上遠野浩平の小説「ブギーポップは笑わない」が、2019年1月にアニメ化される。1998年にシリーズ第1作目が発売されてから、今年で20周年を迎える本作は、「ブギーポップ以降 ブギーポップ以前」という言葉を生み出したほどライトノベル界を変えた作品とも評され、同作に影響を受けたと公言するクリエイターも少なくない。そんな原作を新たにアニメ化するのは、「ワンパンマン」「ACCA13区監察課」の夏目真悟監督。アニメーション制作はマッドハウスが手がける。
コミックナタリーでは、2回に分けて同作の特集記事を展開。第1回ではブギーポップ/宮下藤花役の悠木碧と霧間凪役の大西沙織のメインキャスト2人に話を聞いた。自身の演技や役作りについてはもちろん、本作がどのような意図をもってアニメ化されていくのかを語ってもらう。
取材・文 / 坂本恵 撮影 / 星野耕作
上遠野浩平による小説「ブギーポップ」シリーズ。1998年に刊行された第1作目となる「ブギーポップは笑わない」は第4回電撃ゲーム小説大賞を受賞し、上遠野のデビュー作となった。それまでのファンタジーノベルは異世界を主軸としたものが主流だったが、本作はファンタジーを現代世界に取り入れた作品として評価され、「ブギーポップ以降」「ブギーポップ以前」という言葉も生まれた。また2000年には「ブギーポップは笑わない Boogiepop Phantom」のタイトルでアニメ化、「ブギーポップは笑わない Boogiepop and Others」のタイトルで実写映画化もされ、2作はリンクするメディアミックス企画として展開された。
2018年12月現在、22作刊行されているシリーズのうち、アニメではまず第1~3話で「ブギーポップは笑わない」編が放送される。同作は県立深陽学園を舞台に複数の視点から語られる群像劇。世界に危機が訪れるとき、少女・宮下藤花の中からブギーポップと呼ばれる人格が“自動的に浮かび上がってくる”。第4話からは原作の第2~3作目となる「VSイマジネーター」編をオンエア。その後の放送エピソードは、追って発表されていく。
先を行くタイプのオタクはみんな読んでた
──おふたりは「ブギーポップは笑わない」という作品はご存知でしたか?
大西沙織 実は私は知らなかったんですよ。オーディションのお話をいただいてから初めて知りました。
悠木碧 そうなんだ! 中高生の頃、みんな読んでなかった? 先を行くタイプのオタクたちは。世代がちょっと違うのかな?
大西 いや、でもそんなに変わらないですよね?
──おふたりとも、1992年生まれですよね。シリーズ第1作目となる「ブギーポップは笑わない」が発売されたのが1998年。今もなお刊行され続けていて、今年で20周年を迎えました。
悠木 当時は本好きの、サブカルの子たちが読んでたイメージだったんです。私もややサブカル気味だったので、憧れた作品でした。で、お話をいただいたときに、これってアニメ化されてないの?と思って調べたら、もうされてた(笑)。
──アニメ「ブギーポップは笑わない Boogiepop Phantom」は今から18年前、2000年の放送でした。オーディション前にご覧になられたりはしたんでしょうか?
大西 オーディションのときに、前にアニメ化していたという情報が入ってきたので、参考に、雰囲気だけつかもうとちょっとだけ観ました。でもあんまり自分が受けるキャラクターが出ているシーンを観すぎてしまうと引っ張られてしまうし、今回の「ブギーポップ」は絵柄をはじめ現代風になっているので、世界観を捉える程度に留めようと思いました。
悠木 私も事前情報自体、そんなに入れないほうが現場で指示を入れやすいかなと思って臨みました。どういう意図で今またアニメ化するのか……前のアニメをなぞってもう1回作るのか、それとも新しく作るのか、と考えると、たぶん後者だと思うんです。だとすると今作る意味があるものにしなきゃいけない。昔からの原作ファンの人たちの期待を裏切らないようにしながら、現代に落とし込んでいくということが重要なんだろうなとは思いました。
ブギーポップは大衆に向けてしゃべるように、個人に向けてしゃべる
──役作りにおいては、どのような指示があったんでしょう。
悠木 私は同じ電撃文庫の作品で「キノの旅」のキノもやらせていただいていたんですけど、原作の時雨沢恵一先生が「ブギーポップ」にすごく影響を受けて書かれた作品だと事前に伺っていて。キノもブギーポップも、1人称は「僕」だし、ちょっと近さがあるのかなと思って、キノをベースにオーディションの現場でブギーポップをやってみたんです。そしたら、そこまで淡々としないほうがいいと、けっこうはっきりと指示出しをされて。ブギーポップは無表情だけど、もっと口上みたいに、朗々と歌い上げるような感じのほうが嘘っぽくて不気味な異世界感が出ていい。でもアンニュイな印象は残してほしい、と言われて。絶妙な配合で面白いなと思ったんです。
──原作でも、ブギーポップのしゃべり方は「演劇のような」と形容されていますね。
悠木 そうなんです、芝居がかったみたいな。ちょっと間合いが読めないというか、大衆に向けてしゃべっているかのように、個人に向けてしゃべるという特殊なことをしていて。そんなしゃべり方を想像して書いている人が世の中にいるんだと思うと、すごく面白いなと思いました。ただ、その指示をオーディション中に言われたときは、もはや何を言われているのかよくわからなくて超やぶれかぶれで「こんな感じだろう」と思ってやってみたんです。でも結果受かっていたので、「受かったんですか? 本当に?」と疑いました(笑)。アフレコのときはちょっと日和ってオーディションのときほど大げさにはやらなかったら、やっぱり「歌い上げてください」という指示があって。
──やぶれかぶれでやったことが正解だったんですね。
悠木 はい、正解でした(笑)。
大西 「ブギーポップ」の1話はアフレコのときにもう画ができていたんですけど、表情だけだとどう考えても歌い上げるようにしゃべるキャラクターには見えないんですよ。でも悠木さん、その音響監督さんからの指示があってからの変わりようがすごくて! やっぱり、すごい方なんだなって思いました。
悠木 やめてやめて、ありがとう。
大西 その注文も、「歌い上げる感じで、精神的には男の子っぽい感じもあっていいけど、あんまりそういう感じは出さないで」みたいな感じで、0か100かじゃなくて、すごく細かいメモリの調整をするようなディレクションを4つくらい一気に言われていて。それを一瞬でやり遂げる悠木さん。すごすぎて鳥肌が立ちましたね。
悠木 うれしい……。「中性的に歌い上げる」というとどうしても宝塚に近くなっちゃうんだけど、そんなに動きも大きくないのでそれもちょっと違うし、どうしようかなと難しかったですけどね。第1話って、藤花の彼氏である竹田との会話がすごく多いんですが、メンタルの話をしているときはちょっと興味がないことのように俯瞰でしゃべって、説明は歌い上げるようにしゃべってと指示されていて。でもそれって普通とは逆じゃないですか。普通はエモーショナルなことを言っているときのほうが熱くしゃべるけど、ブギーポップは逆だから、それが異生物っぽい。ブギーポップは藤花の中から自動的に浮かび上がる存在ですが、「ああ、彼は本当に藤花じゃないんだな」って感じて、人間じゃないみたいに思う。でも私、人間だから……(笑)。
大西 あはは(笑)。そう、人間ですよね。
悠木 そうなの、人間だからすごく難しかった(笑)。
──悠木さんは宮下藤花という人間とブギーポップ、2つの人格を演じ分けているわけですが、気を付けていることなど教えてください。
悠木 藤花に関してはなるべく普通にするのが本当に重要だと思っていて。この作品って地味なキャラクターが多くて、ヒロインっぽい子って少ないので、藤花だけはちゃんと優等生のヒロイン像をやってあげたい。でもキャラクター然としすぎず、生身の人間っぽくできたらいいなと思ってます。その分、逆にブギーポップの異質な、何が気持ち悪いかもわからない感じが表現できたらいいかなと。
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凪は思っていたよりもずっとずっと芯の強い子だった
- アニメ「ブギーポップは笑わない」
- 2019年1月4日(金)より、AT-X、TOKYO MX、テレビ愛知、KBS京都、サンテレビ、BS11にて順次放送開始
※放送情報は変更になる場合あり。
- スタッフ
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原作:上遠野浩平(電撃文庫刊)
原作イラスト:緒方剛志
監督:夏目真悟
シリーズ構成・脚本:鈴木智尋
キャラクターデザイン:澤田英彦
音楽:牛尾憲輔
アニメーション制作:マッドハウス
製作:ブギーポップは笑わない製作委員会
- キャスト
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ブギーポップ/宮下藤花:悠木碧
霧間凪:大西沙織
末真和子:近藤玲奈
竹田啓司:小林千晃
新刻敬:下地紫野
紙木城直子:諏訪彩花
早乙女正美:榎木淳弥
田中志郎:市川蒼
百合原美奈子:竹達彩奈
エコーズ:宮田幸季
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谷口正樹:八代拓
織機綺:市ノ瀬加那
飛鳥井仁:細谷佳正
安能慎二郎:長谷川芳明
衣川琴絵:阿澄佳奈
スプーキーE:上田燿司
水乃星透子:花澤香菜
©上遠野浩平/KADOKAWA アスキー・メディアワークス/ブギーポップは笑わない製作委員会
- 悠木碧(ユウキアオイ)
- 千葉県出身、3月27日生まれ。主な出演作に「魔法少女まどか☆マギカ」(鹿目まどか役)、「幼女戦記」(ターニャ・デグレチャフ役)、「ACCA13区監察課」(ロッタ・オータス役)、「ワンパンマン」(戦慄のタツマキ役)、「ベルゼブブ嬢のお気に召すまま。」(ダンタリオン役)など。
- 大西沙織(オオニシサオリ)
- 千葉県出身、8月6日生まれ。主な出演作に「ベルゼブブ嬢のお気に召すまま。」(ベルゼブブ役)、「刀使の巫女」(十条姫和役)、「ブギーポップは笑わない」(霧間凪役)、「こみっくがーるず」(色川琉姫役)など。
2019年1月10日更新