マンガは偉くなり過ぎちゃいけない
──それから、電子専売レーベル発の作品も人気上位に入ってくるようになりましたね。コミックシーモアオリジナル作品や先行配信作品もヒットが出ています。
このへんは知らない作品も多くて、今回のリストを見て初めて読みました。noicomiの「鬼の花嫁」(原作:クレハ、作画:富樫じゅん)とか、「ヤンデレ魔法使いは石像の乙女しか愛せない 魔女は愛弟子の熱い口づけでとける」(原作:クレイン、マンガ:セキモリ)とかは知らなかったんですが、読んでみたら面白かったです。
──「ヤンデレ~」は竹書房の華猫レーベルですね。
ストーリーの作りは言ってしまえば古典的で、ある意味ベタなんですが、ベタってやっぱり面白いんですよね。
──魅力があるから定番、ベタになったわけですしね。
そして、読みやすい。電子発の作品って読みやすいものが多いなと思っています。ジャンプにしても、例えば「呪術廻戦」(芥見下々)は本誌連載、「SPY×FAMILY」(遠藤達哉)はジャンプ+での連載です。で、「呪術廻戦」はものすごく複雑なことをやっているじゃないですか。ある意味では、マンガ慣れしていない人には読みづらいくらい。だからか、そういう作品は本誌なんですよね。読みやすい「SPY×FAMILY」はジャンプ+。メジャー指向というか、ライトに楽しめるものほどアプリ・電子に行っている印象です。わざわざ紙で読む層は好き者だから、紙ではマニアが満足するものをやっているというような。
──なるほど。高度な作品ももちろん魅力がありますが、ライトさっていうのも重要ですよね。昔のマンガ雑誌は電車で読んで「あー、面白かった!」と網棚に置いていかれていましたが、そういうふうに気軽に楽しめる関係があった。
エンタメって偉くなりすぎてもダメだと思うんです。面白い作品がたくさん生まれているのは素晴らしいことですが、カッコつけず気軽に楽しめるものもないといけない。今回のコミックシーモアの人気上位作品のリストって、カッコつけてない感じが面白いんですよね。カッコつけるための消費ってあるじゃないですか。センスあると思われるために洋楽を聴く、みたいな。今回の作品リストには、そういう「カッコよく思われたい」という自意識が入っていない。
──電子書籍ってすごくパーソナルですよね。ディスプレイ(を通した作品)と自分しかいない。
そうです。1対1の関係。例えば、アワードにしても、「マンガ大賞」は「友だちに勧めたい作品」というコンセプトがあります。そうなると、どんなに面白くても「すんドめ」はなかなか入ってきづらい。やっぱり「頭がいいと思われたい」「センスがいいと思われたい」という気持ちも込みなのがアワードなんです。そういう意味では、「マンガ大賞」より今回のコミックシーモアの人気上位作品リストのほうが、100年後には価値があるかもしれない。2000年代初頭の日本人が何を読んでいたか、マニアに限らない読者層のリアルが見える。いいリストだと思います。
電子はマンガを世界商品にするツール
──20年前に立ち上がり、ジャンルを問わず幅広い作品を電子で読めるように開拓してきたというコミックシーモア。吉田さんはこれからの電子書籍やコミックシーモアにどんなことを期待してますか?
電子書籍、コミックシーモアの最大の功績は、マンガをあまり読まない人にもマンガを読ませたことだと思います。今はまず国内でそういうことが起こってきたわけですが、海外でも同じことを起こせると思います。実際今ジャンプ作品なんかは、電子によって海外ですごく読まれていますよね。紙の単行本と違って、海外に持っていくハードルが低い。だから、日本の輸出品としてもっと海外に持っていけると思っています。
──今海外で目立つのはやはり少年マンガというイメージですが、日本にはもっといろんな作品がありますもんね。
ある少女マンガの編集者さんが言っていたことですが、少女マンガの王道は「お金持ちのイケメンに熱烈に愛される」というものだと。ハーレクインロマンスですよね。で、それは世界中どこでもそういう物語が好きな人は必ずいる。だから、少女マンガは世界商品なんだ、と。それは少女マンガに限らないと思います。たとえば、今回のリストにも入っていた「ふたりエッチ」。白泉社さんは、マンガの海外版を出しているんですが、英語・中国語はみんなやってるからといってアフリカ向けの翻訳版も出したんです。
──またすごいところをターゲットに(笑)。
でも、それでアフリカで受けたのが「ふたりエッチ」なんですって。現地でなぜこの作品なんだって聞いたら「これはTrue Loveだ」って言われたという(笑)。嘘みたいな話ですが、マサイ族の人が片手に槍、片手にスマホを持って「ふたりエッチ」を読んでる写真を見せてもらいました。さすがにヤラセだろうと思ったんですが、違うらしいです。
──万国共通なんですね。
そう。だから、もっといろんな作品をいろんな国に輸出できるはずなんです。で、そういうことを、従来の大手出版社じゃないところがやったらどうなるんだろうというのも気になります。コミックシーモアさんにしても、従来の出版社にはないデータを持っているわけですよね。それを活かしたデータドリブンなマンガも出てくるかもしれない。
──実際、ここ数年でシーモアオリジナルのヒット作、メディアミックス作品も増えています。
これから僕らが思ってもいないような、とんでもない作品が出てくるかもしれないと楽しみにしています。
プロフィール
吉田尚記(ヨシダヒサノリ)
1975年12月12日生まれ、東京都出身。ニッポン放送のアナウンサー。マンガ、アニメ、アイドル、落語、デジタルガジェットなど多彩なジャンルに精通し、アニメイベントの司会を数多く担当している。2008年にマンガ大賞を発足。発起人として実行委員に名を連ね、運営に携わる。愛称はよっぴー。
コミックシーモアの20周年企画が目白押し!
特設サイト「20TH FESTIVAL」では、過去20年間の人気作品をまとめたヒットリストを公開中。青年・少年・女性・少女の各ジャンルから、計360作品以上が選出されている。
また特設サイト内では、コミックシーモアとユーザーの20年間の思い出エピソードを募集中。エピソードを投稿し、X(旧Twitter)でシェアした人にはコミックシーモアで使える1000ポイントが抽選でプレゼントされる。
8月16日に特設サイトでは、20周年を記念して制作された動画と、「私のシーモアstyle」というお楽しみコンテンツを公開予定。さらに今後、大量の無料キャンペーンや、コミックシーモアと関わりの深い作家陣の描き下ろし色紙の公開も予定されている。
※特設ページは6月24日(月)10:00にオープン!
コミックシーモアってどこがいいの?
20周年を迎えるコミックシーモアだが、「実はちゃんと使ったことがない」「ほかの電子書籍サイトとの違いがよくわからない」という人も多いのでは? そこで、コミックシーモアを普段から積極的に活用しているコミックナタリー編集部員の1人に話を聞いてみた。公式サイトの利用ガイドなどからは見えてきにくい、リアルな意見をぜひ参考にしてもらいたい。
①お得感がすごい
シーモアを利用するなら、公式LINEの友だち登録はマスト。2週間に1回ぐらい、合言葉を入力すると10%オフになるといった「秘密のクーポン」が送られてくるんです。新刊は割引適応外という場合もよくあるけど、「秘密のクーポン」は新刊にも使えるのがうれしいポイント。それ以外にもクーポン配布を頻繁にやってくれるので、お得感をかなり実感してます。
②BLの品揃えが圧倒的
BL好きの自分としては、豊富な品揃えがなんといっても魅力的。先行配信作品やシーモア限定特典も多いんです。特に、先行配信作品の「アンタは俺のオメガだろ」はハマりました。ドラマ化された「体感予報」や「自惚れミイラとり」とか、シーモアオリジナルのBLもしっかり面白いのがさすがです。
③レビューの充実度と信頼度
書いたらポイント還元されるという特典があるからか、レビューがかなり充実しています。しかも心なしか、熱量の高いレビューが多いんです。シーモアのトップから飛べる「レビュー」ページには高評価ランキングやレビュアーごとの投稿数ランキングがあるので、その中から好きなタイプの作品が探しやすい。個人的には、★が4.5以上あれば間違いないと思ってます。
④見やすさと使いやすさ
買った作品は「MY本棚」というページに並べられるんですが、それがとにかく見やすい。わざわざ作品単体のページに行かなくても、一覧の状態で「新刊未購入」とかの表示をしてくれるからありがたいです。作品を購入するときも、カートには入れつつ、チェックボタン1つで今は買わないという選択ができる。カートには残ってるので忘れることもなく、クーポンが出たときなどお得なタイミングで買えるので助かってます。
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