「交響詩篇エウレカセブン ハイエボリューション1」特集|12年ぶりに集結した京田知己、佐藤大、吉田健一のコメント&制作現場に潜入!

「交響詩篇エウレカセブン ハイエボリューション1」のBlu-ray / DVDが、2月23日に発売された。劇場アニメ3部作となる同シリーズは、2005年から2006年にかけて放送されたテレビアニメ「交響詩篇エウレカセブン」を原点としながら新たなストーリーが展開する作品だ。

映画ナタリーでは総監督の京田知己、脚本を手がけた佐藤大、キャラクターデザインを担当した吉田健一のコメント、「交響詩篇エウレカセブン ハイエボリューション」シリーズの制作現場レポートを掲載。さらに「ハイエボリューション1」解説コラムや特装限定版Blu-rayに収録された特典の一部も紹介する。

コメント構成 / 藤津亮太 文・撮影 / 奥富敏晴

「エウレカセブン」の現在地
2005年に放送開始となったテレビアニメから始まる「エウレカセブン」シリーズは、ゲーム、マンガ、小説、パチスロなど、さまざまなメディアへ派生し、数多くの作品やアイテムを誕生させてきた。そして総監督の京田知己、脚本の佐藤大、キャラクターデザインの吉田健一とテレビアニメのオリジナルスタッフが12年ぶりに集結し製作されるのが劇場アニメ3部作「交響詩篇エウレカセブン ハイエボリューション」だ。2017年9月に公開された「ハイエボリューション1」は、テレビシリーズで言及されながらも、謎に包まれていた世界の危機“サマー・オブ・ラブ”が、初めて映像化されたことでも話題になった。
「交響詩篇エウレカセブン ハイエボリューション1」ポスタービジュアル
  • 「交響詩篇エウレカセブン ハイエボリューション1」より、レントン。
  • 「交響詩篇エウレカセブン ハイエボリューション1」
  • 「交響詩篇エウレカセブン ハイエボリューション1」より、エウレカ。
幼年期の終わり、そして新たな物語へ
約30分の新映像とチューンナップされたテレビシリーズの素材で構成され、オリジナルキャストによる新規アフレコで制作された本作。単なる総集編ではなく設定を変えた新たな物語が再構築されている。随所に挿入される「PLAY BACK(巻き戻し)」「PLAY FORWARD(再生)」のテロップによって、物語は複雑な時系列に。映画の現在軸となるのは、サマー・オブ・ラブから10年後、家出をした主人公レントン・ビームスが野犬に追われながら荒野を走る場面だ。彼はこの25日の間に起こった出来事を回想していく。サマー・オブ・ラブから命を賭して人類を救った英雄である父アドロックのこと、地方都市ベルフォレストでの鬱屈とした日々、運命の転機となった少女エウレカとの出会い、育ての親ビームス夫妻との別れ。彼はさまざまな人物との出会いと別れを経験し、新たな旅立ちを決意する。
偉大な父を持つシンガーとテレビシリーズの遺伝子
主題歌「Glory Days」を歌うのは、尾崎豊の長男であるシンガーソングライター尾崎裕哉。主題歌を作るにあたりテレビシリーズ全話と映画のコンテをチェックしたという尾崎は、偉大な父親・アドロックを持つレントンに共感したことを明かしている。また挿入曲としてドイツのテクノユニット、Hardfloorが新曲を提供。テレビシリーズにはテクノの楽曲やシンセサイザーの名前をオマージュした名称が多数登場し、サブタイトルにも使用されていた「アクペリエンス」という言葉もHardfloorの楽曲を元ネタとしていた。これを受け新曲も「Acperience 7」と名付けられている。さらにもう1つの挿入曲はテレビシリーズで流れた「Get it by your hands」を、HIROSHI WATANABE自ら映画用に作り直した「Get it by your hands HI-EVO MIX」。テレビシリーズと関わりのある2曲と、尾崎が歌う「Glory Days」がレントンの歩みに灯をともす。
  • 尾崎裕哉
  • 「交響詩篇エウレカセブン ハイエボリューション1」より、アドロック。
  • 「交響詩篇エウレカセブン ハイエボリューション1」
左から吉田健一、京田知己、佐藤大。

12年ぶりに集結!
主要スタッフ3人が語る新たな劇場版

総監督:京田知己「手描きメカの魅力を若い世代に」

「交響詩篇エウレカセブン ハイエボリューション1」より、レントン(左)とチャールズ(右)。

──テレビシリーズを描き直した際によりこだわった点はどこでしょうか?

テレビシリーズの映像をベースにしたところも、今回の設定に合わせてかなり細かく演技を変えています。特にチャールズとレントンが関わるシーンに手が入っています。キャラクターのポーズ、視線の送り方などの表情について、そのキャラクターが何を思っているかが感じられるよう、かなり丁寧に演出したつもりです。

──サマー・オブ・ラブを映像化するうえでもっともこだわった点はどこでしょうか?

京田知己

「ハイエボリューション」の企画を引き受けた理由の1つが、メカアニメーターがその力を発揮できるような環境を作りたいということでした。今、手描きでメカを描く作品は限られていて、メカアニメーターの能力がそのまま埋もれてしまうのは悲劇的なことだと思います。ちゃんと手描きのメカの魅力に若い世代が興味を持って観てくれるようにしたいと考えました。そこを踏まえて特技監督の村木靖さん、メカニック作画監督の阿部慎吾さんを中心に、自由にメカアクションを描いてもらいました。

──アドロック役に「機動戦士ガンダム」のアムロ・レイとして知られる古谷徹さんを起用された狙いと理由を教えてください。

演出で参加した「楽園追放 -Expelled from Paradise-」のとき、古谷さんがちょっとした役で出演されたのですが、そのときの演技に対する真摯な態度に感銘を受けたことがあります。またアドロックは「世界を救ったヒーロー」でもあるので、リアリティあるヒーローを演じられる方にお願いしたいと考えていました。その2つが組み合わさって、古谷さんにお願いすることになりました。

京田知己(キョウダトモキ)
1970年生まれ。アニメーション監督。参加作品にはメカ・クリーチャーデザイン、絵コンテ・演出としてテレビアニメ「地球防衛家族」、また演出として「楽園追放-Expelled from Paradise-」などがある。「ラーゼフォン・多元変奏曲」では監督を務めた。

脚本:佐藤大「いわば“曲先”の状態。作詞のようにセリフを」

佐藤大

──テレビシリーズではゲッコーステイト、祖父と孫、父と子、義父と子、姉と弟などさまざまな家族のつながりを描いていました。しかし、映画では父であるアドロック、チャールズと子のレントンという父子関係に焦点を絞り描いています。この狙いを明かすとしたら、なんでしょうか?

映画が現在の形になったのは、2017年1月のことでした。京田総監督が、それまで話し合って書いたものの成果を踏まえつつ、まず映像を構成し、いわば“曲先”の状態で、そこに作詞のようにダイアローグ、モノローグを乗せていきました。冒頭にアドロックが登場し、今回はレントンの成長に物語を絞るとなった段階で、ある意味自然に父子の要素に話が絞られていったのだと思います。

──映画化が発表された際のコメントでは「僕らにとって『エウレカセブン』は懐かしめる作品ではありません。だからこそ、かつての『エウレカセブン』に影響を受けたという人たちを裏切らない、そして今のお客さんにとっても新鮮な新しい『エウレカセブン』を作りたいと思っています」とおっしゃっています。エウレカセブンファンを裏切らないため、こだわった点・挑戦した点はどこでしょうか。

「交響詩篇エウレカセブン ハイエボリューション1」より、幼少期のレントン。

今回のレントンのモノローグは「今の子」に向けて書いた気がします。ここ数年の社会がザワザワしている中で大人になろうとしている子の気分が出ればと思っていました。そこで苦労したのが、冒頭のモノローグです。京田総監督からのオーダーにあったアッパーな感じ、盛り込まなくてはいけない説明、それから今の子に通じるレントンの気持ち。この3つをうまくまとめるのに苦労しました。一度提出したんですが、どうしてもしっくりこずアフレコ2日前に、全面的に書き直して今の形になりました。

佐藤大(サトウダイ)
1969年生まれ。渡辺信一郎が監督を務めた1998年のテレビアニメ「カウボーイビバップ」に舞台設定、脚本として参加。以降、アニメーションの脚本執筆を中心に、さまざまなメディアでの企画、脚本などを手がける。「交響詩篇エウレカセブン」「FREEDOM」 といった作品にシリーズ構成、脚本として参加。2007年には、代表取締役としてストーリーライダーズを設立。

キャラクターデザイン:吉田健一「エウレカの横顔は完全に今の僕の絵」

──時代によってデザインを変化させた部分、または造形でここだけは変えてはいけないと思った部分があれば教えてください。

今回の設定作業は、自分が描いたバランスと向かい合うところから始めました。当時やっていた立体のとり方をつかって描いてみたり、模写をしてみたり。そうして、今の自分の絵柄との距離感を測りました。最終的には、今の自分の描き方と、当時の描き方が入り交じった形になりました。その分、アニメーターさんには描きにくいデザインになってしまったかもしれません。

──エウレカの新デザインについて、意識した点や狙いなどを教えてください。

「交響詩篇エウレカセブン ハイエボリューション1」より、エウレカ。

サマー・オブ・ラブのエウレカは、これまでちゃんと描かれたことがなかったので、新設定があったほうがよいだろうと、パイロットスーツを含め新たに描きました。設定は今の絵柄と当時の絵柄が入り交じっていて、正面顔は比較的当時の雰囲気がありますが、横顔は完全に今の僕の絵になっています。

── アドロックを初めてしゃべらせる、また1人の実在するキャラクターとして映画に登場させるうえでデザイン面ではどういった意識をされましたか?

「交響詩篇エウレカセブン ハイエボリューション1」より、アドロック。

アドロック、レントン、それにテレビシリーズに登場していた姉のダイアン。この3人には「目の輪郭が四角い」という共通の特徴を持たせていました。でも今回アドロックをそういうふうに描いてみたら、どうもマンガっぽいんです。テレビのアドロックはセリフもない“幽霊”みたいなものでしたから、今回は生身のドラマを演じるキャラクターであることを意識して、もうちょっとリアルな感触を持たせました。

吉田健一(ヨシダケンイチ)
1969年生まれ。1990年にスタジオジブリに入社し、「おもひでぽろぽろ」「紅の豚」といった作品に参加。1999年の退社後、フリーランスに。その後はサンライズやボンズを中心に活動。テレビアニメ「OVERMANキングゲイナー」「交響詩篇エウレカセブン」「ガンダム Gのレコンギスタ」でもキャラクターデザインを担当している。
ストーリー

地球上を覆う情報生命体・スカブコーラルと人類の戦いが巻き起こした世界の危機“サマー・オブ・ラブ”。その危機から世界を救ったのは、アドロック・サーストンだった。英雄とたたえられるようになるアドロック。だが、その真相を知るものは、最前線で戦ったごく一握りの人間だけだった。10年の月日が流れ、アドロックの残された息子レントンは、ビームス夫妻の養子となり、地方都市ベルフォレストで暮らしていた。鬱屈とした日々を送っていたレントンに、運命の転機がやってくる。家を飛び出したレントンはさまざまな人との出会い、別れを経験する。自分はなぜ、家出をしたのか。自分はなぜ、この道を走っているのか。彼は今、旅立ちを決意する。

スタッフ
  • 総監督:京田知己
  • 脚本:佐藤大
  • キャラクターデザイン:吉田健一
  • 原作:BONES
  • 音楽:佐藤直紀
  • 主題歌:尾崎裕哉「Glory Days」(TOY'S FACTORY)
  • アニメーション制作:ボンズ
  • 製作:バンダイビジュアル、バンダイナムコエンターテインメント、博報堂DYミュージック&ピクチャーズ、ボンズ、MBS
キャスト
  • レントン:三瓶由布子
  • エウレカ:名塚佳織
  • デューイ:辻谷耕史
  • ホランド:森川智之
  • タルホ:根谷美智子
  • チャールズ:小杉十郎太
  • レイ:久川綾
  • アドロック:古谷徹
Blu-ray / DVD
「交響詩篇エウレカセブン ハイエボリューション1」
2018年2月23日(金)発売 / バンダイビジュアル
Blu-ray「交響詩篇エウレカセブン ハイエボリューション1」特装限定版

特装限定版 [Blu-ray]
10800円 / BCXA-1338

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Blu-ray「交響詩篇エウレカセブン ハイエボリューション1」

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