2009年10月、アメリカでとある対戦型PCゲームのサービスがスタートした。“チャンピオン”と呼ばれるキャラクターを操り、プレイヤー同士が5対5で相手本陣の攻略を競い合うそのゲームの名は「リーグ・オブ・レジェンド」。今やeSportsの競技の1つとして世界中でプロリーグが開催されるほどの人気タイトルであり、2020年の世界大会「League of Legends World Championship」決勝戦では、1分あたりのオンライン平均視聴者数(AMA)が2180万人にものぼったことで、eSports界の最高記録を更新した。
そんな「リーグ・オブ・レジェンド」を題材としたアニメ「Arcane アーケイン」が11月7日にNetflixで配信スタート。これを記念して、コミック、音楽、映画の各ナタリーでは横断企画を実施する。第1弾となる本記事では吹替版キャストであるジンクス役の上坂すみれ、ヴァイ役の小林ゆう、ハイマーディンガー役の花江夏樹それぞれのミニインタビューを掲載。演じる役の魅力や作品の見どころについて語ってもらった。
構成・文 / 齋藤高廣
ジンクスはただのクレイジーな女の子じゃない
──上坂さん演じるジンクスについて、どんなキャラクターか教えてください。
もともとはパウダーという名前の、研究が好きな気弱な女の子でした。なんでもできるヴァイというお姉ちゃんがいるけど、パウダー自身は自信がない子で。でもあるとても不幸な事故がきっかけでお姉ちゃんに「お前はジンクスだ」(注:「ジンクス」には、一般的に「縁起が悪いもの」という意味がある)と言われ、離ればなれになってしまい、そこからダークサイドに落ちていきます。そしてシルコというお父さん代わりの存在に出会い、パウダーとしての自分を半ば殺して、ジンクスというクレイジーな人格として生きていくことを決める。こういう過去を持っているキャラクターなので、ときどき昔のトラウマに悩まされたり、自分が作り出した過去の幻影を相手にしゃべったりするシーンがありますが、そういう場面は演じていてつらいですね。
──ジンクスの魅力はどんなところにあると思いますか。
ジンクスちゃんは普段はとてもクレイジーなキャラですけど、たまにふとした表情がパウダーだった頃のようにあどけなくなることがあるんです。例えばシルコにちょっと甘えるシーンがあって、そういうときに見せる表情は美少女ということもあり「あ、かわいい」と思わされますね。それから自分の心のバランスを保とうとしている危うさみたいなところが彼女のかわいさというか、魅力というか。見守ってあげたくなるような存在です。
──上坂さんは原作ゲームのジンクスも演じていらっしゃいますが、アニメ版のジンクスを演じてみて、キャラクターに対する印象は変わりましたか。
ゲームだと「ドッカーン!」とか言いながらノリノリで敵を攻撃するキャラでしたが、アニメでは内面の苦しみが描かれています。だからヴァイとの過去のエピソードなどを観ていて「あ、ジンクスってこんな人生を歩んできたんだ」とか、「こういうこと考えていたんだ」と感じることができて、ただ単純に破壊や爆発が大好きな子じゃないんだなと、だいぶイメージが変わりました。アニメでは自分の中のトラウマや苦しみと毎日闘っている姿がすごく印象的でした。
──やはりゲームのジンクスとアニメのジンクスでは、演じ方も変わったのでしょうか。
ゲームではセリフをとにかくハイテンションに演じていましたが、アニメのジンクスは内省的なシーン、それからシルコやヴァイとの掛け合いのシーンが多いので、ゲームより人間らしい演技になりました。演じていて「ああ、ジンクスちゃんにもちゃんと普通の女の子だったときがあるんだね」と思って、よりジンクスのことを好きになりましたね。
突然のハイテンションにシンパシー
──ゲームのジンクスになじんだ視聴者は「こんな側面もあったのか」と驚かれるかもしれないですね。上坂さんご自身とジンクスの似ている点や、ジンクスに共感できるポイントはありますか。
そうですね……実は私も突然ハイになることがあって(笑)。徐々に上がっていくんじゃなく、突然テンションが上がってしまうところがジンクスと同じだなと思います。「イヤッハー!」って(笑)。「私もこういうことあるな」って、自分の兄弟を見ているかのような気持ちになるキャラクターですね。
──ジンクスの登場シーンで、特に印象に残っているところはありますか。
ジンクスがヴァイに捨てられてしまうシーンは印象に残っています。ずっとお姉ちゃんだけを頼りに生きていたパウダーが、ヴァイに「お前はジンクスだ」とある意味で呪いのような言葉をかけられてしまう箇所とか。それからシルコとジンクスのお互いに対する歪んだ愛情を描いたシーンというか、「この2人はお互いがいなきゃダメなんだな」と思わせるシーンが心に残っていて。シルコとの掛け合いはどれも印象深いです。
──「Arcane」はキャラクターの心理描写が細かいですよね。
あと作品全体で印象に残っているところといえば、映像の美しさですね。3DCGでありながら手描きのイラスト風の絵柄で。ラストドロップという酒場が登場するのですが、ダークな世界観でデザインされていてとてもカッコいいですし……。それからジンクスが彼女の秘密基地のようなところでひたすら研究に打ち込んでいるシーンは特に美しいので、ぜひ注目してほしいですね。音楽もとても素晴らしいです!
──これから作品をご覧になる視聴者に向けて、コメントをお願いします。
ゲームでおなじみのキャラクターが登場して、緻密なストーリー、美しい映像、音楽で壮大な物語が楽しんでいただける、非常に見応えのある作品になっていると思います。ぜひジンクスの暴れっぷりにも注目してください!
- 上坂すみれ(ウエサカスミレ)
- 12月19日生まれ、神奈川県出身。2011年に声優デビュー。主な出演作に「異世界食堂2」(アレッタ役)、「スター☆トゥインクルプリキュア」(ユニ/キュアコスモ役)、「オーバーロード」(シャルティア役)、「アイドルマスター シンデレラガールズ」(アナスタシア役)、「中二病でも恋がしたい!」(凸守早苗役)など。
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小林ゆうインタビュー