「夢幻紳士」シリーズは昭和初期の帝都東京を舞台に、探偵の夢幻魔実也が事件を解決していく怪奇ミステリ。1980年代に月刊マンガ少年(朝日ソノラマ)で連載がスタートし、その後雑誌の休刊・廃刊などの事情で掲載誌を変えながらも、今日までミステリマガジン(早川書房)などで発表が続けられている作品だ。
原作とは異なる要素が盛り込まれた今回の映画。海上監督は「私が中学2年生のときに『夢幻紳士』の、まさに今回(映画)のエピソードを初めて読みまして。夢幻さんが(三島)那由子を助けたのか助けなかったのか。感動したんだけれども、それがモヤモヤと何十年も残っていた」と言い、「描かれていない行間を映画として完結させてみたかった」という思いから、二十歳の頃より高橋にファンレターを送っていたことを明かす。そして映画化の許可をもらい、「いろんなことがあってだいぶ歳は取りましたけれども、映画を作りました」と今日までの日々を振り返った。続けて「(原作から)キャラクターを増やし、女性の部分の描写を増やしました。時代感を出すことも大事ですけれども、『どういった人間がこの探偵を好きになるのか』。それが私が13歳の頃から追い求めてきたテーマ」と作品に込めた思いを語り、「好きなものを突き詰めて映画が出来上がったので、ありがとうございますとしか言えないです」と感謝を述べた。
十勝十蔵役の杉山は「最初この役をもらったとき、『犬になっちゃうんですけどどうでしょう?』と言われて。なかなか犬になることもないので、朝方の駐車場で四つん這いで走るとか、そんな練習をしました」と役作りの裏話を披露。「原作は10代の頃に読ませてもらっていて、まさか『夢幻紳士』が映画になるとは思わなかったので。夢幻魔実也が生身の人間で現れるとこうなんだと。イケてる皆木くんをみんなに見てもらえて感無量です」と夢幻を演じた皆木についても言及した。
岡優美子演じる雛子と、相棒関係のような存在の梅子を演じたSARU。自身の役どころについて「梅子はとにかく雛子が大好きで、好きすぎて。そういう思いで演じていました。『守る』と言いながら、梅子は雛子の人形になりたいんじゃないかという感覚で演じていました」と口にすると、海上監督は「初めてその説を聞きました。なるほど」とうなずいた。
海上監督はミツ役を演じた井上について「原作では背景的に『これお母さんかな?』という絵しかないキャラクターなんですが、娘を愛してはいるけれどうまく愛を表現できないお母さんという役を演じてもらいました」と触れる。「かなり苦労した」と言う井上は「監督に(女優の)杉村春子さんのようにやってくれと言われて。『どういうことなんだろう』と思ったのが印象に残っています」と思い返すと、隣りに居た杉山も「監督は無茶ぶりが多い(笑)」と相槌を打った。
紀那が演じたのは木戸八重子というキャラクター。海上監督は「原作を読んだ皆さんはわかったと思うんですけど、(作中の)老夫婦のエピソードから八重子というキャラクターに来ていただきました。これは葛藤もあったのですが、夢幻さんというキャラクターに、こういうまとわりついている存在が居ることで、彼を表現して、説明してくれる手助けになってくれればいいなという思いで加えました」と述懐する。撮影当時、映画の出演経験がほとんどなかったという紀那は「私にとってのクランクインの日が、映画のクランクインの日でもあって。とにかく緊張していたんですが『ここが八重子の(大事な)シーンになる』と思っていたので、魔実也さんをいろんな方向から振り回さないと、という思いで過ごしていました」と当時の心境を吐露した。また原作にはない村人・三郎役を演じた森川は「すごいなと思ったのが神社のシーンで。その日は七五三で50人ほどの方がいらっしゃったんです。その中で、ものの5分で見事に撮影してあのシーンができあがって。それが一番印象に残っています」と撮影時のエピソードを披露した。
最後にトークの順番が回ってきた皆木は、海上監督から「あなたに夢幻役をやってほしいと思う」とオファーがあったというものの、「僕のような年寄りがやってもいいのかなと。もっときれいな若い人にやってもらったほうがいいんじゃないかとか、いろいろ思っていました」と率直な思いを述べる。「とにかく撮影が長くて。月に1回、2回(撮影)というのを何年もやっていたので、どんどん歳も取りますし。なので同じシーンでも葉っぱが何もない冬のときもあれば、セミがずっと鳴いている夏のときもあって。それが1つのシーンになっている部分もある」と月日をかけてこの作品が制作された様子を明かした。
映画「夢幻紳士 人形地獄」は東京・K’s cinemaほか全国で順次上映中。
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若狹 眞礼城 WAKASA Mareki @能代べらぼう屋 @marekingu
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