「Re After Recording」第2回「かくしごと」| 神谷浩史&高橋李依が“12話観て完成する”アニメへの熱い思いを語り尽くす (2/2)

ダイジェストとしても、すごくよい映像になっている(高橋)

──私は、以前から「かくしごと」が好きだったので、番組の収録を見学していて、またアニメを観返したいと思いました。「かくしごと」を知らない人も、この番組を観たら、気になって観たくなりそうです。

高橋 今回ピックアップしていただいたエピソードはどれも思い出深い話ばかりですし、18歳の姫のシーンと10歳の姫のシーンの両方を抜粋していただいているから、「かくしごと」という作品を語るうえで大切なシーンも多くて。ダイジェストとしても、すごくよい映像になっていると思います。「かくしごと」をまだ観たことがない方は、この番組の中にちょっとでも気になるシーンがあったら、ぜひアニメの本編も観ていただきたいです。絶対に後悔させない作品になっているので。

高橋李依

──名場面の数々を再び演じたことで、当時のことを思い出されたりしましたか?

高橋 私も当時のメモを見返してから今日ここに来たのですが、メモの中には村野監督や納谷(音響監督)さんがお話しされていた「(この作品は)こう見せたい」といった全体の演出方針が書いてあって。あの頃の私はまだ、全体の構成を察したりできなかったんだなって。そしていつの間にか「きっと監督は、こういうふうに演出したいのかな」という、演出意図の目線でも考えるようになっていたことに、改めて気づきました。きっと、この「かくしごと」の現場を経て、その後に参加させていただいたほかの現場でも、いろいろな視点で挑むようになったのかなと振り返って思います。メモからは、当時の試行錯誤の跡も見えて、過去の私を抱きしめたくなりました(笑)。

神谷 アフレコに興味を持っている方に、スタジオの様子を観てもらうというこの番組は、すごくよい企画だと思います。ただ、本編のアフレコのときとは、僕らの(芝居の)アプローチの仕方はまったく違うんですよ。番組のトークパートでも話しましたが、本編のアフレコでは、(演出の方針を決める)村野監督と、監督の演出意図を汲んで僕らに伝えてくれる納谷音響監督がいて。僕ら声優は、彼らの操り人形として現場にいるわけです(笑)。

高橋 あはは(笑)。

神谷浩史、高橋李依

──声優は、自分の思うまま自由にお芝居しているのではなく、監督たちの演出意図を汲みながら、お芝居をしているということですね。

神谷 アフレコ時、絵は未完成でしたが、今回は絵が100%あるので、そういう点ではアプローチしやすいところもあるんです。でも、我々を引っ張り、方向を示してくれる監督や音響監督がいない中、李依ちゃんと2人だけでやらなきゃいけないという点で、(アニメの)作品作りとしてこれが正しいやり方なのかと言われたら、実は違う。それはお伝えしておきたいと思います。でも、アフレコがどういうふうに行われているのかを知りたい人にとっては、その興味を充分に満たせる内容になっているはず。そしてその先に、こういう作品があるんだと気づいてもらえたら、僕はそれで充分かなと思っています。「かくしごと」という作品は、僕にとってもすごく特別な作品ですから。

──この機会に「かくしごと」をさらに多くの人に観てもらいたいというおふたりの強い思いを感じます。

神谷 (物語を描くうえで)12話という尺はすごく短いんです。でもこの作品は、12話で物語をきれいに描き切り、完結するようにできている。だから、アニメーションとして非常に観やすいですし、その間に実は、原作のほうでだけ描かれているエピソードもあるから、もし気になるようであれば原作もご覧いただいて、そちらも楽しんでいただける。この番組が、そのきっかけになっていたら、恥を忍んで出た甲斐があったなと思います(笑)。

高橋 やってよかったってなりますよね(笑)。

神谷 うん、よかったって思えるよね。

神谷浩史、高橋李依

姫にしかない感性を持っていることが姫の魅力(高橋)

──おふたりが演じた後藤可久士と後藤姫、それぞれのキャラクターの魅力や演じるうえでの難しさなどを改めてお聞かせください。

高橋 作品の演出意図として、姫ちゃんを不思議で何を考えているのかわからない子に見せたいと言われていたんです。ただ、姫本人は、不思議であろうとしているわけではないんですよね。だから私の感じていた姫の魅力は、姫にしかない感性を持っていることでした。語彙もけっこう豊富で、言葉選びも面白かったりするんですよ。

──謎に、難しい言葉を知っていたりしますよね。

高橋 そうなんです。どこかでそういう言葉を聞いたとき、ほかの子が気にしないような瞬間でも、姫はそれを拾ってずっと心の中に残してあるというか。そういう、言葉を楽しめる感性は、すごく魅力的だなと思います。あとは、感性だけではなく、自分で考える力もすごくあって。そうやって自分で考えるからこそ、大人を翻弄してしまうことも多かったんですけど(笑)。そういった、「10歳だから」ではなく「姫だから」というところが、すごく魅力的だと思いました。

──では、演じるときも、10歳の感性に合わせられるように意識していたのですか?

高橋 その感性があったらよいなとは思うんですけど(笑)。私は考えすぎて頭でっかちになったりもするので。(考えたことを)捨てたり、捨てなかったりしていた感じです。

高橋李依

──神谷さんは、いかがですか?

神谷 アフレコをやっているとき、僕は、あまりキャラクターの魅力って考えないんですよ。そのキャラクターの魅力を自覚してしまうと、そこをあざとくやってしまいがちなので、あまり考えないようにしているんです。でも、(作品が)終わった今だから考えてみると……可久士の魅力ってなんですかね? まあ、相当に面倒くさい人じゃないですか(笑)。

高橋 うんうん(笑)。

神谷 とても面倒くさくて、本人もそれを自覚しているし、周りから見てもそういう人なんです。でも、12話を通して、可久士のとても面倒くさい部分が出尽くしているにも関わらず、(最後は)あれだけ大勢の人たちが彼を助けるために集まっている。そのことを考えると、人間としてちゃんとしている部分が、周りのみんなには伝わっていたのだと思うんですよね。「風のタイツ」という、作者の品性を疑うような超絶下ネタマンガを描いている人ではあるんですけど(笑)。マンガの作風と(人間性が)イコールではないということが、ちゃんと周りには伝わっている。そこがよいなと思います。僕も「神谷さんって、こういう人ですよね」みたいな感じで見られていることがよくあって。

神谷浩史

──勝手な固定観念みたいなものを持たれてしまうと。

神谷 「お前が、俺の何を知っている!」って思うんですけど(笑)。そういう表面的な部分ではなく、可久士の本当の姿がちゃんと伝わっているがゆえに、これだけ慕われている。そのアンバランスなところも含めて、彼の魅力なんだと思います。だからといって、僕はその変な部分とちゃんとしている部分の差をめちゃくちゃ付けてわかりやすくしようとか、そういうふうには思ってないんですけどね。

観てくれた人の気持ちを豊かにする作品(神谷)

──今回再アフレコしたシーンやセリフの中で、特にお気に入りなものがあれば教えてください。

高橋 今回は、お誕生日会についてのシーンを多く抜粋していただいていることもあって、そういうときのすれ違いというか。姫の周りで起きている出来事と、そのときに可久士の周りで起きている事件が絡んで、きれいに噛み合わないシーンも多いんですよね。

TVアニメ「かくしごと」より、可久士。©久米田康治・講談社/かくしごと製作委員会

TVアニメ「かくしごと」より、可久士。©久米田康治・講談社/かくしごと製作委員会

TVアニメ「かくしごと」より、姫。©久米田康治・講談社/かくしごと製作委員会

TVアニメ「かくしごと」より、姫。©久米田康治・講談社/かくしごと製作委員会

──可久士と姫の考えていることに、食い違いが起きていますよね。

高橋 今回のちょっとした抜粋だけでも、「そうそう。こういう感じで定期的にズレ合って。最後に話し合って気づいて、という構成だったなあ」と思い出して、ほっこりしました。あと、当時Aパート(前半パート)では、納谷音響監督から「翻弄して」とすごく言われていたことも思い出しました。「このセリフに、そういうニュアンスを乗せちゃうとわかりやすすぎちゃうから、もうちょっとわからないように」みたいな。

──実際のアニメのアフレコは、そういったディレクションに応えながら収録していくわけですが、神谷さんはどのシーンやセリフが特に印象的ですか?

神谷 今回は、あくまでも可久士と姫のシーンを中心にしたダイジェストで、その前後がないから可久士のよいところが出すぎている感じはしますね(笑)。

高橋 よいお父さん面がいっぱい出ていますよね(笑)。

神谷 そうだよね。そこだけ特別に気をつけていたという感じでもないんですけど、お父さんとしての可久士のセリフに関しては、気持ち悪くはならないようにと思っていました。

──気持ち悪くなりがちだったのですか?

神谷 可久士が姫に向けているのは、父が娘に向ける愛情でしかないので。「ありがとう」とか「姫」とかひと言声をかけるときも、あくまでもナチュラルに、父親が娘にかける言葉でなければいけない。ただ、(後藤家は)お母さんがいなくて、可久士はその分も(愛情を)込めてしまうから、ちょっと過剰になるところも出てきてしまうんです。そこの加減というか、せめぎ合いがけっこう難しくて。(やりすぎて)気持ち悪く聞こえないようにということは、今日の収録でも気をつけたところです。可久士が姫に向けるまなざしは、すごく好きなところだったので。

TVアニメ「かくしごと」より、可久士。©久米田康治・講談社/かくしごと製作委員会

TVアニメ「かくしごと」より、可久士。©久米田康治・講談社/かくしごと製作委員会

──最後に、この「Re After Recording」や「かくしごと」への思いも含めて、読者の皆さんへのメッセージをお願いします。

高橋 この2024年に、「かくしごと」をこういう形で紹介できることをとてもうれしく思っています。この作品は、1つひとつの話数に本当にいろいろな魅力が入っていて。今回、ピックアップされているシーンの中にも、不穏さを感じるようなシーンがあるのですが、それを12本追いかけることで物語としてきれいに完成する。12話まで全部観て本当によかった、と思ってもらえる物語になっています。AT-DXさんでも配信されているそうなので、アニメに興味のある方なら、ぜひこの機会に一度は観てもらいたいです。それと、先ほど神谷さんもおっしゃっていたように、原作も本当に面白いので、合わせて楽しんでください。

神谷 今回「かくしごと」という作品を通して、すごくいろいろなことを思い出したんですよね。その前に糸色望役を演じさせていただいた「さよなら絶望先生」も含めて、僕の声優人生の中でも思い出深いタイトルなので、こういう形で取り上げていただけることは、すごくありがたいし、これをきっかけにアニメも観ていただけたら、すごくうれしいです。それに、僕は大滝詠一さんが大好きなので、(代表曲の)「君は天然色」がエンディングになっているのもうれしかったし、オープニングの「ちいさな日々」を歌っているflumpoolさんも大好き。そういうふうに、僕が声優を続けてきた中で生まれたいろいろな縁や大好きなものがこの作品には詰まっています。大槻ケンヂさんも出演しているし(笑)。

高橋 そうですね!(笑)

──大槻さんは、6話に登場したゆるキャラのもりどくんを演じられていましたね。同じ久米田作品の「さよなら絶望先生」で主題歌などを担当したミュージシャンの大槻さんが、声優として出演したことに驚きました。

神谷 そこも謎のつながりですよね(笑)。オンエア当時はコロナ禍だったので、1週間に1回、あの親子に会えることが僕の唯一の楽しみでした。当時リアルタイムでご覧になってた方は、きっと同じように感じてくれていたと思います。でも、今はそういう時期を過ぎて、普通に楽しんでいただける。しかも、李依ちゃんが言ってくれたように、この作品は本当に多方面から楽しんでいただける作品なんですよ。大筋としての謎があって。それが少しずつ明らかになっていき、最後にはすべての謎がきれいに回収され、さらに、その先ももう少し見せてくれる。12本という枠組みで伝えられる内容としては、完璧なものだと僕は思っています。観てくれた人の気持ちを豊かにする作品でもあるので、ぜひこの機会に観ていただけたらうれしいです。

神谷浩史、高橋李依

プロフィール

神谷浩史(カミヤヒロシ)

1月28日生まれ、千葉県出身。青二プロダクション所属。「機動戦士ガンダム00」「さよなら絶望先生」「夏目友人帳」などでメインキャラクターを演じる。2010年には、「化物語」の阿良々木暦役で第9回東京アニメアワード個人賞・声優賞を受賞。その後も「黒子のバスケ」「進撃の巨人」「おそ松さん」「文豪ストレイドッグス」「ブルーロック」「うる星やつら」などの話題作に出演する。声優のほか、ラジオパーソナリティ、アーティストとしても活躍中。

高橋李依(タカハシリエ)

2月27日生まれ、埼玉県出身。81プロデュース所属。主な出演作に「Re:ゼロから始める異世界生活」(エミリア役)、「この素晴らしい世界に祝福を!」(めぐみん役)、「からかい上手の高木さん」(高木さん役)、「魔法つかいプリキュア!」(朝日奈みらい / キュアミラクル役)、「ゆるキャン△」(斉藤恵那役)、「るろうに剣心 -明治剣客浪漫譚-」(神谷薫役)、「【推しの子】」(アイ役)、「夜のクラゲは泳げない」(山ノ内花音役)などがある。2015年に高野麻里佳、長久友紀と声優ユニット・イヤホンズを結成。2021年にはソロアーティストデビューも果たした。

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