コミックナタリー PowerPush - 映画「マン・オブ・スティール」
ゆうきまさみと観た「新しいスーパーマン」はドカン!と飛んで迫力重視、息もつかせぬ怒濤の展開
アメコミヒーロー、スーパーマンの新たな映画「マン・オブ・スティール」が8月30日に公開される。脚本・製作を手がけるのは、「ダークナイト」で斬新なバットマン像を提示してみせたクリストファー・ノーラン。監督は走るゾンビで映画ファンの度肝を抜いた「ドーン・オブ・ザ・デッド」のザック・スナイダーだ。
ナタリーでは公開に先駆け、この映画の連続特集を展開していく。第1弾として「究極超人あ~る」「機動警察パトレイバー」でおなじみ、マンガ家ゆうきまさみといち早く試写を体験し、スーパーマンへの思い入れや、新しいスーパーマン像への感想を語ってもらった。
取材・文/唐木元 構成/岸野恵加
「スーパーマン」を観てなかったら、「バーディー」は描いてなかった
──今回ゆうきさんにお声がけしたのは、去年の12月にTwitterで「『スーパーマン』を観てなかったら、『鉄腕バーディー』みたいな漫画は描いてなかった」とおっしゃっていましたよね、あれを覚えておりまして。
あれね。うん、本音ですよ。クリストファー・リーヴ(が主演)の「スーパーマン」にはそれくらい影響を受けています。1978年から4作公開された実写映画のシリーズ、中でも1と2が大好きなんで。
──やっぱり映画なんですね。マンガ家だからアメコミを読んでいたというわけではなく。
アメコミでは読んでなかったですね。そもそも小学生の時にやってたTVシリーズの記憶で、「スーパーマンって、割とダサいんじゃない?」っていう印象を抱いていたんです。それがクリストファー・リーヴの「スーパーマン」を見てもう、ビビッときて。「あー、こういうの、マンガで描きたい!」って思ったんですよね。
──最初のTVシリーズはダサかったですか?
割とおじさんっぽい人が飛んでましたよね(笑)。「空を見ろ! あれはなんだ! 鳥だ! 飛行機だ! いや、スーパーマンだ!」って有名な決め台詞のシリーズです。その頃は日本の特撮ドラマなんてほとんどなくて、アメリカのドラマばっかりTVでやってました。空を飛ぶヒーローが国内で流れるのはあれが初めてだったんじゃないですか。
──いまでこそヒーローは軒並み空を飛びますけど、当時はそれ自体すごいことだったんでしょうね。
そうだと思います。「まぼろし探偵」みたいな、バイクに乗るヒーローは連綿と受け継がれて、月光仮面や、後の仮面ライダーとかに繋がったんだと思うんです。そこにスーパーマンとかアメリカの空飛ぶヒーローが入ってきて、日本でも「七色仮面」とか「ナショナルキッド」とかが生まれていったのかな。 僕は研究者じゃないから、断定できませんけど。
肉弾戦の気持ちよさに触発された
──さきほどおっしゃった「あー、こういうの、マンガで描きたい!」の「こういうの」というのは、具体的には何を指しているんですか。
それはもう、徹底的に肉弾戦をやってしまえ! ということですよ。
──確かにスーパーマンはバズーカ砲を撃ったりしない。何か原理原則として据えられてるんでしょうか。
そうなんじゃないですか? 目から怪光線は出しますけど、そのくらいです。だから「バーディー」でも飛び道具は使わない、やりたくないというのがあったんですよね。ものすごい怪力の者同士が、道具なしでぶつかり合って戦う様子、その気持ちよさを描いてみたかった。
──肉弾戦の気持ちよさっていうのは、どういうところに宿るんでしょうか。
何と言えばいいかな……。「筋肉の躍動感」なんですけど、実は僕は格闘技にはあまり興味がなくてですね、バーディーのアクション的にはフィギュアスケートとか、体操とかの要素を好んで入れてます。つまり技術的にどう倒すかということにはあまりこだわらないで、派手で大きな肉体表現をやりたかったのかな。それに格闘技っぽいことを付け焼刃で描いてもその道のマニアから文句が来ますから(笑)、だったらハチャメチャでデタラメで力まかせな格闘を描いたほうがいいかなと。
──確かにバーディーみたいな馬鹿力の持ち主には、格闘技のリアルな型は合わないかもしれないですね。
そうですね。さすがにやらないけど、ビルに投げつけられたら人型に穴が空くくらいがいいんですよ(笑)。スーパーマンの爽快さっていうのも、実はそういうデタラメなところにあるんじゃないかなあ。クルマ持ち上げてぶん投げたり、すごい距離吹っ飛ばされたり。
- 映画「マン・オブ・スティール」2013年8月30日(金)全国ロードショー
- 映画「マン・オブ・スティール」
あなたは知っているだろうか。アメコミ史上最高のヒーローを。
すべての戦うキャラクターの中で、圧倒的な人気を誇り続ける不動の男を。
──それこそが、スーパーマンだ。ヒーローと名のつく男たちは大勢いても、ナンバーワンは、世界にスーパーマンしかいない!
そんな最強ヒーローの誕生秘話が、この夏、初めて明かされる! これまで一度も描かれることのなかった核心のストーリー。新たなるスーパーマンの物語が、いよいよここからスタートする──!
脚本・製作:クリストファー・ノーラン(「インセプション」「ダークナイト」シリーズ)
監督:ザック・スナイダー(「300<スリーハンドレッド>」)
キャスト:ヘンリー・カビル、エイミー・アダムス、ローレンス・フィッシュバーン、ケビン・コスナー、ダイアン・レイン、ラッセル・クロウ
ゆうきまさみ
1957年12月19日北海道生まれ。1980年、月刊OUT(みのり書房)に掲載された「ざ・ライバル」にてデビュー。同誌での挿絵カットなどを経て、 1984年、週刊少年サンデー増刊号(小学館)に掲載された「きまぐれサイキック」で少年誌へと進出。以後、1988年に「究極超人あ~る」で第19回星雲賞マンガ部門受賞、1990年に「機動警察パトレイバー」で第36回小学館漫画賞受賞、1994年には「じゃじゃ馬グルーミン★UP!」と立て続けにヒット作を輩出する。また1985年から月刊ニュータイプ(角川書店)にて連載中であるイラストエッセイ「ゆうきまさみのはてしない物語」などで、ストーリー作品とは違う側面も見せている。2012年には、1980年代より執筆が続けられていたシリーズ「鉄腕バーディー」を完結させた。
2013年8月15日更新