「あのマンガの裏には、どんな音楽があったのか?」マンガ家に自身と作品を支えた楽曲を紹介してもらうコラム「あのマンガに音楽を添えて」がスタート。「あの作品の執筆中に聴いていた」「やる気を出したいときに聴く」「マンガの制作に影響を与えた」といった問いから、マンガ家と音楽の関係をあぶり出す。
第1回には「うしおととら」「からくりサーカス」「月光条例」といった人気作を手がけ、長年、週刊少年サンデー(小学館)の看板作家の1人として活躍する
ヘッダーイラスト
「うしおととら」
レインボー「キル・ザ・キング」
今までの溜めに溜めた、なんだかわからない鬱憤を大爆発させてマンガの連載を始めるのには、この気合いとノリとスピード感が必要だったのです!
イントロのリフから、何かスゴいモノが始まる、って言う期待感が溢れて来ませんか?
もう中学生の頃から聴いていたから、オールタイム好き、なのかも知れませんが。
渡辺美里「パイナップルロマンス」
いかにハードロックやメタルで頭の中が構築されていたあの頃だとは言え、第1話目のネームを描いていたとき、この曲を聴いた瞬間に、闇夜に舞い上がるうしおととらの姿が浮かんだのだから仕方がない!
そんな新人の自分に一番足りなかったキラキラした華やかで甘い何かが、この歌にはぎっしり詰まっているような気がします。
だから、マンガにテーマ曲を探すのが今も必要なんだよなあ。
「からくりサーカス」
Cocco「星に願いを」
連載を通して、ヒロインのしろがねの心の変化が重要でした。
女性的で、なおかつ激しい曲を求めていたんです。この時期のCoccoの重いリフと激しいせつなさの絡む曲が、作品に不可欠だったのでした。
この曲を聴きながら、長い連載を終わらせる為に歯をギリギリやってました(笑)。バイオリンのパートがスゴい好き。
Säju「流星」
同様の理由です。自分の心を夜空に向けるイメージの広がる歌詞がイイんですよね。
CD屋さんで、店内に流れていたこの曲をレジに訊いて手に入れました。
何故か、「からくりサーカス」は、それまで頼りにしていたハードロックが伴走音楽には少ないです。
作品が必要とする音楽は作者の好みとは関係ないのかなあ、とかマンガ家仲間の安西信行くんとしゃべります。
「月光条例」
First Signs Of Frost「The Saviour」
戻って来たメタル曲!
これはジャケ買いした輸入盤で、歌詞もわからなかったのですが、印象的なイントロを聴いたときに、「月光条例」の説明の冒頭が浮かんで来たからしょうがない(笑)。
痛快なサビとかキャッチーさはないのだけれども、不器用で若々しくてかっこいい。
まるで主人公の月光のような曲は、ずっと作品の背中を押してくれていました。
LAST ALLIANCE 「ハロー エンド グッドバイ」
後にも先にもマンガのラストシーンに曲が決まっていたのはこれだけです。
旋律が綺麗でしかも力強くて、しかも、こんなに美しくさよならを告げる曲は、自分はちょっと知りません。
この曲がかかって恥ずかしくないラストを描こうとがんばったのを覚えています。
読者へのメッセージ
やっぱり、自分が作品を描くときは、音楽に引っ張ってもらっているんだなあと、このアンケートを書いていて思いました。
今回は、連載を開始するとき、もしくは特定のシーンの起爆剤になった音楽に限定して書かせてもらいましたが、まだまだ伴走音楽はたくさんたくさんあるのでした。ありがとう、音楽!
藤田和日郎(フジタカズヒロ)
1964年5月24日、北海道旭川市生まれ。1989年、第22回小学館新人コミック大賞佳作受賞作「連絡船奇憚」でデビューを果たす。1990年には週刊少年サンデー(小学館)にて代表作となる「うしおととら」の連載を開始。同作で1992年に第37回小学館漫画賞少年部門、1997年に第28回星雲賞コミック部門賞を受賞した。同誌で長期連載された「からくりサーカス」「月光条例」はいずれも人気作となっている。「うしおととら」は全33巻、「からくりサーカス」は全43巻、「月光条例」は全29巻、今年7月に完結を迎えた最新作「双亡亭壊すべし」は全25巻で発売中だ。
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