天上天下唯我独尊 鶴ぼ~ちゃんのアニメPへの道 第1回 [バックナンバー]
JO1・鶴房汐恩がアニメ制作現場に行く前に
あの頃、僕を救ってくれたようなアニメを作りたい
2021年4月30日 19:00 40
松倉友二プロデューサー(J.C.STAFF)インタビュー
作品がより面白くなるようにプロデュースするのが仕事
鶴房汐恩 JO1の鶴房汐恩です。よろしくお願いします。
松倉友二 J.C.STAFFの松倉です。鶴房くん、めちゃくちゃ関西弁だね。
鶴房 え、敬語でも出てますか?
松倉 出てるね(笑)。僕は京都出身なんですよ。
鶴房 僕、滋賀です。
松倉 同じ関西ってだけだけど、それだけで好感度アップ(笑)。
鶴房 ははは(笑)。実はさっきまで僕緊張しないタイプなんでとか言ってたんですけど、今ちょっと緊張してます。
松倉 全然硬くならないでいいですよ。業界的に秘密なこと以外はなんでも答えますので、ざっくばらんに聞いてください。
鶴房 ありがとうございます。じゃあ早速ですけど、松倉さんは今の僕とちょうど同じ20歳のときにアニメ業界に入ったと聞いて。どういう流れで働き始めたんですか?
松倉 実は僕、アニメ業界に入る前はゲーム業界にいたんですよ。
鶴房 似てるけど違いますね。
松倉 そうそう。鶴房くんがまだ生まれる前の時代だけど、ゲーム業界がスーパーファミコンだメガドライブだって盛り上がってる時代。ゲーム業界で働くときのアドバンテージになるかなと思って、アニメの学校に行って勉強してたんです。アニメ勉強してますって体でゲーム会社で働かせてもらうことになったから、学校の授業は適当にこなしつつ(笑)。
鶴房 そしたら最初はアニメもあんまり興味なかったんですか?
松倉 子供の頃は観てたけど、学生時代とかはほとんど通らなかったなあ。だけど縁あってJ.C.STAFFに入社することになって、やっぱり仕事を任されたからには何かしら形にしたいなと思ってがんばったわけですよ。
鶴房 今何年目ですか?
松倉 今年で30年目かな。
鶴房 すげえ……。僕アニメプロデューサーってなりたいって言ったんですけど、どういう仕事なのか詳しくはわかってなくて。
松倉 プロデューサーの仕事としては大体2種類あります。アニメを作るにはお金がかかるでしょう。そのお金を集めた、またはお金を出資してくれたということでクレジットされているプロデューサー。あとは自分みたいに、アニメを実際に作ってるプロデューサーがいるんです。またアニメを作るタイプのプロデューサーにも、自分のやりたいことをスタッフと相談しながら決めていくタイプもいれば、1人で全部こなせちゃうタイプの人もいる。僕はどちらかというと人と話すことで考えがまとまっていくから、自分のアイデアメモをもとにみんなと一緒に詰めていく感じかな。だから思い通りのものができることもあるし、当初考えていたものとは全然別のものになることもある。
鶴房 やっぱり思い通りのものができたらうれしいし、別のものになったら残念って思うんですか?
松倉 うーん、でもそんなことはないよ。別のものになっても、代わりのいいところが当然生まれるからね。作品がより面白くなるようにプロデュースしていくのが僕の仕事でもあるから。自分では思いつかなかった要素を監督とか声優さんが入れていってくれて、1つの作品として形になってくる。その過程が楽しいんだよね。
鶴房 なるほど。作品のアイデアはどういうときに考えてるんですか?
松倉 基本的には常時考えてるね。
鶴房 今でもですか?
松倉 今もです。やっぱり作るからにはウケたいから、今どんなものが喜んでもらえるかとかはアンテナを張るようにしているかな。だから人に会ったときもそうだし、テレビを観てるときもそう。それとはまた別に、自分が何か感じたことを伝えたいっていう気持ちが昂ったときにも企画を立てたりします。
鶴房 僕もパフォーマンスしてないときも、ダンスとか歌のことは常に頭の中にあります。業界は違いますけど同じなんですね。
声には好みが現れる
鶴房 僕、「変態王子と笑わない猫。」がめちゃくちゃ好きで。あれはどういうふうに作っていったんですか?
松倉 あれは映像メーカーさん(DVDなどの映像ソフトを作る会社)から企画の提案をいただいたんですよ。それから原作を全部読んで、どこまでだったら1クールに収まってちゃんとオチもつくのかとかを考えて。カントクさんのキャラクター原案を、あのアニメーターさんにキャラクターデザインしてもらったらどんな絵になるかなあとかいろいろ妄想しました。キャラデザだけじゃなく、監督も脚本もそうですね。どのスタッフでどういうふうに作っていくのかを頭の中で組み立てて。
鶴房 頭こんがらがりそうやわ……。
松倉 ははは(笑)。
鶴房 「変猫」以外にもいろんなアニメを作ってこられたと思うんですけど、ヒットする作品の特徴とかってあるんですか?
松倉 やっぱりキャラクターがいいことかな、生き生きとしていること。ストーリーが面白いというのは大前提ではあるんだけど、話が面白いだけとか、絵がキレイなだけっていうのはなかなかヒットしないんですよ。
鶴房 キャラクターがいいっていうのはビジュアルですか? それとも設定なのか声なのか。
松倉 トータルですね。絵はなるべく上手なほうがいいし、声もキャラクターに合っているほうがいい。あとはそのキャラクターが、ほかのキャラクターと掛け合いをしたときに楽しそうに動いているとヒットに結びつきやすいなと感じますね。
鶴房 そうなんですね。あと個人的にちょっと気になったんですけど、ヒロインに自分の好みとかって反映されたりするもんなんですか?
松倉 声に関しては、割と個人の好みが現れるジャンルかもしれないね。だから自分の中でヒロインをやるべきだなと思う声も、けっこう傾向が偏っちゃったりする。例えば水瀬(いのり)くんなんかは「ダンまち(ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか)」でヒロインをやってもらったんだけど、ほかのタイトルでも重要な役によく選んじゃうんですよ。でもいい声だなあと思うから、こればっかりはしょうがないよね。
アニメを観るハードルはなるべく下げてあげたい
鶴房 1話って大体どれくらいで作るんですか?
松倉 いろんな工程を踏むから、1話だと2、3カ月だね。
鶴房 1話だとCM抜いたら20分とかですよね。何カ月もかけて一生懸命作ってるのに、こっちは暇なときに観て、一瞬で観終わっちゃうじゃないですか。そう考えたら、ちゃんと観なあかんなあ。
松倉 それぐらい軽い気持ちで観てほしいっていうのもあるけどね。一番悲しいのはね、観てくれないことだから。いろんな楽しみ方があっていいと思うんだよ。なんでもかんでも、セリフを1つも聞き逃さないようにしなきゃとか思って観るのは疲れちゃうじゃない。
鶴房 そっか、アニメを観ることが苦になっちゃいけないですね。
松倉 できればアニメを観るハードルはなるべく下げてあげたいし、いろんな人に喜んでもらえるように幅もできる限り広げてあげたい。それが、うちの会社のポリシーの“なんでもやる”につながってるのかもしれないね。
鶴房 ちなみに、自分の作ったアニメが完成したら何回も観るんですか?
松倉 うーん、作ってる過程で何回も観てるからなあ(笑)。
鶴房 「飽きた!」みたいな(笑)。
松倉 もちろん、もう一度観たいなって思うタイトルもいくつかはあります。心が弱ったときとかね。
鶴房 僕、けっこう苦しめられてる時期にアニメを好きになったんですけど、プロデューサーさんとかでもつらいときに観たくなるもんなんですね。
松倉 あ、でも僕の場合はまたちょっと意味合いが違うかもしれない(笑)。過去にがんばって作ったアニメを観ると、「あの頃の俺、こんな大変なことができたんだよなあ……」って思えるんだよね。
鶴房 あはは(笑)。自分の気持ちを上げるために観るってことですね。
松倉 そうそう。そのためだけど、よくできた作品とかは結局ホロっと泣いちゃったりね(笑)。
何を作りたいのかを見定めることが大事
鶴房 簡単にアニメプロデューサーになりたいって言いましたけど、今日話を聞いていて、やっぱり大変な仕事やなって思いました。
松倉 いやいや、やりたいっていう気持ちが一番大事だから。この業界って、何かをやりたいって思っている子が何かをできる場所でもあるんです。逆に言っちゃうと、何もしたいことがない人からは何も生まれない。チャンスも巡ってこない業界なので。
鶴房 大変な分、やりがいもありますか?
松倉 やりがいはありますよ! 自分から何かを発信して、それを観た人たちからリターンがくる。喜ばれることもあれば怒られることもあるけど、一般的な仕事をやってるとなかなかそういう反応を得られることって少ないじゃない。だけどアニメは毎週毎週放送があって、そういう機会がしょっちゅうだから。自称だけど“プロデュースタイトル世界一”って言ってしまうぐらいたくさんのアニメを作ってるのは、この仕事が好きだからこそですね。
鶴房 世界一! すごい人と話ししてたんや……。
松倉 僕も、アニメプロデューサーになりたいっていう鶴房くんを応援しますよ。
鶴房 うれしいです。最後に、これから本格的にアニメ作りについて学ぶ僕にアドバイスをいただけますか?
松倉 まずは、アニメプロデューサーとして何を作りたいのかをちゃんと見定めることが大事かな。俺も実際プロデューサーと言ったって、シナリオが書けるわけでもないし、絵が描けるわけでもない、演技ができるわけでもない。何もできないわけですよ。何もできないからこそ、いろんな人の力を借りてアニメを作ってる。だから自分の中で作りたいものをしっかり持っていれば、どんな人とどうやって作ったら形になるのか、自然に考えられるようになっていくと思いますよ。
鶴房 わかりました。がんばります!
連載タイトル考案・執筆
──松倉さんのお話を聞いて士気も高まったところで、次回からの本格始動に向けて連載タイトルを考えましょう。決まったら、紙に筆で書いてください。
うわー、書道久しぶりやわ。硬筆は3段までいったんですけど、毛筆はあんまり得意じゃなくて。でもやってみます。
──一応、こちらのほうで「鶴房汐恩、アニメプロデューサーへの道」というタイトル案も用意はさせていただきました。
あ、そうなんですね。でも正直、それだと僕っぽくはないんですよね。
──鶴房さんらしさを入れるとすると?
鶴房汐恩の前に「天才」を付けるとか。
──なるほど。でも「天才」という言葉と、アニメ業界をこれから学んでいくというフレッシュさがなんかしっくりこない感じがします。
あとは「異才」とか「期待のルーキー」とか。
──うーん、悩みますね。でも「鶴房汐恩」という名前を最初に持ってきて、パッと目に留まりやすいほうがいいとは思います。
そっか。
──鶴房さんらしさがありながら、連載としてわかりやすいタイトル。
ほんまに僕の色を出すんやったら暴走しますけど。
──暴走……。では一度、勢いで紙に書いてみますか? 字面を見てまた考えてもいいですし。
オッケーです。
──真剣ですね。一言もしゃべらない。
できました。
──「天上天下唯我独尊 鶴ちゃんのアニメPへの道」。
ダメですか?
──いや、ダメではないんですが……。あと、鶴ちゃんと呼ばれているイメージがあまりなくて。
(何か書き足す)……これでどうですか?
──「鶴ぼ~ちゃん」。
鶴ぼ~ちゃんです。いいタイトルじゃないですか?
──鶴房さんが自ら考案したということは伝わりますね。
僕はめちゃめちゃいいと思います。え、よくないですか?
──ご本人の気持ちが一番ですもんね……(笑)。わかりました、次回からこの連載のタイトルは「天上天下唯我独尊 鶴ぼ~ちゃんのアニメPへの道」でいきましょう。
鶴ぼ~ちゃんの取材後記
次回予告
鶴房さんがいよいよアニメの制作現場へ。今日お世話になった松倉プロデューサーが働く、J.C.STAFFにお邪魔します。制作部、作画部、仕上部、美術部、CG部、撮影部……鶴房さんもどこかの作業に挑戦させてもらうかも? 更新は6月を予定しています。(7/19追記:次回は6月更新予定とお伝えしておりましたが、制作の都合により8月以降の掲載となりました。)
また連載の感想やご意見も、ハッシュタグ「#鶴ぼ~P」でお待ちしております。アニメにまつわる気になることをツイートしてもらえたら、鶴房さんやスタッフが参考にさせていただきます。
鶴房汐恩(ツルボウシオン)
2000年12月11日生まれ、滋賀県出身。サバイバルオーディション番組「PRODUCE 101 JAPAN」にて約6000人の応募者から視聴者投票で選ばれ、世界的な活躍を目指すボーイズグループ・
衣装協力
・オーバーオール:¥30,800
AT-DIRTY/NO name!(tel:078-333-1341)
・シャツ:¥6,050
T&C Surf Designs/エフエムワイインターナショナル(tel:03-6421-4440)
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