「ブギーポップは笑わない」悠木碧&大西沙織|“すべてに意図がある”現場

凪は思っていたよりもずっとずっと芯の強い子だった

──悠木さんから見た大西さんの凪はいかがでしたか。

悠木 第1話はブギーポップのセリフが多かったけど、その先は凪が大活躍なんです。実は私、オーディションでブギーポップと凪と、あと末真も受けてるんですよ。その中で私は凪が一番わからなかった。難しいんですよね。だから大西ちゃんの凪を見て、「ああ、なるほど! すごい!」って思ったんです。これは私にはできない調合の仕方だなと。大西ちゃんの根っこの“いい奴感”がちゃんと出ているというか。

霧間凪は「炎の魔女」と呼ばれる女子高生。“正義の味方”として活動し、高い戦闘能力を持つ。

大西 恥ずかしい(笑)。本当ですか。

悠木 凪って、根はいい人なんだろうなっていう感じがちゃんと出てないといけないキャラだと思うんです。でも「ブギーポップ」のストーリーの性質上、誰が悪者か、何がどう作用しているのかわからないミステリーな空気が漂う感じもあるから、大西ちゃんの演技はなるほどなと思ったんですよね。少女の声なんだけど、大人びても聞こえるし、男の子にも女の子にも聞こえる。ブギーポップもそういう要素はあるけど、でも圧倒的に凪のほうが人間性が高いんですよ。入っている成分は一緒なのに、その配合が違うというか。

大西 おお、おしゃれな例え! 確かに凪って自分のことを多く語っているキャラクターではないし、原作では地の文で細かい表情は説明されているけど、アニメの台本では小説ほど詳しくは落とし込めないじゃないですか。だから「この子はどういう顔で、どういうことを思ってこのセリフをしゃべってるんだろう」っていうのは、台本を素読みしただけでは理解しづらいなって思いました。自分なりに凪の行動の理由とかを裏付けしていかないと無表情になっちゃう。

──凪の役作りにおいては、どのような指示があったんでしょう。

大西沙織

大西 凪って口調だけ見ると男っぽいのでどうしてもそっちに引っ張られちゃって、ぶっきらぼうで男の子感のある演技をしていたんですけど、「凪はそういう言葉遣いだけどちゃんとお姉さんっぽい、女の人らしさは出したい」とディレクションしていただいて。あと演じていて、自分の中で最初に思い描いていた凪像とズレがあったことに気が付いて。凪は正義の女なので、情に厚いっていう部分は合致してたんですけど、でも私が思っていたよりも、ずっとずっと芯の強い子だったんです。何かアクシデントがあっても、強いとはいえ1人の高校生の女の子なので、ちょっと弱い面を見せるだろうなと思ってやっていたんですけど、「そこも毅然としていてください。もっとダメージ受けていない感じで大丈夫です」とディレクションをいただいて。凪は普通の人間だけど、高校生ではありえないくらいの身体能力や意志の強さ、情報収集能力を持っているので、ブギーポップとはまた違う意味で物語のキーパーソンになると思います。

──おふたりは、ブギーポップと凪はどういう関係だと思われますか?

大西 目指しているところは似てるんだけど、行動パターンは違って、お互い馴れ合わないけど信頼してる、みたいな?

悠木 そうそう、お互いの仕事の腕はちょっと信頼してる。たぶん主義と手法は違うんですけど、ゴールは一緒っていう関係なんだと思います。まだ私たちも3話までしか観てないですけど、それこそちょっとしゃべるシーンもあったりして。

大西 私、3話の最後の2人の会話、すごく好きです! 2人の関係性がすごくいい。

悠木 わかるー! いいよね。素敵。

実は会話のテンポがすごくゆっくりに作られている

──放送を楽しみに待ちたいと思います。ほかにも夏目真悟監督から指示や説明などを受けたことがあれば教えてください。

悠木 誰が犯人なのか、何が悪いのかわからない状態なのがこの作品にあるイメージだというのは、最初に説明がありました。ちょっとホラーっぽい空気を出すために、実は会話のテンポがすごくゆっくりに作られているんです。そのゆっくりなテンポにどれだけ呼吸を合わせていけるのか、心拍を近づけていけるのか考えていこうともお話がありました。

大西 ブギーポップと竹田が一番大変そうだった!

第1話は、屋上でのブギーポップと竹田の会話シーンがメインで展開される。

悠木 そう、ブギーポップと竹田の回の第1話が、一番文字量が多いんですよ。アクションもほとんどなく会話劇なので、ブギーポップと竹田の芝居のテンポで画が動いているように1話を見せないといけない。下手すると1話で(視聴者に、継続しての視聴を)切られるんじゃないかってすごくドキドキして。画は超綺麗で、世界観もすごくいいんですけど、どうしても屋上でしゃべってるシーンばかりになってくる。しゃべりを聴かせるふうに演技しないといけないから「これは腕の見せどころだけど、ちょっと緊張するな」と(笑)。しかも画が完成している分、それに合わせて芝居しないといけないので尺がけっこう厳しくて。でも竹田(役の小林千晃)がナイスフォローを入れてくれて。“全日本竹田ありがとう連盟”です(笑)。

大西沙織

大西 ブギーポップのしゃべり方って抑揚がついていて特徴的なので、それが効いているというか。2人どちらにも表情がないしゃべり方だったら、ツルツルツルっと1話が終わっちゃうと思うんですけど、ブギーポップが不思議な節回しでしゃべっていて、それを受ける竹田が普通の話し方をしているという、2人のバランスがすごく心地よくて。私は聴いてるだけなので(笑)、「これは楽しいぞ」と思っていました。

悠木 よかった、よかったよー。でも実際、すごく楽しくて。普段会話のお芝居をするときってテニスみたいな印象でパンパンパンと球を返していくんですけど、今回は本当にスローでテニスをするんです。球がめちゃくちゃ見える状態で打つ、球筋も考えて打つ、みたいな。でもたまにテンポが加速するところもあったりして。それがこの子のリズムなんだな、とブギーポップを捉えていたんですけど。1話でこのやり取りをやれたことによって、後半のブギーポップにも相当活かせていると思います。

大西 私は今回、夏目監督と初めてご一緒させていただいて。最初台本とリハV(リハーサルをするための映像)をもらったときに、全部の登場人物に声をあてようと思ってやってみたんです。そしたらすごくスローテンポで。ボールドという、どのキャラクターがしゃべっているかの指示があるんですが、役者がそのテンポに違和感を覚えるときって、「なんでこうなってるんだろう」ってすごく悩むんです。私はそんな謎めいた状態で1話のアフレコ現場に行ったんですけど、そしたら音響監督さんが真っ先に監督の意図を説明してくれて。それはさっき碧さんが説明してくれたようなことだったんですけど。ちゃんと意図があるテンポなんだなっていうのが最初に入ってきたので、すごく信頼できる、納得できる現場だなと思ったんです。

悠木碧

悠木 私は夏目監督と3作品くらいご一緒させていただいているんですけど、毎回作るもののテンポが全然違う方で。

──悠木さんは夏目監督の「ワンパンマン」に戦慄のタツマキ役で、「ACCA13区監察課」にロッタ役で出演されていましたね。

悠木 「ワンパンマン」はギャグとアクションだし、「ACCA」は会話劇と芝居で見せていって、いかにおしゃれにカットワークするか、という作品だったんですけど。今回はミステリーとホラーと青春に寄っていて、「あ、今回はテンポで見せるんだな。すごい」と思いました。信頼できる監督さんだなって思います。

アニメ「ブギーポップは笑わない」
2019年1月4日(金)より、AT-X、TOKYO MX、テレビ愛知、KBS京都、サンテレビ、BS11にて順次放送開始
※放送情報は変更になる場合あり。
アニメ「ブギーポップは笑わない」
スタッフ

原作:上遠野浩平(電撃文庫刊)

原作イラスト:緒方剛志

監督:夏目真悟

シリーズ構成・脚本:鈴木智尋

キャラクターデザイン:澤田英彦

音楽:牛尾憲輔

アニメーション制作:マッドハウス

製作:ブギーポップは笑わない製作委員会

キャスト

ブギーポップ/宮下藤花:悠木碧

霧間凪:大西沙織

末真和子:近藤玲奈

竹田啓司:小林千晃

新刻敬:下地紫野

紙木城直子:諏訪彩花

早乙女正美:榎木淳弥

田中志郎:市川蒼

百合原美奈子:竹達彩奈

エコーズ:宮田幸季

谷口正樹:八代拓

織機綺:市ノ瀬加那

飛鳥井仁:細谷佳正

安能慎二郎:長谷川芳明

衣川琴絵:阿澄佳奈

スプーキーE:上田燿司

水乃星透子:花澤香菜

悠木碧(ユウキアオイ)
千葉県出身、3月27日生まれ。主な出演作に「魔法少女まどか☆マギカ」(鹿目まどか役)、「幼女戦記」(ターニャ・デグレチャフ役)、「ACCA13区監察課」(ロッタ・オータス役)、「ワンパンマン」(戦慄のタツマキ役)、「ベルゼブブ嬢のお気に召すまま。」(ダンタリオン役)など。
大西沙織(オオニシサオリ)
千葉県出身、8月6日生まれ。主な出演作に「ベルゼブブ嬢のお気に召すまま。」(ベルゼブブ役)、「刀使の巫女」(十条姫和役)、「ブギーポップは笑わない」(霧間凪役)、「こみっくがーるず」(色川琉姫役)など。

2019年1月10日更新