コミックナタリー PowerPush - 月刊COMICリュウ
COMICリュウ発の女流作家、3人同時デビュー マンガ界新世代の潮流となる才能たちが原点を語り合う
リュウ編集部は、なんでもいける感じだと思った(成松)
──本日は、同時に単行本デビューされる3人の女性作家にお集まりいただきました。3人とも、月刊COMICリュウの龍神賞を受賞されています。まずは龍神賞や、リュウとの出会いを伺いたいと思うんですが……最初に受賞されたのは成松先生ですよね。
成松 私はCOMITIAの出張編集部に持ち込んだのが最初ですね。来てらした編集部の中で、一番「なんでもいける感じだな」と思って(笑)。その頃西村(ツチカ)先生とか、COMITIA出身の作家さんが描かれていたというのもあって、入りやすく感じました。
堤谷 私も西村先生が描いてらして、こんなマンガを載せている雑誌があるんだーと思って。リュウに持って行くようになりました。
──ちなみに堤谷先生は金龍賞ですから、賞金が100万円出たんですよね。
堤谷 全部生活費に消えました(笑)。でも助かりました、ほんっとに! 死ぬところだったので。救っていただいたという感じです。
成松 私もやっぱり生活費ですね(笑)。ネーム描く時間を作るために。
脇田 みんなしっかりしてる……。私は実家暮らしなので、ニート資金として好きなことに使っていました!
成松 あはは(笑)。脇田さんはバイトとかせずに、ご実家でずっと描かれてたんですか?
脇田 そうですね。私、地方住みなのでずっと投稿でやっていたんですけど。最初のほうに持ち込んだ他誌の担当さんが、今年一番面白かったマンガということでふみふみこ先生の「女の穴」を勧めてくれたんです。読んだら「これやばい!」ってなって。こんな作品を連載してる、COMICリュウっていう雑誌があるんだって初めて知ったんです。それでなんでも受け入れてくれそうだなと思って、投稿するようになりました。
──この龍神賞を取られた「コピー」の頃から、絵柄が変わりましたよね、割と。
脇田 変わったかもしれないですね。描き込めばいいってもんじゃないってことを学んだというか……。やだもう恥ずかしいです、あまり見ないで下さい……。
全員 (笑)。
フリーザ編はリアルタイムで読んでました(脇田)
──最初に好きになったマンガとか、覚えてらっしゃいますか?
成松 小学生のときに、公民館の図書館に手塚治虫先生の「火の鳥」が置いてあって。よくわかんないけど、雰囲気がすごく好きで何回も読んでました。エロくて、しかもなんか喰ってる!怖い!みたいな(笑)。
──小学生で「火の鳥」は濃い影響を受けそうです。
成松 その一方で、りぼんとかなかよしを姉と一緒におこづかいで買って、毎月読んでましたよ。おふたりは少女マンガ雑誌、読まれてました?
脇田 りぼんを読んでました。「ときめきトゥナイト」とか「こどものおもちゃ」とか……。あと少年ジャンプですかね。「ドラゴンボール」のフリーザ編とか、リアルタイムで。
堤谷 私もジャンプ読んでました!
脇田 堤谷先生が読んでらした頃のジャンプって、何やってたんですか?
堤谷 幼稚園のときから「幽☆遊☆白書」とか見てはいましたね。ちゃんと読み出したのは小学2年生ぐらいなんですけど、ちょうどその頃「シャーマンキング」とかが始まって。
脇田 世代が! 若い!(笑)
成松 じゃあ少女マンガを読む前に、少年ジャンプだったんですか?
堤谷 そうです。少女マンガも姉が買っていたんで幼稚園ぐらいのときは見ていたんですけど。小学生になってから「女の子なんて、ケッ」みたいな感じになって(笑)、少年マンガばかり読むようになって。少女マンガをちゃんと読むようになったのは、高校に入ってからです。マンガを描くようになったのもそこからですね。
コピー用紙にマンガを描きまくっていた(脇田)
成松 私がマンガを描くようになったのは……大学に入って、最初に友達になった人が漫研で。そこで先輩に「マンガ描きなよ」って言われてからですね。小さい頃から、ノートに自分のマンガをずーっと描いてたりするようなタイプじゃなかったです。
脇田 あ、私はそういうタイプでした。小学校1年生くらいから。
成松 えーっ! ノートに描いたりしてましたか?
脇田 友達のご両親の事務所に行って、そこにあったコピー用紙を使わせてもらって、友達とふたりで描いてました。最後にはコピー用紙の使いすぎで出禁になりましたけど(笑)。
──コピーして配ってたりとかしてたんですか?
脇田 コピーしてホチキスで止めるところまではしていましたね。別に配るわけじゃなくて、自分で在庫をストックしてました。
堤谷 もはや同人誌ですね。
成松 じゃあマンガ1作を最後まで描き切ってたんですね。飽きたりしませんでした?
脇田 いやー、逆に誰も止める人がいなくて……。
──(笑)。どういうお話描いてたか覚えています?
脇田 純粋なお話ですよ。羊さんを主役にしたギャグマンガでした。人間はひとりも出てこなかったです。でも、たくさんの人に見せたりはしませんでしたね。絵描いてるっていうのも、周りには隠してました。
成松 なんでですか? 迫害?(笑)
脇田 今考えると、なんででしょうね。思春期だったからかな……。
堤谷 思春期(笑)。私はさっき言ったように、ちゃんとマンガ描かなきゃって思ったのは高校2、3年生ぐらいの時です。そのときに初めて16ページ、ペン入れとかもしたマンガを描いて、某少女マンガの賞に応募したんですが……全然ダメでした。
脇田 しっかり考えて応募とかされてたんですね……。私は最初学校出てから、のほほーんと平凡な会社員で、このまま流されて生きていくんやーって思っていたんですけど。いざ就職したらめちゃめちゃしんどくて。同じしんどいなら好きなことをやったほうがいいなと思ったんです。そこで初めてプロのマンガ家になりたいと思って、仕事を辞めて本格的に描くようになりました。正社員のときには何も描けなかったですね……。成松先生は働きながらマンガもされていましたか?
成松 そうですね……大学を卒業してからバイトで食いつないでいたんですが、やっぱり疲れて2、3年間ぐらい描けなくて。その後なんとか1作描いて、他の編集部に持ち込みに行ったんです。そこで一応賞ももらったんですが、なかなか描きたいものが描けず、それ以降ネーム1つも出すことなく終わって。じゃあ好きなものを描こうと思って、COMITIAに出すようになって。数年後にCOMICリュウ出張編集部に持って行って今に至ります。
──COMITIAに出したときには、プロになろうと考えてらっしゃったんですか?
成松 まったく考えていなかったです。雑誌でやるなら、きっちり描かないといけないなと思うんですが、その状態で連載用の企画を考えていると息が詰まっちゃって。もう好き勝手にマンガを描きたいなと思い、COMITIAに出したんです。脇田先生と堤谷先生は、おふたりとも持ち込みをされてたんですよね。
脇田 そうですね。最初は某週刊少年誌に持って行きました。ちょっと悲しいストーリーを作っていったから、雰囲気に合わなかったんですよね。それであたたかーくダメ出しされて、あたたかーく「お引取りください」って言われました……(笑)。もう記念受験感が満載だったから、優しく帰してくれたんだと思うんですが。本気で見られたら、原稿破られてたかもしれない。
堤谷 (笑)。私は1回賞に応募した後はそれっきりで、長い間マンガは描いてませんでした。専門学校に入ってアニメーションをやっていたんですが、アニメーションじゃ食っていけないなと思って……。
脇田 アニメーター志望だったんですか?
堤谷 いやホントに個人制作の、1人で作る映像作品的なやつでした。余計食べていけないですよね……。で、どうやったら生活できるようになるんだろうと考えて、マンガなら描けるかもしれないと思って描き出したんです。それから編集部に持ち込みに行ったりはしたんですけど。自信もなくて、足繁く通うタイプではなかったですね。どこに行っても絵柄を変えろって言われるし……。
脇田 えーっ。堤谷先生の絵、あれがいいのに。
堤谷 私、最初は少年マンガっぽい絵柄だったんですけど、自分のストーリーに合うようにと思って変えた結果が今の絵柄なんです。でも編集者の方には、もっと商業誌っぽい絵柄にしないと載せられないって言われて。一時はすごく悩みました。でも他の絵柄にも移行できなくて、この絵柄で引っかからなかったらもうマンガやめようかなと思っていました(笑)。
作品紹介
人工的に作り出した赤ん坊を売って大儲けしようとする女性科学者。しかし彼女の男友達(ゲイ)は自分が赤ん坊を育てると言い出す……。
啓示と救いに満ちた衝撃のデビュー作「バースデイ」をはじめ、情緒不安定な従姉に振り回されるヘタレ青年の物語「ライト ナイト ライト」、ロリータの純愛「金りんごちゃんの恋」、死んだ兄に憑かれた女子高生を描く「兎の生る木」、火星の海底プラントが舞台のSF「BIANCA」、冴えない青年の前に突然現れた謎の幼女との不思議な同居生活を描いた表題作「人生は二日だけ」……。珠玉の6作品を収録した記念すべきデビューコミックス!
作品紹介
龍神賞選考会において選考委員から絶賛された、希代の感性を誇る期待の新鋭・成松幸世が満を持して放つ初コミックス!
とある地方都市にすむ伊達さん一家
厳格だが、やたらと眼鏡を失くすパパ
天真爛漫でおっとりしている優しいママ
気は強いが一寸天然のお姉さん・エリ
一途だけれど心優しい弟の心
四人が織り成す感動のドラマを一冊に凝縮してお届けします!!
作品紹介
猫が出てこない猫マンガ
もう一度、あの猫に会いたい……
いなくなってしまった猫
昔飼っていた猫
島での猫探し……
愛しい「猫」を通して
5人の女性の心の機微を
優しく丁寧に、大胆な演出をもって描き出す
珠玉のオムニバス短編集
リュウ期待の新人ストーリーテラー
脇田茜ファーストコミックス
猫×クリエイターWEBマガジン
ilove.cat推薦!
堤谷菜央(つつみたになお)
2012年、月刊COMICリュウ(徳間書店)の新人賞・龍神賞にて、応募作品「バースデイ」が審査員の吾妻ひでお、安彦良和に絶賛され、リュウ創刊以来初となる金龍賞を受賞。同作品が月刊COMICリュウ2013年2月号に掲載されてデビューを飾る。以降、精力的に読み切り作品を発表。2014年に初単行本「人生は二日だけ」を刊行。
成松幸世(なりまつさちよ)
九州出身・東京在住。大学入学を機に上京し、マンガ研究会に所属。卒業後は同人誌などで活躍し、2012年に月刊COMICリュウ(徳間書店)の新人賞・龍神賞にて「紙の上」「芙蓉の人」「ユークリッド」の3作で銀龍賞を受賞。その後、読み切り「フレーム問題」にてデビューし今日に至る。2014年に「さよなら金太郎 伊達家の人々」を刊行。
脇田茜(わきたあかね)
京都在住。2012年冬、第12回龍神賞にて銀龍賞を受賞し本格デビュー。受賞作「コピー」では、イラストレーターを夢見る女性のとある一日をイマジネーションあふれる様々なタッチで描写し、高い評価を受けた。好きな食べ物は餃子。「『猫がいない』短編集 凪を探して」が初の単行本となる。