マンガといえばガンガンだった小学生時代
──ところで、matoba先生のマンガとの出会いはどんな作品でしたか?
アニメやマンガ的なものだと、最初はジブリ映画だったと思います。うちはあまり子供にテレビやアニメを見せない方だったんですが、その中でジブリとか、「世界名作劇場」とかは見てよかったんですよね。
──では、子供のころに好きだったマンガ家さんなどはいますか?
小学生のときは“マンガといえば月刊少年ガンガン”ってくらいガンガンっ子だったんです。当時の作品は順位がつけられないくらい好きなんですが、一番はやっぱり衛藤ヒロユキ先生です。「魔法陣グルグル」とか「Pico☆Pico」とか。両親はマンガは自分で買いなさいという主義だったので、お小遣いを一生懸命貯めて単行本を買って、すごく熱心に読んでいました。あとは“ベルゼブブ”って名前を最初に認識したのは魔夜峰央先生の作品ですね。中学生のときにたまたま「パタリロ!」を手に取って。
──確かに、ノリのよさなど「ベルまま。」と通じるところがあるかもしれません。
やっぱり自分が感受性が豊かで、自己形成をしていく段階で読んでいた作品なので、意図してもしなくても影響が出ていると思います。あとはコメディ部門だと、たかなし霧香先生のギャグのノリにもすごく影響を受けていますね。
──では、シリアス部門だと?
自分が生まれる前の作品もよく読むんですが、大島弓子先生、竹宮惠子先生、萩尾望都先生ですね。マンガの文庫の棚を端から読んでいってました。
──ガンガンっ子だったとはいえ、かなり幅広く吸収されているんですね。では、ご自身で絵を描き始めたのはいつ頃だったんでしょうか?
もともと幼稚園の頃から絵を描くのは好きで、小学生の頃はマンガを遊びで描いたりはしてたんですけど、特にマンガ家になりたいとかは思ってなかったんですよ。
──そこから投稿に至るのはどんなきっかけで?
大人になってから、10数年ぶりにガンガンを手に取る機会があったんですよね。たまたま友人の家にあったとか、そんなきっかけだったと思うんですが、なんで投稿したかと言われると……思い付きですかね(笑)。そのまま担当さんがついてくださって、作品を作るようになり、デビューさせていただくことができました。
──すごいですね。ストレート勝ちといいますか。
運がよかったんだと思います。やっぱりガンガンを読んで育ったので、親和性があったのかもしれないですね。
アニメならではのヒールを使った演出に注目
──最後に、10月から始まるアニメに関してのお話を伺いたいと思いますが、アニメには先生はどの程度関わっていらっしゃるんでしょうか?
アニメスタッフの皆さんと顔合わせをする前に、最初に自分の意見をまとめて伝えておいたほうがいいだろうと思いまして、「ベルまま。」はこういう作品です、こういうアニメになったら素敵だなと思います、ということだったり、原作ではページの関係で省いたエピソードや、「今だったらこういう描き方もできるかもしれない」ということを、レポートにまとめて提出したんですよ。
──すごいですね! レポートですか。
面倒くさい作者だと思われたんじゃないかと(笑)。そもそも原作通りに作ってほしいというこだわりはなくて、アニメはアニメとしてベストな形になるべきだと思っているんですが、私が「こうなったらうれしいな」と思っていたのは、「疲れて帰ってきた人がなんとなくテレビをつけたときにやっていて、なんとなく見れるんだけど、見終わったあとにちょっと元気が出る作品」。そしたら顔合わせでお会いしたとき、その意見に監督もプロデューサーも共感していてくださったので、すごくうれしかったですね。
──では、かなりしっかりと意思疎通ができた状態なんですね。
と、私は思ってます。“癒される作品”という方向性が決まってからは、あまり性的に見えるような生々しい表現をせず、女性が見てもいやらしく感じないように描いてほしいというのは伝えました。例えば同じ女の子の下着姿でも、女性向けのランジェリーの広告と、男性向けの媒体での下着姿とは見せ方が違いますし、そうした区別はついていたほうがいいなと。どちらがいいということではなくて、もし“アニメは男性向けに作ります”ってことだったら、思いっきりそっちに振り切ってほしいと思っていました。
──原作と同様、あくまで作品の対象や方向性を大事にしたい、ということなんですね。特にアニメで見るのが楽しみなシーンなどはありますか?
実は、ベルの靴のヒールの高さや細さを、できるだけ野暮ったくならないように表現できないか、監督に相談させていただいたんです。そしたらその意見をすごく汲んでくださって、原作にはないヒールを使った演出をたくさん入れてくださって、それがすごくかわいいんですよ。本当に乙女心が全開になるような演出なんです。
──それはまさしくアニメならではの表現になりそうですね。PVのアフレコにもご同席されたそうですが、ご覧になっていかがでしたか?
素人丸出しの感想なんですけど、アフレコのブースに入って一声聞いた瞬間に「うわあ、プロだ」と(笑)。オーディションのテープも聞かせていただいていたので、イメージはあったんですが、キャラクターの意図とか心情を汲んでいただいて、キャラクターを作っていってくださるところを目の前にすると、胸に迫るものがありましたね。(ベルゼブブ役の)大西沙織さんはものすごくかわいい方なんですけど、場を引っ張っていってくださるところがあって、(ミュリン役の)安田陸矢さんは、演技の上手さと初々しさが同居していて。
──2人ともベルとミュリンのイメージにぴったりですよね。ちなみに「ベルまま。」特集の第2回では大西さんと安田さんにご登場いただくんですが、先生からおふたりに聞いてみたいことって何かありますか?
そうですね……おふたりが一番好きな、モフみがあるものは何ですか?
──いい質問ですね(笑)。ちなみに先生の一番好きなモフみは?
犬ですね。ちなみにアニメの公式サイトに載っている監督のコメントにも実家のワンちゃんの話が出てきて、すごく癒されました(笑)。
──そんなところでもシンクロしているんですね(笑)。では最後に、アニメの放送を楽しみにされている読者の皆さんにメッセージをお願いします。
本当に気軽に見ていただきたい、おやつのような作品として楽しんでいただけたら。できれば食わず嫌いはせず、最初のひと口だけでも召し上がってくださるとうれしいです。私自身が楽しみにしているのは、モフみがどうアニメで表現されているのか(笑)。私が想像しているモフみとは全然違う動きをするかもしれないし、まだ実際に動いているところを見ていないので、純粋に楽しみです。
- アニメ「ベルゼブブ嬢のお気に召すまま。」
- 2018年10月放送開始
- ストーリー
-
数十万の悪魔を統べる万魔殿(パンデモニウム)の主・大悪魔ベルゼブブ。その近侍として仕えることになった新人職員・ミュリンは知的でクールな彼女に憧れていたが、ベルゼブブの実態は、モフモフ大好きゆるふわ少女だった!?
不器用ながら徐々に距離を縮めていくベルとミュリン、そして2人を取り巻くこれまた不器用でユニークな悪魔たち。このお話は、悪魔たちが“ある気持ち”に名前をつけるまでのお話……かもしれない。 - スタッフ
-
原作:matoba(スクウェア・エニックス 月刊「少年ガンガン」連載)
監督:和ト湊
シリーズ構成・脚本:冨田頼子
キャラクターデザイン:住本悦子
音楽:分島花音、千葉"naotyu-"直樹
音響監督:本山哲
アニメーション制作:ライデンフィルム
製作:「ベルまま。」製作委員会
- キャスト
-
ベルゼブブ:大西沙織
ミュリン:安田陸矢
ほか
©matoba/SQUARE ENIX
©matoba/SQUARE ENIX・「ベルまま。」製作委員会
- matoba
「ベルゼブブ嬢のお気に召すまま。⑦」 - 発売中 / スクウェア・エニックス
- matoba(マトバ)
- 月刊少年ガンガン(スクウェア・エニックス)の月例マンガ賞・佳作受賞「からおけのひ」でデビュー。連載作品は「魔女の心臓」ほか。
2018年11月6日更新