野田サトルがアイヌから受けた唯一のリクエスト明かす、手塚治虫文化賞贈呈式

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第22回手塚治虫文化賞の贈呈式が、本日6月7日に東京・浜離宮朝日ホールにて行われた。今年はマンガ大賞を野田サトル「ゴールデンカムイ」、新生賞を「BEASTARS」の板垣巴留、短編賞を矢部太郎「大家さんと僕」、特別賞をちばてつやが受賞している。

第22回手塚治虫文化賞贈呈式の会場に設けられた「ゴールデンカムイ」の展示コーナー。

第22回手塚治虫文化賞贈呈式の会場に設けられた「ゴールデンカムイ」の展示コーナー。

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里中満智子

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贈呈式ではまず選考の過程を説明するため、選考委員を代表し里中満智子が登壇。数日前から喉の調子が悪く、声が出にくくなってしまったという里中は、「ちば先生が18年ぶりに単行本(『ひねもすのたり日記』)をお描きになりましたが、私は長いこと描かないでいたらバチが当たっちゃいました(笑)」とささやくようにしゃべりだす。「こんな声で選考過程の説明もないと思いますので、『いろいろあった末にこれらに決定した』と思ってください(笑)。最終選考に残ったのは力作ばかりで、選考委員も熱心に議論を戦わせたんですけど、例年になくすんなり決まったのではないでしょうか」と語り、その後各賞の受賞者に称賛を送った。

そして壇上に上がった野田は、「タイミング悪く歯の矯正の最中でして、お聞き苦しい点があるかもしれませんが……」とスピーチを始める。現在「ゴールデンカムイ」のテレビアニメが放送されていることに触れ、「とてもいいタイミングで賞をいただけたと思っています」と喜んだ。

板垣巴留

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続いて板垣が「BEASTARS」に登場するレゴムの被り物をして登壇すると、会場からは笑い声が上がる。板垣は「顔出しNGでして……」と被り物をしている理由を述べながら、「マンガ関係のそうそうたる方々が集っていて、改めて大きな賞なんだなと実感しました。自分で言うのもなんですが、まだ若いのでこれからも全力でマンガを描き続けていけたらなと思います」と決意表明した。

矢部太郎

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お笑い芸人として活躍している矢部は、壇上に立つと「僕は今40歳なんですが、マンガを描き始めたのは38歳のときでして。38歳で『マンガ家になる』って言ったら周りの方が全力で止めると思うんです。ただあまり人には言わないですが、僕は38歳のときに自分を18歳だと思うようにしていたので、今20歳なんです(笑)。当時は自分が10代だと思ったら、失敗しても大丈夫だと思ってやってきました」と持論を展開。短編賞の受賞については、「マンガの神様のお名前が付いた賞をいただけて大変光栄です。手塚(治虫)先生はどんなに売れっ子になっても、若い先生の作品に嫉妬していたと伺っていました。神様を恐れぬようなことを言ってしまうと、天国の手塚先生に僕の本を読んでいただいて、少しでも嫉妬していただけたら良いなと思っています」とコメントした。

ちばてつや

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最後に18年ぶりの単行本「ひねもすのたり日記」の刊行と、長年の業績、マンガ文化への貢献に対して特別賞を贈られたちばは、「『ひねもすのたり日記』はそれまでビッグコミック(小学館)の巻末でマンガを描いていた水木(しげる)さんが、元気がなくなってきてしまったということでピンチヒッターとして始めたんです。連載を始めて水木さんがお亡くなりになり、託されたような気持ちで描いています」と連載開始の経緯と水木への思いを口にする。また手塚とのエピソードについて、「これは聞いた話なんですが、手塚先生が『あしたのジョー』が載っている週刊少年マガジン(講談社)を持ってきて、アシスタントに対して『これのどこが面白いんだ!』って聞いたらしくて。そのときにアシスタントが『ジョー』を褒めたら、少年マガジンを床に叩きつけてギュッと踏んだらしいんです。手塚先生に自分の本を踏んづけてもらって、嫉妬してもらえたということで、マンガ家として自信を持てるようになりました。(今回の受賞で)年をとってまた手塚先生に褒めてもらえた、作品を踏んづけてもらったような気がしています」と振り返った。

第22回手塚治虫文化賞贈呈式の会場に設けられた「ゴールデンカムイ」の展示コーナー。

第22回手塚治虫文化賞贈呈式の会場に設けられた「ゴールデンカムイ」の展示コーナー。[拡大]

贈呈式後には野田と、「ゴールデンカムイ」でアイヌ語の監修を務めている千葉大学教授の中川裕氏の対談を実施。野田と中川の対談では「ゴールデンカムイ」に登場するアシリパの名前の由来や、劇中衣装や方言についてトークを展開する。中川氏は本作について、「『ゴールデンカムイ』がアイヌ文化に与えた社会的なインパクトは非常に大きい」と評し、「この作品の連載が終わってしまったときに、アイヌ文化に対する人々の関心がなくなってしまわないようにするのが、我々(研究者)の使命だと考えています」と宣言。一方で野田はアイヌ文化との関わりについて「『ゴールデンカムイ』を描くうえでアイヌの方々に取材をする中で、『こうしてほしい』と言われたのは1回だけなんです。それは『かわいそうなアイヌは描かなくていい。強いアイヌを描いてほしい』ということでした」と回想した。

左から手塚るみ子、矢部太郎。

左から手塚るみ子、矢部太郎。[拡大]

イベントのラストには手塚の生誕90周年を記念した矢部と手塚るみ子の対談も実施。絵本作家のやべみつのりを父に持つ矢部は、手塚るみ子とともにそれぞれの父親との思い出などを語り合った。

※アシリパのリは小文字が正式表記。

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寮美千子 @ryomichico

【ゴールデンカムイの野田サトルがアイヌから受けた唯一のリクエスト】手塚治虫文化賞贈呈式 https://t.co/EUoF1jqTqo 「『かわいそうなアイヌは描かなくていい。強いアイヌを描いてほしい』ということでした」

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