「じゃりン子チエ 劇場版」の上映は、3月に死去したアニメーター・
映画祭の「ジャパニーズ・アニメーション部門」プログラミングアドバイザー・藤津亮太の司会のもと、トークショーは進行。山本と大塚康生との初対面は「未来少年コナン」の現場だったという。「当時日本アニメーションで別の作品をやっていたんですが、『未来少年コナン』の美術が大変だというので、プロデューサーに頼まれて手伝いに行ったところ、宮崎駿さんの隣に大塚康生さんがおられて。大塚さんは性格がすごく明るかったので、チームワークはすごくよかったです」と回顧した。さらに大塚の思い出を聞かれると、「大塚さんは機関車を描くのがすごく上手で。米軍のジープも持ってらして、日本アニメーションの駐車場に1台停めてたんです。趣味もすごく多い方でした」「『未来少年コナン』のインタビューで『作画と演出は素晴らしい、でも美術のクオリティが少し低い』と言われたんです。それを大塚さんに嘆いたら、『君は一生懸命やったし、ほかの人にはできなかった』と慰めてくれました」と、大塚の人柄が伺えるエピソードを披露した。
また「じゃりン子チエ」制作時の高畑監督との交流についても語られた。山本は「高畑さんは怖いんですよ(笑)」と冗談めかして言いつつ、「ロケハンで木賃宿に泊まったんですが、『なぜ“木賃宿”というか君は知ってるか?』と聞かれるんですね。あとはタクシーに乗ってると、多摩地区に“乞田”という地名があるんですが、『あの漢字読めるか?』って聞いてきたり」と、博識な高畑からたびたび知識を試されていた思い出を語った。
「山本さんというと、ディテールががっちりした背景を描かれる印象があるんですが、『チエ』は少しタイプが違うと思うんです」という藤津から、「じゃりン子チエ」ならではの美術の工夫についての質問も。山本は水彩画家の大下藤次郎から影響を受けた“洗い出し画法”や、石版画のマチエール(質感)を使ったら面白いんじゃないか、といったアイデアを高畑に出していたという。「高畑監督と相談しまして、
最後に改めて「大塚さんはどういう方でしたか?」と尋ねられた山本。「すごく優しくて包容力のある人で、博識。宮崎さんや高畑さんを立てて、少し後ろに下がるような感じで支えてくれました。『じゃりン子チエ』でオファーをくれたことについても、すごく感謝をしています」と語り、穏やかな笑顔でトークショーを締めくくった。
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