現在、6年4カ月ぶりとなるツアー「EXO PLANET #6 - EXhOrizon」を開催中のEXO。本格的なグループ活動を再開し、各都市で大きな熱狂を巻き起こしているツアーの日本公演より、7月12日に行われる千葉・LaLa arena TOKYO-BAY公演の模様がWOWOWにて独占生中継される。
EXOは2012年に「太陽系外惑星・EXO PLANETからやってきた新たなスター」という壮大なコンセプトを掲げてデビューし、2010年代のK-POPシーンを牽引してきた。シーンの歴史を語るうえで欠かすことのできない存在でありながら、ここ数年のシーンの活況を通じて新しくK-POPに触れるようになったリスナーにとっては「名前や代表曲は知っているがハマるタイミングがなかった」グループでもあるかもしれない。音楽ナタリーでは、EXOを愛する音楽ライター・宮崎敬太のレビューで、個々の研鑽によってパフォーマンス力の最高値を更新し続けている彼らの魅力を解剖。時代を超えて愛される名曲の普遍性を振り返りながら、かつて熱狂したファンはもちろん、これまでEXOに触れる機会がなかった読者に向けても、生中継をより深く楽しむための見どころを解説する。
多彩なエンタメをより自由なスタイルで
そのほかの「WOWOWオンデマンド×ナタリー」特集はこちら
文 / 宮崎敬太
太陽系外惑星からやってきた
EXOは、2012年4月にSMエンタテインメントから韓国と中国で同時デビューすると、抜群のルックス、良質な楽曲、圧巻のパフォーマンス、鮮烈なアートワーク、巧みなプロモーション戦略で瞬く間にシーンを席巻していった。
キーとなったのは「太陽系外惑星・EXO PLANETからやってきた新たなスター」という壮大なグループコンセプトだった。当時ですら最初は荒唐無稽なストーリーだと思った。だが、徐々に皆が熱狂していった。その背景には、アイドル個人の高いポテンシャルを最大限に発揮させるための、丁寧な事前プロモーションがあった。
虚実の境界線を行き来して
EXOはデビューの100日前からプロモーションをスタートさせた。公開されたティザー映像は計23本。プロローグ的なシングルとして「WHAT IS LOVE」「History」の2曲がリリースされ、どちらもミュージックビデオが制作された。これらの映像にはすべて前述のコンセプトをベースにした数々の謎めいた記号が盛り込まれていた。
だが何より驚かされたのは、幼さすら残したみずみずしいルックスからは想像もつかないほどの熟練した歌唱力とダンスパフォーマンスだった。このグループなら、世界で大活躍するかもしれない。デビュー前にもかかわらず、多くの人にそう感じさせた。この底知れぬポテンシャルが荒唐無稽なグループコンセプトに強烈な説得力を生んだのだった。
そんな事情もあり、この時代は、こと日本において(おそらく中国でも)K-POPは未知の世界だった。似て非なる隣国から次々と宝物が見つかるような状況とでも言おうか。その意味でもEXOのコンセプトは、メタフィクションとして虚実の境界線を行き来しながら楽しむことができた。
K-POPの文法を変えた「Growl」
EXOのドラマティックなデビューミニアルバム「MAMA」は一部のファンに熱狂的に支持された。だが彼らの快進撃が本格化したのは翌2013年6月に発表したアルバム「XOXO (Kiss&Hug)」から。同作にはメンバー全員で木のシルエットを作るコレオグラフが大きな話題になった「Wolf」を筆頭に、「Baby, Don't Cry」「Heart Attack」などのちの代表曲が多数収録された。そして同年8月にK-POPの歴史を変えた「Growl」を含むリパッケージ盤を発表する。
ここまでのEXOはいわゆる東方神起らに代表されるK-POP第二世代の方法論をミステリアスな美少年たちで実践するグループだった。グループのコンセプトに沿ったそろいのステージ衣装を着て、重厚なストリングスがフィーチャーされたダイナミックな楽曲を歌う。イメージとしては、隙がなく、要素を足し算していく感覚だった。
しかし「Growl」には抜け感があった。メンバーは学生服をスタイリッシュにアレンジして着用し、サイズ感や着こなしにこだわったことで、どこにでもあるアイテムが、誰も見たことのないルックに変化したのだった。このスタイルがあまりに鮮烈だったため、「Growl」以降、同世代のK-POPボーイズグループで学生服が定番化した。MVも同様だ。これまでがハリウッドのSF大作だとしたら、「Growl」はドキュメンタリー。メンバーがダンスするフォーメーションの中にステディカムが潜り込み、ワンカットで撮影された。楽曲に関しても、壮大さや美麗さよりグルーヴを重視した。K-POPで定石とされた文法をことごとく刷新してしまったのだ。
当時、韓国の友人から教えてもらったエピソードとして、韓国でアイドルソングは小中学生が聴く音楽として認識されていたという。だが、「Growl」は大人にも愛された。BTSが社会現象化する前の時代。K-POPを取り巻く環境が確実に変わり始めた瞬間でもあった。なおEXOは2018年に平昌冬季オリンピックの閉会式で「Growl」「Power」をパフォーマンスしている。
リード曲だけじゃない名曲たち
そして「Growl」は2013年末の音楽賞を総なめにした。翌2014年にEXOは日本でもファンミーティングを実施し、初のツアー「EXO FROM. EXOPLANET #1 - THE LOST PLANET」では福岡、大阪、東京公演も行った。
EXOは2015年に2ndアルバム「EXODUS」を発表することになるが、リリース前に「Pathcode」と銘打たれたティザーが公開された。このティザーでは「太陽系外惑星・EXO PLANETからやってきたスター」というコンセプトを、「インセプション」や「ボーン・アイデンティティー」といった新世代のスパイ映画を彷彿とさせる映像で表現した。そのクオリティの高さにファンは歓喜した。アルバム「EXODUS」の活動曲となった「CALL ME BABY」は大ヒットを記録。韓国の音楽番組でも軒並み1位を獲得した。
EXOの大きな特徴は、リード曲以外にも名曲が山ほどあるということだ。例えば、「EXODUS」の収録曲「PLAYBOY」はSHINeeのジョンヒョンが作曲したミディアムバラードで、ディアンジェロを彷彿とさせるねっとりとしたグルーヴに合わせて、メンバーのセクシーな歌声を堪能することができる。ほかにもアルバムの表題曲「EXODUS」、「EL DORADO」など聴き応えある名曲がずらり。2016年発表のアルバム「EX'ACT」も同様で、リード曲「Monster」はもちろん、「Artificial Love」「Cloud 9」「They Never Know」などでメンバーの成長を感じさせた。
「EXO PLANET #6 - EXhOrizon in JAPAN」は本稿執筆段階で愛知、大阪公演を終えている。ネタバレは最小限にとどめるが、今回のツアーは「REVERXE」の収録曲を中心にセットリストが組まれていると同時に、キャリアの集大成と言っても過言ではない楽曲の数々が披露されている。
また、この記事を書くために改めて過去曲を聴き直したのだが、EXOの楽曲はそこまでトレンドに左右されていない。むしろオーセンティックで、渋さすら漂わせた楽曲が多かった。プロモーションがうまかったこともあって、当時はそこに気付けなかった。また普遍性という意味では、EXOが2013年に出したミニアルバム「Miracles in December」の収録曲「The First Snow」が2023年にTikTokを通じてリバイバルして音源チャートで1位を獲得したことが象徴的で、「Love Shot」や「Growl」といった楽曲もさまざまな世代に気軽にカバーされ続けている。
そして何よりも書いておきたいのは、今回のツアーに参加している全メンバーのパフォーマンス力が当時とは比較にならないほど向上していることだ。当日はどのくらいの尺になるかわからないが、ソウル公演では2時間以上踊りながら歌いまくっていた。SUHOはソロ活動に加え、ミュージカルの舞台も経験したことで、声量と感情表現は現在が最高地点だろう。CHANYEOLのラップは安定感が増し、ボーカルとしての実力も堂々たるものだった。EXOのボーカルといえばD.O.だが、それは現在もまるで変わることがなかった。KAIはEXOの神秘性を具現化したような存在だが、現在はソロ作も多数リリースしてアーティストとしてすごみまで加わった。そしてデビュー当初のEXOを知る人が観て最も驚くのはSEHUNではないだろうか。鋭いダンスパフォーマンスに重さが加わり、さらに歌唱、ラップすべての実力が目覚ましく向上していた。ゆえにもともと高いクオリティだった楽曲のポテンシャルがさらに引き出されていた。
6年という期間は短くない。EXOとしての活動があまりなかった時期に、ほかのグループを好きになった人もいるだろう。今回の生中継はそういう人にも観てもらいたい。当時の熱狂がありありと胸の中を駆け巡ると同時に、EXOの根っこにあるミュージシャンとしての実力の高さを感じられるはずだ。
そして、EXOを通ってこなかった世代。「サバイバル番組の課題曲単位で名前を聞いたことがある」という人には、その楽曲の普遍性に注目してもらいたい。オリジナルの歌唱力、パフォーマンス力のパワーを知ってもらいたい。彼らは現行K-POPでスタンダードとなっている表現を一般化させてきた。今回の生中継をきっかけに、もしもEXOに興味が出てきたら、過去の楽曲やMVもチェックしてもらいたい。そうすることで、K-POPの歴史や魅力をより深く知ることができるはずだ。
公演情報
EXO PLANET #6 - EXhOrizon in JAPAN
- 2026年5月2日(土)愛知県 日本ガイシホール
- 2026年5月3日(日・祝)愛知県 日本ガイシホール
- 2026年6月2日(火)大阪府 大阪城ホール
- 2026年6月3日(水)大阪府 大阪城ホール
- 2026年7月11日(土)千葉県 LaLa arena TOKYO-BAY
- 2026年7月12日(日)千葉県 LaLa arena TOKYO-BAY
プロフィール
EXO(エクソ)
2012年にSMエンタテインメントよりデビューしたK-POPボーイズグループ。グループ名は太陽系外惑星を意味する「Exoplanet」という英単語に由来する。2015年11月には、シングル「Love Me Right ~romantic universe~」で日本デビューし、初の単独ドーム公演「EXO PLANET #2 - The EXO'luXion -」を開催。2018年には、韓国・平昌にて開催の「2018平昌冬季オリンピック閉会式」でパフォーマンスを披露した。2025年9月に最年少メンバー・SEHUNが除隊し、メンバー全員の兵役が終了。2026年1月には8thアルバム「REVERXE」をリリースし、およそ2年6カ月ぶりのカムバックを果たした。
EXO_NEWS_JP (@EXO_NEWS_JP) | X



