに出たらドロドロになっちゃうし。キレイにするのがまた面倒くさいんだよ……。
三原 泥メイクみたいなのもしましたよね。先生に見てもらいながら、ちゃんとゴーグルの跡になるよう、顔を茶色く塗って。
きら 結構、撮影には時間をかけたよね。僕もカメラマンさんの横から、コンデジでパシャパシャと撮らせてもらったけど。
三原 あの写真は今後、作品の助けになりますか? 先生から「後ろ姿とか、絵を描くときに役立つ」と言ってもらえたのが、私はとてもうれしかったので。
きら もちろん。レース用のバイクスーツって柄が複雑なので、想像だけではなかなか描けないんだよね。ポーズのシワに合わせて柄を描くとか、やっぱり写真があるとまったく違うから。
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三原勇希、中学1年生女子。関西在住で子供の頃からの趣味はオフロードバイク。父の転勤で関東に引っ越すことが決まった彼女は地元で最後のレースに臨む。幼馴染でライバルでもある伊藤清志に淡い恋心を抱き戸惑う彼女は「このレースであいつに勝ったら好きって言おう」と秘かに決意するが。「赤灯えれじい」「ケッチン」で丁寧な人物描写と恋愛模様を描いたきらたかしが送る青春バイク&恋愛ストーリー。
きらたかし
1970年、44歳。兵庫県宝塚市出身。2003年に「赤灯えれじい」で、ちばてつや賞ヤング部門大賞受賞し、2004年よりヤングマガジン(講談社)にて連載を開始する。2009年には同誌にて「ケッチン」を連載。オートバイ好きとして知られる。そのほか著作に「単車野郎」など。
三原勇希(ミハラユウキ)
1990年4月4日生まれ、24歳。ファッションモデル、タレント。大阪府出身。趣味はファッション、音楽、ライブ鑑賞、ランニング。特技はピアノ、絶対音感。テレビ神奈川の音楽情報番組「sakusaku」の4代目メインMC。現在、TOKYO MXにて放送中の「テリー伊藤のトラブルハンター」にMC出演中。