3人はデザイン性を重視していて、僕はインプレッションを重視している
──皆さんが影響を受けてきた音楽やアーティストを教えてください。
Candy 僕はMr.Childrenさんとエド・シーランです。高校時代はミスチルさんしか聴かない時期があって、特に歌詞の面で影響を受けましたね。エド・シーランは4コードのよさを僕に教えてくれた人。「こんな表現もあるんだ」とかたくさん勉強しました。
Maaaki 私はユーミン(松任谷由実)さんです。親の影響で80年代のいわゆるシティポップと呼ばれる音楽をたくさん聴いていたんですが、中でもユーミンさんが特に好きです。ストーリーをイメージできる歌詞とか、奇抜なサウンドとか。あと私は海外にいた期間が長くて、特に高校3年間はアメリカに住んでいたので、クリスマスソング全般にものすごく影響を受けています。我が家はイベントを大事にしていて、ハロウィンが終わった翌日からクリスマスソングしか流れないんです(笑)。山下達郎さんの「クリスマス・イブ」やマライア・キャリーの「All I Want for Christmas Is You」のような有名な曲からゴスペルまで、いろいろ聴いていました。私にとってクリスマスソングは幸せを感じられる音楽。あの感覚に強く影響を受けています。
奥村 アーティスト単位でものすごく影響を受けた人はいないですね。僕はプロデューサーを中心に音楽を聴いているので、そこでいうとスクリレックスが一番すごいと思っています。あとマックス・マーティン。時代が変わっても常に売れる曲を作れる人は、どうやってるんだろうと興味があります。この2人に関しては真似してトラックを作ってみたり、常に研究しています。
斉藤 僕はメロディを作ったり、トラックを作ったり、ミックスをしたりいろいろやるので、いろんな人に影響を受けているんですけど、シンプルにまとめると宇多田ヒカルさんに一番影響を受けました。子供の頃から聴いているから、どうしても彼女の作ったメロディに寄ってしまうんです。それくらい自分の根底に染み付いています。
──TikTokにアップされていたポッドキャストでも話されていましたが、まずCandyさんがコンセプトを共有して、奥村さんがトラックを作るところから楽曲制作が進んでいくそうですね。
奥村 僕はだいたいそのコンセプトを無視して勝手に作り出すんですけど(笑)。
Candy あの動画で話したセオリーがハマった曲は「Receipt」くらい(笑)。このグループにおいての僕の一番の役割は、最初に「やろう!」と動き出すことなんです。斉藤と奥村は作家としても忙しいから、ちゃんと進行しないと企画が流れてしまうので。しかも2人は愛知在住だし。僕自身、「こういう曲を作ろう」というアイデアをふわっと考えてはいるけど、毎回うまく行くわけじゃないし、そもそも楽曲に関しては作り手が一番わかっているので、そこはかなり信頼しています。
──斉藤さんのトップライナーとはどういう役割なんでしょうか?
斉藤 簡単に言うとトラックに合わせてメロディを作る人ですね。ハモリやバックコーラスも含めてボーカル周りをすべて完結させる仕事です。ボーカルのレコーディングにも立ち合いますし、ピッチの補正をしたりもしますね。
Maaaki 斉藤に関しては、エンジニアとしても大活躍してくれています。奥村が土台を作って、斉藤がマスタリングまで仕上げる、みたいな。
斉藤 仕上げの段階で僕がいろいろ変えてしまうこともあるので、みんなはどう思っているのかなあ、みたいなことはありますね(笑)。
Candy 僕は2人のことを本当にリスペクトしているので、2人にとってベストなら僕はOKというスタンスです。
奥村 僕らは全員けっこう頑固なんです。それぞれに絶対に譲れないことがあって、各々それをわかっているから、うまくいっている部分はあると思います。
Maaaki ですね。私だったら歌詞。ちょっとした表現の違いでも納得がいかないと絶対に変えてもらいます。
Candy 僕はVIDA Hollywoodを「売る」ことだけを考えています。そういう意味だと3人はデザイン性を重視していて、僕はインプレッションを重視している、みたいな感じかもしれません。
僕らのストーリーが詰まったEP
──初EPをリリースするグループとは思えないほど達観されていますね。
Candy いわゆる初期衝動みたいなことは、すでにある程度やってきたというか(笑)。ちょうどVIDA Hollywoodを始めた頃くらいに「なんだかんだ売れることが大事だよね」という考えになってきたんです。その感覚を共有できたから、VIDA Hollywoodを組んだと言っても過言ではない。そういう意味では年齢的にもMaaakiはちょっと違うかもね。
Maaaki そうですね。私はみんなよりも5、6歳下なんです。最初はいろいろ悩むこともあったけど、今はもう「売れたら好きなことできる」というマインドなので、ものすごくポジティブです。
Candy ブルーノ・マーズも「The Lazy Song」や「Just the Way You Are」を経てSilk Sonicにたどり着いていますから。
──コアなファンの獲得にはライブも欠かせない要素だと思いますが、皆さんはライブをどのように捉えていますか?
奥村 最初は全然やる気なくて、むしろSpotifyの月間リスナー数しか見てなかったです(笑)。
Candy 僕ら、最初の2年はライブ0回だったんですよ、実は。
Maaaki 東京と愛知だから簡単に集まれなかった、という事情もあるんですけどね。
Candy うん。まあプロデュースチームだし、最初は音源だけでがんばるつもりだったんです。だけどやっぱりお客さんとリアルに会えないとグループ自体がドライブしていかない。だからちょっと前からライブに力を入れるようになりました。実際にライブをやってみると、「ライブで盛り上がる曲を作りたい」みたいなアイデアも出てきて、自然と音源にも影響が出てきていますね。
──今回リリースされる「Episode 0」は既発曲に加えて新録も4曲収録されています。
Candy プロデューサーの目線で言うと、今は配信がメインだし、シングルを定期的に発表していけば、その分プロモーションする機会も増えると思っています。でもやはり1回グループとして活動の節目を作りたかったんです。
Maaaki うん。だから今回のEPはタイトル通り、「VIDA Hollywoodのフェーズ1が始まる」という作品です。これまで3年間活動してきて、その中でもたくさんの人に知ってもらっている「Feel The Love」「アイスコーヒー」「Receipt」という代表曲に加えて、今回新たな代表曲になりそうな「機微」という楽曲を収録しました。
Candy 楽曲のテーマ的なつながりよりも、僕らのストーリーのつながりが詰まったEPだと思います。
Maaaki だからサウンド面でも、私たちがこれまでチャレンジしてきたタイプの曲が2曲ずつ入っているんです。
Candy 僕らは「どういう雰囲気のどういうサウンドがMaaakiの声に一番合うんだろう」みたいなことをずっと探っていて。ロックもやったし、ボサノヴァっぽいのもやったし。そんな中で徐々に今のVIDA Hollywoodの雰囲気が確立してきて、さらに「機微」っていうど真ん中な曲ができた。
Maaaki 「Feel The Love」は私たちがこれまで発表してきた曲の中で一番数字を持っているけど、それを超える曲がないとそれだけの人たちになっちゃうから、さらに強い曲を作りたいねという中からさまざまなアップデートを経て「機微」を完成させることができました。
──「機微」はミュージックビデオも制作されましたね。
Candy 普遍的な愛という概念を言語化した歌なので、ストーリーというよりは、特に色を大切にしながら、いい音楽にいい映像を付けるというイメージで制作しました。「いいな」と思ってもらえたらうれしいです。
Maaaki 私たちは事務所やレーベルに所属していないインディペンデントなグループだからMVなんて簡単に作れないんです。でも今回はみんなでお金を出し合ってこだわりまくったMVを制作しました。個人的にもものすごく気に入っているのでたくさんの人に観てもらいたいです。
チームの転機となった「Feel The Love」
──VIDA Hollywoodにとって最初のバズソングとなった「Feel The Love」はどういう経緯でバイラルが起こったんですか?
Candy 正直、わからない(笑)。
Maaaki 私が田舎で自転車に乗りながら、ちょっと明るく口ずさんでいるところを下から撮ったショート動画に、「高2のときに他界した母に書いた曲」という説明文を入れただけです。その動画がいきなり13万回くらい再生されたんです。確かまだ正式リリースする前だったと思います。で、その後にフル尺を出したらそれもまた回って。60万回くらいだったかな。
Candy 僕自身もあれこれ考えたし、みんなとも相談したけど、明確な理由はわからなくて。結論として「Feel The Love」がシンプルにいい曲だったから、ということ以外は考えられないんですよね。
Maaaki この曲のテーマは母の死で、メッセージも親子の愛という非常に強いもの。そういうところが多くの人に届いた理由なのかなと思いますね。
──この曲の作詞はMaaakiさんですか?
Candy いや、僕が書きました。斉藤と奥村が作ってきたデモの仮歌にサビの「I'm feeling your love」という歌詞だけ入っていたので、愛に関する歌にしようとは思っていました。ただどういう解釈の愛にするかはかなり考えましたね。
Maaaki 最初はこういう曲にする予定じゃなかったんでしょ?
奥村 うん。僕らがデモを作っていた段階ではこういう曲を想定してなかった。
Candy 僕がなぜMaaakiのお母さんに向けた歌詞を書こうと思ったのかというと、僕らが4人とも自己肯定感が強かったからです。自分に自信があるし、誰かに批判されても簡単には折れない。なんでこういう性格に育ったのかといえば、両親が愛情深く育ててくれたからだと思う。それはMaaakiを見ていても感じていたので、たぶんMaaakiも生前のお母さんからたくさん愛情をもらっていたんだろうなと思って。「こういう歌詞を書いてもいい?」と提案してみたら快諾してくれました。歌詞は自然に自分の中から出てきたので、あまり時間もかからず書き上げることができました。
Maaaki 逆に私にはあんなふうに書けないと思いました。「Feel the Love」は客観的なところもあって、普遍的なメッセージがあると思う。けど私自身の中には母の死に対してさまざまな感情がある。だからもし私が書いていたら、これとは違う個人的な表現になってしまったと思います。Candyが私を見て母の死について書いてくれたからこそ生まれた言葉なのかなって。できあがった歌詞を読んだときも自分の中にすっと入ってきましたね。
Candy シンプルにこの曲をたくさんの人に聴いてもらえてよかったなと思います。
Maaaki あらゆる意味で母に感謝しています。この曲をきっかけに自分たちの音楽のリスナーが見えてきたんです。私と同じような体験をした人がコメントしてくれたりとか。それってこの曲に共感してくれたってことじゃないですか。VIDA Hollywoodは初期から「売れる音楽」というテーマのもとで活動してきたけど、この曲をきっかけに「こういうふうに音楽が広がっていく売れ方をしたい」と思えました。
Candy 僕には自分の歌詞で誰かの人生をポジティブにしたいという考えが根底にあるんです。これはミスチルさんから受けた影響です。この曲をリリースして、いろんな形でポジティブな共感の反応をもらえたことは本当にありがたかったですね。
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