毎年コンスタントに新作をリリースし、大規模な全国ツアーを行っている田村ゆかり。2026年の全国ツアー「田村ゆかり LOVE ♡ LIVE 2026 *Tibbar tibbar!*」の開催を控えたタイミングで、彼女は最新オリジナルアルバム「はんぶんこ。」をリリースした。
アルバムには全10曲のほか、“おまけ”と称した楽曲も収録。華やかなジャズテイストの楽曲から、ぐっと大人びた神秘的なナンバーまで、アーティスト田村ゆかりのカラフルな魅力が詰め込まれた1枚だ。今年2回目となる田村へのインタビューでは、アルバム全曲についての制作エピソードに加え、「はんぶんこ。」というタイトルの意図、異例の“おまけ”楽曲を収録した理由、ツアーに向けての思いなどを話してもらった。
取材・文 / 臼杵成晃
はんぶんこする歌がいっぱい入っているわけではない
──ニューアルバム「はんぶんこ。」は、フルアルバムとしては2023年発売の「かくれんぼ。」以来3年ぶりとなりますが、その間にミニアルバム4枚、シングル1枚が出ていて、そもそも昨年のミニアルバム「Felice」もミニと言いながら9曲入りだったり……(参照:田村ゆかり「Felice」インタビュー)。
(新作の資料を眺めながら)ホントだ、「フルアルバム」って書いてある。
──そのあたりの区分けはご本人的には特にこだわりはないんですね。
よくわかんない(笑)。なんでもいいんです!
──数えてみたら前作からの3年間で合計30曲リリースされているので、ことさら「3年ぶりの」という感じはなく。これだけ新曲がコンスタントに発表されるのはリスナーとしては喜びしかないですけど、シンプルに大変そうだなと毎回ながら思います。
自転車操業でやってます。
──(笑)。もちろん今回も6月から始まるツアーに向けての新曲ということになるのかと思いますが、そのうえでどんなアルバムにしたいと考えましたか?
いや、そこまで考えてはなかったですね。タイトルだけはずいぶん前に「次のアルバムは『はんぶんこ。』にしよう」と決めてましたけど、中身についてはライブがあるからどうというのは特になくて。結果的にそんなにライブ仕様にもなってないような気がする。
──どんな曲調がいいとか、全体的にこういうテイストのアルバムになったらいいな、というイメージも特になく?
そうですね。まあ「暗いアルバムは違うかなー」というくらい。暗いのが嫌というわけではなくて、候補曲の中にそれほどピンとくる暗い曲がなかったというだけですけど。
──アルバムタイトルについては、2021年発売の「あいことば。」(参照:田村ゆかり「あいことば。」インタビュー)から3作連続のシリーズ化ですね。ひらがな5文字に句点が付く、恋愛における相手との関係を柔らかくイメージさせるようなフレーズですけど。
「相手がいるからできること」というのでシリーズになっています。ただ、タイトルとアルバムの中身がつながっているわけじゃないんですよ。はんぶんこする歌がいっぱい入っているわけではない(笑)。恋愛に限ったものでもないですね。
──アルバムには今年1月発売のシングル「カメリア」は入らず、録り下ろしの新曲10曲に“おまけ”を加えた11曲が収められています。最近はアルバムと言っても既発のシングル曲がほとんど、みたいな事例が多い中で、すごく珍しいパターンです。「最新シングル『◯◯』を含むニューアルバム!」という謳い文句すらないという。
普通だったらシングルから2曲くらいは入っていたり、アレンジ違いのバージョンで収録されたりしますよね。でも「カメリア」の曲は世界観が独特だったので、アルバムの中には混ざりにくくて。
「ゆかりんの気ままな宇宙散歩」は次回作に
──今作ではっきりと特徴的なのは、ジャズっぽい要素のある、スウィング調の楽曲が多いことですね。
はい。でもそれも「ジャズっぽいものを増やそう」と思っていたわけではなくて。もともと好きな曲調だというのもあるし、単純に好きな曲を選んだだけですね。ただ、さっきライブは意識してないと言いましたけど、やっぱり脳裏にはなんとなくイメージするじゃないですか。ライブの曲をバランスよく考えたとき、ジャズのような華やかな雰囲気をイメージしたんだと思います。
──なるほど。いろんなバリエーションがありながらまとまりのいいアルバムだなと感じましたけど、曲順などは悩みませんでした?
実はちょっとだけ「こういうやり方もあるよな……」「これとこれ、逆のほうがいいかも」と悩んだところはあるんですけど、結果的にはいい形になったかなと思います。
──1曲目の「sucré」からジャズテイストの楽曲でスタートします。ジャジーだけどちょっと牧歌的、メルヘンなニュアンスのアレンジで、作編曲は近年の田村さんの作品ではすっかりおなじみとなった永塚健登さんです。「Felice」発売時のインタビューでは、永塚さんのことを「一番かわいい曲担当」とおっしゃっていましたが。
はい。やっぱりかわいい曲が多いですね。
──「こういう曲にしてほしい」というオーダーが田村さんサイドからあったんですか?
私からではなくて、ディレクターがいくつかテーマを挙げて、作家の皆さんにお願いしているんですよ。この曲ではないんですけど、デモテープをいくつかまとめて聴いているときに、何気なくパソコンを見て曲名を確認したら「ゆかりんの気ままな宇宙散歩」って書いてあって。
──気ままな宇宙散歩(笑)。
「すごいタイトルだな」と思ったら、いろんな人の曲に「ゆかりんの気ままな宇宙散歩」って書いてあったから「あ、ディレクターの発注内容がこれだったんだ」って。「気ままな宇宙散歩」の中で1曲プリプロまでやった曲があるんですけど、このアルバムには入れなかったので、来年あたり出る可能性があります(笑)。「sucré」は「気ままな宇宙散歩」じゃないんですけど、永塚さんとお話したときに「この曲はコンペのお題を完全に無視して作りました」とおっしゃってました。「完全に無視して『こういう曲が合うんじゃないか』と思って作ったら、採用されてうれしかったです」って。
──アルバムの冒頭を飾る1曲目はすごく重要ですよね。「sucré」を1曲目に選んだのは、何か決め手があったんですか?
アルバムを作るときは、いつも何曲か歌っているうちに「これが1曲目かな」と思うものがあるんですけど、今回は特になかったんですよ。でも全曲録り終えて、曲順を決める頃には「『sucré』が1曲目だろうな」って。オープニングの華やかな感じ。私のお客さんがドンピシャで好きな……カレーとハンバーグみたいな曲じゃないかもしれないですけど(笑)、「sucré」は絶対に嫌いじゃないと思うし、この10曲の中では一番オープニングらしいなと思いました。
カレーとハンバーグな自己肯定ソング
──「sucré」の作詞は田村作品に欠かせない存在である松井五郎さんですが、松井さんは今回を含めて7曲を作詞しています。松井さんとのやりとりはいつも通り?
はい。曲ごとに私からこういう内容にしたいというオーダーを文章で送って、それをもとに作っていただく形で。
──2曲目の「How charming am I?」も松井さんの作詞で、めちゃめちゃポジティブなラブソングですね。令和のアイドルソングにも通ずる自己肯定ソングと言いますか。
発注内容的にはそこまでの感じじゃなかったんですけど、すごくポジティブでかわいい歌詞になりました。なんてお願いしたんだっけな(スマホのメールを確認しながら)……あ、領収書出てきちゃった(笑)。「女の子は今日もコロコロ変わる。気持ちも好みも、見た目だって……」みたいな。そんなに変なことは書いてないです。
──今作はとりわけ松井さんの歌詞がメルヘンだなと感じました。サウンド的にもすごくキャッチーで、人気の1曲になりそうだなと。
そうですね。これはもうカレーとハンバーグなので(笑)。実はこれ、けっこう前にいただいていた曲なんですよ。満を持して、今だなと。だからHaToさんには「この曲、まだ使われていないですか? 空いてますか?」という確認からしなくちゃいけなかったんですけど、確認したら「空いてはいるんですけど、古いからファイルが開けなくて……」と言われて。
──(笑)。
「作ったときとシステムが変わっちゃったんで、開かないです」って(笑)。どうにか新たに作ってもらいました。
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