「抱かれたい男1位に脅されています。」|ハライチ岩井がBLアニメ「だかいち」を推す理由「自分の中の異性に気付ける作品」

上半身は拒んでるのに下半身は拒んでないところが最高

──原作、アニメを通じて、高人と准太のラブシーンも見どころですね。

アニメ「抱かれたい男1位に脅されています。」2話より。 アニメ「抱かれたい男1位に脅されています。」2話より。
岩井勇気(ハライチ)

桜日先生の描く高人さんの描写がエロくていいんですよね。たぶんTVアニメというところもあって、アニメではそこまで描かれないんですが、原作だとセックスの最中、高人さんが完全に女の顔になってるんです(笑)。何がいいかというと、なんかこう……高人さんがセックスをめちゃくちゃ楽しんでいるというよりは、まだノンケの部分が残ってる感じが、いいんですよね。って、何言ってんだ俺(笑)。

──(笑)。視点がすごいです。

僕は高人さんのそういうノンケっぽいところが好きなんですよ。原作でいうと、ベッドの中での高人さんのこのアングルが一番好きなんです。この、嫌がってる手がすごくいい……。毎回ベッドシーンで高人さんを見ていて思うんですけど、上半身は拒んでるのに下半身は拒んでないというのが最高ですね。

──(笑)。高人は子役から活動しているので芸能界が長く、准太にとっては先輩。でも恋愛になると関係が逆転して攻め受けが入れ替わるところに萌える人が多いと思います。岩井さんは、そういう関係性の逆転というポイントでは萌えますか?

ああ! 確かに。普段はSっぽい人が受けのほうが、僕も好きですね。しかも、Sっぽい性格の高人さんが、准太の手にかかるともはやMになるじゃないですか。そのギャップは見ていて面白いので、僕はノンケ受けが一番好きですね。

束縛する男は絶対浮気する。でも准太はしない!

──准太は一見爽やかでイケメンな天使キャラですが、一方で「黒天使」な部分もあり、高人さんの行動はなぜか徹底的に把握しています。岩井さんも、こんなふうに強く愛されたいと思いますか?

アニメ「抱かれたい男1位に脅されています。」2話より。

准太は束縛癖がありますもんね。でもヤリチンでもないし、すごく紳士なのがポイントです。僕は男なんでアレですけど、女の子はこういう男が好きだろうなと思います。自分に向けられた強い気持ちがちょっと度を越しているとしても、准太は貞操観念がしっかりしているから、許せるのかもしれない。……僕は日頃から「束縛する人間は絶対に浮気する」と思ってるんです。「お前、浮気してんじゃないの?」「いつ帰ってくんの?」とかしつこく聞いて気にしてばっかりいる人間は、簡単に浮気します。そこが気になるということは、自分のほうに同じような気持ちがあるってことですからね。

──なるほど……岩井さん、過去に何があったんですか(笑)。

いやいや、統計的に!(笑) でも准太はそうじゃない気がする。准太の場合は、本当に高人さんを心配しているからこその束縛に見えますね。包容力というか、いざというときに守ってくれそうな雰囲気が男から見てもあるので、そこはすごく魅力的ですよね。

男同士だと、恋愛関係になるにはセックスするしかない

──高人と准太の間には、一度たりとも「付き合おう」というやり取りがないにもかかわらず、2人ともちゃんとカップルという意識でいるのが魅力的です。

アニメ「抱かれたい男1位に脅されています。」2話より。

確かにそこ、いいですね。そのあたりは、男女とは違ってちょっとややこしいところがありますよね。男同士って恋愛感情がなくても、飲み会とかでノリでキスすることがあるんです。でも、男女だとそれはなくて、キスするだけでも「ここから先は恋愛」ってなる。でも男はならないので、“付き合う/付き合わない”の線引きが難しい。男同士だと何をすれば恋愛と呼べるかというと、セックスするしかないんですよね。だからBLってセックスの描写が多いんだと僕は思ってます。

──なるほど。人間の歴史を考えても、セックスしてつがいになるほうが自然ですよね。

それが一番わかりやすいですからね。男女だと、付き合っていることを示す描写がもうちょっとハードルが低くて、2人でいたら「あいつら付き合ってんのかな?」ってなりますけど、男同士だとそうは思わないですし。

「巌窟王」から「世界一初恋」「同級生」を経由して
「だかいち」へ

岩井勇気(ハライチ)

──そもそも、岩井さんがBLにハマったきっかけはなんだったんでしょう。

きっかけは、BLではないですけど、僕が学生のときに見ていた「巌窟王」というアニメで。フランツというキャラクターとその親友のアルベールが、お互い許嫁がいるにもかかわらずフランツがアルベールのことを好きだという描写があって、もやもやしてたんですよね。僕が中学か高校くらいの頃ですし、当時は普通のアニメとして見ていたので、真相を知って「ええっ!? そういうことなの?」とびっくりして。当時、物議を醸したのではと思いますけど、今はBLのTVアニメも受け入れられてきているので、世間の需要と許容範囲も広がって、変わってきてますよね。今はどんな作品でも男女の恋愛はこじらせていて、普通の内容じゃできなくなっている。だから、純愛ものだけど日本のドラマとは雰囲気が違って素直に見られる韓流ドラマが流行って、それが今度はBLの流行になってきていると思います。

──なるほど。その後はどんなBL作品を見てきたのでしょうか。

アニメ「同級生」キービジュアル ©︎中村明日美子/茜新社・アニプレックス

BLアニメで初めてハマったのは中村春菊先生の「世界一初恋」で、そこからBLアニメはけっこう観ましたね。最近だとありいめめこ先生の「ひとりじめマイヒーロー」も面白かったし、あべ美幸先生の「SUPER LOVERS」もハマりましたね。あとはやっぱり、中村明日美子先生の「同級生」。本当に大好きで、原作はもちろんDVDも買いました。映画館では、1人で後ろの端のほうで観てたんですけど、僕以外に男は1人だけで、やっぱりピンで来ていたその人と帰りになぜか目が合って、すごい変な空気が流れましたね。

──(笑)。「いい感じ」にはならなかったんですか。

ならないです(笑)。

──岩井さんにとって、BL作品と、それ以外の作品を観るときと、どんな違いがあるのでしょうか。

僕、BLアニメを観るときって、BLだと思って観ないようにしてるんですよ。そうすると、1話とか2話とかで「ええーーーっ!? 普通の話じゃなかったの!?」って新鮮な驚きがあるんです。これ、毎回楽しみにしてますね。

──自ら記憶を操作して……もう、プロの見方ですね(笑)。

意外なのがやっぱり面白いので(笑)。