音羽屋・萬屋3代が大集合!尾上菊五郎・中村時蔵らが「土蜘」に向けた意気込み語る

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「團菊祭五月大歌舞伎」に出演する尾上菊五郎中村時蔵尾上菊之助中村梅枝尾上丑之助小川大晴の取材会が、昨日4月8日に東京都内で行われた。

後列左から、中村梅枝、中村時蔵、尾上菊五郎、尾上菊之助、前列左から小川大晴、尾上丑之助。

後列左から、中村梅枝、中村時蔵、尾上菊五郎、尾上菊之助、前列左から小川大晴、尾上丑之助。

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「土蜘」より、尾上菊五郎扮する源頼光。(c)松竹

「土蜘」より、尾上菊五郎扮する源頼光。(c)松竹[拡大]

「團菊祭」は、九世市川團十郎と五世菊五郎の偉業を顕彰するため、1936年に東京・歌舞伎座で始まった5月の恒例行事。今年、3年ぶりに行われる「團菊祭」の第2部には、市川海老蔵ら出演の「歌舞伎十八番の内 暫」、そして「新古演劇十種の内 土蜘」がラインナップされた。河竹黙阿弥の作による「土蜘」は、五世菊五郎が1881年に初演した作品。今回は当代菊五郎が源頼光、時蔵が侍女胡蝶、菊之助が叡山の僧智籌実は土蜘の精、梅枝が巫子榊、丑之助が太刀持音若、大晴が石神実は小姓四郎吾を勤める。

菊五郎は、本演目について「5代目(菊五郎)が、黙阿弥さんに『團十郎家の“勧進帳”に匹敵するような曲にしてくれ』と頼んで作った作品。ですので曲がとても良い。父(七世尾上梅幸)も大事にしてきた演目ですし、私にとっても思い入れ深い狂言です」と述べ、「今回久しぶりの『團菊祭』ということで、倅の菊之助に『土蜘をやらないか?』と勧めて実現しました」と上演の経緯を明かす。

尾上丑之助(右)に視線を送る尾上菊五郎(左)。

尾上丑之助(右)に視線を送る尾上菊五郎(左)。[拡大]

中村時蔵(中央)

中村時蔵(中央)[拡大]

また、本作に音羽屋、萬屋のそれぞれ3世代が出演することに「1つの狂言に2組の3世代、なんて初めてのことなんじゃないのかな。私はただただ丑之助に負けないように(笑)、一生懸命勤めさせていただきます」と丑之助に目線を送り、ニヤリと笑う。時蔵は「菊五郎兄さんから『3代でやろう』というお話をいただいたとき、孫が石神をやるにはちょっと大きいかな、と思いつつ(笑)、喜んで賛同いたしました。3代で同じ演目に出演できることはうれしいですね」と笑顔を見せる。

「土蜘」より、尾上菊五郎扮する叡山の僧智籌実は土蜘の精、六代目尾上丑之助(現:菊之助)扮する太刀持音若、七世尾上梅幸扮する源頼光。(c)松竹

「土蜘」より、尾上菊五郎扮する叡山の僧智籌実は土蜘の精、六代目尾上丑之助(現:菊之助)扮する太刀持音若、七世尾上梅幸扮する源頼光。(c)松竹[拡大]

菊之助は、1987年に七世梅幸が頼光、菊五郎が智籌を演じた「土蜘」で、音若を勤めたことを振り返りながら「祖父の凛とした頼光を覚えています。また、智籌を勤める父の迫力に圧倒され、そのときから、ゆくゆくは智籌を勤めたいと思っておりました。ですので2019年に博多座で智籌を初役で演じたとき、その願いがようやく叶った気持ちでした」と話す。さらに自身も出演し、取材会の同日に最終回を迎えた連続テレビ小説「カムカムエヴリバディ」に触れ、「『カムカムエヴリバディ』も親子3代の100年を描いた物語で、『土蜘』も親子3代が2組も出演するという稀な舞台。歌舞伎では、私の祖父の代から見続けてくださっているお客様もいらっしゃいます。これからの100年も楽しみに見守っていただければ」と言葉に力を込めた。

「尾上丑之助です。音若の役を勤めます。祖父と父と一緒に出られるのがすごくうれしいです」と元気よくあいさつする尾上丑之助(右)。

「尾上丑之助です。音若の役を勤めます。祖父と父と一緒に出られるのがすごくうれしいです」と元気よくあいさつする尾上丑之助(右)。[拡大]

記者からそれぞれの役の見どころや意気込みを聞かれると、菊五郎と時蔵が「誰から話す?」と目配せし、最終的に上手側から下手側にかけて、席順で回答していくことに。まず丑之助は「頼光を守るとき、バーンとカッコよく足を踏んで、長袴でスススっていくところがすごくカッコいい。そこが楽しみです」と元気よく答えた。

尾上菊之助(左)に「なんで土蜘は頼光を恨んでるの?」と質問をする尾上丑之助(右)。

尾上菊之助(左)に「なんで土蜘は頼光を恨んでるの?」と質問をする尾上丑之助(右)。[拡大]

尾上丑之助(右)の質問に説明する尾上菊之助(左)。

尾上丑之助(右)の質問に説明する尾上菊之助(左)。[拡大]

続く菊之助は「土蜘は頼光に恨みを持っていて、その復讐のために現れるわけですが、お客様には前半の土蜘の持つ妖しさ、そして後半の豪快さの対比をご覧になっていただきたいですね。また先程父も申しておりましたが、全体に流れている曲が心地いい。ストーリーがわからなくても曲や詞章の良さ、そして松羽目の雰囲気を存分に感じていただける演目かと」と語る。すると、隣の丑之助から「なんで土蜘は頼光を恨んでるの?」と質問が。これに菊之助は「土蜘さんは本当はもっとたくさんいたんだけど、頼光さんにまつわる人たちから攻撃されちゃって(減ってしまった)。それでずっと恨みを持っている。どっちが良いとか悪いっていう話じゃないんだけど、お互いに仲良くできれば良かったんだけどね……(笑)」と噛み砕いて説明。丑之助は納得したように頷いた。

質問され沈黙する小川大晴(左)に、「難しいね、質問がね(笑)」と声をかける中村梅枝(右)。

質問され沈黙する小川大晴(左)に、「難しいね、質問がね(笑)」と声をかける中村梅枝(右)。[拡大]

菊五郎は「松羽目は、ずっと照明が変わりませんが、場面が変わったとわかるように演じていきたい」、時蔵は「『土蜘』はお能から取ったものですので、お能のように優雅に品良く舞いたい」、梅枝は「私は間狂言に出ておりますので、お客様にはクスッと笑っていただき、空気を軽くしてから重厚な空気に戻したい」とそれぞれに述べた。最後の回答者である大晴は、マイクを持ち沈黙。これに周囲はほほ笑み、梅枝が大晴に「難しいね、質問がね(笑)」と声をかけると、大晴は照れくさそうな表情を浮かべた。

尾上菊五郎の「若い人が真ん中のほうが良い」という提案で、撮影の並びを変えている様子。

尾上菊五郎の「若い人が真ん中のほうが良い」という提案で、撮影の並びを変えている様子。[拡大]

後列左から、中村時蔵、中村梅枝、尾上菊之助、尾上菊五郎、前列左から小川大晴、尾上丑之助。

後列左から、中村時蔵、中村梅枝、尾上菊之助、尾上菊五郎、前列左から小川大晴、尾上丑之助。[拡大]

丑之助と大晴は、今年2月に「二月大歌舞伎」ではそれぞれ3部と2部に出演し、3月に東京・国立劇場で上演された「近江源氏先陣館」では共演した。菊之助は2人の様子を「最初はお互いに探り合っている感じがありましたが、だんだん打ち解けて、お芝居ごっこを一緒にやるようになりましたね。時蔵の兄さんは、大晴くんに歌舞伎の小道具を手作りで作ってあげていて、それを丑之助はうらやましがっていました(笑)」と話す。記者が時蔵に「小道具の材質は?」と聞くと、時蔵は「少し硬質な発泡スチロールです。作るの、大好きなんです(笑)」と笑顔で回答した。

左から、沈黙する小川大晴と、それを笑顔で見つめる中村梅枝、中村時蔵、尾上菊五郎。

左から、沈黙する小川大晴と、それを笑顔で見つめる中村梅枝、中村時蔵、尾上菊五郎。[拡大]

梅枝は「(大晴は)丑之助くんのことが大好きみたいで、彼のトイレにまでついていくように(笑)。丑之助くんは大晴のお芝居ごっこにも付き合ってくれて、生意気なうちの子をかわいがってくれてありがたい」と目を細める。大晴との仲について、丑之助は「大晴くんはかわいいし、元気だし、梅枝さんが遊びに連れて行ってくれたから、今は親友みたいに仲良しです」とハキハキ答える。大晴は、梅枝から「(丑之助と)一緒にいて楽しい?」と聞かれると「はい」と答えた。時蔵は「さっきも会うなりハイタッチしてたよね。そういう関係です(笑)」と明かした。

「團菊祭五月大歌舞伎」は5月2日から27日まで、東京・歌舞伎座で上演される。チケットは4月14日10:00に販売スタート。

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「團菊祭五月大歌舞伎」

2022年5月2日(月)~27日(金)
東京都 歌舞伎座

第1部

一、「祇園祭礼信仰記 金閣寺」

出演
松永大膳:尾上松緑
此下東吉後に真柴久吉:片岡愛之助
十河軍平実は佐藤正清:坂東亀蔵
松永鬼藤太:尾上左近
狩野之介直信:上村吉弥
慶寿院尼:中村福助
雪姫:中村雀右衛門

二、「あやめ浴衣」

出演
芸者:中村魁春
船頭:中村鷹之資
水売り:中村歌之助
町娘:中村玉太郎
あやめ売り:坂東新悟

第2部

一、「歌舞伎十八番の内 暫」

出演
鎌倉権五郎:市川海老蔵
鹿島入道震斎:中村又五郎
那須九郎妹照葉:片岡孝太郎
成田五郎:市川男女蔵
桂の前:中村児太郎
加茂三郎:大谷廣松
大江正広:市川男寅
小金丸行綱:片岡千之助
荏原八郎:中村吉之丞
足柄左衛門:市川九團次
埴生五郎:片岡市蔵
局常盤木:市川齊入
家老宝木蔵人:市村家橘
東金太郎:市川右團次
茶後見:大谷友右衛門
加茂次郎:中村錦之助
清原武衡:市川左團次

二、「新古演劇十種の内 土蜘」

作:河竹黙阿弥

出演
叡山の僧智籌実は土蜘の精:尾上菊之助
侍女胡蝶:中村時蔵
巫子榊:中村梅枝
渡辺綱:中村歌昇
坂田公時:中村種之助
碓井貞光:市川男寅
太刀持音若:尾上丑之助
石神実は小姓四郎吾:小川大晴
卜部季武:尾上菊市郎
番卒藤内:中村萬太郎
番卒次郎:中村錦之助
番卒太郎:河原崎権十郎
平井保昌:中村又五郎
源頼光:尾上菊五郎

第3部

一、「市原野のだんまり」

出演
平井保昌:中村梅玉
鬼童丸:中村莟玉
袴垂保輔:中村隼人

二、「弁天娘女男白浪 浜松屋見世先の場 稲瀬川勢揃いの場」

作:河竹黙阿弥

出演
弁天小僧菊之助:尾上右近
南郷力丸:坂東巳之助
忠信利平:中村隼人
赤星十三郎:中村米吉
鳶頭清次:中村橋之助
浜松屋倅宗之助:中村福之助
丁稚長松:坂東亀三郎
番頭与九郎:市村橘太郎
日本駄右衛門:坂東彦三郎
浜松屋幸兵衛:中村東蔵

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4月14日10:00〜
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