コミックシーモア主催の「みんなが選ぶ!!電子コミック大賞2024」は、「次に来るヒット作品はこれだ!」と出版社が推薦したタイトルの中から、一般投票で大賞を選ぶマンガ賞。2024年1月の結果発表に向け、11月30日まで投票を受付中だ。
どの作品に投票したらいいか迷っている人のため、コミックナタリーでは男性部門のエントリー作品を一挙紹介。マンガ好きのコスプレイヤー・伊織もえに全20タイトルを読んでもらい、それぞれレビューしてもらった。最後には伊織が独断で選ぶ、男性部門の部門賞も発表しているのでお見逃しなく。
取材・文 / 西村萌撮影 / ヨシダヤスシ
電子書籍配信サイト・コミックシーモアが主催するマンガ賞。出版社59社が“2024年にヒットしそうな電子コミック”をそれぞれ推薦し、一般投票での得票数が最も多い作品を“みんなが選んだ2024年に最もヒットする電子コミック”として発表する。
- 投票期間
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2023年10月4日(水)~11月30日(木)
- 部門
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男性部門、女性部門、異世界部門、ラノベ部門、BL部門、TL部門
- エントリー作品数
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110作品
- 投票方法
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特設ページにアクセスし、好きな作品の「投票へ進む」ボタンを押そう。各部門1回ずつ投票できる。
そもそも「電子コミック大賞」ってどんな賞?
6つの部門を用意しているのが最大の特徴!
「電子コミック大賞」の特徴は、なんといっても6つに分かれた部門。マンガ賞は、作品の対象年齢や想定する読者の性別で部門を分けるもの、そもそも部門を設けず人気作品や優秀作品を決定するものなど、その賞の目的や狙いで部門賞の有無が決まる。「電子コミック大賞」では男性、女性、異世界、ラノベ、BL、TLの6つの部門を用意。部門を区切ることでより多くのマンガに賞を与えることができ、注目される作品の数が増える。作品の優劣やその年の人気上位作を顕彰するのではなく、「電子コミック市場を発展させる」「ネクストブレイクを出版社・作者・読者と一緒につくる」という電子書籍サイトとしてのコミックシーモアの心意気が、この部門賞の数に表れている。
最初は2部門からのスタート!トレンドを貪欲に取り入れ6部門に
第1回となる「電子コミック大賞2018」から現在の6部門を用意していたわけではない。初めは男性部門と女性部門から始まり、「電子コミック大賞2019」でBL部門とTL部門を新設。「電子コミック大賞2020」でラノベ部門を増やし、「電子コミック大賞2021」から異世界コミック部門が設けられた。人気が高まっているTL、コミカライズ作品が多くなっているラノベ、一大トレンドである異世界ものなどを貪欲に部門として取り入れる姿勢がユニークな賞でもある。マンガ界の動向を追ううえでも、自分の知らない作品を発見できるという意味でも、マンガ好きであればぜひ「電子コミック大賞」に注目してもらいたい。
「IDOL×IDOL STORY!」
得能正太郎
芳文社
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「NEW GAME!」の作者が描く、アイドルを目指す女の子たちの物語。ミミはアイドルとして活動していたが、才能がないと夢を諦め、今は別グループのアイドル・イブキを応援しながらバイトする毎日を送っていた。しかしイブキの後押しにより、ミミは再びアイドルとしての道を歩むことを決意。ミミとイブキは世界的アーティスト・音星アリアが主催するサバイバルオーディション「スーパースターシッププロジェクト」に参加し、ライバルであり仲間でもあるオーディション参加者たちとしのぎを削りながら夢に突き進む。
©得能正太郎/芳文社
これ、X(旧Twitter)でバズってましたよね! 目標の高さにズレがあると日頃の練習量も違ってきてしまうのは、現実世界でも割とあるあるなのかなと思いながら読んでました。芸能界だけじゃなく、部活とかでも「全国行くぞ!」「えー、だるーい」みたいなことってありますもんね。
オーディションの2次審査、ミミちゃんは最初50人中ビリでピンチかと思いきや……。やっぱり歌やダンスがどれだけ上手でも、プロになるなら意識の高さは大前提ですよね。意識が低いと不祥事とかにもつながってきちゃうから、ミミちゃんはそこを審査員の方に評価されたんじゃないかな。
3次審査は豪華客船で行うんですよね。豪華客船を貸し切るにはお金もかかるし、平地の合宿所のほうがいいんじゃないかな……なんて夢のないことを思ってしまいますが、そこはマンガだからということで(笑)。今後、アイドル候補生たちの人となりが深掘りされていくのが楽しみです!
「一級建築士矩子の設計思考」
鬼ノ仁
日本文芸社
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20歳で青森から上京した古川矩子(こがわかなこ)は、設計事務所に7年間勤めたのちに独立。酒好きが高じて、立呑みを併設した個人事務所を東京・亀戸に設立する。作中では事務所に舞い込む依頼を通し、一級建築士の実務が描かれていく。一級建築士と1級建築施工管理技士の資格を持つ作者が描く、プロフェッショナルな知識満載の建築マンガだ。
©鬼ノ仁/日本文芸社
作者さんが実際に建築士の資格を持っている方と聞いてびっくり! 私の知らない難しい単語がいっぱい出てきました。第1話に阪神淡路大震災の被害に遭った女性が登場しますが、建物を補強する「筋交い」の仕組みとかもすごく勉強になりました。
本編の終わりに毎回ある、設計の豆知識が書かれた「設計ノート」も読み応えありますよね。まさに建築の教材になるようなマンガ。実際の建築士さんが読んでも、建築のことを何も知らない人が読んでも楽しめるんじゃないかなと思います。
「エンドレス離婚~もしも結婚生活をやり直せたなら~」
びばる
wwwave comics
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主人公・聡は2児の父で、妻との関係も良好、家庭のために仕事に打ち込む“いい夫”だと自分のことを認識していた。ところがある日、妻の紀子に突然離婚届を突きつけられる。離婚の理由に心当たりもなく、やり直させてくれと追いすがる聡。すると怪しげな離婚弁護士・本性寺が「結婚生活をやり直せるとしたら…どうしますか?」と尋ねてくる。やり直すと聡が即答すると、1カ月前に時が戻って……。無自覚なダメ夫の聡は、自分の過ちに気づくまで何度もループを繰り返す。
©びばる/wwwave comics
これを読んでドキッとした人もいるんじゃないかなと思います(笑)。妻がお昼ごはんにお好み焼きを用意してて、あとは焼くだけっていうところまできてるのに、「今日は俺が手打ちそばを作ってあげるから、それは今度にまわしなよ」って……すごい嫌!!(笑) その後も妻の話をろくに聞かずにゲームしたり、仕事中にやむをえず電話した妻に「うるせぇな」って怒鳴ったり。浮気とかほど悪いことしてるわけではないですけど、夫婦として何年も一緒にいたら不満が積み重なりますよね。
何回目かのループでようやく離婚ルートから抜け出せそうになりますけど、今まで自分中心に生きてきたから心身ともに無理してる。その様子を見てると、円満な状態は長く続かなそうだなって思います。でも徐々に改善はしていってるので、この先どんな理由で、いつループしてしまうのかが気になります。
「オタクに優しいギャルはいない!?」
漫画:魚住さかな 原作:のりしろちゃん
コアミックス
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あまり大きな声では言えないが、女児向けアニメ「キラモン」が大好きな男子高校生・瀬尾卓也。ある日、クラスメイトのギャル2人に絡まれた瀬尾は、クールな白ギャル・天音慶のほうから自分と同じオタクの匂いを嗅ぎつける。一方で陽気な黒ギャル・伊地知琴子もオタクに偏見がないらしく、「キラモン」の話を興味津々で聞いてくれて……。“好き”を共有してくれる天音さんと“好き”を肯定してくれる伊地知さん、タイプの異なる2人のギャルにオタクの瀬尾が挟まれるラブコメディだ。
©のりしろちゃん・魚住さかな/コアミックス
よくある「オタクに優しいギャル」っていうコンテンツで描かれるのは、この伊地知さんのタイプですよね。アニメとかマンガのことは何も知らないけど、偏見なく受け入れてくれる。一方の天音さんは、クールに見えて実は自分もオタクっていうのが珍しいなと。それぞれのタイプで好きな人がわかれそうなのがいいなと思いました。
特に好きなシーンは、アニメに関して間違った情報を言った瀬尾くんに、天音さんが「初出は2話だし」って素早く訂正するところ。あとオタクって好きなもののことになるとけっこうガーっとしゃべっちゃうんですけど、伊地知さんが「ゆっくりでいいよ。ちゃんと聞いてるし」って言ってあげるところも好きです。表情が優しくって、包容力あるなと。何気ないシーンですが、伊地知さんが「うちらモテちゃって困るね~」って言うところも“最強ギャル2人感”が素敵だなと思います。
「薫る花は凛と咲く」
三香見サカ
講談社
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底辺男子校の千鳥高校と、それに隣り合う由緒正しきお嬢様校・桔梗女子。千鳥高校の2年生・紬凛太郎は、実家のケーキ屋の手伝い中に、食べることが大好きな小柄な少女・和栗薫子に出会う。薫子との時間を心地よく感じる凛太郎だが、彼女は千鳥高校を徹底的に嫌う桔梗女子の生徒で……。近くて遠い2人が織りなす学園青春物語だ。
©三香見サカ/講談社
和栗さんがあまりにもいい表情でケーキを食べるから、こっちもお腹が空いてきちゃいますね(笑)。体は小さいけど芯がしっかりしている和栗さんに、コワモテな見た目に反してけっこう卑屈な凛太郎がいろいろ気づかされるっていうのは、なんだか微笑ましい関係性だなと思いました。
見かけで判断されて、さんざん嫌な思いをしてきた凛太郎ですが、実は自分も和栗さんに対して「俺とは関わりたくないだろう」って勝手に決めつけていたんですよね。和栗さんが不良たちに「どうしてただの噂だけで人を決めつけられるんですか?」と言ったとき、それを陰で聞いていた凛太郎がハッとするのが印象的でした。
2話で2人の距離はグッと縮まりますが、ラストの描写が特に好き! 和栗さんが教室のカーテンを開けて凛太郎に大きく手を振るんですけど、その表情がめっちゃかわいいのでぜひ見てほしいです。
「金四郎の妻ですが」
漫画:迫ミサキ 原作:神楽坂淳
秋田書店
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時は江戸時代。大身旗本の箱入り娘・けいは、父から遠山金四郎という男のもとへ嫁ぐよう命じられる。父いわく彼は「将来の江戸にとって必要な男」だが、現在は武士の暮らしを捨て遊び人として過ごしているとのこと。そんな金四郎の“押しかけ女房”となるべく、けいは覚悟を決めて浅草へ。金四郎が居候する船宿で看板娘をしながらアピールすることにして……。発売から即重版が決定したという同名小説のコミカライズだ。
©神楽坂淳・迫ミサキ(秋田書店)
金四郎のちょんまげ、よく見るとちょっと曲がってるんですよね。ちょんまげってまっすぐじゃなく、少し斜めにするのが粋って聞いたことある気がします。それにしても絵が上手! みんなちょんまげだと髪型で区別できないというのもあって、顔の描き分けがしっかりされてるなと思います。
食事シーンの描写もすごく丁寧ですよね。海豆腐にイカの肝の麹漬け……ごはん系のマンガって言われても不思議じゃないくらい。そういった江戸の文化が細かく描かれているところも楽しんでいただきたいです。
「こっちむいてよ!飼育員さん!」
江戸川治
ライブコミックス
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江戸川水族館で飼育されている人魚のニーナ。人魚はかなり貴重な存在で、みんなからモテモテの毎日だったが、彼女の本命は飼育員の飛松トビ男だった。しかし彼女いない歴=年齢のトビオは恋愛ごとにかなり鈍感で……。水槽に同居するアザラシたちも見守る中、ニーナはトビオに懸命にアプローチをかける。
©江戸川治/ライブコミックス
このマンガは前にX(旧Twitter)で流れてきて、それから作者の方をフォローしてよく読んでました。1話目にサラっとしか描かれてないんですが、赤ちゃん時代のニーナがすごくかわいいんです……! 人魚は成長スピードが早いらしく、あっという間に大人になっちゃいましたが。
人間には海の生き物たちの言葉が通じないから、ニーナががんばってトビオにアプローチするのも愛おしい! かわいい見た目に反して、ニーナの攻撃力が高いのも面白いですよね。トビオが合コンに行ったとき、お刺身としてその場に現れるのも健気でふふっとなりました。ニーナとトビオの2人だけじゃなく、水槽内の恋愛模様も描かれていくのでお楽しみに。
「紫雲寺家の子供たち」
宮島礼吏
白泉社
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「彼女、お借りします」の作者が描く、家族の愛と男女の恋が入り混じる禁断ラブコメ。東京都世田谷の豪邸に暮らす紫雲寺家の7兄弟姉妹は、才色兼備で巷でもその名を轟かせている。長男の新は個性の強い5人の姉妹に振り回されながらも、家族を大切に過ごしてきた。周囲からはハーレムラブコメのようとうらやましがられても、実の姉妹に対して特別な感情を持つわけがなく「まるで皆 分かっちゃいない…」とたそがれる日々。そんなある日、父親から驚きの事実が告げられ、兄弟姉妹の運命が一変する。
©宮島礼吏/白泉社
とにかく絵がかわいい! ハーレム系マンガはいっぱいありますけど、あの「かのかり(彼女、お借りします)」の作者さんが描いてるっていうところが強いですよね。ハーレム系の王道、お姉さん系、ツインテールツンデレ、メガネ、スポーティなショートカット、片目隠れを押さえているのはさすが。私の推しは片目隠れ、五女のことのちゃんです。
序盤ではことのちゃんがお風呂で新に裸で抱きついたり、その後も妹の1人が新に「好き」と言ってましたけど、こういうハーレム系は誰と結ばれるのか本当にわからないですからね……! 私も最後まで見届けたいと思います。
「少女の檻」
室井まさね
竹書房
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舞台は日本海に面した小さな港町。ある冬の夜、極寒の海で女子高生の死体が発見される。死んでしまった宮本結那は、地元の高校では有名な“カーストトップ”の少女。容姿性格ともによく、同級生からも慕われており、殺される理由も自殺する原因も思い当たらない人気者だった。不審な死の真相を巡り、やがて学園内に不穏な空気が満ちていく。
©室井まさね/竹書房
学校の人気者の女の子が死んじゃって、その真相を突き詰めていくサスペンスものですね。自殺なのか、それとも誰かに殺されたのか……。ある子が「岬の幽霊に引っ張り込まれた」と言ってましたけど、そういったオカルト的な展開ではなさそう。神社の宮司さんが見たと言ってた、白い人影がなんらか関わってるんですかね。
死んじゃった宮本さんと一番仲がよかったお友達も気になります。ちょっと怖いぐらい宮本さんを崇拝してましたもんね。いろんな謎が複雑に絡み合っていると思うので、早く解明されてほしいです。
「正反対な君と僕」
阿賀沢紅茶
集英社
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いつも元気な女子・鈴木と、クラスメイトの物静かな男子・谷が織りなすラブコメディ。鈴木は空気を読んで行動し、たまに疲れてしまうこともあり、自分の意見をはっきり言える谷に陰ながら好意を抱いていた。しかし鈴木は周りの目が気になって、谷と普通に接することができずダル絡みばかり。ある日、鈴木が勇気を出して、一緒に帰ろうと谷を誘ってみたところ……。真逆な2人の等身大のやり取りが描かれる。
©阿賀沢紅茶/集英社
谷くんがかわいい! ネットで「彼女 会話」「会話 続ける」「夏 出掛ける」とか検索してたのを鈴木さんに見られちゃうシーン、大好きです。その前に、鈴木さんのほうも「愛される女子の特徴5選」とかの記事を読んでたんですよね。2人ともちゃんと気持ちが同じ方向に向いてるんだなって感じられて、ちょっとエモかったです。
細かいですけど、2人で観に行った映画に登場するイエティがまたかわいい。映画が終わって、「またね!」って手を振ってる姿はぜひ見てほしいです(笑)。
「隻眼・隻腕・隻脚の魔術師@COMIC」
漫画:しばの番茶 原作:すずすけ 構成:矢上裕 キャラクター原案:すみ兵
TOブックス
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魔法が浸透していないシルべ村に生まれたエインズは、弓と剣を使った鍛錬ばかりさせられていた。ところがある日、エインズは魔術によって村の仲間を失い、自らも片方の目と腕と脚をなくしてしまう。その後、エインズは森の小屋に籠って魔術を研究。外に出てみたときには2000年の時が経ち、エインズは“魔神”として崇められる存在になっていた。そうとは気づかぬ本人は、好奇心の赴くままに魔術探求の旅へと踏み出していく。
© Shibanobancha / Yu Yagami / Suzusuke
言うなれば“無自覚系最強野郎”ですね。異世界ものあるあるですけど、主人公の単なるメモ書きが時を経て、すごい本として扱われているっていう設定はけっこう好きです。こういう伝説の最強魔法使いみたいなのが登場する作品って、なかなか周りの人には本人だと気づかれない、認めてもらえないっていうパターンが多くってヤキモキしちゃうんですけど、このマンガはすぐに「あのエインズ様だ!」ってなるのがいいなと。テンポがよくって気持ちよく読めます。
「月出づる街の人々」
酢豚ゆうき
双葉社
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人間のように日常生活を送るモンスターたちが織りなすオムニバス。透明人間や狼男、ドラキュラ、メドゥーサ、ナーガ、ミイラ男、フランケンシュタインなど、さまざまなモンスターの少年少女たちが、友情、恋愛、家族について悩みながら、お互いを理解し成長していく。
©酢豚ゆうき/双葉社
私のお気に入りは、1話の「透明人間少女と狼男少年」。雨が降ったとき、1度目は狼男少年が透明人間少女に傘を渡して、自分だけ濡れて先に帰っちゃうんですけど、2度目は透明人間少女が狼男少年を抱っこして、狼男少年が傘をくわえてあげて一緒に帰るのが印象的でした。この2人の、恋愛とまでは言い切れない関係性がすごく好きです。
中学生ぐらいの年頃って、男の子より女の子のほうがませてるってよく言うじゃないですか。だからか狼男少年はあからさまに相手のことを意識してるけど、透明人間少女のほうはそれを隠しているのか、少し感情が読み取りづらいんですよね。それってどういうことなの?って気になるけど、あえて詳しく説明されないってところもこの作品の素敵なところだなと思います。
「ならずもの恋慕~想いを隠した溺愛ヤクザ~」
やまだはるか
新潮社
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死んだ母親の借金を背負い、狭いアパートで極貧生活を送る少女・つむぎ。そんな彼女は、隣人の優しい青年・善に密かに思いを寄せている。ある日、善がヤクザの幹部で、さらにはつむぎの父親も善が所属する組の組長だったことが発覚。つむぎは善から、組の若頭と結婚してくれないかと頼まれ……。善と一緒にいるために若頭との結婚を決断したつむぎと、秘密の感情を抱える善のラブロマンスが展開される。
©やまだはるか/新潮社
つむぎちゃんは若頭と結婚することになってしまいましたが、どうか善と結ばれてほしい! 善が若頭に「お前の花嫁はちゃんと僕が見張ってるよ」「絶対に逃がしたりしないから」って伝えて電話を切った後、「お前のためではないけどね」ってポツリと言うじゃないですか。つむぎに対してはひたすらに優しい善さんだけど、ちょっと愛情がいきすぎて怖さもありますよね。でも個人的に“執着系優男”は嫌いじゃないです(笑)。若頭の内海武虎も、初登場シーンで猫ちゃんを助けてあげてたからきっといい人なはず!
「ニャイト・オブ・ザ・リビングキャット」
作画:メカルーツ 原作:ホークマン
マッグガーデン
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人間を猫に変えてしまうN・Nウイルスにより、突如世界にパンデミックが発生。人類は猫に襲われ、次々と猫になってしまう。そんな中、猫に対抗するのは、大の猫好きの男・クナギ。猫を思う存分に愛でたい彼は、「必ず猫と生きていける世界が戻るまで生き延びてみせる」と立ち上がる。
©HAWKMAN/MECHA-ROOTS/MAG Garden
猫ちゃんを飼ってる身として、これはすべての猫好きに読んでほしい! 猫災害という、猫を嫌いにもなってしまいそうな状況なのに、主人公たちが猫に優しいんです。猫が顔に飛びかかってきたときも、そっと床に下ろしてあげたり、こっちに近づいてこないように猫が苦手な水を撒くシーンも、俺はなんてことをしてしまったんだ……って葛藤したり。猫好きが、猫好きのために作ったマンガという気がします。
お話としてはギャグなのに、劇画タッチなのがまたいいですよね。「ベルセルク」に猫とギャグの要素を突っ込んでみた、みたいな雰囲気を感じます(笑)。
「風魔ちゃん、抜けます!!」
横島日記
徳間書店
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高校生でボロアパートの管理人もしている男子・御宿政一が、抜け忍の少女・風魔美鈴と出会ったことから始まるラブコメディ。人里に降りてきたばかりで行く当てのない美鈴は、敷金礼金不要で即入居できるという政一のアパートに望みをかけてやって来た。切実な願いを聞き届けて美鈴を迎え入れた政一だったが、抜け忍の彼女には里からの追手が迫る。
©横島日記/徳間書店
女の子がかわいい! しかもエッチ! 美鈴ちゃんはさっきまでのんびりごはんを食べてたのに、数ページ後には露出度の高いコスチュームに着替えて顔を赤らめてる(笑)。これはもう素直に、女の子のかわいいビジュアルを楽しむ作品だなと。1話の後半でメカメカしいキャラクターが美鈴ちゃんを追って人里にやってきますけど、その中身もまた美少女だったっていうのはきっとみんな好きな展開ですよね。
女の子のキャラクターデザインも素敵ですが、バトルシーンにも力が入ってるなと思います。御宿さんも普通の男の子だから忍者同士の争いに参戦はできないけど、身を挺して美鈴ちゃんを守ってくれるのがカッコいい。
「ベー革」
クロマツテツロウ
小学館
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中学3年の夏、主人公のジローは、憧れの兄が甲子園に届かなかった姿を目の当たりにする。その後ジローは、神奈川にある高校野球最前線の強豪校・私立相模百合ヶ丘学園に入学。甲子園を目指し意気込むものの、監督を務める男の口から発せられたのは「平日の練習は1日50分」「月曜日は休み」という期待とは正反対のルール、そして「ベースボール革命」という謎の言葉で……。「ドラフトキング」「野球部に花束を」のクロマツによる新時代の高校野球マンガだ。
©クロマツテツロウ / 小学館
昔から変わらないマニュアルがあって、それを見直していくというテーマは今っぽいですよね。とにかく走って、練習時間は多ければ多いほどいいっていうスポ根ではなく、頭を使って効率的に試合に勝つ。まさにタイトル通りのベースボール革命だなと思いました。部活をやっている子たちがこれを読んだら、練習の仕方を変えなければ!と思いそうですよね。
監督がジローのことを「ああいうヤツが、甲子園に行くためには必要なピースだったりする」と言うシーンがありますが、ジローが持っていて、ほかの部員たちにはない部分って“言われたことだけをやらない”ことなのかなと。監督のことをイマイチ信じきれず、自己流でウォーミングアップしちゃって叱られるシーンもありましたが、甲子園という目標に向かって突き進んでいく熱量は素晴らしいなと思います。
「変な家」
漫画:綾野暁 原作:雨穴(飛鳥新社刊)
一迅社
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オカルト専門ライターの“私”は、正体不明の「謎の空間」が存在する家の間取り図を見せられる。建築設計士・栗原に意見を求めると、謎の空間は意図的に作られたものだと彼は指摘。謎の空間以外にも一般的ではない間取りが多々あるという栗原の言葉が気になった“私”は、その部屋について調べ始め……。原作小説は間宮祥太朗、佐藤二朗、川栄李奈をキャストに迎え実写映画化され、2024年3月に公開される。
©雨穴・綾野暁/一迅社
原作の小説が話題だったと聞きました。子供部屋に窓がないというお家があって、それはお子さんがかわいそうだっていう話かと思いきや、実はそれがトンデモ事件に関わっていたという。でも序盤を読んだだけだと、わからないことが多すぎる……! 私の夫がその家で殺されたかもしれないっていう人が3話目で現れましたけど、今後どんどん物語が広がっていくわけですよね。考察しがいがあるので、サスペンスが好きな人にはおすすめです。
「ホテル・メッツァペウラへようこそ」
福田星良
KADOKAWA
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舞台は雪と白夜とオーロラの国、フィンランドのラップランド地方。そこに2人の老紳士が営む小さなホテル・メッツァペウラがあった。ある吹雪の夜、ホテルに謎の青年・ジュンがやってくる。ジュンはどうやらワケありで、背中には大きな入れ墨があり、身寄りはなく、お金の持ち合わせもない。しかし老紳士たちはそんな彼を温かく迎え入れ、ホテルで一緒に働いてみないかと提案。新米ホテルマンとして奮闘し、人々の優しさに触れていく中で、ジュンの心も次第に和らいでいく。
©Seira Fukuta
これ、好きです! 全身刺青のワケありっぽい男の子がフィンランドのホテルに行き着いて、ぶっきらぼうなシェフと優しいホテルマンのおじさまに出会い、人の温かみや愛情を知っていくというところにほっこりします。
ごはんもそうですし、サウナが出てくるところとか、フィンランドの文化がきちんと描かれているのもいいなと思いました。昔フィンランドのお隣のスウェーデンに行ったことがあるんですが、そっちの地方ってカーテンを閉めないらしいんです。なぜかっていうと、綺麗な家を見てほしいから。この作品も、窓に注目するとカーテンを付けてないんですよ。そういった細かなこだわりも見ていて楽しいです。フィンランドって国民の幸福度がかなり高い国だと聞いたことがあるので、この作品を通して日本と考え方の違いも知れそうですよね。
「黄泉のツガイ」
荒川弘
スクウェア・エニックス
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山奥の小さな村落に住む少年・ユルは、野鳥を狩り、大自然の中で静かに暮らしていた。ユルの双子の妹・アサは、“おつとめ”を果たすため、村の奥にある牢の中で幽閉されるように過ごしている。毎日のようにアサのもとに通い、何気ない会話をするユル。ところがある日、そんな穏やかな生活を一変させる事件が起こり……。謎の存在・ツガイを軸に巻き起こるバトルを、「鋼の錬金術師」の荒川が描く。
©Hiromu Arakawa/SQUARE ENIX
「ハガレン(鋼の錬金術師)」の作者さんが描いてるって、それだけで興味を引きますよね! なんだなんだ!?っていう忙しい展開から始まって、設定もしっかり作り込まれているから、最初は理解するまでに時間がかかるかも。繰り返し読んで、回を重ねていくことで、面白さが増していくんじゃないかなと思います。
戦闘シーンはさすが「ハガレン」の作者さんという感じで、ダイナミックだからアクションものが好きな人は楽しめるはず。アサは冒頭で村を襲撃していましたけど、「兄様が生きてた」って泣いてたぐらいだから、ユルへの愛情は確かなんじゃないかなと思います。
「レンタル・マーダー~復讐のプロ、お貸しします~」
チームでんがし
作画:どでんちゃん 原作・ネーム:八重樫ひのめ
ソルマーレ編集部
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高校入学以来、いじめを受けていた真白。肉体的にも精神的にも痛めつけられた挙句、唯一の家族だった妹までも失踪してしまう。妹の失踪にいじめっ子たちが関係していると知った真白は、「レンタル・マーダー」という復讐代行業者に依頼することに。「レンタル・マーダー」から派遣されてきたスタッフ・聖花は、あらゆる手段でいじめっ子たちに容赦なく仕返ししていく。
© どでんちゃん/八重樫ひのめ/チームでんがし/シーモアコミックス
いじめっ子への制裁にSNSが使われるっていうのが今っぽい……! 家族とか住所とかの個人情報を画像から特定したり、登録者数100万人超の暴露系配信者にいじめを告発したり、リアルに起こっているようなことが描かれていますよね。復讐系のマンガとして、また新鮮に読めました。
結果発表は2024年1月頃。
果たして“みんなが選ぶ”男性部門賞はどの作品になるのか──!?
11月上旬には中間発表が行われ、各部門の暫定上位5作品が明らかになるのでお楽しみに。
プロフィール
伊織もえ(イオリモエ)
1月24日生まれ。コスプレイヤーとして活動し、これまで表紙を飾った雑誌は100冊以上。写真集は2019年に「ぼくともえ」、2021年に「内緒話」、2022年に「伊織もえ×僕の心のヤバイやつコラボ写真集」が発売されている。またパーソナリティを務めるラジオ番組「伊織もえのACGライブちゅう!」もinterfmで放送中。