「DOUBLE DECKER! ダグ&キリル」第4回 三上哲(ダグ役)×天﨑滉平(キリル役)×古田丈司(監督)×鈴木智尋(シリーズ構成・脚本)座談会|“お互いがお互いのヒーロー”愛に満ちた「ダブデカ」ワールドを2万字で振り返る

全員が楽しんで作って、
ファンの皆さんにも楽しんでもらえてこそ「ダブデカ」

──これは早見さん、安済さん、大地さん、種﨑さんにもアンケートでお答えいただいたのですが(回答は本記事末に掲載)、三上さん、天﨑さんはシリーズを通して「これぞ『ダブデカ』!」と思うシーンやエピソードを挙げるとしたらどこですか?

三上哲

三上 自分自身でそう感じたというよりも、観てくださった方がそういうふうに思ってくれていたんだと感じたのは、最終話の先行上映会のとき、ダグが「挟まった!」と言ったシーンで、一瞬笑いが起きたんですね。それを見ていたときに、「あ、これが『ダブデカ』なのかな」と(笑)。本当だったら「えっ!? 大丈夫!?」とシリアスな雰囲気になる場面のはずなのに、そうではなくて。あの話自体「そして誰もいなくならなかった!」というネタバレみたいなサブタイトルでしたし、「ダブデカ」だからきっと大丈夫だろうと安心して受け入れてもらっていたのかなと。それが「ダブデカ」の世界なのかなと、教えてもらった感じがありました。

天﨑 第6話の「密着リスヴァレッタ警察24時!」を観て思ったのは、絵の上からがっつりとモザイクをかけてテロップを付けて、声も全部変えた状態で流す。パロディをやるならこれくらいの思い切りのよさが大事なんだなと(笑)。

──しかもけっこうな長尺でやってましたからね。

第6話「密着リスヴァレッタ警察24時!」より。

天﨑 「ダブデカ」はその振り切り具合が気持ちいいなと思いました。コメディとシリアスのバランスも絶妙で。5話でバンブーマンと対峙して、「俺たちの手でバンブーマンもザベルの件も解決しよう!」とシリアスな展開になったと思ったら、次の話で「警察24時」って……その続きやらないんかい!みたいな(笑)。「ソウ・シュウヘン」も総集編ですらちょっと面白くしちゃうというか。それが成立してしまうのが「ダブデカ」という作品の魅力で、視聴者の方もそこを楽しんで観てくださったんだろうなと思いました。

──制作者のおふたりにとって、「ダブデカ」らしさはどういったところにあると思いますか?

鈴木 シナリオの段階から一貫して意識していたのは、間口の広い作品になることですね。そしてそれぞれの個性が発揮できるような作品になってほしいなと。それはキャラクターもそうですし、スタッフやキャストの皆さんにとっても。みんなで楽しく作れたらいいなと思っていましたが、たぶんそれがフィルムにも出ているんじゃないでしょうか。全員が楽しんで作って、ファンの皆さんにも楽しんでもらえてこそがエンターテインメントかなと思うのですが、そういうところが「ダブデカ」らしくあったらいいなと思いました。

古田 そうですね。頭を空っぽにして観ても楽しめる作品にしたいなとは思っていました。でも、よくよく見るととんでもなく面倒なことをやっているみたいな。実は第5話に出たクロスワードパズルも、その道のプロの方が本気で作ってくださったやつだったりするんです。手間暇はすごくかかっているんだけど、それは見えないようにしちゃおう、というところはありましたね。

鈴木 だから奥ゆかしいですよね(笑)。あれだけハチャメチャやってるようで、実は細かいところを緻密に作り上げている。

「DOUBLE DECKER! ダグ&キリル」より。

古田 実はけっこう計算しまくっているんですよね。人を泣かせることよりも、笑わせることのほうが難しいなと思うんです。なるだけ笑ってもらえるようにするにはどうしたらいいんだろうと考えながら、要素を詰め込んだ作品になったと思います。だから足し算が多かったなと。

三上 でもそれが足し算だらけでごちゃごちゃになるわけでなく、うまく交通整理されてますもんね。

古田 最終的にはちょうどいいバランスになったかなとは思います。ただやっぱり、作るのは大変でした(笑)。

EXTRA第2話はコンテにも
「ラララな2人」と書いてあったんです

──現在、新規エピソードを描く「EXTRA」全3話が配信されていますが、こちらのお気に入りのシーンについてもお伺いできればと思います。

三上 温泉回(EXTRA第3話)は「このシーン!」というよりも、全体を通してなんだか幸せな気持ちになれる、ほのぼのと癒されるエピソードで好きですね。

天﨑 僕も温泉回は全話を通して一番好きなエピソードです。でも1話からの積み重ねがあったからこそ、このお話が一番好きと言えるんだろうなとも思っていて。あとキリルとして言うのであれば、潜入捜査をしたEXTRA第2話も……。

三上 オリビア?

EXTRAの第2話「インファナル・アンフェア!」より。女装して潜入捜査を行うことになったキリル(左)に、女性としての振る舞いを厳しく指導するミラ(右)。

天﨑 ふふふ(笑)。オリビア(キリルが女装した姿)を演じたので、アフレコ現場でも挑戦した回になりました。オリビアを演じるにあたって、キリルが女性の気持ちになってしゃべったときの声が、なんとなく(藤原祐規演じるキリルの兄・)ミラに似たしゃべり方になっていたらいいなと考えていて。それを意識しながら演じたエピソードでした。

──EXTRA第2話は演出もインパクトがありました。

天﨑 突然挿入歌が流れるという……。家で観て大爆笑しました(笑)。

三上 びっくりしたよ! アフレコのときは僕ら知らなかったからね。

天﨑 あれには声を上げて笑いましたね(笑)。

鈴木 僕もそうでした(笑)。

「インファナル・アンフェア!」より。大富豪が主催するパーティーに「オリビア」の名で潜入したキリル。ターゲットの1人であるユーセフ(CV:細谷佳正)に思わぬ形で急接近した瞬間、印象的なラブソングが鳴り響く。

古田 ああいった挿入歌が流れるというのはシナリオになくて、演出で盛った部分なんです(笑)。オリビアとユーセフが恋に落ちるには、もう1つ何かきっかけがほしいなと。キスしてしまいそうになるあのシチュエーションには、こんなイメージの楽曲が一番ハマるに違いないということで、コンテにも「ラララな2人」と書いてあったんです。霧雨アンダーテイカーさんに発注したときは、楽曲の方向性と、頭からサビがくるようにしてほしいというのを伝えて。そうしたらまさかの「揺れに揺れるゴンドラ」になっていて(笑)。

──本当に印象的なシーンでした(笑)。

天﨑 EXTRAの第1話もいいんですよね。最後の「お前と組んだら面白いと思ったからかもな」というダグからの一言も、キリルにとっては本当にうれしかったと思います。

三上 あの回はなんにも事件起きてないですからね。なのに面白い(笑)。

ディーナのちょっとしたいたずら心により、ミラを女性だと思い込んだままのデリック(CV:小山剛志)。EXTRAの第3話「刑事カリアゲ 湯けむり殺人事件簿!」では、そんなデリックに真実が告げられるが……。

古田 EXTRAの1~3話は物語の縦軸を考える必要もなかったので、一番気楽に作ることができましたね。あとはデリックの解決していなかった問題に決着がついたのが一番よかったなと思います。

三上 あと、キリルの大家さんが脅しの理由に使っている写真がなんだったのかというのも判明しますからね。学生時代のキリルのバニーガール姿という(笑)。

古田 本編の第1話から引っ張り続けていた謎がやっと解けましたね(笑)。

「刑事カリアゲ 湯けむり殺人事件簿!」より。

鈴木 僕はEXTRAの第2話と吉田さんが書かれた第3話が特に好きで。女装回っていうのはずっとやりたかったんですが、天﨑さんが素晴らしいコントラストで演じてくださいました。あの回は珍しくダグがいない中でキリルがどうするのか、というのを描きたくて。それも毛色の違うものになってよかったと思います。本編の最終話は13話でしたが、余韻を含めてEXTRA第3話はもう一度最終回をしている感じがあるところが気に入っています。エンディングに出てきた集合写真は、何かの特典とかで欲しいですよね。SEVEN-Oのみんなのデスクにもきっとあの写真は飾ってあるだろうから、それと同じものが飾れたらすごくいいなって。

天﨑滉平

三上 確かに。

天﨑 欲しいです!

古田 エンディングロールで流れる記念写真も、なるだけキャラを平等に出すようにしてあるんですよ。

天﨑 その写真のところ、ダグとキリルで一緒に写ってなかったのが、逆にすごくよかったなと思っていて。

三上 うんうんうん。

天﨑 それぞれがSEVEN-Oのみんなと楽しいことをやって、ちゃんと仲良くなっているんだなっていうのが表れていて、だからこの作品(の略称)が「ダグキリ」じゃなくて「ダブデカ」だったんだなと思って、感動しました。

ダグ、キリルらとともに、「DOUBLE DECKER! ダグ&キリル」の世界を彩ってきたトラヴィス(CV:小山力也)、アップル(CV:永塚拓馬)、ソフィー(CV:遠藤綾)。 ダグ、キリルらとともに、「DOUBLE DECKER! ダグ&キリル」の世界を彩ってきたトラヴィス(CV:小山力也)、アップル(CV:永塚拓馬)、ソフィー(CV:遠藤綾)。 ダグ、キリルらとともに、「DOUBLE DECKER! ダグ&キリル」の世界を彩ってきたトラヴィス(CV:小山力也)、アップル(CV:永塚拓馬)、ソフィー(CV:遠藤綾)。

──この取材の段階では、EXTRA第3話はまだシナリオしか拝読していないのですが(取材は3月に行われた)、読み終わった瞬間に「ああ……ずっとSEVEN-Oのみんなを見ていたい……」という気持ちになりました。

鈴木 コンテを拝見して、さらにそう思いましたね。

三上 今後は新しい話として「EXTRA」の(Blu-ray / DVDに付属する)オーディオドラマがあります。ダグとキリルが入れ替わるというお話なので、完成がどうなっているのか、僕もすごく気になっています(笑)。早く聴きたい!

天﨑 僕もめっちゃ気になります!(笑) 「ダブデカ」のオーディオドラマはストーリーの間を補完するだけでなく、単体でもすごく楽しめるお話になっていて。「ダブデカ」はどの媒体で発表しても変わらず濃いままお送りできるんだなと。それは今回のお話を演じてもすごく感じました。