片渕監督は「すずさんがこの世界のどこかで健在だとしたら、彼女は現在91歳です。今、あの時代のことを知る人がとても少なくなってきています。自分たちの両親がどんな時代を生きてきたのかを知ることによって、やっと大人になれるのだという気持ちで作りました」と制作のきっかけを明かした。
のんが演じたすずは、昭和19年に18歳で広島の呉に嫁ぎ、戦争が世の中を変えていく中でも前向きに生きた女性。のんは「すずさんという人は、戦争というものにあからさまに嫌悪感を示している人ではないんじゃないかなと思いました。それよりも、目の前にある毎日の暮らしを一生懸命に生きるという部分を意識しました」と役作りについて語った。
劇場アニメ「この世界の片隅に」は、イギリス、フランス、ドイツ、メキシコなど14カ国での上映が決定している。そこで2人へ、世界へ向けて動き始めた心境に関する質問が飛んだ。片渕監督は前作「マイマイ新子と千年の魔法」をアメリカで上映した際、舞台挨拶で観客から次作について質問されたことを振り返り「『次の映画の舞台は1945年の広島です』と答えたとき、その場にいた多くの人が息を飲んだ。原爆というものは人類史的な悲劇であると、外国の方ともひとつの心になれている気がします」と述べた。続けて「そこにいたのがどんな人たちだったのかを、この映画を通じて世界中の方々に感じてもらえれば」と願いを込める。
同じ質問にのんは「昭和20年の広島を舞台としていることも重要ですが、その中で普通に生活していくっていう切なさや感動は、すべての人に響くんじゃないかと感じています」と答えた。そして観客からの質問コーナーで、一番好きなセリフを聞かれたのんは、すずがアメリカ軍の落としていった伝単(ビラ)を落とし紙(トイレットペーパー)に利用する場面を挙げる。「そのシーンの、『なんでも使って暮らし続けるのがうちらの戦いですけえ』っていうセリフがすごく響きました」とコメントした。
最後に片渕監督は「観ることで、タイムマシンに乗って当時へ行くような気持ちになれるものができたと思っています。行った先に、のんちゃんが声を貸したすずさんという人がいます。すずさんが毎日をどんなふうに暮らしていたのかをのぞいてください」と、公開を楽しみに待つファンへメッセージを送る。のんも「普通に毎日が巡ってくるという、“普通”がすごく愛おしくなる作品だと思います。生きるということに涙があふれてくるのですが、悲しい涙ではない。何があっても生活を続けるという力強さに心震える映画だと思います」と作品の魅力を語り、イベントは幕を閉じた。劇場アニメ「この世界の片隅に」は11月12日より全国ロードショー。
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『映画「この世界の片隅に」が世界14カ国へ、のん「すべての人に響く」』 劇場アニメ「この世界の片隅に」は、イギリス、フランス、ドイツ、メキシコなど14カ国での上映が決定している。11月12日より全国ロードショー。 https://t.co/bvhxPBfC4B