「秀山祭」吉右衛門が豪快な“泣き笑い”を魅せ、歌六が天真爛漫な殿様演じる

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「秀山祭九月大歌舞伎」が9月1日に東京・歌舞伎座で開幕した。ステージナタリーでは、6日に行われた夜の部をレポートする。

「秀山祭九月大歌舞伎」より、「沼津」の特別ポスター。

「秀山祭九月大歌舞伎」より、「沼津」の特別ポスター。

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「秀山祭九月大歌舞伎」は、初代中村吉右衛門の芸を顕彰し、その当たり役を孫で養子の二代目吉右衛門が演じる毎年恒例の公演。夜の部では「寺子屋」「勧進帳」「松浦の太鼓」の3演目が披露され、吉右衛門は「寺子屋」で初代吉右衛門の当たり役であった松王丸を勤め、中村歌六は三世中村歌六の百回忌追善狂言として上演される「松浦の太鼓」で松浦鎮信を演じる。

夜の部の幕開けを飾るのは「菅原伝授手習鑑」より「寺子屋」。寺子屋を営む武部源蔵(松本幸四郎)は、菅秀才(尾上丑之助)を我が子として匿っているが、ある日藤原時平の家臣の春藤玄蕃(中村又五郎)に菅秀才の首を討って渡すよう迫られてしまう。寺子屋に通う子供を1人身代わりにしようと考えるも、山家育ちの子供たちと菅秀才では風格が違いすぎるため務まらない。悩む源蔵の前に、女房の戸浪(中村児太郎)が今日寺入りしたばかりの少年・小太郎を連れて来る。その品位のある姿を見た源蔵は、小太郎を菅秀才の身代わりにすることを決断。すると、玄蕃と共に菅秀才の顔を知る松王丸(吉右衛門)が現れ……。

吉右衛門は、忠義のために愛息を差し出す松王丸の覚悟と哀しみを、緩急ある演技で巧みに表現。尾上菊之助演じる女房の千代が涙に暮れる様子を諌めるも、松王丸自身もたまらず“泣き笑い”する場面では、吉右衛門が豪快ながらも悲哀に満ちた芝居で魅せ、観客から盛大な拍手が送られた。幸四郎は葛藤する源蔵の姿を丁寧に立ち上げ、又五郎は悪役である玄蕃を威圧感たっぷりに表し、場の緊張感を高める。菅秀才の母・園生の前を演じる中村福助は気品ある姿で息子との再会を喜び、丑之助は菅秀才を堂々とした立ち振舞いで演じきって祖父・吉右衛門との共演という大役を勤め上げた。

続いて上演されるのは、片岡仁左衛門と幸四郎が日替わりで武蔵坊弁慶を演じる「勧進帳」。この日弁慶を勤めた幸四郎は、片岡孝太郎演じる源義経に関所を越えさせるため山伏に扮し、中村錦之助演じる関守の富樫左衛門からの嫌疑を鮮やかに晴らしていく姿を好演した。弁慶が白紙の巻物をさも勧進帳であるかのように読み上げるシーンでは、巻物を覗き見しようとする富樫とそれをかわす弁慶を、幸四郎と錦之助は息の合った立ち廻りで表現し、観客を魅了。なお仁左衛門が弁慶を勤める奇数日には、富樫役として幸四郎が登場する。

夜の部最後の演目は「松浦の太鼓」だ。「忠臣蔵」の外伝劇の1つである本作は、赤穂浪士の討ち入りを心待ちにしている殿様・鎮信の天真爛漫さが魅力の作品。歌六は、機嫌がコロコロ変わる鎮信のキャラクターを愛嬌たっぷりに立ち上げ、鎮信と中村東蔵演じる俳諧の宗匠・宝井其角とのコミカルな掛け合いに、客席は終始笑いで包まれた。

「秀山祭九月大歌舞伎」は9月25日まで。昼の部では「極付幡随長兵衛」「お祭り」「沼津」が上演され、「沼津」では吉右衛門と歌六が親子役を演じ、歌六の甥である中村歌昇の長男・小川綜真が初お目見得する。

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「秀山祭九月大歌舞伎」

2019年9月1日(日)~25日(水)
東京都 歌舞伎座

昼の部

「極付幡随長兵衛」

幡随院長兵衛:松本幸四郎
水野十郎左衛門:尾上松緑
渡辺綱九郎:中村松江
近藤登之助:坂東亀蔵
出尻清兵衛:中村歌昇
坂田公平:中村種之助
伊予守頼義:中村児太郎
舞台番新吉:中村吉之丞
慢容上人:嵐橘三郎
子分神田弥吉:大谷廣松
子分雷重五郎:大谷廣太郎
子分極楽十三:沢村宗之助
坂田金左衛門:松本錦吾
唐犬権兵衛:中村錦之助
長兵衛女房お時:中村雀右衛門

「お祭り」

鳶頭:中村梅玉
芸者:中村梅枝
芸者:中村魁春

「沼津」

呉服屋十兵衛:中村吉右衛門
平作娘お米:中村雀右衛門
池添孫八:中村錦之助
旅人夫:中村歌昇
旅人女房:中村種之助
旅人倅:小川綜真
茶屋娘おくる:中村米吉
荷持安兵衛:中村又五郎
雲助平作:中村歌六

夜の部

「寺子屋」

松王丸:中村吉右衛門
園生の前:中村福助
千代:尾上菊之助
戸浪:中村児太郎
涎くり与太郎:中村鷹之資
菅秀才:尾上丑之助
百姓吾作:嵐橘三郎
春藤玄蕃:中村又五郎
武部源蔵:松本幸四郎

「勧進帳」

武蔵坊弁慶:片岡仁左衛門(奇数日)/ 松本幸四郎(偶数日)
源義経:片岡孝太郎
亀井六郎:坂東亀蔵
片岡八郎:中村萬太郎
駿河次郎:片岡千之助
常陸坊海尊:松本錦吾
富樫左衛門:松本幸四郎(奇数日)/ 中村錦之助(偶数日)

「松浦の太鼓」

松浦鎮信:中村歌六
大高源吾:中村又五郎
鵜飼左司馬:中村歌昇
江川文太夫:中村種之助
渕部市右衛門:中村鷹之資
里見幾之亟:中村吉之丞
お縫:中村米吉
宝井其角:中村東蔵

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読者の反応

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角岳史 @sumitakeshi

いつもながら、なんのレポートにもなっていないし、なにひとつ紹介されていない。
おそらく舞台を見なくても、配役を発表された段階でこれ以上のものが書けるだろう、という意味でひじょうにシュールな「記事」(笑)
https://t.co/9qCaaLHmV4

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