松岡禎丞(ベル・クラネル役)インタビュー

ベルは人間としても、冒険者としても相当変わった

──いよいよ、「ダンまち」第3期の放送がスタートします。今の率直なお気持ちを教えてください。

松岡禎丞

「ダンまち」の最終回は、いつも次を匂わせる感じで終わりますよね。前回(第2期)も最後の最後にウィーネが出てきて「ここどこ?」と言って終わるという、「次をやらないわけがないだろう!」という終わり方でしたし(笑)。ついに、あの続きを観てもらえるわけですが、そうやって続けさせていただけることは本当にありがたいことです。今回の話は、少し重めの話ではありますが、それも引っくるめて、また皆さんに「ダンまち」の世界を体感していただける。そのことがうれしいですね。

──昨年放送された第2期でもベルは新たな出会いや戦いを経て、さらに成長したと思います。松岡さんの中では、第2期が始まる前のベルと、第3期が始まる直前の現在のベルは、どのようなところが変わったと捉えていますか?

ヘスティア・ファミリアの仲間が(正式に)増えて、その中での団長という立ち位置になったので、まず気持ちの持ちようが変わっていますよね。それまでのように、自分のためだけに独りよがりで行動してしまったら、ファミリアの仲間たちにも迷惑がかかってしまうので。あと、これが最も如実な変化なんですけれど、ベル・クラネルという人間を表す一番のキーワード「強くなりたいです」という言葉の意味合いがどんどん変わっている。劇場版の「オリオンの矢」のときのように、自分がどれだけがんばっても相手を救えないことも経験したので。でもその分、1人の人間としても、1人の冒険者としても精神的にも相当変わりましたよね。僕個人の感覚だと、あの年齢の子がそんな経験をするなんて可哀想と思ってしまうのですが……。まあ大抵、ヘルメスが絡んでるんですけれど。

──いつも、ベルの活躍の裏で暗躍していますね(笑)。

アニメ第3期ではベルとウィーネの出会いから物語が動き出す。

ヘルメスがベルという人間を試し続けているので。でも、ベルはその試練も乗り越えて成長している。このペースで成長し続けたらどこまで行くのだろうかというのは、ヘルメスではなくても、楽しみですよね。本当に(三大クエストの最後のひとつである)黒竜の討伐にも行けるんじゃないか、というぐらいの成長を見せているので。

──もし誰かが松岡さんの才能にすごく期待をしていて、試練を与え成長させようとしていたとしたら、それはうれしいことですか? それともやっぱりつらいですか?

そうですね……何かを言われるということは、自分のことを見てくださっているし、「こいつならやってくれる」と思っていただいているということじゃないですか。例えば、「ダンまち」の音響監督の明田川仁さんは、毎回、「お前ならやれるよな?」ということを、ぶん投げてくださる方なんですよ(笑)。なんとかそれに応えようと思って、ここまでやってきたわけです。だから、言われなくなったらそこまで。言われるうちが華だなって思います(笑)。

第3期は「ダンまち」史上、一番重い話

──第3期では、原作小説の第9巻以降のストーリーが描かれていきますが、その物語の感想を大きなネタバレにならない範囲で教えてください。

ベル・クラネル

今回のお話は、「人語を理解するモンスターが現れた」というところから始まるのですが、いわゆる人間のルールや規律の根幹に関わってくるお話になっているんです。オラリオで普通に生きている人間からすると、モンスターは自分たちの生活を脅かす「悪」。「でも、そのモンスターが自分たちと同じ意思を持っていたらどうするの?」という、すごくナイーブなところに突っ込んでいく。そこで、よくリリが言っている、「底抜けのお人好し」のベルがですね……やっぱり、やっちゃうわけなんですよ(笑)。

──ファンが「優しいベルならこうするんだろうな」と思う方向に進んでいきますよね(笑)。

はい。でも、その行動を「世界は許してくれるのか?」という話であって。まあ、やっぱり許してくれないんですよ。下手すると、ベルの行動は「悪」になるんです。そういった面で考えても、今回の話は「ダンまち」史上、一番重い話ですね。

──新たなヒロイン、人語を話すモンスターであるウィーネは、ベルにとってどんな存在になるのでしょうか?

ベルにとっても、すごくイレギュラーな存在なんですよね。まさか、今まで戦ってきたモンスターがしゃべったり、本当に感情を持っていたり、痛みも感じるなんて、という。まあ、「人語を解する」というのが一番大きかったんでしょうね。そうなると、ベル視点では、もうモンスターじゃない。普通の1人の女の子。だから、放ってはおけないんです。

コロナ禍で見えたポジティブな変化

──アフレコはすでに全話終了しているそうですが、新型コロナウイルスの感染予防対策で、収録環境も大きく変化されている中、どのようなことが特に印象に残っていますか?

確かに、コロナ禍の中でのアフレコでは体制もかなり変わっていて。「ダンまち」では、最大4人で同時に収録する形になりました。

──1つのスタジオに同時に入れるのは4人までということですか?

いえ、大きなスタジオに3人、別室に1人という形でした。ただ、「この収録体制アリだな」と思ったことが1つありまして。みんな揃って録れていたときは、掛け合いのところは、抜きでの収録になっていたんです。

──掛け合いで複数の人のセリフが重なるところは、1人ずつ録っていたわけですね。

はい。でも今は、例えば、僕が別室に行って、相手の方がスタジオに入っているときは、アクションシーンなども一緒に録れるんです。

──別の部屋でも、お互いのセリフは聴こえているわけですよね。

新たな収録方法で声をあてたという戦闘シーンにも注目だ。

耳(ヘッドホンなど)で聴こえています。だから、とある戦闘シーンに関しては、お互い、喉が擦り切れるくらいに叫びながら戦っていて。臨場感がすごかったです。

──以前の体制だと、まず松岡さんが収録したセリフを相手役の方が聴きながら、戦っていた?

あるいは、その逆とか。まず、テストでは一緒に掛け合うのですが、先に録る場合は、テストでの相手の音圧だったりを覚えておいて、それを脳内再生しながら戦っていたんです。でも今は、先か後かとかもなく、相手と一緒にとにかく戦うことだけに集中できる。これはポジティブな変化だなと思いました。

──最後に、第3期を楽しみにしている「ダンまち」ファンの皆さんに、メッセージをお願いします。

改めてになりますが、今回は「人ってなんなんだろう?」という深いところにもつながる話だと思っていて。人とモンスターが意思疎通できるのであれば、その境界線はどこになるのか。それは、ベルの苦悩でもあるんですけれど、すごく考えさせられるお話になっているので、ぜひたくさんの方に観ていただきたいです。あと僕は、オープニングを先に観させていただいたんですけど、めちゃくちゃいいですよ! 井口裕香さんが歌われている「over and over」も素晴らしいし、歌詞が本当にベルという存在のことを表現していて、今でも何回も観ちゃうんです。本当に、今期を表すオープニングになっています。たぶん、回によっては「しんど……」ってなる展開もあると思うのですが、「ベルなら、やってくれるよ」と信じて、心折れず最後までお付き合いしていただければうれしいなと思います。あと楽しみにしていてほしいのは、キービジュアルに描かれている牛はなんだろうってことですかね(笑)。とんでもないお話になりますよ。

松岡禎丞(マツオカヨシツグ)
9月17日生まれ。北海道出身。アイムエンタープライズ所属。主な出演作に「ソードアート・オンライン」(キリト役)、「冴えない彼女の育てかた」(安芸倫也役)、「ノーゲーム・ノーライフ」(空役)、「五等分の花嫁」(上杉風太郎役)、「鬼滅の刃」(嘴平伊之助役)など。