富野由悠季が「イデオン」“皆殺し”の理由語る「自殺感覚がありました」

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劇場版「ガンダム Gのレコンギスタ I『行け!コア・ファイター』」の都内初となる先行上映が本日9月14日に東京・国立映画アーカイブにて実施された。

「第41回ぴあフィルムフェスティバル(PFF)」でのトークショーの様子。左から荒木啓子、富野由悠季。

「第41回ぴあフィルムフェスティバル(PFF)」でのトークショーの様子。左から荒木啓子、富野由悠季。

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富野由悠季

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これは、9月21日まで開催中の「第41回ぴあフィルムフェスティバル(PFF)」の招待作品部門として行われたもの。本編の上映後のトークショーには、本作で総監督・脚本を務める富野由悠季とPFFのディレクターを務める荒木啓子が登壇。まず富野は「驚いているし、呆れてもいる。荒木さんが間違えたんじゃないかなと思って」と冗談めかしながらも、「『Gのレコンギスタ』という巨大ロボットものがここで上映されるとは思ってもいなかったので、困っているというのは本当のところです。だけど、困っているというのは半分は社交辞令で、本当のことを言うと当たり前だろうと(笑)。呼ぶのが25年遅かった!」と富野らしい少し毒のある言い回しで、この映画祭へ招待されたことを喜んだ。

左から荒木啓子、富野由悠季。

左から荒木啓子、富野由悠季。[拡大]

「新しい才能の発見、紹介、育成」をテーマに掲げるPFFにちなみ、これから映画監督を志す人へ向けて、富野の映画監督としてのモチベーションや原動力について話題が及ぶ。富野は「映画界に対しては恨みつらみしかなくて。恨みつらみがあるからやってこられたんだということです」とあけすけに話すと、「巨大ロボットものだって映画なんだけど、アニメであるために映画ではないというふうに言われながら50年を過ごしてきましたから。(今は)アニメが一般化してきたので、今僕が言っていることがわからない人も多いと思います。徹底的に貶められてきたし社会的に評価も得られなかった」と、巨大ロボットものが“玩具販売のための作品”という色眼鏡で世間に見られ、映画作品として評価されなかった当時を回顧。続けて宮崎駿監督のアニメ映画が登場した時代から世間の目がアニメに向き始めたと、富野が感じていた当時の状況を語り、「作品は作家がいて成り立つもので、おもちゃ屋さんが作品を作っているわけではない」との思いを抱き制作した劇場版「機動戦士ガンダム」でも「映画監督としては認めてもらえなかった。(映画監督と言ってくれるのは)『ガンダム』ファンだけなんですよ」と思いを明かした。

富野由悠季

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またイベントでは、「機動戦士ガンダム」の次に富野が総監督として制作に関わった「伝説巨神イデオン」について「『ガンダム』で成功した気分があったときに、これ以上の物語を自分では作ることができない。そういう自覚があったので、作品と心中するぐらいの覚悟でやりました。そのことが実を言うと皆殺しの演出であって、劇中の人間が全部死んじゃうのは最終手段なんですよ。一番やっちゃいけない。企画を立てたときから、この物語は皆殺ししかないと落ち着いた。「イデオン」以降、アニメの仕事をやっていけるか見えなくなっている部分があったので、ほとんど自殺感覚がありましたね」と述懐。「その後のことは考えていませんでした。考えていたら企画から逃げてました。逃げだして(業界から)フェードアウトするなら自爆するって覚悟があった」と富野のアニメに対する熱い思いに、荒木も「カッコいいじゃないですか。『イデオン』素晴らしいですよね」と感想を伝えると会場から大きな拍手が起きた。

劇場版「ガンダム Gのレコンギスタ I『行け!コア・ファイター』」ポスター

劇場版「ガンダム Gのレコンギスタ I『行け!コア・ファイター』」ポスター[拡大]

この日上映された「ガンダム Gのレコンギスタ」についてトークする場面では富野が「おそらく最後のエンディングは(テレビ版と)まったく同じ。エンディングに行くまでの後半部分はだいぶ違うので」とTVシリーズを再構成し新作カットを追加した全5部作となる本作の展開を説明。さらに「一番欠けていると思ったのは、アイーダとベルリが兄弟だと自覚したときに、どういうふうな反応をするかというシーン。それに気が付いてコンテを描いた」と具体的なシーンを挙げ、観客の期待を煽る。また富野は「自分の意思を公表できる作品を作っているんだから、自分の作品で世直しをしたい」と発言。「『Gのレコンギスタ』の場合は世直しまで見えている。巨大ロボットものでどんなメッセージを送ったって、世直しの方法論は示すことができないんです。だから、こういう問題が具体的にこれから起こる可能性があるからそれをテーマとして掲げて、『Gのレコンギスタ』を見た子供たちが30年後、50年後に回答を出してくれるかもしれないと思っている」とポスタービジュアルにも「世界の子供たちへに送る未来へのメッセージ」と書かれた本作への思いを伝えた。

左から荒木啓子、富野由悠季。

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イベントでは、観客を巻き込んだ質問コーナーも実施。この日、抽選で選ばれイベントに参加した子供から「なんで宇宙に行った人は水を見ると薬になるんですか?」と作中に出てくるセリフについて質問が飛ぶ。富野は「宇宙にいると水を好きに使えないんですよきっと。だから水っぽいものを見るとホッとするんじゃないかなと思ってああいうセリフを作りました」と説明し、「おじさんはあのセリフはとても気に入っています」と笑顔を向ける。本作の完結がいつになるか聞かれた富野が「希望としては来年か再来年ぐらい……。僕の余命の問題も(笑)。なんとか目の黒いうちに次期作には行きたい」と力強く答えると万雷の拍手が送られる中、1時間40分を超える大ボリュームのトークショーは幕を閉じた。

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劇場版「ガンダム Gのレコンギスタ I『行け!コア・ファイター』」

2019年11月29日(金)より、全国23館にて2週間限定上映

スタッフ

総監督・脚本:富野由悠季
原作:矢立肇、富野由悠季
演出:吉沢俊一
キャラクターデザイン:吉田健一
メカニカルデザイン:安田朗、形部一平、山根公利
企画・製作:サンライズ

キャスト

ベルリ・ゼナム:石井マーク
アイーダ・スルガン:嶋村侑
ノレド・ナグ:寿美菜子
ルイン・リー:佐藤拓也
ラライヤ・マンディ:福井裕佳梨
クリム・ニック:逢坂良太

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