花とゆめ(白泉社)で連載されている、月永遠子「シンデレラの義理姉に転生したけどふたりの王子に溺愛されています」2巻が、7月19日に発売される。同作は憎まれ役であるシンデレラの義理姉に転生した主人公・アトラが、なぜか2人の王子に溺愛されることとなる転生ラブファンタジー。かわいがっていた妹のシンデレラが、実は敵国の王子様だったという予想外な展開からスタートし、1巻の発売後すぐに重版がかかるなど着々とファンを増やしている。
コミックナタリーでは2巻の発売を記念し、マンガやアニメ好きで知られるぼる塾・田辺智加にインタビューを依頼。「シンデレラの義理姉に転生したけどふたりの王子に溺愛されています」を読んだ率直な感想を聞いた。“強い女の子”に惹かれると言う田辺が歓喜したシーンとは? 主人公のアトラを溺愛する2人の王子、どちらを選ぶのか? あんり、きりやはるか、酒寄希望というぼる塾のメンバーに触れながらも、作品についてたっぷりと語ってもらった。
取材・文 / 熊瀬哲子撮影 / 武田真和
ヘアメイク / 清香(ごほうび)
ブラウス / PUNYUS(WEGO プレスルーム)その他 / スタイリスト私物
「シンデレラの義理姉に転生したけどふたりの王子に溺愛されています」作品紹介
酒寄さんと出会って私のマンガライフが始まった
──田辺さんには先日公開された、花とゆめ創刊50周年の特集記事でもコメントをご寄稿いただきました(参照:花とゆめ創刊50周年特集 | 石田亜佑美、火将ロシエル、Cocomi、獅子堂あかり(にじさんじ)、鈴木拡樹、Daoko、田辺智加(ぼる塾)、夏色まつり(ホロライブ)、花澤香菜、吉田尚記の「花ゆめこの一冊」は?)。コミックナタリーにインタビューでご出演いただくのは初めてということで、まずは田辺さんのマンガ遍歴から伺っていけたらと思います。田辺さんはどんなマンガを読んで育ってこられたんですか? 初めて買ったマンガ、とかはなかなか思い出せないかもしれないですが……。
それが覚えているんですよ。初めて買ったマンガは「ちびまる子ちゃん」ですね。
──田辺さんの「ちびまる子ちゃん」愛は、ぼる塾のYouTubeチャンネル内のラジオ企画「田辺の和室」でも、たびたび酒寄さんと語られていますよね(「田辺の和室」第7回では田辺さんと酒寄さんによるお笑いコンビ・猫塾の結成と「ちびまる子ちゃん」との深い関わりが明かされている)。
あらあら、すみません(笑)。「ちびまる子ちゃん」は初めて本屋さんで、しかも自分のお小遣いで買ったというところがポイントで。母と本屋さんに行ったときに何を買おうか迷っていたら、母から「『ちびまる子ちゃん』が面白いよ」と勧められて、読んでみたらまんまとハマっちゃいまして。まるちゃんに出会って、幼いながらに「こんな生き方でいいんだ」って思ったんですよね。幼いときに「ちびまる子ちゃん」に出会っているかそうでないかで、人生が変わっていたんじゃないかとすら思っています。
──田辺さんの人生観を構築してくれた作品なんですね。田辺さんの口調も、まるちゃんに影響を受けていると聞きました。
そうなんです。自分なりにまる子のマネをしていたらこうなっちゃって(笑)。よく「しゃべり方に特徴があるね」と言われるんですけど、まる子の影響だと思っています。
──ほかにもこれまでの人生の中で、印象に残っているマンガはありますか?
私は自分でマンガを見つけるのが下手くそで、友達からの勧めで読むことが多いんです。「動物のお医者さん」は酒寄さんにオススメしてもらって読みました。動物たちがしゃべっているわけではないけど、話しかけてくるというか……あの世界観にすごく癒やされて。私は動物が苦手なんですけど、動物のマンガはけっこう好きなんです。「バケツでごはん」とかも読みますし。
──酒寄さんはYouTubeでも田辺さんと好きなマンガの話をしていたり、普段からスケラッコさんのTシャツを着ていたり、マンガ好きの印象があります。
はい。酒寄さんと出会ってから私のマンガライフが始まった気がします。酒寄さんは幅広くマンガを読んでいるんですけど「田辺さん、これ好きだと思うよ」って厳選して私にオススメしてくれるんです。あとは「DRAGON BALL」も好きですね。
──それこそ「DRAGON BALL」も、「もし田辺さんと酒寄さんと『DRAGON BALL』のキャラクターでダブルデートをしたら?」なんて話を「田辺の和室」でしていましたよね(笑)。
そうですね(笑)。「DRAGON BALL」は子供の頃と、大人になった今とで、読んだときの感じ方が違うんですよね。誰に感情移入するかっていう部分も変わってきて、私はずっと悟空が最強だと思っていたんですけど、大人になるにつれてベジータ、ピッコロさん……と感情移入するキャラクターに変化があって。同じ作品を読んでいるのに、まったく違った世界に感じるようになりました。あとは「美少女戦士セーラームーン」や「ふしぎ遊戯」も好きでしたし、恋愛ものだと「君に届け」とか「花ざかりの君たちへ」も読んでいました。「BANANA FISH」と「ぼくらの」はつらかったなあ……。最近は「おいピータン!!」を読みました。それと、思春期にハマったのは、やっぱり「っポイ!」ですね。
──名作ですね。
あれは名作ですよね。ドラマもやっていて、山P(山下智久)と相葉(雅紀)くんが出ていたんです。私はドラマから入って、マンガも読むようになって。ちょっとカッコよすぎて「あんなカッコいい中学3年生いるの!?」って思いながらハマってました。恋愛ものの中でも一番考えさせられた作品だと思います。女の子は雛姫と真、どっちも好きだったけど、私は真派でした。強い女の子に憧れている部分があったのかもしれないです。
思わず「イヤーッ!」と歓喜したシーン
──それで言うと、「シンデレラの義理姉に転生したけどふたりの王子に溺愛されています」(以下「シンデレラの義理姉」)の主人公であるアトラも、強い女の子ですよね。
そう! 強いですよね。私は誰かに守られている女の子よりも、強い女の子が好きなんです。それこそ「美少女戦士セーラームーン」に出てくるのも、強い女の子じゃないですか。もし、これでアトラが2人の男子に守られているだけの女の子だったら、たぶん嫌でした。「こいつ! 転生してこんないい思いばっかりして!」って……嫉妬ですね(笑)。
──(笑)。
でも、2巻でアトラがジークヴァルトに「守られるより守る側でいたい」と話して、ジークヴァルトも「守られるより守る側でいたいよ アトラと一緒だ」と返すシーンがあるじゃないですか。あそこは「イヤーッ!(興奮)」ってなりましたね。あそこ、めちゃめちゃ好きなんですよ!
──2人の芯の強さと、相手に対する確かな思いを感じるシーンでした。
いや、ホントに。あのシーン、私めちゃくちゃ好きで! 転生ものが流行ってるっていうのは知ってたんですけど、実はちゃんと読んだことがなくて、今回が“初転生”だったんです。しかもこの作品は、展開がすごくないですか?
──第1話の時点で「あっ、そうなるんだ?」と予想外な方向にストーリーが進んでいきますよね。
そうなんですよ。まずこういうタイトルが長い作品って、勝手な偏見で、ここに内容が全部書いてあるから展開が読めるって思っていたんですよ。そしたら1巻で「あれ?」ってなって、2巻で「あら!」っとなった(笑)。シンデレラがただの義理の妹でなく、実は敵国の王子だったのは、びっくりしました。それに、ただのラッキーでヒロインが愛されるのかと思っていたら、そうではなくてアトラがすごくがんばっている。勝手に「転生ものはこういう物語だ」って思い込んでいた展開とは全然違う“いい裏切り”があって。読んでいてすごく楽しかったです。あと何よりも絵がかわいいですよね。(単行本をめくりながら)あら~。もう本当にめちゃくちゃ理想のキラキラじゃないですか、みんな!
──少女マンガに求めている、「こういう世界に憧れるなあ」っていう理想のキラキラですよね。
そう。アトラもシンデレラも重さを背負っているんですけど、読んでいて苦しくなりすぎないというか。それは主人公のアトラの強さもあるからこそなんですけど、シリアスな展開でも、つらいだけじゃないのがいいですよね。
田辺さん、2人の男の間で揺れる
──アトラの前世の世界では伝染病が流行して社会情勢が悪化したという、今の時代ではあまり他人事とは思えない展開が描かれていて少しドキッとする部分もありながら、本編のコミカルな描写やアトラの頼もしい姿のおかげで、安心して読むことができますよね。
そうなんですよ。いや、だからこれ……どっちにしよう……って。
──どっちというのは、シンデレラとジークヴァルト、どちらの王子を選ぼうかと? 田辺さんはどちら派ですか?
私はやっぱり……(悩みながら)ジークヴァルトです。報われてほしいなって。シンデレラのほうは、ちょっと、闇があるので……。
──シンデレラはアトラに執着心を見せる、少しヤンデレ気質のキャラクターですよね。
でも、ヤンデレも嫌いではないんですよ。なんだかんだシンデレラはずっとアトラのことを見てきていたわけですし。……うーん。でも、独占欲が強いじゃないですか。
──はい。
……でも、それくらい愛されたいですよね……。
──(笑)。わかります、わかります。あれだけ思ってくれているわけだし、「戦争がない国で2人で幸せに暮らそう」と言ってくれるなら、そのほうがいいかなと思っちゃいますよね。
それに、自分がずっと義理の妹だって思っていた子がこんなにイケメンだったら、ラッキーですよね。
──ラッキーですね(笑)。でも動揺はしないですか? 今まで妹だと思っていたのに、突然男性の姿で眼の前に現れて。
確かにずっと妹だと思っていた子を、突然男の子として見れるかしら。でもずっと一緒に暮らしていて、自分のことを知り尽くしているから、楽ですよね。「だってもうあんた、私のこと知ってるでしょ」って。
──自分のことを1から説明しなくていいのは楽ですね(笑)。
人と1からの関係を築くのが年々しんどくなってきてるので……。
──年齢を重ねるたびにしんどくなってきますよね、めちゃくちゃわかります(笑)。
しかも私、年下も好きだし、金髪に弱いんですよ。「花ざかりの君たちへ」だったら中津が好きだし、「黒子のバスケ」だったら黄瀬くんが好きで。だから外見のタイプは正直なところシンデレラなんですけど、恋人がいたとしても思ってくれるという、ジークヴァルトの健気さにも惹かれるんですよね。
──ピュアなジークヴァルトか、ヤンデレなシンデレラか、という選択になってきますね。
ピュアかヤンデレか……。ヤンデレにも興味はあるんですよね。でもヤンデレは怖いな、気持ちが持っていかれそうで嫌だな。
──マインドがそっちに引っ張られるんじゃないかと(笑)。でもシンデレラも幼い頃に大きなストレスを感じて、声を失うほどの精神的な苦痛があったことを考えると、支えてあげたくなる気もします。
確かにそこがあった! そうですよね、いろいろあったからこそシンデレラはヤンデレ化してしまったわけで。ああ、難しいなこれは。……えっ、これって、今私はジークヴァルト派ですけど、シンデレラが当て馬だったら、それはそれで嫌です。つらいです。
──2巻の時点で、アトラはジークヴァルトに惹かれているような描写があります。
そうなんですよね! もしかしてジークヴァルトに惹かれているのかしら、と思うと……。私、三角関係ものでも、報われないほうの男の子を好きになっちゃうんですよ、だから……。ああダメだ、言葉にしたら(どっち派なのか)だんだんわからなくなってきた(笑)。
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田辺さんからアトラへ「あんた、こっちでもうまくやれるよ」