「アルゴナビス from BanG Dream!」七星蓮(Vo)役 伊藤昌弘、白石万浬(Dr)役 橋本祥平、シリーズ構成・脚本 毛利亘宏|ベテラン劇作家がアニメ脚本に初挑戦! 若手男子を率いて、自らの青春時代を出し尽くす

Argonavisには
自分の好きなところも嫌いなところも詰まってる(毛利)

──では、TVアニメについても伺わせてください。舞台は北海道の函館、大学生のボーイズバンド・Argonavisの軌跡を描くストーリーです。

毛利 途中からだんだん当て書きのようになっていったなあ。

アニメ「アルゴナビス from BanG Dream!」第1話より。

伊藤 第1話で蓮がバンドに誘ってきた結人と航海に言う、「誰にも邪魔されたくないから」っていうセリフ。蓮は中学生のときに合唱部だったんですけど、部員とモチベーションが合わなくなってやめてしまったという過去があるんですよね。実は僕、そのセリフを見てちょっと安心したというか。蓮くんってもう少し弱気なところが多い男の子だと思ってたんです。でも実はしっかり芯があって、目指しているものに対してストイックな姿勢を持っていることがわかった。また蓮くんに一歩近付けたというか、自分の気持ちにも嘘偽りなく彼と一緒にいられるなっていう気がしました。

毛利 僕から見ても、昌は特にキャラクターと同一化してるなあと思うよ。

伊藤 でも僕、毛利さんと蓮くんが重なる部分もあるんです。ストイックでありながら、人に対してとても優しいところ。舞台で長い公演をご一緒したときも毛利さんはずっと毛利さんで、こんなにあったかい人いるんだ!って思ったぐらい。だからこそ、こうやって大きな舞台をずっと引っ張っていってる方なんだなって納得したんです。

毛利 確かに気合いを入れて書く作品は、どうしても自分が出ちゃうよね。自分の好きなところも嫌なところも、全部出し尽くしてキャラクターに注いでる。ましてや自分の青春時代を書くつもりでいるなら、本気でやらないといけないと思っていたから。仲間が大事だったり、自分に許せないところを持っていたり、もっとうまくなりたいって気持ちを持ち続けていたり、Argonavisのメンバーそれぞれに僕のいろんなところが反映されてると思います。ちょっと恥ずかしいけどね(笑)。

──橋本さん演じる万浬についてはどういうキャラクターとして書かれましたか?

毛利 万浬はね、とりあえず祥平があんまりやったことがない役の形から入ろうと思って書きました。第一にお金が好きで、現実主義だし素直じゃない。

アニメ「アルゴナビス from BanG Dream!」第3話より。万浬は函館のスタジオを回り、そこで練習しているバンドとドラム対決をしてスタジオ代を稼ぐということをしていた。

橋本 確かに、万浬は今まで自分がやったことがないキャラクターですね。バンドの中の財布を握っていて、ちょっとお母さん的な感じもある。公式サイトのプロフィールにも「好きなものはお金」って堂々と書いてあって、たぶん最初は視聴者さんに面白いだけのキャラクターかなって見られちゃうと思うんです。でもお金が好きっていうのにも、借金で傾いた実家の酪農場を立て直したいっていう理由がある。僕はそんな彼を皆さんにも好きになってもらえるように、お金の話をしてるときですら「かわいいな、万浬」って思ってもらえるように演じたいです。

音楽でつながった人とはすぐ仲良しに(伊藤)

──これまで放送された第3話までは、Argonavisのメンバーが着々と揃う様子が描かれました。ご覧になっていかがでしたか?

アニメ「アルゴナビス from BanG Dream!」第1話より。蓮の歌声を聞いて、バンドに入らないかと誘う結人。

毛利 第1話で蓮がぼっちカラオケをしてるところに、赤の他人の結人と航海が乗り込んでくるっていうおかしなシーンがあったでしょう?(笑) あれ、今回は自分の中で割と振り切ったことをやってみようって書いたシーンなんです。実際に映像を観てみて、根っこにある通常運行の部分と、思い切って冒険してみた部分を錦織(博)監督がいい具合にまとめてくださったなと思いました。

伊藤 メンバー同士の仲が深まっていく過程はすごく共感しましたね。自分の過去を振り返っても、好きなバンドや曲が同じだったり、ライブハウスで会ったり、一緒にバンドを組んだりっていうふうに音楽でつながった人とはすぐに打ち解けられたなって。

橋本 エンディングの「雨上がりの坂道」もめちゃくちゃよかったね!

毛利 第1話で登場した楽曲って、オープニングとエンディング、劇中歌の「超宇宙閃隊<スターファイブ>より愛を込めて」「ゴールライン」「REVOLUTION」を合わせると全部で5曲? こんなに音楽を浴びられるアニメってなかなかないんじゃないかな。観終わったとき、ライブに行ったような高揚感だった。

伊藤 その気持ちわかります。今まで僕たちがライブで披露してきた曲がアニメに登場してるんですけど、その曲がどう生まれたのか、どこで歌われたのかっていう背景がわかるのも楽しいですよね。

毛利 今後の見どころとしては、GYROAXIAとの刺激し合う関係だよね。

アニメ「アルゴナビス from BanG Dream!」第1話より。初めてArgonavisのボーカルとして歌った蓮。

伊藤 そうですね。ArgonavisとGYROAXIAって音楽のジャンル的にはまったく違うんですけど、追い求めているものって本質的には一緒なんです。その表現の仕方が違うところも面白いかなと。

毛利 第3話でようやくArgonavisの船出なので。これからが苦難の日々の始まりです(笑)。ギリギリまでキャラクターが追い詰められて、その障害に対して仲間とともに立ち向かう姿を観ていただければなと思います。

橋本 毛利さん、劇団の通し稽古とかでいいシーンがあると必ず泣くんですよ。だから今回もテレビの前で毎週泣くんだろうなー!(笑)

Argonavisの強みは、強みがないところ(毛利)

──Argonavisのバンドとしての強みってなんだと思いますか?

橋本祥平

伊藤 やっぱり5人のバランスですかね。小学校のときの僕は、バンドでもアイドルでも真ん中に立つ人に憧れてたんです。でもそれって今思えば、メンバーにそれぞれが異なる魅力を持っていたからこそ、僕にとっては真ん中に立つ人がより輝いて見えていたのかなあってことに気付いて。Argonavisもみんなで力を合わせて、僕たちにしか出せない色をもっともっと出していきたいなと思ってます。

橋本 そうだね。GYROAXIAでギターを担当してる橋本真一くんが、うちのバンドはお互いに殴り合うような気持ちで演奏してるって言ってたんです。それってArgonavisと正反対で面白いなって思って。そういう点で、Argonavisはメンバーの結束力が強みじゃないかな。

毛利 いわば、Argonavisって強みがないんだよね。ほかのバンドのほうがキャッチーでわかりやすいし、圧倒的にキャラが濃い。Argonavisの子たちってただガムシャラだったり、まっすぐ生きてるだけなんです。でも一番普通だからこそ自分を重ね合わせることができるし、観てくれる人たちに明日もがんばろうって思える活力を与えることができるんじゃないかなって。とにかく、僕もGYROAXIAに負けないでって祈ってるよ(笑)。

──では最後に、「ARGONAVIS」プロジェクト全体の魅力を教えていただけますと。

伊藤昌弘

伊藤 ライブから始まり、次はアニメ、さらにその次はアプリっていう、メディアミックスのつながりでしょうか。1つひとつが魅力的なものですし、ほかの展開に触れると作品をより深く理解することができる。これからも「ARGONAVIS」をお客さまに楽しんでいただけるよう、演者として大切に向き合って、もっともっと追求していきたいなと思います。

──ありがとうございます。今日の取材を通して、毛利さんはキャストおふたりの父親のようでしたね。

毛利 なんか、そんな感じだったね(笑)。でも2人が本当にいい仲間と巡り会えてよかった。昌も祥平もしかるべきタイミングで、出会うべくして出会ったなと思います。僕も初めてのアニメ脚本で不安だったけど、祥平がいるからがんばれた部分もあったし、昌もこれからどんなふうに成長していくかがすごく楽しみ。脚本って自分の見たことや考えたこと、経験なんかを煮詰めて書いていくものなんです。だから2人にはこれからさらに絆を深めてもらって、僕の脚本を面白いものにしてくれるように期待してます。

左から伊藤昌弘、橋本祥平。

※取材は新型コロナウイルスの感染拡大を受け、安全に配慮して行いました。


2020年4月30日更新