映画の上映後には、すず役を務めた
さらに片渕監督は「この映画はクラウドファンディングで、たくさんの方に支援をお願いしなければ作り始められないというところから始まった作品です。できあがってからもたくさんの方に支援をしていただき、何より劇場の方に(映画を上映する)場所を与えていただいているなと実感しています」と感謝の思いを吐露。のんも「これほど長くひとつの作品と付き合っているのは初めてで貴重な体験ですね。こんなに皆さんに愛されている作品は、世界中どこを見ても『この世界の片隅に』だけなんじゃないかと思ってしまうくらいです」と続けた。
2016年11月12日に公開された本作について片渕監督は「映画を作っている途中で、『この映画はいつ公開するんだ』という話になったとき、『8月の映画だよね』とたくさんの人から言われたんです。でも『そうかな?』と思ってしまって」と語り始める。「『8月だから戦争のことを思い出すのか』『8月以外は戦争のことを思い出さなくてもいいのか』と考えたりもしました。8月以外にも戦争に関してはいろいろなことがあったし、すずさんの人生は8月だけではない。なので『あえて夏を避けて冬にやったほうがいいんじゃないか』という話になったんです」と公開にまつわる裏話を明かした。
終戦の日である本日8月15日に行われた今回の上映イベント。劇中での終戦の日に、玉音放送を聞いてすずが感情を昂ぶらせるシーンについて、話題を司会者から振られたのんは「最初あのシーンを見たとき、私の中ではそれまでのすずさんからすると意外な気がしたんです」と告白しながら「でもすずさんの中には、それだけ押し込めていた怒りのような感情があったんだと思ったんです。それが終戦の日に溢れ出てしまったのかなと考えていました」と当時のアフレコを振り返った。
また「この世界の片隅に」に約30分の新規シーンを追加した別バージョン「この世界の(さらにいくつもの)片隅に」について片渕監督は、「今日ご覧いただいた映画は、原作にある場面が一部なくなっているんです。『そのおかげで』と言ってもいいのかもしれませんが、すずさん(にフォーカスを当てて、彼女)の人となりを紹介していく映画になりました。(映画では)すずさんは一人ぼっちでお嫁に来て、姪の晴美ちゃんだけが友達という生活をしていたんですけど、本当はもっともっと知り合った人だったり、元から知っている人たちがいて。そういう人たちが変化を遂げていくのを(原作では)目の当たりにしているわけです。それを語ることで、すずさん自身がどういうふうに変わっていって、最後の結末に至ったのかを詳しく描いてみたいなと思ったんです」と制作の意図を説明した。
7月に公開された「この世界の(さらにいくつもの)片隅に」の特報で久々にすずを演じたのんは、「期間がちょっと空いていたので、『できるかな』って不安な気持ちがあったんです。でも片渕監督と録音スタジオで会って、ブースに入って何度かやってくうちに『大丈夫だな』って手応えを感じました」と回想。原作者のこうのが特報のすずを観た感想について片渕監督が、「『今までにない大人のすずさんですね』と言ってくれました」と明かすと、のんは「それほめ言葉ですよね?」と不安がりながらも、「そう言っていただけるとありがたいですね」とはにかむ。そして最後にのんは今後行われるアフレコについて、「これから付け足していくすずさんのシーンは、こうの先生がおっしゃっている通り、『ちょっと大人っぽいすずさん』だったりするので、その部分を掘り下げていけたらなと思います」と意気込んだ。
映画「この世界の(さらにいくつもの)片隅に」は12月の公開を予定している。
「この世界の(さらにいくつもの)片隅に」
テアトル新宿・ユーロスペースほかにて12月全国公開
スタッフ・キャスト
原作:
企画:丸山正雄
監督補・画面構成:浦谷千恵
キャラクターデザイン・作画監督:松原秀典
美術監督:林孝輔
音楽:コトリンゴ
プロデューサー:真木太郎
監督・脚本:
製作統括:GENCO
アニメーション制作:MAPPA
配給:東京テアトル
製作:2018「この世界の片隅に」製作委員会
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