「風のように」はちばが1969年から1977年にかけて発表した短編6本を集めた1冊。表題作の「風のように」は、みつばちの大群に村が襲われた混乱の中、行方知れずになっていた少女チヨと、チヨを助けたと話す風来坊の少年・三平との交流を描く物語で、2016年には劇場アニメが公開された。そのほかにも、天才的な発明の才能を持つ青年が巻き起こした騒動を描く「あるインクの話」、ちばが満州での体験を描いた自伝「屋根うらの絵本かき」などのエピソードが収録されている。
なお「風のように」に収録された短編はちばが「あしたのジョー」「のたり松太郎」などの代表作と同時代に執筆したもの。ちばは「今思うとよくこんな作品を描く時間があったなぁ、とビックリです。ワシはふだん自分の作品を読み返すことがないんだけれど、こうして単行本になってあらためて読み返してみると、我々人間が地球上で一緒に暮らしている動物や植物たちのことを粗末に扱っていることに、自分自身が結構心を痛めていたんだなぁ、と気付かされました」と綴った。また「若い…あるいは幼ない読者の皆さんがこの短編集を読んで、残念ながら良い面ばかりではない人間社会の愚かさだったり、地球上の全ての大切な『いのち』のことを考える機会になってくれたら、こんなに嬉しいことはありません」とメッセージを寄せている。
ちばてつやコメント
短編集「風のように」に寄せて
この本に収められている短編を書いたときは「あしたのジョー」や「のたり松太郎」という作品の連載中で本当に忙しくて。
今思うとよくこんな作品を描く時間があったなぁ、とビックリです。
ワシはふだん自分の作品を読み返すことがないんだけれど、こうして単行本になってあらためて読み返してみると、我々人間が地球上で一緒に暮らしている動物や植物たちのことを粗末に扱っていることに、自分自身が結構心を痛めていたんだなぁ、と気付かされました。
さて、自分がマンガを描くようになったきっかけを描いた「屋根うらの絵本かき」は、戦争が終わった時に日本へ逃げ帰る道中の物語です。
あれから80年ちかく経ってもまだ地球上のおバカ人間たちは、お互い殺し合うことを止められずにいます。
ウクライナ侵攻だけでなく世界各地の紛争がいまだに繰り返されているこの時代に、こういう短編集を出してくださって本当にありがとう。
若い…あるいは幼ない読者の皆さんがこの短編集を読んで、残念ながら良い面ばかりではない人間社会の愚かさだったり、地球上の全ての大切な「いのち」のことを考える機会になってくれたら、こんなに嬉しいことはありません。
ちばてつや
磯田勉 @isopie_
ちばてつや短編集、「あしたのジョー」などの代表作と同時代に描いた6作品収録(コメントあり) https://t.co/xMVEjapcRl
→これはうれしい出版。自伝「屋根うらの絵本かき」、あのちばてつや先生の作品とは思えない文字どおりブラックで奇想天外な「あるインクの話」ほか全6編。