コミックナタリー Power Push - 「アンゴルモア 元寇合戦記」たかぎ七彦インタビュー
蒙古襲来!立ち向かうは島流しの罪人たち 幸村誠、安彦良和らも絶賛のニューカマー
文永11年(1274年)の対馬で実際に巻き起こった、蒙古襲来の事件・元寇を描くアクション作品「アンゴルモア 元寇合戦記」が注目を浴びている。1巻では幸村誠、2巻では安彦良和、3巻では冲方丁が帯に推薦文を寄せるなど、大物クリエイターからの支持も厚い大河ロマンのニューカマーだ。
コミックナタリーでは最新4巻の発売に合わせて、作者のたかぎ七彦を取材。日本史の中でなぜ元寇という題材を選んだのか、その成り立ちから作品を語ってもらった。史実をどのようにマンガ化していくのか、ストーリーやキャラクターの組み立て方にも迫る。
取材・文 / 粟生こずえ
あらすじ
元役人の鎌倉武士・朽井迅三郎は、とある事情から罪人へと身分を落とし島流しに遭う。対馬へと到着した朽井は、蒙古の軍勢が日本を侵略しようと大陸からやってくること、自分がその侵略者たちと戦うために送りこまれたことを知る。島主の娘・輝日に「この対馬のために死んでくれ」と命じられた罪人たちが、圧倒的不利な状況から戦へと臨む。
元寇は日本史の中で異彩を放つ戦い
──「アンゴルモア 元寇合戦記」では、鎌倉時代に実際に起きた蒙古との戦い「元寇」を題材としています。戦記ものとしてはマイナーなテーマかと思うのですが、この元寇をマンガにしようと思ったのは、なぜだったのでしょうか。
中学くらいのときに授業で習うから誰でも知ってるけど、確かに印象は薄いですよね。僕も教科書に載っていた絵を覚えていたくらいで、もともとは特別に興味を持ってたわけではないんです。馬に乗って戦ってる日本の武士に、モンゴル兵の爆弾が飛んでくるという……。
──あ、その絵は記憶にあります!
高校のとき、図書館であの絵が載っている元寇の絵巻を収めた「蒙古襲来絵詞」を見つけて開いてみたんです。文章は難しくてまるでわからなかったんですが、絵を追いかけるだけでも面白くて。陸上戦、水上戦、火薬兵器など戦いのバリエーションが多いし、戦いの顛末がなんとなくわかるんです。異国の軍勢も絵的に魅力がありましたし。
──ビジュアル的な衝撃が強かったんですね。
そうですね。授業で聞いてもインパクトの薄かった元寇が、この絵巻をきっかけに興味深い題材になりました。鎌倉時代に、大陸を征する蒙古軍と戦うというのも日本史の中で異彩を放っている事件だなあと。そういえば実は「アンゴルモア」以前にも、元寇を短編で描いたことがあって。
──それは「アンゴルモア」の原型ということでしょうか?
いや、編集さんに見せたら「うーん、これはちょっと」と言われてお蔵入りになった……作品未満のものですね。「蒙古襲来絵詞」をほぼそのままマンガにしただけで、振り返って考えるとまったく面白くないと思います(笑)。元の資料は絵巻といっても、物語として描かれたものじゃなく戦争の報告書的な内容ですからね。この失敗を踏まえて、「次はエンターテイメントとして、ちゃんと主人公を立てて作ろう」と再挑戦したのが「アンゴルモア 元寇合戦記」なんです。
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- たかぎ七彦「アンゴルモア 元寇合戦記」 / KADOKAWA
- 1巻 / 2015年2月10日発売 / 626円
- 2巻 / 2015年3月10日発売 / 626円
- 3巻 / 2015年6月26日発売 / 626円
- 4巻 / 2015年10月26日発売 / 626円
中世ヨーロッパを席巻し、恐怖の大王=アンゴルモアの語源との説もあるモンゴル軍。1274年、彼らは遂に日本にやって来た! 博多への針路に浮かぶ対馬。流人である鎌倉武士・朽井迅三郎は、ここで元軍と対峙する!
最新第4巻では、13世紀の最新鋭兵器“銃”登場! 対馬軍、苦境! 山間の隘路を撤退する朽井達に、モンゴル人の若き将軍ウリヤンエデイが迫る! 見通しのきかない曲がり道を巧みに利用し、ゲリラ的な待ち伏せ攻撃を企図する対馬軍は、蒙古軍を振り切ることができるのか!?
たかぎ七彦(タカギナナヒコ)
関西出身。大学では史学科に在籍し、専攻はメソポタミア史。大学時代に応募した作品が、小学館新人コミック大賞に入選したことからマンガ家を目指す。橋口たかし、武村勇治のアシスタントを務め、モーニング(講談社)で初の長編「なまずランプ」執筆。現在、WebコミックサービスのComicWalker(KADOKAWA)にて「アンゴルモア 元寇合戦記」を連載中。