西島さやわかの公開マンガ学校、紛失トークは波乱含み

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去る11月22日、ニフティが運営する東京お台場のイベントハウス「東京カルチャーカルチャー」にて、「ひらめき☆マンガ学校 公開講義 ~消えたマンガ原稿67ページ~」が行われた。これは西島大介とライターのさやわかが講師を務める、16人の生徒全員をマンガ家にすると公言した連続レクチャーの特別編だ。

「ひらめき☆マンガ学校 公開講義 ~消えたマンガ原稿67ページ~」第1部の様子。背後の大スクリーンをフルに使いこなした授業となった。

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トークの残り時間を気にする西島とさやわか。ふたりの仲睦まじいやりとりに会場はほんわかムード。

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「ひらめき☆マンガ学校 公開講義 ~消えたマンガ原稿67ページ~」第2部の様子。6人でのパネルディスカッション。

「ひらめき☆マンガ学校 公開講義 ~消えたマンガ原稿67ページ~」第2部の様子。6人でのパネルディスカッション。

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ひらめき☆マンガ学校の生徒、木村勇が真島ヒロ「FAIRY TAIL」のコマ割とアングルを借用して描いた習作、1ページ目。

ひらめき☆マンガ学校の生徒、木村勇が真島ヒロ「FAIRY TAIL」のコマ割とアングルを借用して描いた習作、1ページ目。

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西島大介が30分で模写した赤松健「魔法先生ネギま!」の1ページ。

西島大介が30分で模写した赤松健「魔法先生ネギま!」の1ページ。

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第9回文学フリマにて販売予定の同人誌「中間報告書 たった3日でマンガ家になった16人」。

第9回文学フリマにて販売予定の同人誌「中間報告書 たった3日でマンガ家になった16人」。

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2部構成で行われたイベントの第1部では公開講義と題し、西島の新刊「魔法なんて信じない。でも君は信じる。」で論評パートを担当した批評家・音楽家の大谷能生を生徒役に、マンガ学校でこれまで行われてきた授業のダイジェストが展開された。マンガのリテラシーは皆無という大谷に、両講師は「この講義が終わったときにはマンガ家になっている」と断言。

講義はコマ割、作画、文字情報というマンガの3要素について、それぞれ実例を挙げながら独自の理論を展開していく。まずコマ割は、既存のマンガから借用することを提案。大谷は「コード進行だけカバーするってことか」と即座に理解してみせた。会場のスクリーンには真島ヒロ「FAIRY TAIL」の1ページがサンプルとして映され、続いてマンガ学校の生徒がそのコマ割を借用しつつ自分の絵柄で描いた習作が。そこにはオリジナルにはなかった妙味が誕生しており、大谷は爆笑しつつ「(同じコード進行でも)メロが独自なら作品になってる」とコメント。

続いて絵柄については、西島が行った赤松健「魔法先生ネギま!」の模写を紹介。それぞれ30分、15分、1分で描いた模写を見ると、荒っぽい15分バージョンにもっとも西島の持ち味が出ていた。これをもって両講師は「ていねいに巧みに描くばかりがマンガではない」と主張。ならば、と大谷は手元にあったマンガ雑誌の1ページをスケッチブックに模写し始めた。

最後に文字情報についてさやわかは、古典的な物語に頼らずとも、何らかの文字が流し込まれてさえいればマンガになる、と解説。実例として複数のマンガのフキダシを交換したり、フキダシにビジネス書や小説の一節を流し込んだりしてみせた。いずれも難なくマンガとして成立してしまい、会場は再び爆笑の渦に。では先ほど大谷が描いた模写に何を書き込むか、という段になって西島は「もう(書かずとも)読んでみて」と促し、スクリーンをバックに大谷は小説を朗読。両講師は「この行為をもってマンガになりました」と高らかに宣言してみせた。

第2部では西島、さやわか、大谷に加えマンガ評論家の泉信行、伊藤剛、竹熊健太郎の3氏が登壇。西島の新刊「魔法なんて信じない。でも君は信じる。」をめぐるパネルディスカッションが開催された。この本には西島の原稿が編集者によって紛失、851万886円の損害賠償をもって決着をみた顛末が記されており、業界関係者の注目を大いに集めている。

自己紹介も終わらぬうち、竹熊は「この本には意図的に隠蔽されていることがあり、率直に言えばアンフェアだ」と切り込み、会場はいきなりヒートアップ。竹熊によれば、生原稿のなりたちや複製芸術としてのメディア論を語る一方で、原稿の金銭的価値や出版社との契約といったビジネスとしての側面には触れられておらず、肩すかし感があるとのこと。この提言を軸にディスカッションは進められていくこととなった。

竹熊の論を受け、伊藤は過去のさまざまな事例を挙げて論点を整理。マンガの生原稿に金銭的価値が認められたのは比較的近年であること、また紛失した際の損害賠償などについて明文化された契約がなく、不文律で処理されてきたことなどを示した。一方で泉は、この本がメディア論に終始した要因を「西島さんはビジネス論や業界論に興味がない」と分析、西島自身も「この事件でマンガ業界をどうこうしてやろうという意思はない。そもそもマンガ業界にいる気がしない」と同意した。

「ならばなぜこんな本を出したのか」と問う竹熊に対し、西島は「ネット上で訴える人もいますけど、自前のブログでそれを書くことって、編集者不在だと思う。自分で用意した媒体で、自分は可哀想だとかとか主張するのはどうなのかなと。そうではなく、ただこの不思議なできごとを淡々と描くと面白いと思った。マンガとして」と返答。納得の行かぬ竹熊が「だったら賠償金なんて受け取らなければいい。そのほうがあなたの印象だっていい」と突っ込むと、西島は「言われてみれば……そうか、そうですね」と苦笑した。

竹熊は消化不良感を抱えつつも「紛失事件は今後も起こりうる。防止するためには原稿を渡す前にマンガ家がスキャンしておくことと、紛失まで想定した出版契約の取り交わしだ」と提言。そこで西島が「僕、スキャナー持ってないです」と告白すると、パネラーたちから「ええーっ」と驚きの声が。終始、西島の天真爛漫さが目立つディスカッションとなった。

なお西島とさやわかが講師を務めるひらめき☆マンガ学校は、来る12月6日に行われる第9回文学フリマにて、同人誌「中間報告書 たった3日でマンガ家になった16人」を販売する予定。マンガ学校生徒の完全プロフィールや、昨年行われた1日マンガ学校を受講した今日マチ子との師弟鼎談、生徒による玉砕した持ち込み原稿などが収録され、この前代未聞のマンガ教室の全貌がわかる1冊となっている。

※ひらめき☆マンガ学校のご好意により、取材用に録音した第1部のハイライトを音声ファイルでお届けします。記事と併せてお楽しみください。





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