「東アジア文化都市2019豊島」の一環として展開されたイベント「オールとしま・ウエルカム・東アジア」内にて、本日2月3日、
ともに豊島区に在住している藤沢と山田。手塚治虫、藤子不二雄、石ノ森章太郎、赤塚不二夫らが居住していたトキワ荘が豊島区に建っていたことに関連して、藤沢と山田はそれぞれトキワ荘の作家陣の思い出や作品について語っていく。藤沢は手塚作品について「『どろろ』が大好きで。手塚先生から受けた影響は大きいですね」と明かし、山田も「頭の中が宇宙だったんでしょうね」と述べた。
司会から「在住している2人から豊島区への要望はあるか?」という質問が投げかけられると、山田は「わかりました、軽くディスります(笑)」と前置きしながら、「“マンガとアニメの街”と宣言して、秋葉原からぶんどろうとする心意気は本当にいいと思います」と話し、会場から笑いが漏れる。また著作権の問題について触れ、「ファンの人から『Dr.コトー診療所』(の違法アップロードされているドラマを)YouTubeで観ました! 感動しました!と言われることがあって。そういうところを豊島区が先陣を切って対応してほしい」と提案。「仮面ティーチャーBLACK」で池袋を舞台に作品を執筆した藤沢は「池袋を舞台にしたマンガは意外と少ない。マンガやアニメでもっと使ってもらえたらいいな」と希望を述べながら、「あとは“マンガとアニメの街”と言っているわりにはアニメ寄りかなと。もうちょっとマンガを推してくれると、マンガ家としてはうれしい」と要望する。山田も「アニメもドラマもマンガ原作ものが多いですしね。もっとマンガを推してくれてもいいじゃないですか!」と熱烈にアピールした。
トークショーではそれぞれの作品について裏話が語られる場面も。「Dr.コトー診療所」のドラマが制作された際を振り返り、山田は「今思えば顔から火が出るような恥ずかしいこともやっていたんです。撮影現場に行ったときに、ほぼほぼ初対面の俳優さんに向かって、『ここはもっとこうしてほしいんです』と、誰が演出家なんだみたいなことを言ったこともあって(笑)。でもそのおかげか、原作ファンにもドラマファンにも楽しんでもらえる作品になったんじゃないか」と述懐した。
また「Dr.コトー診療所」を描こうと思ったきっかけについては、「もともと医者ものではなく、濃密な人間ドラマを描きたかった。昭和初期の長屋のように、鍵もかけずに隣の家でご飯を食べるような、そういうドラマはどこで描けるかなと思って離島へ行ってみたんです」と思い返し、「そこに瀬戸上先生という24時間365日、ずっと島の命を預かっているスーパードクターがいて。その先生が島に来たときの話を聞いて、ここを描くべきだと思ったんです」と説明した。しかし当初は「『誰が読むんだ』と言われましたよ」と言う。「医者ものを描くんだって? 『ブラック・ジャック』を超えられるの?というふうに、その頃は医者ものを避けるという風潮があって。さんざんバカにされたんです」と当時の周囲の反応を明かした。
藤沢は「湘南純愛組!」にも登場する鬼塚英吉を描いた「GTO」について、「最初は担当と『次はどんなのをやろうか』と話しているときに、『一番鬼塚英吉がやりそうにない職業に就かせよう』という話から教師をやらせることになって、そうしたら意外にすごくハマった」と語る。「GTO パラダイス・ロスト」では連載の場を週刊少年マガジンからヤングマガジン(ともに講談社に)移した藤沢。「少年誌と青年誌の違いは、セクシーなシーンを描くことができる。やりやすくはなりました。あと、休みをいっぱいもらえるようになりました(笑)」と話す。そして「今はちょっとお休み中なんですが、今年また始まりますので……」と次回作についても言及した。
さらにトークはマンガの電子化についての話題に。山田は「先ほどの著作権の話もそうですが、データが(ネット上に)流れていくと原本と同じになってしまう。そのへんは厳然な処罰が必要。でないとマンガ家は食べていけなくなるし、マンガ家になる人もいなくなって、せっかくの才能が潰れていくことになる」と述べつつ、「今は新人賞もデータで(作品を)送ってくる人が7割を超えている」と、デジタルで作品を執筆する投稿者が増えていることにも触れた。藤沢も「普通にマンガをスキャンして電子化していると、紙と変わらないのかなと。例えば音が付いたり、セリフが強調されたり、キャラクターの目線が動いたりするくらいでも、電子化がもっと普及するのではないかなと。紙は紙で、紙だけにしかない特典を付けるほうが双方にいいのでは」と意見した。
イベントでは、藤沢と山田合作による色紙がじゃんけんで勝った1名にプレゼントされる企画も展開されたほか、合作による巨大イラストボードが公開された。最後に山田は「かなり『Dr.コトー診療所』は休んでしまいましたが、今年再開しますので……。25巻の先を思い出しながら描きたいと思います」と展望を語り、客席から拍手が贈られる。藤沢も「マンガを休んで充電期間といいますか、いろんな体験をしながら次の構想を考えているところなんですが、とうとう今年始まりますので、皆さんよろしくお願いいたします」と今後に触れ、ファンの期待値を高めたところでトークショーは幕を閉じた。
「東アジア文化都市」は日本・中国・韓国の3カ国において、文化芸術による発展を目指す都市を選定し、その都市でさまざまな文化芸術イベントなどを実施するもの。昨日2月2日と本日の2日間、東京・東京芸術劇場のギャラリー1で催された「オールとしま・ウエルカム・東アジア」では、藤沢と山田の作品はもちろん、豊島区ゆかりの作家陣による原画が展示され、神木で作られたという「Dr.コトー診療所」の診療所の看板なども並んだ。
なお東京・豊島区役所本庁舎の3階~5階、10階豊島の森では、「区庁舎がマンガ・アニメの城になる」と題した展示イベントを2月11日まで開催中。クリヨウジ、さいとう・たかを、里中満智子、夏目房之介、しりあがり寿によるインタビュー映像「マンガ・アニメと社会・未来」や、特集「久野遥子と巡る、マンガ・アニメのいろいろな作り方」などの展示が企画されている。
「区庁舎がマンガ・アニメの城になる」
期間:2019年2月1日(金)~11日(月・祝)9:00~17:00
会場:東京・豊島区役所本庁舎3階~5階、10階豊島の森
料金:無料
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- オールとしま・ウエルカム・東アジア | 東アジア文化都市 2019 豊島
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