京極のオーラはこの映画だからOK?「コナン」制作裏を監督とPがぶっちゃける

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「監督・プロデューサーが語る 映画『名探偵コナン 紺青の拳(こんじょうのフィスト)』ができるまで」と題した公開講座が、去る6月7日に東京のデジタルハリウッド大学・駿河台キャンパスにて行われた。

左から諏訪道彦プロデューサー、永岡智佳監督。

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左から永岡智佳監督、諏訪道彦プロデューサー。

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本講座ではデジタルハリウッド大学教授の高橋光輝がモデレーターを務め、映画「名探偵コナン 紺青の拳」で監督を務めた永岡智佳と、プロデューサーの諏訪道彦が登壇。諏訪プロデューサーは87億円を突破したことが発表されている「紺青の拳」の、現時点での興行収入などについて説明するとともに、5月5日付けの各国の映画興行収入表をスクリーンに映し、「(各国で)『アベンジャーズ/エンドゲーム』が1位になる中、日本だけ(『紺青の拳』が1位になっていて)何かひとつ違う(笑)。(世界での報道を見ると)『日本では探偵の少年が暴れている』と言われていたりしました」と喜んだ。

台本の分厚さを紹介する諏訪道彦プロデューサー。

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諏訪プロデューサーは、「アベンジャーズ/エンドゲーム」と「紺青の拳」のコラボ動画が作成されたことにも振れ、「これは『アベンジャーズ』側が作ってくれたんですが、『コナン』の公開は4月12日で、『アベンジャーズ』は4月26日だったんです。映画が公開されてしまえば、特報映像って流れることはないんですが、(『アベンジャーズ』は公開が2週間遅かったので)『アベンジャーズ』の公開まで(こちらの映画が封切られた後も)この特報が映画館で流れる。我々にとってうれしいことばかりでした」と宣伝施策を回想。このほかにもタイトルに“拳”が入っていることから実現した「北斗の拳」とのコラボ動画も話題に挙がり、諏訪プロデューサーは「何がポイントかって(ケンシロウ役を務め、毛利小五郎の先代のキャストでもあった)、神谷明さんがナレーションをしてくれていることですよね。久しぶりに『コナン』のスタジオにやって来て、すごくよろこんでいただいたんです。(収録した音声について)こちらが『もう大丈夫です』と言っても、神谷さんが『いや、もう1回やる!』と録り直したりと、ノリノリでやってくれました」と明かした。

永岡智佳監督

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続いて話題は「紺青の拳」の制作裏話に。永岡監督はキャラクターたちが英語でしゃべるシーンが多いことについて、「アニメではよく、海外の人もなぜか日本語をしゃべっていることが多いですよね(笑)。青山剛昌先生と話しているときに、『海外に行くなら英語でしょ!』という話になり、海外のキャラクターは英語、日本人は日本語でしゃべるということになったんです」と説明。一方で終盤シーンでは英語で話していたキャラクターの会話を、一部日本語に変更したと語り、「(観客には子供も多いので)、大事なシーンを英語で言い合うのはどうかなと思って。日本語もしゃべれるという設定のキャラクターたちなので、急遽日本語での会話に変更しました」と述べた。

永岡智佳監督が講座のために制作した資料。

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その後永岡監督は観客に向けて「せっかく来ていただいたので、これまでメディアとかでも言及していないことをお話したいなと思いまして」と前置きし、講座前に制作してきたという劇中の時間の進み方についてまとめたスライドをスクリーンに投影する。永岡監督は「今回コナンくんたちはシンガポールに3泊4日で行っているんですが、映画を観ている人もコナンくんたちと旅をしている感覚になってもらえればいいなと思って、時刻の変化をとても大事にしているんです。どうしたらそう思ってもらえるかと考えたときに、時刻の変化が画面を通してわかればいいなと思って。今回の映画では、きれいに昼、夕方、夜を繰り返して3泊4日を表現しているんです」と各日の昼、夕方、夜にどのようなエピソードを盛り込んだのかを挙げて解説していく。さらに「もうひとつ、画面が単調にならないようにするという狙いもありました。ずっと昼間が続いたりするのもつまらないので」と付け加えた。

「名探偵コナン 紺青の拳」の場面カット。(c)2019 青山剛昌/名探偵コナン製作委員会

「名探偵コナン 紺青の拳」の場面カット。(c)2019 青山剛昌/名探偵コナン製作委員会[拡大]

昼、夕方、夜の時間の中で力を入れたパートとして夕方を挙げた永岡監督。怪我を負った怪盗キッドが夕日に照らされるシーンをスクリーンに映し、「これは特報にも入っている場面ですが、最初はシナリオにない特報限定のシーンだったんです。でも『これを入れないとまずいかも』って思って(笑)。このシーンを劇中に盛り込むことで、夕方のシーンが印象的になったなと感じています」と回想する。また同シーンについて永岡監督は「ヴァンパイアのイメージで作った」と意図を告げ、「ヴァンパイアといったら、太陽にさらされたら消えてしまうという印象があると思うんです。このシーンも夕日にさらされたキッドが、最終的に崩れ落ちていくというイメージで作らせてもらいました。一方で月明かりが出ているシーンでは(同じくヴァンパイアが月の下で活発になるというイメージで)、傷を癒やしたキッドが元気よく飛び立っていく姿を描いています」と話した。

講座の様子。

講座の様子。[拡大]

キッドとともにスポットが当たる京極真については、「園子のことが一番に好きという純粋さと、園子に関することになると弱さが出てしまうという部分が描けたらいいなとは思っていました」とキャラクターへの思いを吐露。一方で京極とキッドのバトルシーンでどうしても京極のセリフが思い浮かばず、コンテには叫び声だけを書き、京極役の檜山修之に「おまかせします!」と投げてしまったことを告白する。アフレコでは檜山は「覚悟」というセリフを吹き込んでおり、「私だったら思い浮かばなかったセリフですし、いい声をいただいたなというシーンでした」と称賛した。

永岡監督は「名探偵コナン から紅の恋歌(からくれないのラブレター)」では助監督を務めており、本作で監督に抜擢された際には、「から紅の恋歌」で監督を担当した静野孔文に一番最初に報告したという。その際に静野監督から「2時間という長い時間の中で、ダレちゃうときがどうしても出てくるので、そのタイミングをグラフというか温度計のように測っていたほうがいい」とアドバイスをもらったと振り返る。「自分の中でそれが頭の中に残っていて、飽きさせないためにどうすればいいかというのを考えたときに、先ほど言ったような時刻を変化させることに繋がりました」と語った。

講座の様子。

講座の様子。[拡大]

この時点で講座は約1時間ほど進行しており、高橋教授から「そろそろ質疑応答のコーナーへ」との指示が入る。「まだ園子や蘭のシーンもあるけど、時間を計算していなかった(笑)」と残念がる永岡監督だったが、諏訪プロデューサーからの「園子を無視したら(園子役の)松井菜桜子さんに殴られるかもしれない(笑)」との声もあり、園子のシーンも解説することに。「今作の園子といえば、(前髪を下ろした)“前髪園子”ですよね」と永岡監督が口に出すと、客席からは同意の歓声が上がる。「私はずっと『(前髪を下ろした園子を)やりたい、やりたい!』って言っていたんですけど、『(原作ではしていない髪型だし)先生に聞いてからのほうがいいんじゃない?』って周囲のスタッフに言われたりして。先生は『かわいいからいいんじゃない』と言ってくれたんですが」とコンテを見せながら熱弁する。さらに前髪を下ろした園子が、京極の額に付いた絆創膏を取るシーンについて、「この場面の絵コンテを青山先生がチェックしたときに、慌てる京極の頭を押さえつける園子のカットを追加してくれて。『この園子はかわいい!』って、キュンとしました。 先生は乙女の心を持っていると思います。1カ所こういう仕草を直すだけで、そのキャラらしい動きになるのはすごいですよね」と青山の仕事について紹介した。

左から永岡智佳監督、諏訪道彦プロデューサー。

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その後の質問コーナーでは「各キャラクターの性格に沿った無理のない行動をさせながら、話も進めなければならないというのは難しい部分も多いのでは?」という問いかけが。永岡監督はこれに対し、「今回の映画では蘭、園子、キッド、コナン、京極といったキャラクターたちは、原作では出さないような表情をたくさんしています。だけど青山先生の作られたキャラクターを踏み外さないようにしなきゃなというのは常に思っていまして。自分でもしっくりこない部分に関しては、青山先生にセリフを考えていただいたりました」と回答する。

「名探偵コナン 紺青の拳」の場面カット。(c)2019 青山剛昌/名探偵コナン製作委員会

「名探偵コナン 紺青の拳」の場面カット。(c)2019 青山剛昌/名探偵コナン製作委員会[拡大]

このほか「京極が終盤で赤いオーラを纏いながら戦うのが『〇〇ボール』を彷彿とさせました」という「DRAGON BALL」になぞらえての来場者の感想に対し、諏訪プロデューサーは「最近のだと……ブロリーか。そんな感じだったけ(笑)」とコメント。永岡監督は「あのシーンの赤いオーラは、いつもの『名探偵コナン』の映画であればファンタジーすぎて絶対にOKにならないシーンかなと思ってます。ただ今回の映画に関しては、京極が強すぎてファンタジーな部分もありますし、最後の仕掛けに関してもファンタジーの要素がたくさんある。いろんなところが異色すぎて、この映画に限ってならありかなとコンテでOKを出しました」と答えた。

左から高橋光輝教授、永岡智佳監督、諏訪道彦プロデューサー。

左から高橋光輝教授、永岡智佳監督、諏訪道彦プロデューサー。[拡大]

さらに「今後『コナン』の映画で取り扱ってみたいキャラクターは?」と問われた永岡監督は、「全員と言いたいところですけど、もう1回怪盗キッドをやってみたいですね」と断言。「私世代の女子は、怪盗キッドが好きな人が多いんじゃないかと思っているんです。だからこそもう一度やってみたいですね。今回はキッドの扱いや、自分の解釈と皆さんが持っているキッドの解釈が間違っていないか緊張していました」と永岡監督が述懐すると、諏訪プロデューサーが「4、5年後になっちゃいますよ」と、毎年主要キャラクターが変わる劇場版「コナン」シリーズの特徴を挙げながらツッコミを入れた。

「名探偵コナン 紺青の拳」のビジュアル。(c)2019 青山剛昌/名探偵コナン製作委員会

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「名探偵コナン 紺青の拳」は「名探偵コナン」の劇場版23作目。シリーズ初となる海外・シンガポールを舞台に、19世紀末に海底に沈んだとされる世界最大の宝石“ブルーサファイア”を巡り、コナンと彼の宿命のライバルである怪盗キッドが、マリーナベイ・サンズ近郊で起きた殺人事件、そしてシンガポールの巨大な陰謀に巻き込まれていく。

※権利元の都合により、記事初出時から画像を一部変更いたしました。

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