ドラえもん初代担当編集が先生との日々を回想、辻村深月「かわいくて仕方なかったはず」

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藤子・F・不二雄 生誕90周年 企画発表会」が、本日10月4日に東京・恵比寿ガーデンプレイスのザ・ガーデンホールで開催された。

左から辻村深月、河井常𠮷氏。

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左からQ太郎、ドラえもん、パーマン。

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企画発表会はアニメ「ドラえもん」で源静香役を務めるかかずゆみと、テレビ朝日アナウンサーの萩野志保子がMCを担当。2人の挨拶の後、ドラえもん、パーマン、Q太郎も登場する。ドラえもんは「今日はね、藤子・F・不二雄先生の生誕90周年を記念して、いろんな企画が始まるってことを聞きました!」とこの場に来た理由を説明。ドラえもんの開幕宣言で、企画発表会が本格的にスタートした。

「映画ドラえもん」のゲスト声優・芳根京子がドラちゃんと対面

「映画ドラえもん のび太の地球交響楽」にゲスト声優として出演する芳根京子。

「映画ドラえもん のび太の地球交響楽」にゲスト声優として出演する芳根京子。[拡大]

まず1つ目の情報解禁は「映画ドラえもん のび太の地球交響楽(ちきゅうシンフォニー)」について。特報映像が解禁されるとともに、公開日が2024年3月1日になることが発表された。さらに物語の鍵を握る歌姫・ミーナ役で、芳根京子が出演することも明らかに。壇上にはドラえもんが燕尾服に着替えて現れたのち、芳根も登場した。

ゲスト声優で出演することについて、芳根は「本当に驚きました。本当に!?と思いましたけど、とってもうれしくて。今日この場に立てていること、ドラちゃんとお話しさせていただいていることで実感が湧いています」とコメント。ドラえもんは「ドラちゃんだなんて照れちゃうなー」とデレデレな声色で返す。芳根と仲良くなりたいドラえもんは「京子ちゃん、どら焼きは粒あん派ですか? こしあん派ですか?」と質問。芳根が「粒あんかな」と答えると、ドラえもんは「僕も粒あん大好き!」とテンションを上げる。さらに「もし僕と1日一緒に過ごすとしたら、何がしたいですか?」と尋ねると、芳根は「1日一緒に過ごせるなんてうれしいな! 最近旅行にハマってるので、行き当たりばったりの旅に出て、困ったことがあったらドラちゃんに助けてもらいたいな」と回答。芳根の答えに、ドラえもんは「行き当たりばったりの旅って、ワクワクして素敵だよねー!」と胸を弾ませた。

ドラえもんと芳根京子。

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アフレコはこれからだそうで、芳根は「歌姫という肩書きなので緊張していますが、ドラちゃんからパワーをいただいたので、精一杯心を込めて務めさせていただきます!」と意気込む。ドラえもんは「皆さん、映画を楽しみに待ってください!」と呼びかけ、「京子ちゃんも一緒にがんばろうねー!」とエールを送った。

書籍にゲーム、グッズやドラマの発表も

企画発表会では「ドラえもんプラス」の7巻が、藤子・Fの誕生日でもある12月1日に発売されると発表に。「ドラえもんプラス」とはてんとう虫コミックスの「ドラえもん」に未収録のエピソードをまとめたシリーズで、新刊が発売されるのは2014年12月以来9年ぶりとなる。また同日、「ドラえもん」からドラミちゃんが登場するエピソードを厳選して収めた「ドラミちゃん」も発売に。2024年には「T・Pぼん(タイムパトロールぼん)」新装版の全5巻が刊行開始される。

また生誕90周年デザインと、それをもとにした商品化企画も発表に。「ドラえもん のび太のゴーゴーライド!」「ドラえもん パズル de リゾートメーカー」「ドラえもんのどら焼き屋さん物語」のゲーム3タイトルについても紹介された。2024年春には、「藤子・F・不二雄 SF短編ドラマ」のシーズン2がNHK BS、BSプレミアム4Kで放送される。

アニメ「T・Pぼん」にかけるボンズ代表取締役の熱き思い

ボンズの代表取締役・南雅彦氏。

ボンズの代表取締役・南雅彦氏。[拡大]

さらに「T・Pぼん」がアニメ化され、Netflixシリーズとして2024年に独占配信されることも明らかに。発表会にはアニメーション制作を手がけるボンズの代表取締役・南雅彦氏が登壇した。南氏は「藤子・F・不二雄先生には、自分が小さい頃から横にいてもらいました。『21エモン』でSFの面白さを知り、『オバケのQ太郎』では最終回にパーマンが出てきてバトンタッチするという演出を見たときにすごくワクワクしたのを覚えています。当然『ドラえもん』にも、本当に未来はこうなるんじゃないかと夢を見させてもらいました。今アニメに携わり、SF大好きと言っていますが、それを形作ってくれたのは藤子・F・不二雄先生なので、今回『T・Pぼん』のお話をいただけたのは本当に名誉なことです」と熱く語る。

また南氏は制作の裏側について「Netflixさんからアニメ制作のお話をいただいて、いつものようにスタジオでプロデューサーたちに『誰かやりたい人いる?』と聞いたら全員が手を挙げました。5人もですよ(笑)」と明かし、「自分よりもひと世代下ですけど、彼らも藤子・F・不二先生と一緒に生きてきたということですね」と述べる。こだわっている点については「原作を読まれてる方はお分かりだと思いますが、凡たちはいろんな時代や場所に行きます。凡たちにとっての現代と、そうではない世界の歴史物などを少し違う絵柄で描き、リアリティが出るようにしています」と話し、期待を上げる。

アフレコはすでに進んでいるそうで、南氏は凡役の若山晃久と、リーム役の種崎敦美についてコメント。「若山さんはけっこう若手で、本当に凡っぽい。種崎さんはしっかりしたリームを描いていて、この2人のバランスが面白くて、新鮮に映るような仕上がりになっているのではないかと思います」と述べる。最後に南氏は「この『T・Pぼん』をきっかけに、また新しい藤子・F・不二雄先生の魅力を見ていただきたい」と述べ、壇上を後にした。

「ドラえもん」初代担当編集の思い出に辻村深月がにっこり

左から「ドラえもん」の初代担当編集・河井常𠮷氏、辻村深月。

左から「ドラえもん」の初代担当編集・河井常𠮷氏、辻村深月。[拡大]

「ドラえもん」第1話の原稿。

「ドラえもん」第1話の原稿。[拡大]

さまざまな情報解禁の後には、「ドラえもん」の初代担当編集・河井常𠮷氏と、「ドラえもん」のファンであり、2019年公開の「映画 ドラえもん のび太の月面探査記」で脚本を手がけた小説家・辻村深月のトークセッションが行われた。冒頭、壇上のスクリーンに「ドラえもん」第1話の原稿が投影される。そのページには、のび太の後ろに「河井質店」と書かれた電柱が。これについて河井氏は「先生は人をびっくりさせることが大好き。今となってはこれが大変すごいことだとわかるんですが、原稿をもらったときはピンときていなかった」と振り返る。「ドラえもん」の担当だった当時、河井氏は入社1年目の24歳で藤子・Fとは11歳差。辻村は作家の立場から、編集者の名前を作品に登場させることについて「大好きだったはず。かわいくて仕方なかったんだろうなと思います」と微笑む。

「ドラえもん」の連載が始まるときの予告。

「ドラえもん」の連載が始まるときの予告。[拡大]

また河井氏からは「ドラえもん」が始まるときの予告についての裏話も。壇上では、その予告の原画も披露される。机の引き出しが開き、のび太が驚いた表情で「出た!」と叫んでいる予告だが、これについて河井氏は「上司に厳しく叱られました。タイトルはなんなんだ! なんだ、この『出た!』っちゅうのは。来月から新連載ってことしかわからないだろ! よくこんな予告を受け取ってきたな、と言われましてね(笑)」と懐かしむ。

辻村深月

辻村深月[拡大]

辻村は「映画 ドラえもん のび太の月面探査記」の脚本執筆を当初断っていたという話を明かす。「私にとって『聖書』の続きが書けないのと一緒で、そんなことをしていいのかと思って一度お断りしたんです。でもそのときに気づいたのは、『ドラえもん』の映画って『ドラえもん』を大好きな人たちが丁寧に続きを作ってきたんだなと。それなら私も次に続けるお手伝いができたらうれしいなと、脚本を受ける覚悟ができたんです」と振り返り、「毎年春には『ドラえもん』の映画が公開されますが、それは決して当たり前のことではないんだなと脚本を書いた立場から思います」と映画「ドラえもん」の受け継がれてきたバトンに思いを馳せた。

11月1日から神奈川の川崎市藤子・F・不二雄ミュージアムで開催される新企画展「藤子・F・不二雄 生誕90周年記念原画展 『好き』から生まれた藤子・F・不二雄のまんが世界」にちなみ、河井氏は藤子・Fの「好きなもの」についても話す。「まず第1に家族。奥様の正子さん、そして3人の娘さんを本当に愛している。そして第2に『ドラえもん』を描くこと、マンガを描くこと、仕事をすること。これだけは真剣でした。第3が人をびっくりさせること。トキワ荘の仲間たちもイタズラをよく仕掛けられたと聞きました。最後は、ハンバーグライスです。先生と打ち合わせをしに食事に行って『何をお食べになりますか?』と聞くと、必ずハンバーグライスと言うんです。メニューにはステーキとかボルシチとかほかにも美味しそうなものがいっぱいあるのに、それでも先生はハンバーグライス。『じゃあ、ハンバーグライスを2つとビールを1本ください』と注文するのが、いつものパターンでした」と楽しそうに回想した。

左から辻村深月、Q太郎、ドラえもん、パーマン、河井常𠮷氏。

左から辻村深月、Q太郎、ドラえもん、パーマン、河井常𠮷氏。[拡大]

最後に辻村は河井氏に「藤子・F・不二雄先生が河井さんと一緒に始めた『ドラえもん』が、今こうしてゲームになったり新しいアニメになったり、どういうお気持ちですか?」と質問。河井氏は「本当にうれしい。当時はアポロ11号が打ち上げられたり、翌年に大阪万博があったりイベントが目白押しの時代。『ドラえもん』は地味にスタートして、なかなか人気が出なかったんです。だから皆さんに長い間支えられて、これだけ大きく育てていただいた。それは本当に先生が望んでいることだと思います」と述べ、トークセッションを締め括った。

「ドラえもん」初代担当編集の思い出に辻村深月がニッコリ

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※記事初出時、キャプションおよび登壇者名に誤りがありました。お詫びして訂正いたします。

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