Netflix映画「シティーハンター」特集|原作を全然知らないヒコロヒーが観てみたら、キャスティング、演出、筋肉、全部楽しめた

北条司の代表作である「シティーハンター」が、同作の大ファンとして知られる鈴木亮平を主演に迎え、Netflix映画「シティーハンター」として実写化。4月25日に配信されると、Netflixの「週間グローバルTOP10(非英語映画)」で初登場1位を記録するスタートを切った。「日本の週間TOP10(映画)」では、ここまで2週連続で首位を記録。またフランス、韓国、香港、ブラジル含む世界50の国と地域でも週間TOP10入り、いまだに「週間グローバルTOP10(非英語映画)」にランクインするなど、まだまだ日本のみならず世界中で“もっこり旋風”を巻き起こしている。

1985年に連載が始まり、4度のTVアニメ化を果たしたほか、最後のTVアニメから約20年の時を経て劇場アニメが制作されるなど、長年愛されてきた「シティーハンター」。日本では初の実写化となるNetflix映画「シティーハンター」では、裏社会でのトラブル処理を請け負う冴羽獠が、相棒・槇村秀幸の死の真相をめぐり、槇村の妹・香と出会う“はじまりの物語”がオリジナルストーリーで描かれる。

本作の配信を記念して、ナタリーで全3回の特集を展開中。ラストを飾るコミックナタリーでは、「シティーハンター」の名前やキャラクターは知っているけど……というライト層を代表して、芸人のヒコロヒーに映画を観てもらった。「シティーハンター」を再放送のアニメで、なんとなくしか観たことがないというヒコロヒー。「原作を知らなくても十分に楽しめる」と太鼓判を押してくれた彼女が、キャスティング、演技、演出、全部が噛み合っていたと唸る本作の魅力を語ってくれた。

取材・文 / ナカニシキュウ撮影 / 入江達也

Netflix映画「シティーハンター」予告編公開中

「スパイダーマン」のようなノリで楽しめる

──ヒコロヒーさんは「シティーハンター」という作品について、事前にどの程度ご存じでしたか?

小さいときになんとなく再放送で観たアニメの記憶くらいしかなくて、まあ「Get Wild」の印象が強いですよね。どういう設定のお話なのかとか、詳しいことはあんまり知らなかったです。

ヒコロヒー

ヒコロヒー

──ぼんやりでいいんですけど、どんなイメージがありました?

今回の映画にも出てきた、新宿駅の伝言板?とかのイメージはあったので、あれが映画の冒頭でバーンと出てきたときは「おお」とはなりましたね。あとはなんか大きめのジャケットを着たお姉ちゃんと、スケベだけどやるときはやる男の人が出てくるアニメ、というくらいのイメージしかなかったです。当時私たちの世代で流行っていた「ドラゴンボール」とか「ONE PIECE」とかとはまたタッチの違う、ちょっとエッチな匂いのするアニメだなっていう印象でしたね。

Netflix映画「シティーハンター」より。

Netflix映画「シティーハンター」より。

──今挙がったタイトルはすべて週刊少年ジャンプの連載作ですけども、確かにその中だと「シティーハンター」はちょっと異色ではありましたよね。まず主人公が少年ではないですし。

そうですね、なんか“大人が読むもの”みたいな感覚はありました。絵柄的にも、弘兼憲史さんの「人間交差点」とか「黄昏流星群」とかと同列のイメージというか……だから今回、「シティーハンター」がこんなにコメディ要素の多い作品なんだというのがちょっと意外でしたね。もっとシリアスなイメージだったので。

──なるほど。おっしゃるようなイメージを持たれている方は意外と多いのかもしれません。

と思いますね。楽しい感じで観られるところがたくさんあったので、私と同じようにあまり原作に詳しくない人が観たら新鮮に映るかもしれない。どんな年代でも、原作を知っていようがいまいが、エンタテインメントとして誰しもが楽しめる作品だなという感じがしました。

ヒコロヒー

ヒコロヒー

──ずっとファンだった人のための映画と思われがちな面もある気がしますが、全然そんなことはないと。

ないですね。あれですよ、アメリカの「スパイダーマン」とか、ああいうノリで楽しめる人が多いんじゃないかなと思います。

ある意味で日本映画っぽくない

──では改めまして、今回のNetflix映画「シティーハンター」をご覧になった率直なご感想を聞かせてください。

いや、面白かったですね。本当に面白かったです。すごく有名な作品なので、そんなに知らない私でさえなんとなくイメージを持っているくらい世間的なイメージがある程度固まっているじゃないですか。その共通理解をうまく利用しているところもあれば、裏切っているところもあったりして。

ヒコロヒー

ヒコロヒー

ヒコロヒー

ヒコロヒー

──なるほど。

なんて言うんですかね?「なんでそんなことなんねん?」とか「そんなわけないやろ!」っていう楽しみ方ができる一方で、それによって安っぽくなっているわけでもないので、それが映画の面白い要素としてうまく生かされているなあという感じでした。

──例えばどういうところにそれを感じました?

アクションのシーンですよね。「獠、ちょっと強すぎやろ」「強すぎて笑てまう」みたいなとこあったんですよ。

Netflix映画「シティーハンター」より。

Netflix映画「シティーハンター」より。

──確かに、銃撃戦での正確すぎる射撃なんかは「そんなわけないだろ」系の痛快さがありました。

獠と香が一画面に収まるキメのシーンみたいなのがいっぱいありましたよね。あれとか、一歩間違えたらめちゃくちゃクサくなりかねないというか、キザすぎて「なんじゃこりゃ?」ってなってた可能性もあると思うんです。それをすごくナチュラルに、1個1個カッコよく決めていたのがすごいなと思いましたね。

Netflix映画「シティーハンター」より。

Netflix映画「シティーハンター」より。

──それは面白い見方ですね。

たぶんですけど、役者さんが違ったり、監督さんの感性とかがちょっとでもズレてたら成立しないんじゃないかという感じがしましたねえ。全部が噛み合わないとああはならないと思います。流れるように、当たり前のようにカッコよく行われるというのがある意味ちょっと日本映画っぽくないというか。

──なるほど。確かにおっしゃる通り、直球の“カッコいい”は日本人が苦手としているイメージは個人的にもあります。“カッコつけてるのが逆に面白い”みたいな、ひねった描き方のほうが日本的ではあるような気がしますね。

カッコいいシーンがあくまでナチュラル、というところがすごく興味深かったです。

Netflix映画「シティーハンター」より。

Netflix映画「シティーハンター」より。

──これは勝手なイメージなんですが、個人的にヒコロヒーさんは“新宿が似合う人”という印象がありまして……。

あら、勝手なイメージですねえ。

──はい(笑)。新宿が舞台というところで何か思い入れる部分はありますか?

思い入れということもないですけど、単純に観ていてすごく楽しかったですね。新宿はお笑いの劇場もいっぱいありますし、なじみのある街なので……しかも昭和の新宿を再現する感じじゃなくて、ちゃんと現代の新宿がそのまま舞台になっていたので、今の新宿を知る者として面白く観ることができました。現代日本の街の風景を味わえる映像にもなっていたりするので、見つかれば海外でも人気出そうな感じがしましたね。

Netflix映画「シティーハンター」より。

Netflix映画「シティーハンター」より。

──先ほども少しお話に出ましたが、シリアスとコメディの両面に突き抜けているのが「シティーハンター」の大きな魅力のひとつになっています。コメディパートの印象はいかがでしたか?

コメディパートではとにかく冴羽獠役の鈴木亮平さんがふざけ倒していて、「なんて思い切りのいい方なんだろう」という感じでしたけど……ただちょっと、「鈴木さんがいいカラダすぎて全然笑えない」というのがありましたね。

──裸踊りのシーンなどですね。実際、鈴木さんは“細身でセクシーな男性”という原作のイメージを意識して体を絞られたそうです。

確かに、輪郭とかすごいシャープでしたもんね。だから鈴木さんがどんなにふざけたりボケたりしていても「しかし、ええカラダやしなあ……」って思ってしまって。もちろんそれだけじゃなくて、掛け合いの楽しいところとかもたくさんありましたけど、それがけっこう印象に残ってますね。

Netflix映画「シティーハンター」より。

Netflix映画「シティーハンター」より。