札幌時代のトム・ブラウン。

北海道芸人の上京物語 第4話 [バックナンバー]

トム・ブラウンの上京物語(前編)

東京の雪に傘を差したら負けだと思っている

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北海道出身芸人の活躍が注目を集める中、お笑いナタリーが立ち上げた新連載「北海道芸人の上京物語」。第4回は共に北海道札幌市出身のトム・ブラウンの布川とみちおに、同じく札幌出身の記者がインタビューを実施した。前編では、東京の雪と札幌の雪の違い、東京でも味わえる北海道グルメ、好きなローカル番組について語ってもらった。

取材・/ 成田邦洋

東京の雪に傘を差したら負けだと思っている

──出身がお二人とも札幌市ということで、生まれ育ったのはどんな土地でしょうか?

みちお 東区の中でも隣の江別市との境にある場所で、以前は「スパー」というコンビニが歩いて7、8分のところにありました。近所に、牧草をぐるぐる巻いてでっかいドラム缶みたいにしたものがあって、小さい頃は乗って遊んでいました。自然溢れる場所ですが、再開発が子供の頃から始まって、ちょっとずつ発展しています。

布川 僕は、通っていた中学校が札幌で有名な“ヤンキー校”でした。小学校のときに悪い奴らに絡まれて、兄貴に助けてもらうこともありました。そういう人たちとうまくやっていく術は、そこで身についたかもなあと。

──たくましさを身につけた土地だと。北海道らしい雪遊びの思い出はありますか?

みちお 小学校のグラウンドに雪が積もるんですけど、ブルドーザーが来て、雪で小さい山とかを作っていたので、そこでスキーの練習をしたり、米の袋をお尻に敷いて滑ったりしていました。雪山を崩し終わったあとの足場の悪いグラウンドで雪上サッカーをすることもありました。

布川 雪がめっちゃ積もっているところにマンションの3Fから飛び降りて、雪にどれだけ埋まるか、という遊びをしていました。それだけクッションがあるからできたので、今は絶対やらないほうがいいんですけど。あとは、どれだけでっかいつららを取れるかというゲームをしていました。尋常じゃないでかさのつららがあるんですよね。

みちお 俺、あれずっとなめてたよ。

布川 なめてる奴いたわー。

コンビ結成当時のトム・ブラウン。

コンビ結成当時のトム・ブラウン。

──今でも雪を見てテンションが上がることはありますか?

みちお そうですね。懐かしい感じがします。

布川 僕は東京ではあまり雪を見たくないですね。ベチャベチャしていて、札幌と雪が違うんですよ。たまに札幌に帰ったときは「これが雪だよ」って思う。この前、うちの事務所のヤーレンズと一緒に札幌に行ったときに、「あ、これが本当の雪なんですね!」と言われて。めっちゃテンション上がってましたよ。

みちお 札幌にいると、雪が積もりすぎて、その中に何があったか忘れちゃうことってありません? うちの家の前に車が停めてあって、雪で埋もれていて、そこに何があるかわからない状態で近所のおじさんが普通に除雪していたら、「ガシャーン!」って車にぶつかって、ものすごく謝っていました(笑)。あと東京で雪が降ったときに、傘を差したら負けだと思っている。意地でも差さないです。

布川 僕も雪のときに傘は差さないです。

──それは「雪は手で払えばいい」みたいなことでしょうか?

布川 そうです。

みちお でも、こっちの雪はけっこう湿っぽいから、ビシャビシャになってる布川、何度も見たことある(笑)。それと本州の人は「北海道の人は寒さに強い」と思っているみたいだけど、実は寒さに弱いです。部屋の中で暖房をガンガン入れて、暖かいところで生活していたので。外でも厚着めっちゃしてますし。

──そんなみちおさんと雪を結びつけるものといえば、スノーボードですよね。

札幌時代のトム・ブラウン。

札幌時代のトム・ブラウン。

みちお スノーボードは、インストラクターの資格までは取らせてもらいました。布川にお笑いに誘われたときに一度断った理由もスノーボードをやりたいからで。最終的には、友達がケガしたのを見て「命がけだなあ」と思って諦めました。それに布川が当時札幌のローカル番組に出ていて、「布川がテレビに出られるんなら余裕の世界だな」と思ってお笑いを始めたんです。

布川 ムカつきますよね(笑)。

──布川さんはウインタースポーツをされていましたか?

布川 小学校のときにスキーを習っていて普通に滑れます。学校でうまい順にA・B・CグループがあったらAグループにはいましたけど、特別うまいというわけではないです。北海道人なら滑れるかなと。

東京でも北海道グルメを食べ続けている

──お二人にとって北海道の“ソウルフード”があれば教えてください。

みちお 家の近くの店に、ラーメンにとんかつをまるまる載せる「とんかつラーメン」というメニューがありました。ラードととんかつの油が溶けて、出前で頼んでめちゃくちゃおいしかったです。店はもうつぶれちゃったので、僕がいつかそれを再現するために店を開きたいと思います(笑)。

トム・ブラウンみちお

トム・ブラウンみちお

布川 僕はかなりラーメンを食べ歩いていて「信玄」とか「すみれ」もおいしいし、札幌で最近有名な「雪風」もあるんですけど、ソウルフード的なラーメンは「さんぱち」かなあと。札幌の大衆ラーメン。最後にアイスを食べるのがいいんです。「山岡家」も帰ったら必ず食べます。

みちお あと、いっとき札幌界隈で「どこでもラーメン」というお店が流行りました。電話したらワゴン車で来てくれて、家の前でラーメンを作って出してくれる。カップ麺では我慢できなくて、温かくておいしいラーメンを食べたかったので。それだけ、できたてのラーメンが食べたい人種です(笑)。

──お二人ともラーメンが特にお好きなんですね。

みちお ジンギスカンも、家で丸い冷凍のラム肉を焼いて食べていました。こっち(東京)の人は「においがする」って言いますけど、僕からしたら、くさければくさいほどおいしい。行者にんにくと一緒に食べるのが北海道ならでは、です。

──東京のデパートやスーパーなどで行われている北海道物産店のような催しは気になりますか?

布川 なります。カップ焼きそばの「やきそば弁当」が売っていたら必ず買います。特盛サイズみたいなのを。あと北菓楼の「北海道開拓おかき」が、たまたま僕らが東京でネタを作っている場所の近くにあるスーパーで売っていて、種類はめっちゃあるんですけど全部買いました。おいしかったです。こっちで普通に食べられてうれしかったです。

みちお これはあまり教えたくないんですけど、「肉のハナマサ」に冷凍のマトンが丸く薄くスライスされたものが売ってるんですよ。これも教えたくないんですけど、ハナマサでは「ベル食品」と「ソラチ」のジンギスカンのタレも、両方売ってます。

布川 なんで教えたくないんだよ!

みちお 売り切れちゃうから(笑)。それを買って、家でジンギスカンやってます。

布川 僕もジンギスカンは食いますよ。きつねの淡路とかと一緒に、中野の「ゆきだるま」という店に行くこともあります。淡路はジンギスカンを食べていると、なぜか酒に酔いやすいらしくて、1時間くらいでいつも帰るはめになるんです。「どういうことだよ」って聞いても「いや、酔うんですよ」と言われて、なぜなのかはよくわかりません(笑)。

トム・ブラウン布川

トム・ブラウン布川

みちお 下北沢の「ポニピリカ」という店で出前でスープカレーを頼んでいます。鶏がすごくおいしくて、揚げているのに味がしみていてホロホロ崩れる。めちゃくちゃオススメです。

布川 あと、おいしい海鮮をどうしても食べたくて、テレビに出させてもらう前に奥さんと東京で2000円ちょっとする海鮮丼を食べたことがあるんですけど、全然北海道の味じゃないなと。今は東京の回転寿司でも、東京ソラマチにある「トリトン」と、KITTEにある「根室花まる」は普通においしかったです。

──東京でも北海道の味をお二人とも追い求めていらっしゃるんですね。

布川 それこそ昨日、代田橋の「函館食堂 SHANSHAN」というお店に行って、ジンギスカンやザンギを食べました。納言の薄幸、尼神インター渚と3人で飲みました。函館のトラピストバターを載せたジンギスカンがおいしかったです。

みちお 「函館食堂」は僕もよく一緒に行きます。

一般人のみちおが目撃、すでにプロだった布川の笑い

──視聴者として好きだった北海道のローカル番組はありますか?

布川 「水曜どうでしょう」(HTB)は好きでした。当時の僕は札幌吉本にいて、(どうでしょう出演者と)なんとなくライバルみたいなところがあるじゃないですか。お互いの構図的に。だけど僕はめちゃくちゃ好きで、深夜のときから誰にも言わずにこっそり観ていたんです。今になって当時の札幌吉本の人に「実は水曜どうでしょう、めっちゃ観てたんですよ」って言ったら、「俺も俺も」って(笑)。みんな好きで、隠れて観てたんですよ。だから、この前「ハナタレナックス」(HTB)に出させてもらって、めちゃくちゃうれしかったです。

──「ハナタレナックス」で大泉洋さんなどTEAM NACSの方々と共演されたわけですもんね。

みちお 「ハナタレナックス」にはヤスケンさん(安田顕)も出られていて、今でこそ真面目でクールな感じですけど、当時はちょっと変わったお兄さんみたいな感じで面白かったです。牛乳一気飲み対決で飲みすぎたのとかが最高で、いまだに脳裏に残っています。

布川 あと「アタックヤング」(STVラジオ)はめちゃくちゃ聴いていました。STVアナウンサーの福永俊介さんが特に好きで、それがお笑いをやるきっかけになっています。「NINTENDO69」というラジオネームでハガキも送っていました。最終回でも読まれたんですよ。だいたいみんな、(同じSTVアナウンサーの)明石英一郎さんか福永さんが好きなイメージがあります。その福永さんと今、「福永★ブラウン」(STV)という番組をやらせてもらっていて本当にうれしいです。“胸熱”すぎます。

みちお 僕も「どさんこワイド」(STV)の「かけたら万」(賞金が当たる視聴者参加型クイズコーナー)をずっと観ていたので、福永さんにお会いできるとうれしいです。

布川 北海道芸人ばっかり集まるライブを以前やったとき、お客さんも北海道の人が多くて、一応「かけたら?」って呼びかけてみたら、半分以上のお客さんから「万!」って返ってきてすごいなと(笑)。

みちお 「奥さん?」

布川・みちお 「お絵かきですよ!」

布川 ……という呼びかけもやってみたんですけど、こっちはあんまり反応がなかったです(笑)。

──「奥さんお絵かきですよ」も「どさんこワイド」のコーナーにありましたね。北海道では、お笑いライブに足を運ぶことはありましたか?

布川 札幌吉本がずっとやっていた「空飛ぶイクラ」というライブがあって、ビタミンCさんという方がトップで、高3のときに観に行ってめちゃくちゃ面白いなと思いました。それが札幌吉本に入った理由でもあります。そのあとにタカトシ(タカアンドトシ)さんが出演している「オンバト(爆笑オンエアバトル)」(NHK総合)の札幌収録を観覧しに行って、タカトシさんも札幌吉本で、めちゃくちゃ面白い。僕がタカトシさんに玉を1つ入れていなかったら“オフエア”だったので、タカトシさんから今、ギャラ20%欲しいです(笑)。

みちお 僕は自分が一般人のときに、布川が出ているライブを2回観ました。布川のネタは、スーパーファミコンの「マリオペイント」に入っているミニゲームのハエたたきで、ハエがたたかれたときの声のモノマネをやっていました。

ピン芸人時代のトム・ブラウン布川。

ピン芸人時代のトム・ブラウン布川。

布川 (声を真似して)「アー! アー! アー!」っていう。

みちお 僕も面白くて笑っていたんですけど、友達と一緒に行って、友達がめちゃくちゃツボって、ひきつるくらい笑っていました。

布川 ただ、ライブの客席は女の子のほうが多いので、あまりウケた感触はなかったです(笑)。当時から、どちらかといえば男性寄りの芸風だったのかもしれません。

<後編につづく>

トム・ブラウン

トム・ブラウン

トム・ブラウン

布川ひろき(ヌノカワヒロキ) 1984年1月28日生まれ、北海道札幌市出身。

みちお 1984年12月29日生まれ、北海道札幌市出身。

高校時代の先輩後輩で2008年よりコンビでの活動を開始し、2009年、正式に結成。「M-1グランプリ2018」決勝で披露した“合体漫才”で注目を集める。「有吉の壁」(日本テレビ)などに出演中。ケイダッシュステージ所属。

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