群像劇ならではの重厚な人間ドラマに注目
──小林さん演じるヴァイについて教えてください。
この作品は重厚な群像劇で、姉妹の物語になっております。私が演じさせていただいたヴァイさんは、この物語の主人公の一人であり、姉妹の姉にあたる方です。また「Arcane」を語る上で欠かすことのできない、もう一人の主人公であり、ヴァイさんの妹のパウダーさん、そしてたくさんの魅力的なキャラクターの方々の織りなす人間ドラマになっております。中でもヴァイさんの身の回りで起こる出来事には、1つひとつが象徴的で伏線のようにスポットライトが当てられていきます。物語の序盤、ヴァイさんは15歳で、妹さん、それから家族のように育ったおふたりの孤児の方と、助け合いながら肩を寄せ合ってたくましく生きていらっしゃいます。作品の世界は上部の都市ピルトーヴァー、そしてヴァイさんたちの住む地下都市ゾウンに分かれているのですが、その2つの都市の戦争によって、ヴァイさんはご両親を失っています。
──なかなか過酷な境遇のキャラクターです。
ヴァイさんは幼い頃から多くのものを背負っておりまして、15歳の女の子が到底ひとりで受け止めきれないような難しいことに迫られてきました。そのため葛藤、迷い、たくさんの苦悩を抱えながら生きています。また妹さんや仲間を守るためには自分が強くならなければならないという思いで、日々体を鍛えていまして、どんなことにも決して負けない気持ちと、肉体を手に入れようとがんばっていらっしゃる、強さと優しさを兼ね備えた方です。
──小林さんは原作ゲームでも同じ役を演じていらっしゃいます。ヴァイを演じるにあたって、ゲームとアニメで異なる点はありましたか。
原作ゲームでは、ヴァイさんの好戦的な部分がクローズアップされておりましたが、アニメではヴァイさんの内面に焦点を当てていただいておりまして、今までゲームでは語られていなかったヴァイさんの生き様や繊細な心のひだ、機微が大変丁寧に描かれています。ですのでヴァイさんの心に寄り添わせていただきながら、1つひとつを大切に演じてまいりたいと、気を引き締めてアフレコに臨ませていただいております。またゲームの収録時と違い、アニメのアフレコではほかのキャストの皆さまと掛け合いをさせていただく機会がありました。お芝居のキャッチボールから生まれる臨場感が、視聴してくださるお客様に伝わるようにと願いながら精一杯演じさせていただきました。
──作品の見どころについてお伺いしてもよろしいでしょうか。
人間ドラマが見どころの1つだと思っております。この作品には1人ひとり個性的で、魅力的なキャラクターがたくさん登場してまいります。そして本編をご覧になっていただくと、味わい深い魅力を持った登場人物たちが織りなす物語に、瞬きするのを忘れてしまうほどのめり込んで、胸を鷲掴みにされる瞬間がちりばめられています。またそれぞれのキャラクターに立場や全うしたい望みがあり、それが複雑に絡み合って、ドラマティックに、息もつかせないスピードで展開されていくため、観ていただく皆さまを一瞬も飽きさせることのないストーリーになっています。キャラクターのお1人おひとりが自分の信念や葛藤を抱きながらぶつかり合う、その心と心のぶつかり合いにご注目いただけたらと、思っております。
見どころを挙げていくときりがない
──全体的な見どころを語っていただきましたが、個々のエピソードで注目してほしいポイントはありますか。
たくさんございまして、絞りきれないくらいなのですが、まず第一章で、ヴァイさんはとても壮絶で過酷な経験をされます。パウダーさんに関係する出来事によって、父親代わりの存在であるヴァンダーさんという方をはじめ、大切な方々がたくさん傷つき倒れてしまう。その後は刑務所に入れられてしまいまして、第一章の終わりでは大人になったヴァイさんが登場されますが、その刑務所での長い時間を、孤独の中で後悔や悲しみに耐え、苦しみ抜いておられたはずです。その日々がヴァイさんにとってどのような影響を与えたのか、ご覧いただけましたら幸いです。それからやはりヴァイさんとパウダーさんという姉妹がどうしても離れなくてはならなくなって、別々の道を歩くことになり、再会するまでの物語も大変見応えがございます。またその道のりも一筋縄ではいきません。その道中で描かれる、ケイトリンさんとヴァイさんの物語もぜひ皆さんにご覧いただきたいです。まったく育った環境が違い、対立関係にあたるため、一見わかり合えないんじゃないか、憎しみあってしまうんじゃないかと思えるおふたりですが、その友情や絆が育まれていく過程が大変ドラマチックに素敵に描かれていて……本当に見どころを挙げていくときりがないですね。
──小林さんの熱い思いが伝わってきました。
ヴァイさんの仲間やヴァンダーさんのお話も涙なしでは観られませんし、シルコさんという方のストーリーも一言では語り尽くせないものがありますし……1人ひとりに思いを重ねていただいて、一緒に物語を体験して、闘って、笑って泣いていただきたいです。
──映像や音楽など、ストーリー以外の面についてはいかがですか。
映像美にも音楽の迫力にも、観るたびに感動させていただいています。戦闘シーンにヒップホップ調の音楽が使われる演出がカッコよくて、動きと音楽の相乗効果に目を奪われます。また、3DCGのアクションや、キャラクターの方々の心の動きに合わせて表情が細かく動くところが、大変素晴らしいです。ぜひ1つひとつ、映像を一時停止してご覧になっていただきたいくらい見応えがあります。
──たくさん見どころを挙げていただき、ありがとうございました。最後に視聴者に向けて、メッセージをいただいてもよろしいでしょうか。
はい。作品を楽しみにしていただいている皆さま、本当にありがとうございます。この「Arcane」は魅力的なキャラクターの皆さまによる重厚な人間ドラマ、華やかなアクションシーン、そしてクスッと笑える粋なシーンや涙してしまうような展開、そういったものを一度に楽しんでいただけるアニメです。どの瞬間も見逃していただきたくない、見逃せない作品になっておりますので、ぜひ最後までご覧になっていただけたらと思います。どうぞよろしくお願いいたします。
- 小林ゆう(コバヤシユウ)
- 2月5日生まれ、東京都出身。ホーリーピーク所属。主な出演作に「『ヒプノシスマイク -Division Rap Battle-』Rhyme Anima」(東方天乙統女役)、「進撃の巨人」(サシャ・ブラウス役)、「イナズマイレブンGO」(霧野蘭丸役)、「銀魂」(猿飛あやめ役)、「まりあ†ほりっく」(衹堂鞠也役)など。
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花江夏樹インタビュー