本日3月24日、マンガ大賞2009の授賞式がニッポン放送イマジンスタジオにて行われた。ノミネートされた10作品から見事大賞に輝いたのは、
マンガ担当の書店員を中心に集まったマンガ好きの有志が、「友達に勧めるならコレ!」というコンセプトで選ぶマンガ大賞。50名余のマスコミおよび選考委員が集まる中、大賞実行委員でもあるニッポン放送アナウンサー吉田尚記氏の司会により授賞式は開始された。
同じく実行委員の久保朝美氏より賞の概要が説明されたのち、プレゼンターとして登場したのは、昨年の大賞受賞者、「岳」の石塚真一。直前まで原稿を執筆していたところを駆けつけたという石塚は、昨年受賞した感想を求められると、「想像以上に反響があり、驚くとともにありがたかった。多くの人が手に取ってくれるきっかけになったと思う」と述べた。
そして、いよいよ大賞の発表。ノミネートされた10作品がムービーで紹介され、来場者が固唾を呑んで見守る中読み上げられたのは、「ちはやふる」末次由紀の名だった。
残念ながら作者の末次は授賞式への出席を辞退したとのこと。代理として担当編集である講談社BE・LOVE編集部の坪田絵美氏がトロフィーを受け取った。受賞にあたり末次から届いた直筆のイラスト入り手紙(文末参照)を司会が朗読すると、プレゼンターの石塚からは「お互いこれからもがんばりましょう」とエールが贈られた。
受賞のコメントを求められた坪田氏は、はにかみながらも興味深いエピソードを披露。坪田氏自身がA級のかるた競技者で、大学2年生のときに全国2位の成績を残していること、講談社の面接試験では「かるたマンガを作りたい」と回答して入社したことを明かした。
また、かるたマンガのアイデアを持ちかけられた末次は、すぐさま単語帳を用意して1週間後には百人一首を暗記しており、1カ月後には畳敷きの部屋を借りてかるたを実践していたという。坪田氏いわく「いまは相当取れるんじゃないかな」。
末次の取材熱心さにも触れ、連載当初は毎週のようにかるた大会に出かけたこと、昨年の夏には近江神宮での全国高校かるた選手権を取材し、名人戦・クイーン戦もすでに取材済みであることを明かした。現場での末次は、多彩なアングルで写真を撮りたいと思うあまり、会場内のあちこちで立ったりしゃがんだり、やや浮き気味なほどの熱意と愛着だという。
記者から作者の授賞式欠席について質問されると、末次の言葉として「過去に犯した間違いというものがあり、自分はまだこういう場に出て行けるような人間ではない。一生懸命マンガを描いていくことでしか恩返しはできない」という考えを伝えた。タブー視されるかと思われた過去のトレース事件に自ら触れた真摯な姿勢に、会場からは感嘆の声が漏れた。
受賞の喜びを記した末次のイラストは、今後全国の書店を巡回する予定。また全国の書店で関連作品を紹介するポップが使用されるとのこと。大賞はもちろんノミネート作品いずれも粒揃いなだけに、この賞のロゴが、まだ見ぬ面白いマンガと出合う指標となってくれそうだ。
マンガ大賞2009最終結果
102pt「ちはやふる」末次由紀
94pt 「宇宙兄弟」
65pt 「3月のライオン」
47pt 「深夜食堂」安部夜郎
46pt 「青春少年マガジン1978 ~ 1983」
45pt 「聖☆ おにいさん」
43pt 「とめはねっ! 鈴里高校書道部」
36pt 「ママはテンパリスト」
25pt 「トリコ」
15pt 「よんでますよ、アザゼルさん。」
※集計方法は投票された1位を3pt、2位を2pt、3位を1ptと換算。
末次由紀コメント
この度は、「ちはやふる」をまんが大賞2009の大賞に選んで下さって、ありがとうございます。
本日の授賞式への欠席を、まず深くお詫び申し上げます。
賞など無縁のこれまでだったので、未だにまんが大賞を受賞したことが信じられません。
講談社のBE・LOVEでまんがの仕事を再開して約2年、
まんがを描くかチョコレートを食べるか取材に行くかの毎日でした。
ボツをたくさんもらいつつも、まんがばっかり描ける毎日が楽しくて、それだけでもう充分で、今年の一月末のまんが大賞ノミネート10作品に入ったことを知った時は、「こんなに面白くて立派な漫画家さん達と同じところに名前が並んでいる」ということが感動的に嬉しくて、今度こそ溢れるぞというくらい充分でした。
しかし、その後に予想もしない大賞受賞の報を聞き、
充分を通り越してボロボロ泣いてしまいました。
マンガを描いてきただけの2年です。
でもその「末次由紀がまんがを描く」ための場を下さった人がいて、
「末次由紀のまんがをいいものにする」ために協力して下さった人がいて、
「末次由紀にもう間違いをさせない」ために最大限努力して下さった人がいます。
そしてなにより、根気強くもう一度まんがを描くことを待っててくれた読者のみなさん。
「ちはやふる」はそういうたくさんの人の思いの上で育ちました。
私だけの作品じゃないという思いでこれまでも描いてきましたが、
今回まんが大賞に選んで頂き、多くの書店員の皆さん、選考委員の皆さんに受け入れて頂いて、
「ちはやふる」はますます私だけのものではなくなりました。
そう思わせてくれたたくさんのみなさん、本当にありがとうございました。
どれだけ言っても足りないのですが、本当にありがとうございました。
直接この場でみなさんにお礼が言えず、本当に申し訳ありません。
このまんが大賞が生まれるに当たって注ぎ込まれた書店員さん達の愛情を思うと、
後からでもお一人お一人に握手をしに行きたい思いに駆られます。
「ちはやふる」はまだまだこれから続いていきます。
作中の千早たちが元気にかるたバカのまま突き進めるよう、
より一層集中して描いていきます。
一人でも多くの方に手に取って頂けるように、スタッフ・編集部の方と
精進していきますので、これからもどうかどうかよろしくお願い致します。
末次由紀
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