今牧輝琉が語る、舞台俳優としてのこれまでとこれから「終わりのない舞台という世界で、自分を探求したい」

2.5次元の舞台作品で数多くの主演を務めてきた今牧輝琉。子役からキャリアをスタートさせた今牧は、2020年に「ミュージカル『新テニスの王子様』The First Stage」で越前リョーマ役に抜擢され、世間の注目を集めた。“人の輪の中心にいる”という表現が似合う今牧は、キレのあるダンスと歌唱力が持ち味の22歳。近年は、作品を重ねるごとに芝居にも磨きがかかり、主人公から脇役まで活躍の場を広げている。

ステージナタリーでは、“人から見られること”や舞台への“好き”を原動力に走り続け、「自分に妥協したくない」と己の表現を探求してきた今牧に、これまでの俳優人生、そして開幕を目前に控える主演舞台「ガチアクタ」への思いを聞いた。

取材・文 / 大滝知里撮影 / 藤記美帆
ヘアメイク / やすすスタイリスト / 吉田ナオキ

“答えがない”舞台は、自分に妥協したくない今牧輝琉の信念に通じる

──今牧さんは、3歳からダンススクールに通われていたそうですが、当時から芸事に興味があったのですか?

最初は、自分の意思とは関係なく“やらされていた”というのが正しいかもしれません。ダンススクールの先生から「ひー(今牧)はアップ中に開脚しながら寝ていた」と言われたことがあって(笑)、自分としてはあまり興味がなかったんだと思います。でも、踊ることは嫌いではなかったですし、何より僕は、目立ちたいタイプ。小学校の学芸会では男の子たちが恥ずかしがって敬遠するような目立つ役を演じたり、それまでやったことがなかった歌を人前で歌ったりすることが楽しくなって、自分は“やってみたい”という心には抗えない人間なんだなと感じました。小さい頃からダンススクールの発表会で人前に立つことに慣れていたということもプラスに働いたと思います。

今牧輝琉

今牧輝琉

──舞台芸術に興味を持ったきっかけは何だったのでしょう。

母と祖母の趣味が観劇で、よく一緒に舞台を観に行ってはいたのですが、自分自身が何かの作品をきっかけにこの世界を目指すようになったということはありませんでした。13歳で初めて舞台に立たせていただいて(編集注:2017 ミュージカル「雪のプリンセス」)、思春期にはプチ反抗期みたいに「親に自分が出演する舞台を観られたくない」と思うこともありましたが、それでも舞台は辞めずに、ずっと続けてきました。それくらい、舞台が好きだったんです。それに、子役として活動していたからか、「もっと有名になりたい」という気持ちも強くて、その思いがあったのも続けることができた理由だと思います。

──「有名になりたい」と思われたのは、目標とするような舞台俳優がいたからですか?

実は僕、特定の“憧れの人”が昔からいないのです。というのも、素敵な方がたくさんいるから。自分にない考えを持っていらっしゃる方や、自分とどこか似ているけれど僕には届かないところで輝いている方がいて、それぞれのいいところを吸収したいって思うんです。だから選びきれなくて(笑)。

──舞台を“好き”な気持ちが続ける原動力になったということでしたが、舞台の何が今牧さんを惹きつけるのでしょうか。

自分自身が、人に観られることが本当に好きで、その思いを満たしてくれる場所が舞台だったんだと思います。あと僕は、好きなことに対してはどこまでも深く追求するタイプなのですが、興味がないことは一切目に入らないというか(笑)、勉強とか、やりたくないことにはうまく力を抜いて落とし所を見付けるんです。でも、お芝居の台本はどこまでも深く考えを掘り下げられるので、終わりがないんですよ。“答えがない”のが舞台の魅力だと思いますし、仕事や自分に対して絶対に妥協したくないという自分の信念にも重なる部分があると感じています。

今牧輝琉

今牧輝琉

これまでの芝居に対する価値観がひっくり返った、お兄ちゃんの舞台姿

──子役として経験を積んだ今牧さんは、2020年にサンリオピューロランド「MEMORY BOYS~想い出を売る店~」で2.5次元舞台に初出演されます。翌2021年には「ミュージカル『新テニスの王子様』」(以下、新テニミュ)の「The First Stage」で越前リョーマ役として注目され、一気にスターダムを駆け上がっていかれますが、今牧さんが、舞台俳優としての道を歩む覚悟を決めたタイミングはいつでしたか?

新テニミュへの出演が決まり、新テニミュの作品を1・2作経た、5~6年前の頃だったと思います。「ミュージカル『テニスの王子様』」(以下、テニミュ)シリーズは“若手俳優の登竜門”と呼ばれるような作品だったので、新テニミュにも無名の若手からいろいろな道を通って来た先輩まで出演されています。舞台経験の豊富な先輩たちが、作品の中でも先輩として僕に接してくださることは、とても貴重な経験だったと思っています。将来の道は必ず1つに決めなきゃいけないなんてことはないですが、舞台に対して腹を決めて臨む先輩たちの背中を間近で見ているうちに、「自分もこうなりたい」と思ったことを覚えています。

「ミュージカル『新テニスの王子様』The First Stage」のキービジュアル。

「ミュージカル『新テニスの王子様』The First Stage」のキービジュアル。

「ミュージカル『新テニスの王子様』The First Stage」ゲネプロより。越前リョーマ役の今牧輝琉(写真左)。

「ミュージカル『新テニスの王子様』The First Stage」ゲネプロより。越前リョーマ役の今牧輝琉(写真左)。

──新テニミュをはじめ、今牧さんは2.5次元の舞台作品に数多く出演されています。2.5次元舞台では原作キャラクターの再現度の高さを求められることも多いと思いますが、ご自身がこのジャンルに“適性”があると感じた瞬間は?

2.5次元の舞台に出演させてもらうようになった頃は、僕はお芝居のことをまったくわかっていなかったので、「モノマネをすればいいんだろう」と思っていました。実際に、ものの特徴を捉えるのは得意だったので、新テニミュでも、ずっと観てきたマンガやアニメのキャラクターのしゃべり方や立ち居振る舞いというのが無理なくできて、当初はそれでいいと思っていました。2.5次元の舞台では、役を表面上で落とし込んで、「キャラクターそのものだ」とお客さんに言ってもらうことがベストだと。でもいろいろな先輩方と共演するうちに、その考え方がガラッと変わりました。大きなきっかけは、リョーマの兄である越前リョーガを演じていた井澤勇貴さんとの出会いで、お兄ちゃん(井澤)の型にはまらない芝居を観たときに、衝撃を受けたんです! たとえば演技中に身体に痒いところがあったら、多くの役者は我慢すると思うのですが、お兄ちゃんは掻いちゃうんですよ。会話の途中であくびをしたり、衣裳のずれをサッと直したり、芝居中であっても、人間誰しもやるような仕草はする。それをすることで、キャラクターが人間になる気がしました。と同時に、それは俳優が決して気を抜いている姿ではなく、「お芝居だ」と思うことができる。その芝居は実力あってのものなんだと感じることができたときに、原作で観たままを再現するという僕の考え方と芝居への価値観が、一気にひっくり返りました(笑)。そこからは毎日、お兄ちゃんの姿から観て盗むということをしていましたね。お芝居について直接聞くなんてことはおこがましくてできないので、すごいなと思う先輩方には今でも、たとえ稽古場で20m離れたところにいたとしても、静かに観察して、芝居や歌、ダンスを盗み取っています(笑)。

今牧輝琉

今牧輝琉

──今牧さんの俳優人生において、新テニミュへの出演がどのような転機になったのか教えてください。

やはり、テニミュシリーズが始まって17年目に新テニミュがスタートする、それに自分がリョーマ役でデビューするということはとてつもない緊張感でした。テニミュがこれだけ愛されるシリーズとなっているからこそ、新テニミュも長く続く作品になるかもしれないという未来も想像できましたし、自分がその最初のリョーマを演じるという重みに大きなプレッシャーを感じていました。初日の前日は全然眠れなくて、お芝居についてや初日挨拶のことが頭の中でぐるぐる回っていました(笑)。実際、初日は緊張で声が震えましたし、周りを見る余裕もなかったと思います。最初は緊張しまくりだった新テニミュですが、井澤さんからお芝居を学んだ頃から、そっとつまんでいた越前リョーマを鷲づかみにできるようになり、その次の作品に出演させていただく頃には抱きつけるくらいの距離感になっていったのではないかなと思います(笑)。そういう自分の中での変化も面白かったですね。また、新テニミュやテニミュだけでなく、同時期に僕が最年少で参加させていただいた「舞台『魔法使いの約束』」シリーズ(以下まほステ)で、カンパニーのみんなが日々作品や芝居の質を上げていって、己の限界を超えていく姿を観て、「自分も殻を破らなければ!」と感じました。まほステに出演できたことにも感謝しています。

2026年5月26日更新