「みんなが選ぶ!!電子コミック大賞2024」伊織もえが女性部門のエントリー作品、全20タイトルを本気レビュー

コミックシーモア主催の「みんなが選ぶ!!電子コミック大賞2024」は、「次に来るヒット作品はこれだ!」と出版社が推薦したタイトルの中から、一般投票で大賞を選ぶマンガ賞。2024年1月の結果発表に向け、11月30日まで投票を受付中だ。

どの作品に投票したらいいか迷っている人のため、コミックナタリーでは女性部門のエントリー作品を一挙紹介。マンガ好きのコスプレイヤー・伊織もえに全20タイトルを読んでもらい、それぞれレビューしてもらった。最後には伊織が独断で選ぶ、女性部門の部門賞も発表しているのでお見逃しなく。

取材・文 / 西村萌撮影 / ヨシダヤスシ

「みんなが選ぶ!!電子コミック大賞2024」
「みんなが選ぶ!!電子コミック大賞2024」

電子書籍配信サイト・コミックシーモアが主催するマンガ賞。出版社59社が“2024年にヒットしそうな電子コミック”をそれぞれ推薦し、一般投票での得票数が最も多い作品を“みんなが選んだ2024年に最もヒットする電子コミック”として発表する。

投票期間

2023年10月4日(水)~11月30日(木)

部門

男性部門、女性部門、異世界部門、ラノベ部門、BL部門、TL部門

エントリー作品数

110作品

投票方法

特設ページにアクセスし、好きな作品の「投票へ進む」ボタンを押そう。各部門1回ずつ投票できる。

特設ページはこちら

女性部門エントリー作品

「赤子さんはかく語れり」
魅月乱
秋田書店

「赤子さんはかく語れり」1巻

由香と真人のもとに生まれた、かわいい女の子の赤ちゃん・芽生。大人たちには伝わっていないが、いつも赤ちゃんらしからぬ名古屋弁で本音を叫んでいる。作中では寝かしつけや授乳、おむつかぶれ、ご近所さんとのコミュニケーションなどが題材に。育児にまつわるアレコレが、新米ママとパパ、毒舌な赤ちゃんを通して指南される。

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伊織もえ

芽生ちゃんがしっかり自我を持っていて面白い(笑)。私たちにはわからないけど、赤ちゃんって本当にこう思ってるのかもしれないですよね。印象に残ったのは、生後3週目の芽生ちゃんが「ウチ 外に出てまっとるんでにゃあのか…?」ってギャン泣きするところ。ママのお腹の中から外に出たってこと、生まれてすぐには気づかないんだ……!って初めて知りました。

芽生ちゃんが寝てくれなくて疲れ果てたママに、パパが「…じゃあ 寝かせなきゃいいんじゃない?」「今日は夜ふかししてみるよ 芽衣ちゃんこっちに頂戴」って言うシーンも好き! 時代的な流行りとしてSNSとか広告で「夫が全然育児に参加してくれない」みたいなパートナー下げのマンガを多く見るから、2人で一緒にがんばってるのがポジティブでいいなあと思います。それに、よくありがちな意地悪な義母とかも登場しないですしね(笑)。誰も悪者にならず、平和に育児のことを教えてくれるマンガって珍しいなと思いました。

「アサシン&シンデレラ」
夏野ゆぞ
スクウェア・エニックス

「アサシン&シンデレラ」1巻

ライバル組織のアサシン・緒臣おみをスパイ中の寧々子。彼の弱点を暴くため恋人になりきっていたが、実はスパイであることが早々にバレていたと判明する。殺されることを覚悟した寧々子だが、緒臣は契約結婚を持ちかけてきて……。少しポンコツな寧々子と、スパダリぶりを遺憾なく発揮する緒臣の甘々な結婚生活が描かれる。

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伊織もえ

まず、絵が素敵! 前にX(旧Twitter)で1話が流れてきて、女の子のビジュアルがすごく好み!と思って目を止めました。服がオシャレですし、猫耳っぽくツノが立ってる髪型もかわいい。緒臣さんのほうも、黒髪の重ためバングなのが今っぽいですよね。絵が映えるようになのか、1ページをドーンと使ったコマも多い。ちょっとエッチさもあり、作者さんの「これを描きたい!」という欲望が感じられます。

寧々子には甘々なのに、アサシンの任務をこなすときは猟奇的な緒臣さん。このギャップにキュンとくる人が多いと思うんですが、私は寧々子の前で見せる“スパダリ”な面が絶対的に好き。カッコいいセリフもいっぱい言ってくれるけど、朝からすごい豪華なごはんを作ってくれたシーンにキュンとしました(笑)。

「欺かれ聖女と守護竜の婚約」
志藤ミネ
マッグガーデン

「欺かれ聖女と守護竜の婚約」1巻

孤児院育ちだが、なぜか王族の娘が持つ治癒の力を使えるフィリア。王女のロヴェッタが不調でその力を使えない間、彼女の陰に隠れて国民の治療に当たっていた。ところがある日、嫉妬に駆られたロヴェッタの策略により、フィリアは命の危機に瀕してしまう。死を覚悟したそのとき、フィリアの前に竜族の王子が現れ……。彼との出会いから、不遇なフィリアの運命が変わっていく。

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伊織もえ

どうしてフィリアは王族の娘だけが持つ治癒の力を使えるのか。注目してほしいのが、幼い頃のフィリアらしき女の子が描かれている1話の1ページ目。フィリアは孤児院で育ったはずなのに、いいドレスを着てるんです。ということは……ですよね? フィリアを木にくくりつけて獣に喰わせようとしたり、魔女に仕立てて追放しようとしたり、ロヴェッタはどこまでも悪役。フィリアに竜族の王子が手を差し伸べて、どんでん返しが起きる“ざまあ展開”はスカッとするのではと思います。

「御曹司、ワケありの庶民をお気に召す。」
やまとかな
コミックストック

「御曹司、ワケありの庶民をお気に召す。」1巻

とある事情でお金が必要な節約女子・川崎春花。イケメン御曹司・神木遊人が本社から出向してきても、春花はまったく興味がない。それどころか、高圧的な態度で、お金を軽んじるような振る舞いをした神木につい怒りを爆発させてしまう。ある日、春花は副業のハウスキーパーで新規客の住む高級タワーマンションへ。すると、出迎えたのはまさかの神木で……。好条件から住み込みの家政婦を引き受けた春花は、御曹司とのかみ合わない同居生活をスタートさせる。

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伊織もえ

この御曹司、とんでもないヤツですね!(笑) 自分がぶつかってお弁当をぶちまけちゃった女の子に、「端金だから遠慮するな」って5000円札を投げ捨てていくのはないですよ。私も学生時代はよく「バイト代で何しようかな」ってワクワクしながら考えてたので、お金を大事にしない神木にキレてしまう春花の気持ちはわかります。それにしても、我が家にも春花が来てほしい! お料理もお掃除もできて、金銭感覚もきちんとしてるし、私とは正反対のタイプなので……。

3話のラストで神木があるセリフを春花に言い渡しますが、その俺様っぷりが「花より男子」の道明寺を思い出しました(笑)。どちらも庶民と御曹司のラブストーリーですし、かつて「花より男子」を楽しく読んでいたという人はハマるかもですね。年齢を重ねると学園ものって少し距離を感じてしまうこともあると思うんですが、これは今の自分と近い世界観なのでより没入しやすそうです。

「結界師の一輪華」
著者:おだやか 原作:クレハ キャラクター原案:ボダックス
KADOKAWA

「結界師の一輪華」1巻

術者の分家に生まれた一瀬華は、優秀な双子の姉と比べられ、家族から虐げられてきた。そんな彼女は15歳のときに強力な力を覚醒させるが、自由に生きることを望み、そのまま落ちこぼれのふりをしておとなしく過ごし続ける。ところがある日、本家の新当主・一ノ宮朔に力を使っているところを見られてしまい、「俺の嫁になれ」と強引に求婚され……。なお原作小説を手がけるクレハは、「みんなが選ぶ!!電子コミック大賞2023」で大賞を獲得した「鬼の花嫁」の原作者でもある。

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伊織もえ

主人公の華は「能ある鷹は爪を隠す」をやっているわけですね。両親に認めてもらえなくても、自分の好きに生きればいいやっていう逞しさが素敵です。私が気になったのは、双子の姉の葉月。「私は落ちこぼれの華とは違うのよ!」と声を荒げても、ただ蔑んでるんじゃなくて必死感が伝わるというか。新当主の襲名披露式へ行くとき、自分の髪飾りを華にこっそり分けてあげていたのにも「おっ!」となりました。

ほかにも、葉月のちょっとした表情や動きから「実はいい子なのかな?」ということが感じ取れるんですよね。1つひとつの描写が丁寧なので、こちらに楽しく妄想させてくれる。お話としては最近よく見かける設定だからこそ、ただ勢いに乗っかってではなく、しっかり考えて作られているなというのが伝わってきます。

「喧嘩ばかりだった婚約者がいきなり溺愛してきます」
作画:絢瀬マコト 原作:マチバリ
秋水社ORIGINAL

「喧嘩ばかりだった婚約者がいきなり溺愛してきます」1巻

成金貴族の一家に生まれた娘ジーナと公爵家の青年カルロは、子供の頃に家同士の約束で婚約して10年。ジーナはカルロを愛していたが、素直になれず喧嘩ばかりしていた。そんなある日、ジーナは勢いで婚約破棄を告げ、去り際に階段から落ちて意識を失ってしまう。目を覚ますと、そこに駆けつけたのは人が変わったように溺愛してくるカルロ。さらに彼は婚約破棄となったあの日、ジーナがプロポーズを受けてくれたと言い出し……。この状況が幸せでしかないジーナは、記憶喪失のフリをして、2人の関係を再構築しようとする。

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伊織もえ

この2人はいわゆるケンカップルですね! でも、なんでカルロは急にこんな性格が変わっちゃったんだろう……。しかもジーナから婚約破棄された日、逆に自分からプロポーズしたことになってるし。もしかしたらジーナは記憶喪失のフリをしてるけど、本当に記憶喪失になってるのかも? だってよく見ると、ジーナが意識を取り戻して、曖昧な記憶のまましゃべり出したとき「どうしたのジーナ それは先月の話よ!」って周りに言われていますし。……ちょっと勘ぐり過ぎですかね?(笑) この推理が合っているのか、続きを読んで早く確かめたいです。

「恋ヶ窪くんにはじめてを奪われました」
美麻りん
講談社

「恋ヶ窪くんにはじめてを奪われました」1巻

趣味のゲームにプライベートを全振りし、恋愛とは縁遠い生活だった影原瑛子。ところが29歳になった今、ゲーム仲間も結婚していき、このまま誰にも必要とされない人生でいいのかと悩んでいた。そんなとき、仕事で出会った年下男子・恋ヶ窪亜蓮が、恋愛を教えましょうかと言ってくる。エリートイケメンで、コミュニケーション能力が高い恋ヶ窪は、瑛子にとって一番苦手な人種。女性関係も派手そうで警戒する瑛子だが、勇気を出して一歩踏み出す。

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伊織もえ

恋ヶ窪こいがくぼ亜蓮あれん……!? すごい名前ですね(笑)。一見チャラ男ですが、恋愛経験豊富なだけであって、何股もかけてきたとかいうワケではないですもんね。今もフリーだから瑛子に恋愛を教えているわけなので、意外と誠実な人なんだよなと思いました。瑛子にレッスンを持ちかけたのも、過去にゲームで装備をもらったからお礼がしたいという律儀な理由ですし。瑛子は「こんなことになったんだけどヤバいよね」って友達に相談してましたけど、お互いに大人だし、利害が一致してるんだから全然アリじゃないかなと思います。

瑛子さんはメガネを外したときのギャップがすごくかわいい! あと、会社の人たちとBBQするシーンも瑛子さんらしくて好きです。タイムスケジュールまで組んで、その場を完璧に取り仕切ってみせるけど、それはゲームのイベントが始まるまでに絶対に帰りたかったからという(笑)。亜蓮くんは「すげー責任感のある人なんだなあ…」って感心してましたけどね。私もゲーマーとして瑛子さんの気持ちがよくわかりますし、思わず笑っちゃいました。

「ご懐妊!!」
作画:真條りの 原作:砂川雨路
スターツ出版

「ご懐妊!!」1巻

広告代理店に勤めるグラフィックデザイナーの佐波さわ。彼氏とは忙しくていつ会ったかも覚えていないほどだが、ある日妊娠が発覚する。相手の心当たりは、イケメンだが仕事にはかなり厳しい鬼上司・一色部長だけ。実は3カ月前、大きなプロジェクトが終わった開放感で、佐波は一色部長と身体を重ねてしまったのだった。佐波が恐る恐る妊娠を報告すると、一色部長からは意外な言葉が返ってくる。

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伊織もえ

お酒を飲んで、いい雰囲気になってキスしちゃう……。ここ、会社ですよ!?(笑) でも仕事のときは厳しいのに、プライベートだと意外と気さくっていう部長のギャップはいいと思います。佐波が妊娠したと知ったら、即座に「二人で育てよう」って言ってくれますし。

子供を産むことを決めた直後に「これは恋じゃない」「私たちは責任で 家族として繋がれる」というモノローグがありますが、佐波と部長は夫婦といういい相棒になれそうだなと思います。恋人や夫婦として長年一緒にいると相手の嫌なところがどんどん目につくようになるという話をよく聞きますが、この2人は恋愛から始まっていないからこそ理性的に付き合えそう。そこから好きという気持ちが芽生えて、本物の恋や愛に変わっていくんじゃないかなと思います。

「転がる女と恋の沼」
芥文絵
祥伝社

「転がる女と恋の沼」1巻

実家暮らしのアラサーOL・木村栞は、現状維持がモットー。居心地のいい会社に勤めながら、プライベートでは男性アイドルを追いかけ、ぬくぬくと平穏な日常を楽しんでいた。ところが31歳の誕生日、飲み会から帰宅すると家が火事になっていて……。仕方なく一人暮らしを始めると、隣の部屋には紺という年下イケメンが住んでいた。飄々と掴みどころのない彼との出会いを機に、変わりたくない栞の人生は思わぬ方向に転がり出す。

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伊織もえ

仕事はどんどん幅を広げていきたいですが、私もプライベートは現状維持したいタイプなので栞の気持ちがよくわかります。紺と初めて出会う場所がコンビニだったり、“イエベ”だと思い込んでいたけど“ブルベ”だったと気づくシーンがあったり……今っぽくてリアルというか、私たちの日常に寄り添ってくれるような作品だなと思いました。きっと、ドラマ化とかもしやすそうですよね。

「婚約者は溺愛のふり」
仲野えみこ
白泉社

「婚約者は溺愛のふり」1巻

ジャハリー家の一人娘・ラチエルは、困窮する家のため、見た目も家柄も財力も抜群な名家の次男・ファハドとの政略結婚を企てる。ダメ元で求婚すると、なんと返事はまさかのOK。実はファハドのほうも、とある理由で手っ取り早く結婚したかったと言う。みんなに偽りの関係だとバレないようラブラブっぷりを見せつけようとするが、恋愛ごとが苦手なラチエルはファハドに振り回されっぱなしで……。アラビアンな世界観で紡がれる、嘘から始まる恋物語だ。

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伊織もえ

ラチエルは国の財務とかまでこなしちゃうのに、恋愛方面はからっきしなのがかわいい。ファハドはラチエルの何枚も上手というか、“しごでき”ですよね。婚約指輪はラチエルのお父さんにリサーチしてから、彼女が好きなブランドにオーダーして。しかも宝石はラチエルのご実家からこっそり買っていて……って、なんて気が使えるんだと思いました。アラビアンな世界観も華やかですし、ビジュアルだけでも見どころたっぷりです。

「彷徨う雷鳴」
冬森雪湖
リブレ

「彷徨う雷鳴」1巻

明治末期、貧村の一家心中で生き残った子供・はるひは、生きるために「芸事で稼ぎ、女は時に春をひさぐ」と言われる傀儡師くぐつしとなった。ある日、はるひの家に血まみれの軍人・武久が倒れ込んでくる。身元を明かさない武久だが、実は華族の出であり、満州でスパイ容疑をかけられ、軍から逃げているという身だった。当初は武久に男だと勘違いされていたはるひだが、身支度を整えると、美しい少女だったことが判明。2人は身を寄せ合い、心を通わせながら、過酷な時代に立ち向かう。

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伊織もえ

はるひが女の子だってこと、私も武久さんと同じく1話のラストまで気づきませんでした……! 序盤からしばらくヒロインの顔が隠されたままって、なかなかないですよね。やっぱり印象的だったのは、住み込みの仕事が決まった武久さんを送り出すため、餞としてはるひが舞を披露するシーン。そこで初めてはるひの顔が露わになって、これまでのボロボロだった姿とは別人のような美しさを見せるんです。きっと作中の武久さんのようにドキッと心打たれるはずなので、ぜひ皆さんにも見ていただきたいです。

「虐げられ令嬢とケガレ公爵~そのケガレ、払ってみせます!~」

ライブコミックス

「虐げられ令嬢とケガレ公爵~そのケガレ、払ってみせます!~」1巻

伯爵家の長女として生まれたが、家族から虐げられているキャスライト。ある日、妹のチェリアリアにジルカシウス公爵から婚姻の話が舞い込む。顔に傷を負っているため「ケガレ公爵」として世間から疎まれ、偏屈で社交嫌いという噂のジルカシウス公爵。チェリアリアが結婚を断固拒否すると、どうしても結納金が欲しい両親は代わりにキャスライトを嫁がせる。王城に向かったキャスライトはジルカシウス公爵と対面するが、本人からも使用人たちからも冷たくあしらわれる始末。しかし伯爵家でひどい扱いを受けていたキャスライトは、それをまったく物ともせず……。やがてキャスライトは、自らの隠れていた能力に気づく。

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伊織もえ

今までの暮らしが酷過ぎて、伯爵家で嫌がらせされても全然気づかないって、なかなか真似できないタフさですよね(笑)。埃まみれの離れに追いやられてもウキウキ楽しくお掃除して、ガッチガチに硬くなったパンも美味しいって食べて、ついには自ら望んでドレスからメイド服に着替えて……。これも、ある種の“おもしれー女”と言えるんじゃないでしょうか。キャスライトが妹の首輪から感じた嫌な気配や、公爵が苦しむケガレの残滓について、謎が解けるのはまだまだ先になりそうなので追い続けたいです。

「実は私、溺愛されてました!? ~最低彼氏から最強彼氏へ~」
一城れもん 原作:海咲ねむる
DPNブックス

「実は私、溺愛されてました!? ~最低彼氏から最強彼氏へ~」1巻

付き合って3年目の彼氏・樹と結婚を見据えて同棲中の皐月。しかし樹からは家政婦のように扱われ、ここ最近は彼のことが本当に好きかわからなくなっていた。そんなある日、会社のイベントでBBQをしていた最中に、樹が後輩女子と浮気していたことが発覚。突然の出来事に皐月が混乱していると、ハイスペックな後輩・藤崎にみんなの前で告白されて……。落ち込んでいたところを救うための冗談かと思いきや、のちに藤崎から思いもよらぬ事実が告げられる。

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伊織もえ

彼氏の樹、やなヤツですねー。浮気を皐月に責められたときの返しには、本気でムカついちゃいました(笑)。浮気相手のあざと後輩女子も、別に樹のことが好きなんじゃなくて、たぶん他人のものを奪うのが楽しいだけなんじゃないのかな。皐月のことは、自分より格下だとも思っていそうですよね。きっと皆さんも、樹や後輩女子のような人を見たことあったりするのでは? この先、2人にはざまあ展開が待ってると思うので期待ですね。

「真実の愛を見つけたと言われて婚約破棄されたので、復縁を迫られても今さらもう遅いです!」
漫画:橘皆無 原作:彩戸ゆめ キャラクター原案:すがはら竜
双葉社

「真実の愛を見つけたと言われて婚約破棄されたので、復縁を迫られても今さらもう遅いです!」1巻

侯爵令嬢のマリアベルは、婚約者の王太子・エドワードにふさわしい妻となるべく、幼い頃からさまざまな教養を身につけてきた。しかしある日突然、エドワードに「真実の愛を見つけた」と婚約破棄されてしまう。新しい婚約者が平民だからと教育係まで頼まれるが、マリアベルはキッパリお断り。その後、マリアベルは隣国の皇太子殿下・レナートの婚約者となる。レナートのおかげで傷ついた心も癒え、これから本格的に愛を育んでいこうとしていたマリアベル。ところが、エドワードがなぜか復縁を迫ってきて……。投稿サイト・小説家になろうで総合年間完結済ランキング1位を獲得した作品のコミカライズだ。

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伊織もえ

以前から好きな作品です。それにしてもエドワードって、本当に調子のいい男ですよね(笑)。マリアベルと自分の側近を結婚させて、僕たち夫婦をそばで支えてほしいって。人を都合よく利用しようとするのがムカつきます。

レナートがマリアベルに手を差し伸べるとき「『真実の愛』より『運命の愛』のほうがドラマチックだと思わないか?」と言いますが、どう違うのか自分なりに考えてみました。「真実の愛」は本人の意思で、これは確かだと信じているもの。「運命の愛」は本人の意思ではどうもできない、初めから決められているものでしょうか? だからエドワードが見つけた「真実の愛」っていうのは、そのときの感情や状況によって揺らぎやすいのかなとも思います。

「ホタルの嫁入り」
橘オレコ
小学館

「ホタルの嫁入り」1巻

時は明治時代。家名にも美貌にも恵まれるが、余命わずかと宣言されている伯爵令嬢・桐ヶ谷紗都子の夢は、家の利益になる結婚をすることだけだった。そんな中、紗都子は突如謎の悪党に命を狙われる。その場を生き延びるため、紗都子は殺し屋の後藤進平に「私と結婚してください」と提案。その場凌ぎの嘘だったはずが、進平はとんでもなく愛が重い男で……。TVドラマ化もされた「プロミス・シンデレラ」の橘による最新作だ。

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伊織もえ

これはしみじみいい作品……。最新話までリアルタイムで追ってます。とにかく進平がかわいくって魅力的なんです。彼にグッときたシーンを1つ挙げると、紗都子さんと宿に泊まったときに「結婚したら毎日髪を洗ってあげたいな」「手を握って毎晩べったりくっついて寝る こんな幸せってないや」と言うところ。日常的で身近なことを、ものすごく遠い夢のように話すんです。その物寂しさが、幸せにしてあげたいなという気持ちになりました。

進平が「死のうかな」とか「殺すよ」とか簡単に言うのも、子供がやるような試し行動だと思っていて。これまで人と深い付き合いをしてこなかったから、不安で愛情を確かめたいんですよね。彼にとっては殺しなんて大したことじゃないし、自分がこうしたら相手がどう思うとかもわかってないから、ちょっといき過ぎた発言になっているだけというか。もちろん紗都子さんからしたら危ういし怖いけど、本気で死ぬとか殺そうとは思ってない気がします。

あとは、なんと言っても絵がきれい。アクションの要素も多いから、少女マンガを普段敬遠している人でも楽しく読めると思います。

「妖狐の旦那さま~大正花嫁奇譚~」
もものもと
ソルマーレ編集部

「妖狐の旦那さま~大正花嫁奇譚~」1巻

音を奏でることで特異な力を発揮し、繁栄してきた華村家。しかし華村家に双子の妹として生まれた灯里は、姉のように力が現れず、厄災の源として家族から爪弾きにされていた。ある日、傷ついた心を落ち着かせるために外で歌っていると、美しい青年から「またお前の美しい歌声を聴かせてくれ」と声をかけられる。実は彼の正体は、この国で最も古く高貴な一族の当主・九石実琴だった。去り際に、夜会への招待状を置いていった実琴。場違いだと思いながら、姉にバレないように夜会の場所に行くと……。和風な世界観で、もどかしくもキュンとするラブストーリーが展開される。

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伊織もえ

つらい日々を送っていたところに、素敵な男性が現れるというというシンデレラストーリーですね。しかも、その実琴様は灯里が子供の頃に歌で救った狐だったと。実琴様は灯里と初めて出会ったときに「いつかを俺の花嫁として迎え入れる」と決めて、その意思を貫き通すのがカッコいいなと思います。今も身体に限界が来つつあって、本当は力を持つ灯里の姉を嫁にしたほうがいいはずなのに、それでも頑なに1人だけを見つめ続けていますもんね。本筋にはあまり関係ないですが、狐の質感がリアルでかわいいので注目です(笑)。

「離婚予定の契約婚なのに、冷酷公爵様に執着されています」
紡木すあ
ぶんか社

「離婚予定の契約婚なのに、冷酷公爵様に執着されています」1巻

生まれつき、魔力を吸い込むことができる能力を持っているミラ。孤児院にいたところを、この能力に目をつけた男爵に引き取られ、瘴気を帯びた剣や魔道具の浄化をさせられ続けている。その結果、体は瘴気まみれで、もう長くは生きられないという状況に。そんな中、出先で具合の悪くなったミラはアンネリーゼという美しい女性に助けられる。ミラの力を知ったアンネリーゼは、魔力過多症という病に苦しむ弟の公爵・ダリウスを救ってほしいと頼んできて……。ダリウスの病が落ち着くまで、2年間という期限付きで2人は結婚することになる。

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伊織もえ

ゲーム好きとしては、接触で魔力が行き交うというところに「Fate」がチラつきました(笑)。こういう作品における姉って意地悪な役回りが多いですけど、アンネリーゼは弟思いでミラにも優しいところがいいですよね。ダリウス本人にも「男と女だしこの先はわからないわよ。本当の夫婦になるかもしれない」って、いいアシストをしてくれていましたし。

3話のラストに登場した、ミラに「エレン様」と呼ばれていた男性も気になります。きっとミラの幼なじみかなにかで、彼女のことが昔からずっと好きだったんです。でも突然ダリウスというライバルが現れて、結局はかませ犬的な存在になってしまう……って、たった1コマで妄想し過ぎでしょうか(笑)。ぜひ皆さん、私の予想が合ってるか答え合わせしてみてください。

「Re:blue」
加瀬まつり
集英社

「Re:blue」1巻

主人公・吉野椿は社会人5年目の20歳。中学を卒業してすぐにパン工場で働き始め、今の生活にそれなりに満足しているはずだった。そんなある日、酔った上司に絡まれていたところを高校生らしきイケメンに助けられる。その出来事を機に人生を見つめ直した椿は、仕事を辞め高校に行くことを決意。入学式の日、1年生の教室に向かうと、あの日出会ったイケメン・キラと再会し……。キラをはじめ、5歳下のクラスメイトたちと椿は青春を取り戻す。

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伊織もえ

20歳の高校1年生って、このワードだけで目を引きますよね。学生時代ってたった1歳の差がものすごく大きかったから、本当の年齢がバレたらどう思われるんだろうって不安になる椿の気持ちもわかります。でもお友達が椿の年齢を知って、いい意味でまったく重く受け止めてないのが微笑ましかったです。「やっぱ大人っぽいと思ったんだよねー」とか「誕生日のバルーン、数字違うの買っちゃったじゃん!」って、さすがギャル……!と思いました(笑)。椿とキラの恋愛模様がメインで描かれていくとは思うのですが、私は彼女たちの友情を見届けたいです。

「龍神の最愛婚 ~捨てられた姫巫女の幸福な嫁入り~」
漫画:アンティーク 原作:宮之みやこ
一迅社

「龍神の最愛婚 ~捨てられた姫巫女の幸福な嫁入り~」1巻

浄化の力を代々持つ家系に、双子の姉として生まれた結月。しかし結月は龍の形をした背中のアザが不吉とされ、妹をはるかに凌ぐ能力を持ちながら、その存在を隠され虐げられてきた。そんなある日、龍の姿をした祟り神が村を襲う。生贄として差し出され、なぜか前世の記憶がフラッシュバックする中、命を捧げる覚悟を決める結月。すると龍神が人の姿になって現れ、「もう離さない…私の花嫁よ」と結月を抱きしめ……。前世で出会い、ある約束を交わした龍神と椿のラブストーリーが展開される。

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伊織もえ

結月の妹さんは、実は姉のほうが自分より力が強いというのを許せないわけですね。一家の中で、お兄さんだけ結月に優しくしてくれていたのが救いでした。そんな結月が龍神のお屋敷に連れて行かれて、家族からようやく解放されたと。家に戻るという選択肢もあった中で、「私は自由になりたい」って力強く意思表明していたのが印象的でした。結月が生まれ変わるのをずっと待っていた龍神との物語、この先の展開が楽しみです。

「私の彼が姉の夫になった理由」
美桜せりな
ファンギルド

「私の彼が姉の夫になった理由」1巻

恋も仕事も順調だった愛子が、想像を絶する悲劇に巻き込まれる愛憎サスペンス。愛子は優秀で温厚な彼氏・優馬と、事故で亡くなった両親の代わりをしてくれている優しい姉・紗栄子に囲まれ、幸せな日々を送っていた。25歳の誕生日、優馬から大切な話があると言われ、プロポーズを期待して約束の場所に向かおうとした愛子。すると、フードを被った何者かにナイフで刺され……。1カ月後、病院のベッドで目を覚ました愛子は、紗栄子から優馬と結婚したと衝撃の事実を告げられる。

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伊織もえ

ちょっとこれはトンデモ展開すぎて、コメントに迷います!(笑) 妹が意識不明になっている隙に姉が婚約者を奪うって、普通じゃ考えられないですよね。その後も、妹にはびっくりするような復讐が待っていますし。もう人間関係がドロドロすぎて、続きが気になってしょうがない……! 昼ドラのエグいシーンだけを寄せ集めて、闇鍋みたいにゴチャ混ぜにしたマンガという表現がピッタリな気がします。ぜひ、怖いもの見たさで一読していただけたら! きっと読んだ後は、誰かと「あの展開、すごかったよね!」って話したくなると思います。

伊織もえが独断で決める、女性部門の部門賞は……
「ホタルの嫁入り」

結果発表は2024年1月頃。
果たして“みんなが選ぶ”女性部門賞はどの作品になるのか──!?
11月上旬には中間発表が行われ、各部門の暫定上位5作品が明らかになるのでお楽しみに。

男性部門・女性部門のエントリー作品をすべて読んでみて
伊織もえ

「電子コミック大賞」って、出版社が「次のヒット作品はこれ!」ってプッシュした作品たちのマンガ賞なんですよね。だからなのか、本当に面白いマンガが多いなと思いました! 今回は男性部門と女性部門のエントリー作品を読みましたが、実際には性別関係なく読める作品がほとんど 。私が独断で男性部門の部門賞に選んだ「ホテル・メッツァペウラへようこそ」や女性部門の部門賞に選んだ「ホタルの嫁入り」も、まさに男女ともに楽しく読めるであろう作品です。

この傾向って、SNS発信のマンガが増えてきたからなのかな? やっぱりマンガ雑誌だと少年誌、青年誌、少女誌、女性誌ってカテゴライズされて、雑誌ごとの色も多少反映されると思うんですが、SNSだと関係ないじゃないですか。今回のエントリー作品もXで読んだことがあったというものが多かったですし、今は男性でも女性でも楽しめる作品というのが人気を博してきているのかなって思います。

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プロフィール

伊織もえ(イオリモエ)

1月24日生まれ。コスプレイヤーとして活動し、これまで表紙を飾った雑誌は100冊以上。写真集は2019年に「ぼくともえ」、2021年に「内緒話」、2022年に「伊織もえ×僕の心のヤバイやつコラボ写真集」が発売されている。またパーソナリティを務めるラジオ番組「伊織もえのACGライブちゅう!」もinterfmで放送中。