「アーヤと魔女」3DCGについて宮崎吾朗「ジブリは新しいことをやる必要がある」

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宮崎駿が企画、宮崎吾朗が監督を務める長編アニメ「アーヤと魔女」の合同取材会が去る11月30日に東京・スタジオジブリで行われた。

長編アニメ「アーヤと魔女」合同取材会より、宮崎吾朗監督。

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長編アニメ「アーヤと魔女」キービジュアル

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NHK総合にて12月30日に放送される「アーヤと魔女」は、「ハウルの動く城」で知られるダイアナ・ウィン・ジョーンズの児童向け小説を原作とした、スタジオジブリの3DCG作品。自分が魔女の娘とは知らずに育った少女アーヤは、ある日奇妙な家に引き取られ、そこで意地悪な魔女ベラ・ヤーガと暮らすことに。いくら頼んでも仕事をがんばっても魔法を教えてくれないベラ・ヤーガや、魔女と一緒に暮らす怪しげな男マンドレークに業を煮やしたアーヤは、周囲の人を操って自分の思い通りにさせてしまうという特技を使い、反撃を開始する。

合同取材会には宮崎吾朗監督が出席。「アーヤと魔女」の企画がスタートしたのは2016年だったと話し、作品に携わることになった経緯について「鈴木敏夫プロデューサーから原作小説を渡されて『次はこれでどう』と言われたのが始まりでした。ただそれ以前に鈴木さんが原作を携えていた姿を見かけて、話が来るんじゃないかとは思っていたので、それまでに作品は読んでいました」と語る。またその原作小説については「ダイアナ・ウィン・ジョーンズの作品は物語がよく練られて詰まっているものが多いのですが、『アーヤと魔女』は隙間が多いなという印象でした」と振り返り、「後で知ったのですが、この作品はもともと書きかけの作品で、後から手を入れようと置いていたものだったらしいんですよ。それを彼女が亡くなる前にそのまま出版したのが『アーヤと魔女』。なので世に出たのは最近のことですが、書いたのはけっこう昔のことだったそうですね」と話した。

長編アニメ「アーヤと魔女」より、アーヤ。

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「アーヤと魔女」にはアーヤの母親がロックバンドで活動していたという設定をはじめ、原作にはない要素が盛り込まれている。その理由について、宮崎吾朗監督は「孤児院に預けられていた女の子が怪しげな2人に引き取られました、そこで起こったトラブルをなんとかしました、だけだと話として要素が足りないかなという思いがありました」と明かす。さらに「ロックバンドの設定は、舞台・時代設定から思い付きました。まず作品の舞台はイギリスで、あとはアーヤが家に閉じ込められるわけですが、スマートフォンや携帯電話があると外と連絡が取れちゃうので(笑)、時代は1990年くらいにしようと考えました。すると1990年に10歳になった女の子が生まれたのは1980年で、そのお母さんの若かりし頃は1970年代。その時代といえば、僕が好きなイギリスのロックが華やかだった頃だなと」と述べた。

長編アニメ「アーヤと魔女」より、ベラ・ ヤーガ。

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また3DCGアニメをスタジオジブリが手がけるのはこれが初めてのこと。宮崎吾朗監督はこの試みについて「なんとなく日本の3DCG技術は映画などの分野では主流になりきれていないところがあって、それを悔しいなと感じていたのが1つ。あとはスタジオジブリも新しいことをやる必要があると思っていたんです」とその動機を語る。続けて「スタジオジブリは鈴木敏夫が宮崎駿の作品を作ってもらうために作ったスタジオ。とはいえ、いつまでもこの2人がジブリを担い続けるわけではないですよね。そう考えたときに、彼らがやってきたことを真似しているだけではこのスタジオに先がない、よくてうまくできたコピーを作ることにしかならないと思っていたんです。それなら、僕はCGをやるべきだなと考えました」と告白。現在の3DCG技術を使えば人物や背景をリアルに描くこともできるが、「実写っぽい造形でアニメを作るというのは僕がやりたいことではなかったので、映画『KUBO/クボ 二本の弦の秘密』のような、人形アニメーションに近いデザインにしました。例えばキャラクターの髪の毛は、キャラクターデザインの近藤(勝也)が描いた髪の毛のボリューム感をそのまま再現するために、一本一本描くのではなく、いくつかの塊として描いています」とそのこだわりを話した。

長編アニメ「アーヤと魔女」より、マンドレーク。

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作中ではいい子のフリをするなど、あの手この手を使って周りの大人を手玉に取るアーヤ。そんな彼女のキャラクターについては「下手をすると『嫌な子』だなと思われて終わる可能性もあるので、どう描くか悩みました。人を操ったり、たらしこんだりするだけだと『生き方としてどうなのよ』と思ってしまいますよね」と苦労を明かしつつ、「でも自分が置かれている状況を、自分の知恵や行動で少しでも生きやすいものにしていくという力はいつの時代でも必要じゃないかと。『そういう力を持っている子なんだ』という描き方ならアリだろうと思いました」と語った。

長編アニメ「アーヤと魔女」より、トーマス。

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取材会の終盤には、取材陣からキャスト陣の印象について聞かれた宮崎吾朗監督。主役のアーヤ役を演じた平澤宏々路については「本当にいい役者さんを発見したなと思いました。彼女のおかげでアーヤがエグくなりすぎない、かわいらしさも備えたキャラクターになっています。アーヤというキャラクターが完成したのは彼女のおかげです」と激賞する。またアフレコ現場の思い出について振り返り、「驚いたのはマンドレーク役の豊川悦司さんやトーマス役の濱田岳さんが、担当のセリフがない場面でもお芝居を続けていたところです。例えば豊川さんならマンドレークらしいぶつぶつとした独り言を言っていたり。本当に役者さんなんだなと思いました」とコメント。さらにNHKでの放送という、スタジオジブリ作品にとって初となる発表形態については「新型コロナウイルスの流行より前からこういう形で発表することになっていました。作り手としては、劇場ではなくテレビで公開するということは、より多くの人に見ていただけるチャンスがあるということ。いいことだなと思っています」と述べた。

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長編アニメ「アーヤと魔女」

NHK総合にて2020年12月30日(水)19:30~20:52

スタッフ

企画:宮崎駿
原作:ダイアナ・ウィン・ジョーンズ 「アーヤと魔女」(田中薫子訳)
脚本:丹羽圭子、郡司絵美
キャラクター・舞台設定原案:佐竹美保
音楽:武部聡志
音響演出:笠松広司
アフレコ演出:木村絵理子
キャラクターデザイン:近藤勝也
CGスーパーバイザー:中村幸憲
アニメーションディレクター:タン・セリ
背景:武内裕季
アニメーションプロデューサー:森下健太郎
プロデューサー:鈴木敏夫
制作統括:吉國勲、土橋圭介、星野康二
監督:宮崎吾朗
制作・著作:NHK、NHKエンタープライズ、スタジオジブリ

キャスト

ベラ・ ヤーガ:寺島しのぶ
マンドレーク:豊川悦司
トーマス:濱田岳
アーヤ:平澤宏々路

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(c)2020 NHK, NEP, Studio Ghibli

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