syudou×八木勇征(FANTASTICS)「ラテマジック」インタビュー|異なる道の先で出会った2人が紡ぐ、日常に寄り添う応援歌

syudouと八木勇征(FANTASTICS)によるコラボ楽曲「ラテマジック」が7月5日に配信リリースされた。

「ラテマジック」は、7月4日から放送開始となったテレビアニメ「株式会社マジルミエ」第2期のオープニングテーマとして書き下ろされた1曲。“魔法少女”が職業となった世界で、魔法少女としての才能を見出され、ベンチャー企業・株式会社マジルミエに新卒入社した主人公・桜木カナが奮闘する姿を描く、“魔法少女×お仕事”アニメの世界観に寄り添った楽曲となっている。

かねてからボーカロイド楽曲のファンを公言していた八木にとって、syudouとのタッグは念願とも言える。レーベルメイトでもある2人は、まるでカフェラテのミルクとエスプレッソのように相性抜群の歌声を「ラテマジック」に込めた。忙しなく過ぎていく日々を過ごす人々の背中をそっと押す、軽やかな手触りの応援ソングはどのようにして生まれたのか。そしてボカロシーン出身のsyudouとJ-POPシーンのド真ん中にいるFANTASTICSのボーカルで、俳優としても活躍する八木が、お互いをどのように見ていたのか。2人へのインタビューで紐解いていく。

取材・文 / 倉嶌孝彦撮影 / 葛川栄蔵

八木勇征、小6でボカロに出会う

──八木さんはもともとボーカロイド楽曲がお好きだと伺いました。ボカロ曲との出会いはいつ頃ですか?

八木勇征(FANTASTICS) 小学6年生のときに初めて「カゲロウデイズ」に出会い、「なんだこれ!?」という衝撃を受けました。最初は人の声のほうがなじみがあるから歌い手の方のカバーを好んで聴いていたんですが、よく聴いていくとオリジナルはボカロであることに気付いて。ボーカロイドというものを理解してからは、中学3年までガッツリ聴いてました。

八木勇征(FANTASTICS)

八木勇征(FANTASTICS)

syudou 僕がボカロに出会ったのが中学1年のときなので、ほぼ同じタイミングですね。八木さんは当時どんなボカロPを追っていましたか?

八木 ピノキオピーさんや、日向電工さんが好きでよく聴いてました。最近で言うとNeruさんの「東京テディベア」が東京ゲゲゲイさんにカバーされたりして、いろんな人にボカロの楽曲が“見つかっている”感覚があります。

syudou まさにその通りだと思います。八木さんが歌い手やカバー文化まで含めて詳しいのは、親近感が湧きますね。

──八木さんがsyudouさんの曲と出会ったのはどのタイミングですか?

八木 Adoさんの「うっせぇわ」が投稿されたときですね。「とんでもない曲が出てきたぞ」と思い作家を調べたらsyudouさんで。僕、syudouさんの描くダークな世界観がすごく好きなんです。

syudou 八木さんのような方にそう言っていただけて、すごくうれしいです。僕からしたら八木さんはテレビの中の方なんですよ。FANTASTICSとしての活動はもちろん、ドラマでの役者仕事も含めて顔も名前もテレビで拝見することが多い。去年までの僕は顔出しもしていなかったし、“インターネット感の強い”活動をしていたけど、今年からはちょっとマインドを変えて、より開けた活動をするようになったんです。だから八木さんの立ち振る舞いや雰囲気のようなものは、今回の仕事を通じてすごく学ばせていただきました。

社会人として働く友人に向けて

──syudouさんはこれまでさまざまなアーティストに楽曲提供をしてきましたが、今作「ラテマジック」のようにデュエットという形でコラボするのは珍しいですよね。もっと言えば、コラボ相手が八木さんというのも驚きました。

syudou 先ほども少し話した通り、今年から自分のイメージや音楽性の幅を広げていこうと考えていて。具体的には、これまでやれなかった明るくポップな曲にも挑戦しようとしたときに、自分1人で歌うとなるとそこまでアクセルを踏み込めない感覚があった。自分の殻を破るうえで、八木さんという心強い方に参加いただけたのは本当に幸運で、もしこの話がなければ「ラテマジック」は作れなかったと思います。

syudou

syudou

八木 僕からしたら、かねてから存じ上げていたsyudouさんからのオファーだったので、声をかけていただいて本当にうれしかったです。デモを聴かせていただいたとき、かなりポップであることには驚きましたが、ちゃんとsyudouさんらしさも込められていて。歌詞のフレーズ1つひとつに遊び心を感じたし、レコーディングの日が待ち遠しかったです。

syudou 曲作りに始まり、八木さんとの打ち合わせ、レコーディングまで、すべての工程が楽しかったです。想像していた以上にスムーズでしたし。

──作曲クレジットはsyudouさんとMONJOEさんの共作となっていますが、どのように曲作りを?

syudou 曲の種になるメロディやリフは自分で考えてスタジオに持っていき、そこでMONJOEさんに聴いてもらってトラックメイクしました。MONJOEさんがすぐにビートを付けてくれるので、ビートが組まれたら今度は僕が鼻歌で新しいメロディを乗せて、そしたらまたMONJOEさんがトラックを作り直して……実はこういう形で楽曲制作をしたことがなかったので、自分の中ではすごく新鮮だったし、いい感じに肩の力が抜けて軽やかな曲にできた手応えがあります。

八木 syudouさんが曲を聴かせてくれたときに、この曲のテーマにも通じるご友人の話をしてくれたんですよ。その話を聞いて、本当に素敵な楽曲だなと思いました。

──ご友人の話というのは?

syudou この曲は「株式会社マジルミエ」というアニメのタイアップですが、その作品は現実世界の仕事と魔法少女がかけ合わさった世界観を描いたものなんですね。どういう曲にしようか考えているときに、たまたま大学時代の友人と会う機会があって。すでに結婚して子供もいて、普通に忙しく働いている彼が仕事帰りにコーヒー片手に現れたんです。カフェインで眠気を覚ましながらがんばる友人の左手には指輪が光っていて、「忙しい」と言いながら現れたその姿が、めっちゃカッコよかった。ありがたいことに、僕も八木さんも人前に立たせていただく仕事をしているけど、そういう業種ではなくて、日常に根差した生活をちゃんと生きている人はカッコいい。そんな友人を応援できるような曲にしたらアニメとの相性がいいかなと思って作ったのが「ラテマジック」です。

八木 今の話が1番サビの「左手に誓いとカフェイン」につながるんですよ。すごくいい歌詞だなと思って。もともとsyudouさんの言葉遊びの入った歌詞が好きだったので、自分で歌える日が来てうれしいですね。「マジ無理リスケ」とか歌詞で見たことがないワードですから。

syudou 「この会社で何年勤めたらだいたいこうなって、将来が読めてしまう」と社会人の方はよくおっしゃるようですが、僕からすると見えている道をちゃんとやりきることもすごいと思う。というのも、僕も一度就職したことがあって、その会社を2年くらいで辞めてしまった過去があるから。少なくとも、僕にはできないことを社会人の方々はやっているわけなんですよ。歌詞の中に「未知ある道を行け」と書いたのは「道があると言ってもこのご時世、未来のことは読めない。その先が未知だとしてもきっと道はあるよ」と、働いている人に向けて伝えたかった。もっと言えば、このテーマは「株式会社マジルミエ」という作品とも相性がいいなと。

──syudouさんは「株式会社マジルミエ」の第1期ではエンディングテーマとして「ワークアウト」を提供していました。2度目のタイアップという要素は、曲作りにどのような影響を与えましたか?

syudou 作品への解像度がより深まった側面はありますが、だからと言って前回提供した曲の“パート2”のようなものにしてはいけないなと考えていました。今回は八木さんにも参加していただけるし、自分の状況も変わったので違うアプローチでいこうと。そこで思いついたのが、ただ作品の要素を切り取るだけではなくて、自分の実体験と重ね合わせることでした。そのほうが作品とも寄り添えるし、自分たちの楽曲としても“体重が乗る”感覚があるんですよね。

八木 歌詞を読んだときから印象に残っていましたけど、syudouさんの友人の話を聞いてからもっと曲のことが好きになりました。確かにsyudouさんの曲の中では珍しく明るくポップさを感じますが、歌詞を読めばsyudouさんの本音がちゃんと含まれているので、すごく感情が乗っている歌なんですよね。各パートに聴きどころがあるので、余すところなく堪能していただきたいです。