coldrain×WOWOW特集|ジャンルや世代を超えてつながれた空間、3年ぶり主催フェス「BLARE FEST.」の軌跡を振り返る

coldrainの主催で今年2月7日、8日に愛知・ポートメッセなごやで開催された音楽フェス「BLARE FEST. 2026」の模様が、5月16日と17日にWOWOWで放送・配信される。

これまで2020年と2023年に開催されてきた「BLARE FEST.」。coldrainのマネジメント事務所独立後初めて、そして翌年の結成20周年を前に行われた今回のフェスにも国内外のロックアーティストが多数出演し、ジャンルの垣根を超えた熱演で集まったオーディエンスを大いに沸かせた。WOWOWの特番ではこのうち32組のライブの模様をオンエア。さらにcoldrainのメンバーに加え、HIROKAZ(04 Limited Sazabys)、UTA(NOISEMAKER)、Ken Mackay(w.o.d.)、KOUICHI(10-FEET)、Taiki(Fear, and Loathing in Las Vegas)、西口直人(Age Factory)、イチロー(SPARK!!SOUND!!SHOW!!)、Naoki(ENTH)、関大地(ハルカミライ)、満(HEY-SMITH)を迎えたスタジオトークも放送・配信される。

放送・配信を前に、音楽ナタリーではcoldrainのメンバー5人へのインタビューを実施。「BLARE FEST. 2026」に対する手応えや出演した各アーティストに対する思い、さらにはラウドロックをはじめとしたロックシーン、ライブシーンに対するcoldrainのアティチュードなど、幅広い切り口で語ってもらった。

取材・文 / 矢島大地

今回が本当の初回開催だったんじゃないか

──3回目の「BLARE FEST.」を完遂して、どんな手応えがありましたか?

Y.K.C(G) 手応えというより、やり応えがすごくあったかな。独立したマネジメント体制になってから初めてのBLAREだったし、新しいチームになった分、俺ら自身が中身を見ることが増えて。それが大変だったがゆえに、たくさんの人が楽しんでくれたことにやり応えを感じた。特に会場作りに関してはみんなで意見を出し合うことが多かったんだけど、自分たちで考えたことが結果的にいい方向にいったのがうれしかったし、そういう意味での喜びはブッキング面にも通じていて。2020年の1回目に出てくれたONE OK ROCKがまた出演してくれたり、「BLARE DOWN BARRIERS」(「BLARE FEST.」の前身にあたるcoldrainの自主イベント)に出てくれたことがある[Alexandros]とひさびさに一緒にやれたり。あくまで自分たちが進んできた道で出会ったバンド、自分たちがカッコいいと思うバンドに声をかけて2日間一緒にやれたのがうれしかったし、やり応えを感じられる部分でしたね。

──野暮な質問ですが、事務所を独立して初めての開催はやっぱり今までと全然違うものでしたか?

Y.K.C シンプルにお金の面に関して全責任を負っているというのは大きいよね。だからこそ自分たち自身が無駄だと思うものはカットしたり、あるいは加えたほうがいいと思うものを提案したり、細かく入っていくことができた。素人5人が細かいところまで入ってくるわけだから、制作スタッフの人たちには迷惑をかけたと思うけどね。それでも1つひとつに責任を持ってやろうと思って開催した「BLARE FEST.」だったし、むしろ「責任を持ってやりきる」と一度覚悟を決めて臨むのは気持ちがいいことだったから。最後までやりきれてよかったなと思う。

「BLARE FEST. 2026」でのcoldrainのステージ。(photo by kawado)

「BLARE FEST. 2026」でのcoldrainのステージ。(photo by kawado)

Katsuma(Dr) ただ、独立してから初めてのBLAREということで、周りの人からは「本当にやれんの?」って言われてたよね(笑)。独立以降はフェスのノウハウを持っていた人たちもごそっと抜けた状態だったから。それに、フェスって1回目は1回目のボーナスがあるじゃないですか。

──ご祝儀がね。

Katsuma そうそう。「開催おめでとう!」という気持ちも含めて出演してくれるバンドがいたり、お客さんもお祝いの気持ちを持って参加してくれたりするから、1回目はボーナスがあったうえでの成功だったと思う。で、その第1回が終わった直後にコロナ禍に入ってしまって、第2回の2023年はいろんな制限がある中で開催して──そう考えると、俺らの体制的にも気持ち的にもフラットな状態で臨めたBLAREは今回が初めてだったんですよね。なんなら今回が本当の初回開催だったんじゃないかって思うくらい。なのでまだまだ伸び代があるフェスだと感じられたし、coldrainとしてもフェスとしても、今後につながると思える部分が多かったですね。

Sugi(G, Cho) そのうえで、お客さんからも「すごく楽しかった」という声が多くて安心したよね。2023年がコロナ禍での開催だったことを考えても、なんの制限もない状態で多くの人が楽しめるBLAREをやれてよかったと思う。特に今回、僕はKnosisのサポートメンバーとしても出演したので。名目こそサポートギターだけど、正式メンバーみたいな気持ちでやっているのがKnosisなんです。だから個人的に、主催者としてのステージだけではなく、挑戦者側の視点でTHUNDER STAGEに立てたのがよかったなと思います。まだまだ行くぞ!という気持ちでやれたというか。

──THUNDER STAGEはサイズこそ3番目のステージですが、今まさにライブハウスシーンで戦っているバンドが爆音を鳴らして、狂騒と絶叫を繰り広げ続けているのが最高で。それとフードエリアの穏やかな空気が隣接していることもまた、BLAREらしいストリート感を生んでいたと思うんですよね。ポップネスとヘヴィネスの混ざり具合はcoldrainそのものだなあと感じましたよ。

Sugi あれは独特の空気ですよね(笑)。ステージにはヒリついた空気が流れつつ、その傍らに憩いの場があるっていう。それも含めて面白いフェスになったんじゃないかなと思います。まさに俺らっぽいというか。

RxYxO(Ba) 客観的に見てもすごいフェスだよね。特に今年はメンツも含めて、2020年からやってきたこと──もっと言えば俺らの歩みの伏線を回収できた感もあって。俺らに限らず、バンドが主催するフェスは自分たちの精神性とか「まだまだ行くぞ」という姿勢を見せる場だと思うし、実際に自分たちが培ってきたものを見せることができた2日間だったと思います。

仲間も含めて「coldrainの全部を見せる」ラインナップ

──今年のラインナップに関して言うと、例えば[Alexandros]は2015年の「BLARE DOWN BARRIERS」で対バン経験があり、SPYAIRはかつて地元・名古屋で切磋琢磨していたバンドでもありますよね。これは「道を分かったバンドとの再会」みたいな感覚だったのか、「出会ってきたバンドたちの細胞が今の俺たちを形成しているんだ」という気持ちを表現したものだったのか、どちらだったんですか?

RxYxO 違う道へと進んだバンドが再会する、という感じではなかったかな。昔も今もずっと仲はいいし、主戦場にする場所がそれぞれ違っても、突き進んだ先でまた交われるのがバンドの面白いところだから。そもそもライブがカッコいいバンドを呼ぶのが「BLARE FEST.」の大前提なので、お互いに「まだまだ行くぞ」という気持ちを持っていればステージの上で出会えるんですよね。だからラインナップに関しては、自分たちが出会ってきた仲間も含めてcoldrainの全部を見せるという感覚が強かったです。いろんなバンドと出会って化学反応を起こしてきたからこそ、今の俺らがいると思うので。

──Masatoさんは?

Masato(Vo) 2回目(2023年)はコロナ禍での開催だったこともあって、制限がある中だからこそいろんな人に観てもらえるように、振り幅のあるラインナップを意識していて。でも、その“振り幅”みたいな部分は、本来3回目くらいでトライすることのような気がするんだよね(笑)。それもあって、Katsumaが言ったように今回のほうがフラットな状態でBLAREができたというか。その中でも印象的だったのは、実際に2日間を過ごしてみて、フェスの中で生まれるドラマや成長を目の当たりにできたことなんですよ。3回目で成熟していくんじゃなくて、例えばコロナ禍の間にいろいろあったPaleduskやENTHがWATER STAGEとFIRE STAGEの規模まで登ってきたこともそうだし。以前はメインステージだったSurvive Said The ProphetがTHUNDER STAGEに出てくれたことに関しても「規模が落ちました」ということじゃなくて「今が一番脂が乗ってますよ」という感じだったし。そういうふうに、このフェス自体がシーンの変わり目を映すものになっていると思える瞬間がたくさんあって。

──「coldrainのフェス」以上の意味を持つようになってきた。

Masato やっぱり、コロナ禍によってシーンの成長が一旦止まった感じはあったでしょ。そこからまたシーンが転がっていくところをほかのフェスは2024年とかに感じられていたんだろうけど、BLAREはたまたま3年間隔になっていたから、シーンが大きく動いているということを2026年にやっと体感できた気がする。しかも、お客さんも「毎年あるフェスじゃねえんだぞ」という前提を理解して来てくれてるから、覚悟と気合いが違うんだよね。スポーツで言うオリンピックみたいな(笑)。

Masato(Vo)(photo by toya)

Masato(Vo)(photo by toya)

──coldrain自身にとってのBLAREは、どんな成長を感じられる場所ですか?

Masato 大きなマイルストーンになるようなライブをすると毎回そうなんだけど、不思議と「まだいける」っていう感覚が生まれてくるんだよ。ステージを降りる時点で伸びしろを感じちゃうというか。だから、3回目にして「もうちょっと開催の間隔を短くしてもいいかな」と感じ始めていて。

Katsuma BLAREが終わった瞬間に言ってたもんね、「間隔を短くしてもいいかな」って。

──僕も開催間隔を短くしたほうがいいと感じました。それは単に「楽しいからもっとやってくれ」ということじゃなくて。日本にポストハードコアのシーンがなかった頃からいろんなジャンルと交わることで自分たちの居場所を耕してきたcoldrainは、結果としてヘヴィロックもニューメタルもメロディックパンクも消化したミクスチャーになっていったと思うんです。ゆえにBLAREはラウドな音楽の合流地点としてのストリートになるんだろうし、「NO RULES ONLY MORALS」という言葉の通り、自分たちの居場所は自分たちの良識で守る意識を持った連中の最高の遊び場が生まれている。そこでさまざまなバンドがぶつかったり誘爆し合ったりすることはシーンの活性化以外の何物でもないんですよ。そうやってシーンの脈動を可視化できるフェスは数少ないし、だからこそ3年間隔の開催であることは非常にもったいないなと思いましたね。

Y.K.C なるほどね。このフェスによって育まれていくシーン、みたいな意味合いで言うと、THUNDER STAGEに出演してくれたバンドや、THUNDER STAGEを楽しんでくれているお客さんたちの存在がすごく重要だと思っていて。ヘビーな音楽をやっている若手はもちろん、例えばヴィジュアル系とメタルコアが融合したDEXCOREに出てもらったり、Knosisにトリをお願いしたり。そういうシーンが盛り上がっていかないと俺ら自身に還元されるものもなくなってしまうし、次にBLAREをやるときに「呼びたいバンドがいない」みたいな事態にもなりかねない。そういう危惧もあるからこそ、ラウドミュージックのシーンをちゃんと見せたい気持ちはすごく大事にしていて。それに伴って、俺らが出てきたストリートカルチャーの空気も必然的に意識するんですよ。

──はい。

Y.K.C そこはラインナップ発表でも意識している部分で。例えば初回開催のときは渋谷の路上にポスターを貼ってラインナップを発表するという、あえてアナログな手法を採ったんだけど、「俺らが経験してきたストリートの遊び方はこういうものだった」と説明することが「BLARE FEST.」に出ているバンドたちの精神性をプレゼンテーションすることにつながると思うんだよね。で、俺らは俺らで、THUNDER STAGEに出ているバンドたちから「今のライブシーンはこうなんですよ」と教えてもらいたい。そうやって刺激を与え合う中で、例えばPaleduskやENTH、Age Factoryが上のステージに上がっていくこと自体が、俺らの時代と彼らの時代がちゃんとつながっている証明だと思える。その系譜を見せられることもこのフェスの意義だと思うし、世代を超えていろんなバンドが混ざることで、また新しいものが生まれていくんじゃないかなという展望もある。