あずまきよひこ、読者へ「すみません」手塚治虫文化賞の記念イベント&贈呈式
2016年5月29日 21:45
15 コミックナタリー編集部
第20回手塚治虫文化賞の記念イベントと贈呈式が、本日5月29日に東京・有楽町朝日ホールにて開催された。
第1部のイベントでは、浦沢直樹と糸井重里による対談を展開。お互いがそれぞれアイデアを思いつく瞬間のエピソードや、浦沢が手塚治虫に影響を受けた描写など、浦沢のイラストを描きながらの解説も交じえ1時間に及ぶトークが繰り広げられた。またしりあがり寿と西原理恵子による画力対決コーナーも。今回受賞作の「よつばと!」「じみへん」をはじめ、「孤独のグルメ」「ヒカルの碁」「ポーの一族」「ドラえもん」など、幅広いジャンルの作品がしりあがりと西原独特のテイストで仕上げられ、スクリーンに映し出された作品に会場は盛り上がりを見せた。
その後は受賞作の贈呈式へ。選考委員のあさのあつこは大賞に選ばれた一ノ関圭の「鼻紙写楽」について、「圧倒的な画力、絵の力に選考委員全員が打たれました」と語り、「みなもと太郎選考委員から『(一ノ関は)木綿と絹を絵で描き分けられる』という秀逸なご意見も出ました。1人の人間の心の表情までもしっかり描き分けられ、ものすごいリアリティを持って読者に示してくれる」と評価した。
同じく大賞に選ばれたあずまきよひこの「よつばと!」を強く推したというあさのは、同作を「子供と大人の理想の姿」と表現。「よつばが眠りにつくときに『今日も一日楽しかった』とつぶやいて目を閉じるシーンがあるんですけれど、これほど幸せな子供が今の日本にどのくらいいるだろうかと。私にとっては子供と大人の幸せを描いた、非常にリアルなファンタジーでした」と解説した。
壇上では、4名の作家がそれぞれ受賞についてコメント。大賞を受賞した「鼻紙写楽」の一ノ関は、どのようにマンガを作っていくかを小説家や映画監督、演出家などといった言葉で例えながら順を追って説明していく。そして最後には「私の原稿を長年待ち続けてくれた編集者の皆さんの忍耐と辛抱と奔走が、この『鼻紙写楽』を世に送り出してくれました」と感謝を述べた。
同じく大賞を受賞した「よつばと!」のあずまは、編集者や印刷所へ締め切りを守れなかったことを謝罪しながら、読者にも「お待たせしてすみません。この次もたぶん待たせます」と苦笑いで告げる。続けて「選んでいただいた選考委員の方々もありがとうございました。今後もこれを励みにがんばりますので、応援よろしくお願いします」とメッセージを残した。
「町田くんの世界」で新生賞を受賞した安藤ゆきは、「『町田くんの世界』は、町田くんを好きになってもらいたくて描いています。地味な作業で地味な作品を描いているつもりなので、このような素晴らしい賞をいただけて光栄です」と思いを口にする。
短編賞に選ばれたのは、中崎タツヤの「じみへん」。同作は自らが四半世紀に及ぶ連載の終了を決意し、昨年完結した。中崎は「引退したあとに賞をいただいて驚いています」と切り出し、「あまりにも申し訳ないので辞退しようと思ってたんですよ。だけど担当の方に『賞金あります?』って聞いたら『ありますよ』と言うので、ちょっとネットで……いくらかな?と思って見ちゃいまして。これはもうありがたくいただくことにしました」と語り、会場からは笑いと大きな拍手が送られた。
特別賞には10年にわたり博物館と図書館の両面からマンガ文化に貢献したとして、京都国際マンガミュージアムが選出。壇上には館長の養老孟司が登壇し、「京都市と京都精華大学、地元の方のご協力で成り立っているミュージアムでございます。今後ともよろしくお願い致します」と締めくくった。イベントの最後には受賞記念トークとして、京都精華大学学長も務める竹宮惠子が登場。「マンガとミュージアム」をテーマに、マンガの展示についてなどが語られ、イベントは幕を閉じた。
楊(やん) @yan_negimabeya
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