コミックナタリー Power Push - マーガレットコミックス特集 あの頃も、これからも!一生少女マンガ宣言 第6回 あいだ夏波「圏外プリンセス」「スイッチガール!!」
スクールカーストのリアルを追求する
「スイッチガール!!」で女子の生態を赤裸々に描いたあいだ夏波がマーガレット(集英社)で連載している新作は、美醜をテーマに据えた「圏外プリンセス」。乙女ゲームが大好きで容姿にコンプレックスを抱えるブサイク女子が、ネガティブな性格を変えようと奮闘する。
発売されたばかりの4巻では中学生編が終了し、高校生編へと突入した。これを機にコミックナタリーでは、あいだのインタビューを敢行。スクールカーストや美醜といったテーマをシビアに描き出す理由を聞いた。
取材・文/門倉紫麻
美がすべてではない。でも努力することで「当たり」を引くこともある
──「圏外プリンセス」はちょうど中学生編が終わったところですね。美人(みと)の恋の決着のつけ方はいわゆる王道とは違いましたが、すごく清々しい気持ちで読み終えました。
よかったです! あの終わり方にこだわってはいたんですが、読者の方に嫌がられてしまうかなと心配もあったんです。でも私自身の恋愛経験からも、がんばったらちょっといいこともあるし、つらいこともある……人生にはいろんなことが起こる、という生々しい部分を描けたらなと思っていたので。いろんなことを乗り越えて幸せになってほしい、という希望を込めて描きました。
──4巻のラストでは、中学を卒業して高校に入学するにあたって、美人(みと)がかわいくなろうととてもがんばりますよね。縮毛矯正をしてみたり、かわいくなる方法も、かわいくなる程度も、すごく自然でした。
そこはとことんシビアに行きたいなと思って。自然な範囲、可能な範囲でかわいくなってもらおうと思いました。縮毛矯正は私の経験から来ています。私もちょっとだけ癖っ毛なので、縮毛矯正したことがあるんですが、髪がサラッサラになると、なんだか美人度があがる気がするんですよ(笑)。髪の毛って結構重要だなと。アイロンだと、湿気に勝てないんですよね。この作品は美醜をテーマにした作品なので、ちょっと難しいところがあって。美しさは関係ないよ、みたいなきれいごとは言いたくない。私自身が嫌というほど、世の中っていうのは無情だな、というのを味わってきたので(笑)。美がすべてではないけれど、努力することで時々当たりくじを引けることもある、ということも言いたくて。ひねくれたこだわりがあるんです。
──読んでいて、「中身が大事なんだよ」というメッセージも前提として伝わりますが、外見を追求すること自体を否定するようなことはせず、その大切さ、楽しさについてもきちんと描かれていますね。
放棄して、努力をしないのはどうなのかなあと思うんです。美醜の問題だけでなくどんなことでも、努力している人がいい思いをするのは自然なんじゃないかなと。何もせずにすごく好かれる人は、それはそれでいいと思うんですけど、もし今のままでうまくいかないのなら、心と同じく外見も磨いたほうがいいところのひとつだ、というのは否定できないんじゃないかなと。私はあまりやっていないんですけど(笑)、今までいろんな人と出会ったりして、感じたことです。
──努力したからと言って急に美女になるわけではないですが、美人(みと)のように自分のポテンシャルを100%生かすべく努力することは誰にでもできるんだなあ、と見ていて思いました。「スイッチガール!!」の仁香は元々きれいですが、すごくがんばっていましたよね。単行本のおまけページでは、ムダ毛の処理問題や、鼻の角栓問題など、赤裸々な美容あるあるがたくさん描かれていて、ものすごく面白かったです。
自分だけが、こそっとやっていることがドーンと公の場に描かれていたら、面白いんじゃないかなと(笑)。すごく小さな部分ですけど、そういうところに共感して、読者の方たちと友達みたいな連帯感が生まれるといいなと思いながら、女子トークしているつもりで描いてました。
自分でもすごく騒がしいマンガだなと思います
──単なるおまけページというにはボリュームも内容もとても濃いですよね。
私が子供の頃に読んだマンガって、おまけページで作家さんの素顔が垣間見える感じで楽しかったんですよ。この人は淡々としてるなとか、この人は結構自分のことを話してくれるな、とか。そういうものを私もやりたい!と思っていたので、妙におまけページに力が入ってしまいます。
──おまけページだけではなく、どのページ、どのコマを取ってもエネルギーが溢れています。
自分でも、すごく騒がしいマンガだなと思います。なんかこう、少女マンガのにおいがなかなかしてくれないなと(笑)。マーガレットでも周りを見渡して、「あれ? 私のマンガ、ちょっと周りの作品とテンションが違うかな? うるさいかな」って思ったこともあったんです。それでしっとりしたものを描いてみたりしたんですけど、どうにもこうにも私には合わなくて。やっぱり恋愛マンガであっても、元気のいいものが好きなんですね。悪い奴が現れてどうにかしないといけない、というような事件があって、そこに恋が生まれる、みたいなものにときめく。何かイベントがほしい。恋愛の頂上へ向かう道と、別の頂上へ向かう道と、両方が進んでいくようなものが好きです。
──確かに、あいだ先生のお描きになるものは、他校に潜入!とか、色々なことが起きますよね。
はい。もしなんのイベントもない、授業だけがある生活の中で恋愛を描いてと言われたとしたら、きっと何も描けないです。文化祭とか修学旅行とかイベントを絡めたくなってしまう。日々の学生生活では思い切ったことがしにくいじゃないですか。隣の席の男の子が気になったとしても、アタックするきっかけがない。でも旅行みたいなイベントがあれば、何か違うことが起きるかもしれませんよね。旅行にときめきが落ちてるんじゃないか!?って妄想でワクワクしながら待って……実際には何もないんですけど(笑)。
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- 第3回 神尾葉子
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- 第16回 八田鮎子
- 番外編 マーガレット&別冊マーガレット編集長インタビュー
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あいだ夏波(アイダナツミ)
2001年、マーガレット(集英社)にて「そんな聖なる夜も」でデビュー。 その後、「純情ポルノ」「革命教室」といった作品を発表する。2006年から2014年まで同誌にて連載された「スイッチガール!!」は累計680万部の大ヒット作となり、ドラマ化もされた。2014年6月より、同じくマーガレットにて「圏外プリンセス」を連載中。
2016年1月22日更新