このマンガ、もう読んだ?
「真夜中ハートチューン」声優マンガとしてもVTuberマンガとしても読める、声のプロ目指す4人のヒロインとのラブコメ
2024年11月26日 17:30 PR五十嵐正邦「真夜中ハートチューン」
「もう一度キミと話したい」「言いたいことがあるんだ」──高校2年生の山吹有栖は、顔も本名も知らないラジオ配信者の少女・アポロを探していた。学校の放送部にアポロの手がかりを見つけるが、そこにいたのは「声に関わる仕事に就く」という夢を抱いた4人の美少女。その中からアポロを探そうとする有栖だったが、確証が得られない。なぜなら声を聞き比べても「全員似てるっちゃ似てる…!!!!」。アポロ探しと、夢に向けてがんばる4人の応援という2つの課題を抱えた男子のラブコメディが幕を開ける。
文
主人公の目的は人探し、手がかりは記憶の中の“声”だけ
2019年にアニメ化された「川柳少女」や、2025年にアニメ放送が予定されている「まったく最近の探偵ときたら」でも注目を集める
基本的にはいわゆるヒロインレースが繰り広げられる王道のラブコメ少年マンガであるが、最大の特徴は物語が“声”を軸に展開される点。4人のヒロインがそれぞれ歌手、声優、VTuber、アナウンサーといった声の仕事に就くことを夢見ているほか、主人公・山吹有栖は顔も知らない「アポロ」と名乗るラジオ配信者を見つけだすことが目下の至上命題だ。有栖は4人の夢を全力応援しながら、声の記憶だけを頼りに誰がアポロなのかを探っていく。
音が出ないことがプラスに働く、マンガならではの“声”の物語
音の出せないマンガというメディアで“声”をモチーフにするというのは、一見無謀な挑戦にも思えるかもしれない。しかし一読すればわかるとおり、本作の場合はむしろ音が出ないことがプラスに働いている。
有栖に言わせると、ヒロイン4人の声質は「似てるっちゃ似てる」のだという。それでいて各人各様の異なるクセがあり、全員が部分的にアポロの声を彷彿とさせるが、完全一致とまでは言えないため決定打には欠ける──そんな微妙な諸条件を実際の音声ですべてクリアしようと思ったら、なかなかに困難を極めるはずだ。
しかし本作は音が出せないマンガである以上、彼女たちがどんな声なのかはすべて読者の想像力に委ねてしまうことができる(というかそれしかできない)。それによってこの設定は説得力を欠くことなく成立し、なおかつ読者も無理なく受け入れられるという寸法だ。マンガならではの、マンガであることを最大限生かした見事な設定であると言っていいだろう。逆に言えば、仮に本作が映像化されるとしたら、この点をどう説得力をもって解決できるかが最大の焦点となってくるのかもしれない。
“声優マンガ”にも“VTuberマンガ”にもなる、声の仕事を目指すヒロインたち
作品の見どころとしては、もちろんヒロインたちと有栖による微笑ましいイチャイチャ描写やヒロインレースの行方がまず第一に挙げられるわけだが、ちょっとした職業マンガのように楽しめる側面も見逃せない。
例えば歌手志望の井ノ華六花は自作曲を人前で歌えないトラウマを抱えており、有栖はそれを乗り越えさせようと奮闘する。VTuber志望の霧乃イコに対しては視聴者を飽きさせないための見せ方や人気配信者になるための具体的な助言を行い、イコ本人のマインドを変化させていく。同様に声優志望の日芽川寧々もアナウンサー志望の雨月しのぶもそれぞれに当事者ならではのリアルな悩みを抱えており、有栖の全力サポートを得ながら少しずつ苦手を克服していく過程が描かれる。そのときスポットの当たるヒロインによって“声優マンガ”になったり“VTuberマンガ”になったりするのも、本作ならではのユニークな楽しさと言えよう。
また、主人公・有栖の絶妙な人物像も秀逸だ。一般的にラブコメの主人公というと読者が感情移入しやすいように“平凡であること”が求められがちなポジションであるが、有栖は“山吹財閥の御曹司にして完璧主義の自信家、しかもビッグマウス”という比較的珍しいタイプ。どちらかというとライバルキャラのような設定にも思えるが、にもかかわらず、しっかり“愛され主人公”としてのポジションを確立している。一歩間違えれば嫌われポイントにもなりかねない上記のような性質を備えながら、それがしっかり彼の魅力として機能しているあたりは読んでいて気持ちのいいポイントだ。果たして彼は無事アポロを見つけだすことができるのか、読者は思わず応援したくなってしまうことだろう。
「真夜中ハートチューン」第1話を読んでみよう!
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