ウルトラ・ヴァイヴと歩んできたLIBRO、D.O&漢 a.k.a. GAMI、DJ KRUSH、田我流が異様なまでに盛り上げたレーベル40周年ライブ

1986年に設立されたインディペンデント系レコード会社・ULTRA-VYBE(ウルトラ・ヴァイヴ)が今年設立40周年を迎えた。設立以来、ジャンルを問わず、さまざまなアーティストの作品をリリースしてきたレーベルだが、特にヒップホップシーンでの存在感は大きく、数多くのインディペンデントなラッパーを支えてきた。

そんなウルトラ・ヴァイヴの40周年を記念したイベント「ULTRA-VYBE 40th Anniversary Event "FORTH FROM FORTY"」の第1弾が5月10日に東京・LIQUIDROOMで開催され、異様なまでの盛り上がりを呈した。この記事では6月20日に行われる第2弾イベントに先立ち、第1弾イベントの模様を詳細にレポートする。

取材・文 / 三浦良純撮影 / cherry chill will.、Yukitaka Amemiya

第2弾公演情報

ULTRA-VYBE 40th Anniversary Event "FORTH FROM FORTY" DAY2

2026年6月20日(土)東京都 LIQUIDROOM
<出演者>
THA BLUE HERB / SHINGO★西成 / TOKYO世界 / GADORO

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LIBRO

日本語ラップシーンを黎明期から支えてきたウルトラ・ヴァイヴの40周年を祝うこの日、出演者として集結したのは、シーンの大御所的なアーティスト4組。当然のことながらファンの年齢層も高く、子連れ客もチラホラいて、フロアは和気あいあいとしたムードだ。その一方で、出演者たちよりずっと若いラップファンも少なくない。それはラインナップされたアーティストたちが、決して過去の存在になることなく、活動を続けてきた結果であり、新しい世代にも影響力を持ち続けている証だろう。

トップバッターのLIBROも1997年にラップとトラックメイクの双方を手がけるスタイルでデビューして以来、進化を続けてきたアーティスト。2003年のシングル「三昧」を最後に一度表舞台から姿を消すも、鎖GROUPとの出会いをきっかけにして2014年に再始動すると、良質なアルバムをコンスタントに発表してきた。再始動後のLIBROのリリースをサポートしてきたのが、まさにウルトラ・ヴァイヴだ。

開演時刻の18:30を迎え、ステージに1人で現れたLIBROがこの日の1曲目に選んだのは、昨年リリースした最新作「なかいま」のリード曲「運命が君に会いにきた」。覚悟を決めた心境を疾走感あふれるビートに乗せてまっすぐに歌った1曲であり、ライブでは「いけーいけーいけーいけー!いけーいけーいけ!」の大合唱がフロアに響き渡る。パーティの幕開けにふさわしい、これ以上なく爽快なナンバーであり、一気に高揚感が広がった。

続けてLIBROは、40周年の“収穫祭”を祝う気持ちを込めて「ハーベストタイム」を歌い、「心の杯に愛をあふれるほど注いでいきましょう」と観客に呼びかける。近年の活動で“清々しさ”を目標として掲げる通り、LIBROのライブはとにかくビートもラップも心地よく、合間に挟まれるベテランならではの軽妙なMCも楽しい。

「ウルトラ・ヴァイヴ40周年ってことですけど、私もね、97年に始めてますんで、来年もう……危ないんですよ」と自身の活動30周年をほのめかして笑いを起こすLIBRO。「でも、やっぱね、“長いことやるといいことがある”って言う側の人間としてやっていこうと思ってるんです」という彼は、「もう絶対行っちゃダメだっていう崖、みんなが迂回する崖を飛んでいくヤバい人たちがいる中、私はちょっと時間がかかるタイプだと思うんですけど、飛躍はしていこうと思います」と宣言して拍手を浴びる。

「今日は僕のときだけですよ、正気でいられるのは。ちゃんと準備していかないと危ない」と冗談っぽく警告したLIBROは、活動の中での気付きをつづったという「64 Bars」や、日本語ラップクラシックとして知られる代表曲「雨降りの月曜」、活動再開のきっかけとなった「音信」などを披露して会場をさらに沸かせていく。「正気から狂気への架け橋として、ちょっとはしゃいで終わりたいと思います」と語った彼が、40分のセットの最後に披露したのは、最新アルバム「なかいま」の中でもひときわアッパーな「破」。彼が自身の活動を振り返ってつづったラインは、レーベルの40周年を祝う今回のイベントにもピッタリだった。

始めなきゃ始まらないこと
始めたもんにしかわかりません
壁の向こうにも先があること
続けたもんには当たり前

D.O&漢 a.k.a. GAMI

「強盗は叩き。恐喝はゆすり。プッシャーは密売人。草はウィード。ポンプは注射器。バツはエクスタシー。Kはケタミン。Cはコケイン……」

LIBRO退場後、清々しいライブの余韻であふれるフロアの空気を一気に変える不穏な隠語の数々が、どこからか聴こえてくる。会場の誰もが聞き覚えのある、独特のハイトーンボイス。D.Oだ。

一晩中降り続いた雨が
何もなかった様に止んだ朝
改めて誓った事があるいくつか
全部を愛する事とか
リスペクトを忘れないとか
もう二度とパクられないとか
中指を立て続ける事とか

2022年の出所後にウルトラ・ヴァイヴを通してリリースした「FLY9」のリリックの朗読でライブを始めたD.Oは、ステージに姿を見せると、声を張り上げてラップし、観客を一気に引き込む。古くはバラエティ番組「リンカーン」への出演、近年はお笑い芸人の永野との絡みなどでコミカルなイメージもあるD.Oだが、この日はストリートを生き抜いてきたハードコアラッパーとして、ストイックにスピットし続けた。

「楽しんでやがんのかメーン! 楽しんでやがりまくるのかメーン! 俺たちが極上だってハナシ! 今日ここに集ったアンテナが極上に高くて、そんでもって遊び心が止まんねえ親愛なるドッグスたちへ……ウェルカムメーン! 徹底的に最後まで楽しんでってくれってハナシ! ヒップホップにはいろんな形があって、そんでもっていろんな受け取り方があって、そんでもって……どうでもいいぜ。好き勝手に楽しみやがれってハナシ!」

独特な語り口で観客を歓迎したD.Oは、祝祭を一層盛り上げるため協力を求める。

「ウルトラ・ヴァイヴのあのお兄たちのおかげであの曲もあの曲もあんな曲もストリートに転がり倒して、今じゃあのメロディは誰でも知っているに違いないってハナシ。今日はめでてえウルトラの極上の祭りだってことでドッグスたちに手伝ってほしいってハナシ。何をだって? Oh, shit……コイツだってハナシ」

ここでD.Oが歌い始めたのは、もちろんあの曲。「トゥトゥトゥルットゥー」のメロディで知られる代表曲「悪党の詩」をD.Oは観客とともに歌い、会場に確かな一体感を生み出した。そしてD.Oは最後にメロウな「DeA Boyz」を披露。エモーショナルな余韻を残して退場する。

すると間髪をいれずに漢 a.k.a. GAMIのライブがスタートし、スタンバイしたDJ KOPEROが「Do it till I die」をオープニングBGMとしてプレイ。「Do it till I die」は2020年5月に逮捕された漢 a.k.a. GAMIが、同年10月にウルトラ・ヴァイヴを通してリリースした「Start Over Again EP」の収録曲だ。

遊びじゃねえ 本気な分
諦めねえ くたばるまで
アイツと交わした約束
一緒に笑う日が来るまで
恵まれねえ環境からも
抜け出してmakeするため
忘れちゃねえ 本気な分
諦めねえ くたばるまで

そこから哀愁漂うビートとともに「何食わぬ顔してるならず者」が始まると、ステージに現れた漢 a.k.a. GAMIは、サイドMCのMASTERとともに、ストリートのリアルをつづった言葉をリズミカルに放っていく。「今日はいい1日になりますよ」という漢の挨拶から、フルートが印象的なビートが流れると「紫煙」へ。亡きMAKI THE MAGICの名をシャウトしながらラップを畳みかける漢 a.k.a. GAMIは、「飲み狂う奴 one shot, two shot, three shot, four shot!今日はどこまで行きますか? 皆さん。どこで寝たかも忘れてしまう、つまりは記憶を失ってしまうぐらい遊んでもらいたい気分です」と語りかけた。

MASTERとのフリートークで場をつなぎながら、衰え知らずの迫力あふれるラップをカマし続ける漢 a.k.a. GAMI。途中一瞬詰まるような場面があっても臨機応変に乗り越え、「リリックを飛ばしたときには、顔色を一切変えず、フリースタイルでごまかすスキルを極めなければいけない。その実践を見せました」と胸を張る。「今日はboyと呼ばれるような若い子もいるんでね。でもB-boyっていうのはもう死語なんでしょうね」という語りから始まった「おい!boy」では、MASTERの地響きのようなビートボックスと、漢 a.k.a. GAMIの気迫みなぎるラップが激突。長年の相棒だからこその息の合ったコンビネーションで観客を圧倒した。

「いつでも言ってください。フリースタイルバトルからサイファーまで変わらない姿でカマせるぜ。サクッといこうぜ。今日は一番下の娘も来てるんでね。カッコいいとこ見せないといけねえし、長女も彼氏と観に来てるからよ」

ここで漢 a.k.a. GAMIは代表曲「新宿ストリート・ドリーム」を披露。ストリートをサバイブして成り上がってきた自身のリアルな物語を歌い上げ、「最初にマイクを握ってステージに立って、気付けば 25年も経って、みっともねえ姿から、見本もねえ日本語ラップの中から、何がオリジナルかを追求して、いまだにマイク握って夢を見てるぜ」と声を上げる。さらにMASTERと思い出話に花を咲かせつつ、「昔はポリスも時間もガンジャも巻くとか言ってふざけてたらパクられましたからね。誰にもラップスタイルはパクられねえってことを最後に証明しますよ」と漢 a.k.a. GAMIが歌い始めたのは「I will show U」。その言葉通り、オリジナリティあふれるフロウで観客を魅了してステージを去っていった。