描きたい話はまだまだ先にあります
──今作のヒロインである、紗都子についても聞かせてください。紗都子の芯の強さは同性としても惹かれます。紗都子はどんなキャラクターとして描こうと意識しているのでしょうか。
意志が強く、しっかりと自分を持ったキャラにしようと思いました。夢のために生き、自分の役割をまっとうしようとしている紗都子が、周りの環境が大きく変化することによってどのように考え方が変わっていくのか、今後も楽しみにしていただきたいです。
──最初こそ命を助けてもらうために進平を利用していた紗都子ですが、次第に進平に惹かれていく様子も読んでいてキュンとさせられます。進平と紗都子の関係性について、描くうえではどんなことを意識されていますか?
お互いにないものを持っていると思いますので、補い合いながら2人で成長してもらいたいなと思っています。
──進平と紗都子がお互いの存在に影響を受けて成長していく姿はとても魅力的です。そのほかにも、描いていて特に印象に残っているキャラクターは誰ですか?
紫が好きですかね。ツンデレが好きなので。あと、三枝も。オジサンが好きなので。
──進平に思いを寄せる遊女の紫と、殺し屋集団の親玉である三枝。2人とも個性の強いキャラクターですね。「ホタルの嫁入り」は派手なアクションシーンの作画も大変目を引きます。映像作品を観ているようで、映画のワンシーンを切り取ったような構図でハッとさせられる場面がたくさんあります。アクションシーンは何かを参考に描かれているのでしょうか。
アクションシーンは初めてだったので、参考書を読んだり、自分で鏡の前でポーズをとったりいろいろ試しましたが、本当に難しい……。まだ自分では、全然納得できていません。少しでも躍動感を感じられるようにコマ内の余白を意識してはいますが、どうしても描き込みたくなってしまって、まだまだですね。
──アクションシーンの作画についてもそうですが、「ホタルの嫁入り」は「プロミス・シンデレラ」のとき以上に、さらに橘さん自身の“マンガ愛”が伝わってくる作品だと感じています。アクションシーンの作画力もそうですが、前作以上にキャラクターの表情がころころと変わる様子が、橘先生の絵を描くことに対する“楽しい”という思いが伝わってくるように感じました。
純粋にキャラクターの表情は楽しんで描いています。感じていただけた通り、「楽しく描く」ことを常に、大きな軸にしています。ですが、そのうえで作画もストーリーも、まだまだだと思っています。
──橘さんの高い向上心を感じます。進平の真っ黒な目もそうですが、紗都子の芯の強さを感じる眼差しもとても印象的です。特に気合いを入れて描いているパーツはどこですか?
顔もそうですが、手も意識して描きますね。男女で全然違うので、差をつけたくて。あと描いていて楽しいのは服のシワかな(笑)。
──橘さんの描く服のシワが好きなので、納得です。これまでに特に描いていて楽しかったシーンはありますか?
一番印象に残っているのは第17話かなあ。アクションシーンを描くのは時間がかかりますけど、とても達成感がありました。それ以上に描きたい話はまだまだ先にあります。
康太朗は進平と真逆を意識して描いている
──以前のインタビューで、担当編集者さんが「橘先生は描くのがめちゃくちゃ速い」と仰っていました。橘さんも「朝は3時に起きて絵を描いている」「描きたい気持ちが止められない」とお話されていて、そのバイタリティにとても感銘を受けたのを覚えています。今でもマンガを描くときは早朝に起きて……という生活を続けられているのでしょうか?
3時に起きるときもあれば6時に起きるときもあります。そのへんは緩くやってますね。描くことも相変わらず好きですが、最近は体を動かすことにもハマっていて……。やりたいことがたくさんあって、いくら時間があっても足りません。
──バイタリティにあふれている様子は変わらないのですね。「ホタルの嫁入り」3巻のラストでは、桐ヶ谷家の護衛・康太郎がいよいよ再登場します。個人的にも康太郎が好きで、再びの登場を待ち望んでいました(笑)。
ありがとうございます。
──康太郎も読者から人気のキャラだと思います。今後の紗都子と進平との三角関係についても気になるところです。
康太朗は生まれも育ちも性格も、進平と真逆を意識して描いています。紗都子と一緒に育ってきて、本人も紗都子に対しての思い入れが強く、進平の存在に気付いたときどのような反応と行動を見せるのか、注目していただきたいです。もちろん進平の反応も大変なことになります。
──すごく気になります! 最後に、今後の展開を楽しみにしている読者へ明かせる範囲で見どころを教えていただけますか。
どこを切り取ってもネタバレになってしまうくらい、毎回新しい展開があるように描いているので、今後の具体的な展開について語るのは控えますが、どんどん盛り上げていくつもりです。新キャラの登場や環境によって紗都子の心境にどのような変化があるのか、どのような方向に物語が進むのか、楽しみにしていただきたいです。
プロフィール
橘オレコ(タチバナオレコ)
2017年、小学館のマンガワンに掲載された読み切り「主任様と新人くん」で商業デビュー。2018年よりマンガワンと裏サンデーにて「プロミス・シンデレラ」を連載。同作は2021年に二階堂ふみ主演によりTVドラマ化された。2023年からはマンガワンと裏サンデーにて「ホタルの嫁入り」を連載中。