新デジタル音源流通サービスSOUNDALLY主催「アーティストライブ」レポート|気鋭の5組が集った熱くフレッシュなオンラインライブ

LINEによる新デジタル音源流通サービス・SOUNDALLYが主催するオンラインライブ「アーティストライブ powered by SOUNDALLY」が、10月9日にLINE LIVEで生配信された。

このイベントはSOUNDALLYの一般提供に先駆け、SOUNDALLYを介して新曲をデジタルリリースするアーティストが集う企画。同様の催しが過去2回にわたって行われており、第3弾となる今回はGucci Prince、buntes & KUVIZM、畠山有希、WONDER∞WANDER、SharLieの5組が、それぞれ新曲を軸にパフォーマンスした。音楽ナタリーではこのイベントの模様をレポートする。

取材・文 / ナカニシキュウ

「アーティストライブ powered by SOUNDALLY」生配信ライブレポート

SharLie

ヒップホップアーティストからソロシンガー、アイドルまで、ジャンルの垣根を越えた幅広いラインナップとなった今回の「アーティストライブ powered by SOUNDALLY」。配信が始まると、まずはイベントMCを務めるラジオパーソナリティの藤田琢己が登場し、SOUNDALLYのサービス概要などを解説した。その後トップバッターとして登場したのはSharLie。約2000人が参加したオーディションで厳選された7名によって今年結成されたばかりの、フレッシュなアイドルグループだ。音楽性としては“エモロック”を標榜し、劣等感をも武器に変える“二面性の才能”をテーマに活動している。

各人のメンバーカラーと個性を反映した七人七様の衣装に身を包んだ彼女たちは、まず人気ボカロP・164の手がけたデビュー曲「Answer song」をパフォーマンス。印象的な転調が光る疾走系ポップロックナンバーを元気いっぱいに歌唱した。2曲目の「ミチシルベ」は「Answer song」の明るい雰囲気から一転、横1列に並んだ7人がしっとりと歌い上げるピアノバラード。ダンスやフォーメーションチェンジもなく、各メンバーのソロ歌唱パートを中心に展開される“歌”に特化した1曲を、エモーショナルな空気感で届けた。ラストナンバー「JUMP UP!」はピースサインの振り付けがキュートな四つ打ちハッピーソング。音楽ユニット・どーなつムラとしても活動するメンバーの瀧澤彩夏によるラップパートも見どころのハイテンションな楽曲で、彼女たちはさわやかに持ち時間を締めくくった。

短時間ながらメンバーそれぞれの魅力を存分に打ち出したステージを終えたSharLieは、アクト転換中に藤田がインタビュアーを務めるトークセッションコーナーへ。10月9日にSOUNDALLYを通じて配信リリースされた「JUMP UP!」の話題では、ラップパートのリリックを瀧澤自ら手がけているという事実が明かされ、藤田の目を丸くさせた。

SharLie

SharLie

WONDER∞WANDER

続いてパフォーマンスを披露したのは、「アーティストですか? いいえアイドルです。」というキャッチフレーズを掲げる5人組アイドルグループ・WONDER∞WANDER。EDMを基調とした楽曲群と高いパフォーマンス力を特徴とする“本格派”で、SharLieと同じく今年始動したばかりのニューカマーだ。

ステージは、薄暗い照明の中で5人のダンスが黙々と繰り広げられるクールな演出の中スタート。WONDER∞WANDERは近未来感のあるデザインの紺色ミニワンピに各メンバーカラーをあしらった衣装で、統率の取れた力強いダンスパフォーマンスを展開する。そして、メンバー・みれいの「最高の思い出にしましょう。私たちの世界へようこそ」という言葉を合図に、1曲目「ワンダーテイル」へ。ドリーミーなシンセサウンドとハードな四つ打ちリズムが印象的なダンスナンバーによって、無観客のスタジオを一瞬にしてダンスフロアへと変貌させた。さらに和テイストを取り入れたアッパーな「夢心地ライナー」、R&B色の強いミディアムチューン「月と星とおやすみ」と、続く楽曲でも堂々たるパフォーマンスで視聴者の目を釘付けに。特に「夢心地ライナー」においては、チャット欄に「これ、なんて曲?」といったコメントの書き込みが相次ぎ、熱心なファンがそれに回答するというユーザー同士の交流も見られた。

藤田とのトークセッションでは、SOUNDALLYを通じて9月29日に配信リリースされた1st音源「ワンダーテイル」の話題に。メンバーのましろが「1曲1曲でいろんな感情を楽しめます。エモい曲もあったり」とアピールすると、すかさず藤田は「そのエモさをどう表現しているのか」と追及。メンバーたちは「自分に酔っている感じで(笑)」とにこやかに返答し、パフォーマンスで見せたクールな表情とは異なるほがらかな表情をのぞかせた。

WONDER∞WANDER

WONDER∞WANDER

畠山有希

アイドルグループ2組に続いては、ソロシンガーの畠山有希が登場。2019年に行われた次世代シンガー発掘オーディション「NEXT STAR COLLECTION」でグランプリを獲得し、2020年11月に1stシングル「恋文」をリリースするなど新進気鋭のアーティストとして注目されている。

ライブはその「恋文」で幕開け。ピアノやアコースティックギター、ストリングスなどを駆使したオーガニックなサウンド感のオケに乗せ、切ない恋心を歌うフォーキーなミディアムバラードだ。畠山はマイクを手に1人ステージ中央に立ち、華美な演出もなく、ただただ伸びやかな歌声を響かせる。楽曲の王道感あふれるメロディとも相まって、思わず耳を奪われる視聴者が続出。「歌、うま!」「声きれい!」などのシンプルな感嘆のみを綴る書き込みが、コメント欄を埋め尽くした。間髪入れずに披露された2曲目「BFF」は、軽快なシャッフルビートにホーンセクションが絡むモータウン系ポップチューン。オールドスタイルなサウンド感に現代的な“忙しい”歌メロが合わさった1曲で、「バラード表現だけのシンガーじゃない」と言わんばかりにボーカリストとしての実力を見せつけた。ラストナンバーにはミディアムバラードの新曲「for you」が披露され、ほぼMCも挟まず歌だけをストイックに届けるステージが展開された。

ライブ後のトークコーナーでは、畠山の「アーティストライブ powered by SOUNDALLY」出演が2度目であるという話題に。彼女は「前回は緊張120%だったんですけど、今回は100%になりました」とお茶目な表現で感慨を述べ視聴者の笑いを誘った。9月29日にSOUNDALLYを通じてリリースした新曲「for you」については、「NEXT STAR COLLECTION」オーディション合格後に「応援してくれた人たちに恩返しをしたい」という思いで書いた曲であることを明かした。

畠山有希

畠山有希

buntes & KUVIZM

ここでライブの様相は一変、ラッパーのbuntesとビートメイカー・KUVIZMによるコラボステージへと突入する。1曲目の「Find Wally」が始まるや否や、KUVIZMの生み出す緊張感のあるトラックに乗せて、buntesが高速パッセージや音程感の強いフロウを生かした特徴的なラップを畳みかけ、有無を言わせぬ空間を形作っていく。続いて2人は、メロウかつメロディアスな「Twenty-four-hour」、低音域ラップが鮮烈に響く「This is my life」、ハーフテンポのリズムパターンにビートの細かいラップを重ねていくスリリングな「Day1」を観客の息をつかせる間もなく続けざまにプレイ。全曲目のパフォーマンスを終えると颯爽とステージをあとにした。

その後のトークコーナーで藤田は、殺到する視聴者コメントの中から、「なんかすげー」という極めて大づかみな感想をピックアップ。言葉にならない感情を汲み取ったのか、「初めて観たアーティストのパワーが通じたということなんじゃないでしょうか!」と万感の表情を浮かべた。そして2人に対し、アイドルグループのような自身とは異なるジャンルのアーティストのあとにパフォーマンスする難しさについて尋ねると、buntesからは「『なんだこいつらは』という気持ちの人が多いでしょうけど、ラップもけっこう面白いんで、聴いてみてくれるとうれしいです」と控えめな返答が。その謙虚な人柄に、藤田も大いに興味を引かれていた様子だった。

buntes & KUVIZM

buntes & KUVIZM

藤田からは、8月11日にSOUNDALLYを通じてリリースされた5曲入り音源「Find us」で、2人が1曲だけではなくまとまった曲数でコラボすることになった経緯について質問が。これに対しbuntesとKUVIZMは、「EPを作ろうとしていたわけではなかったけど、2人で制作を始めたらトントン拍子で曲が完成していき、結果的にEPができあがった」と、音源集の完成は偶発的なものであるとの説明がなされた。「2人の波長が合うせいもある」とはKUVIZMの談だ。

Gucci Prince

イベントの大トリは、Normcore Boyzのメンバーとして人気を博し、現在はソロで活動しているラッパーのGucci Prince。所信表明演説めいたステートメントが読み上げられる「Prologue」をDJがプレイし始めると、「こっからは俺の時間だぜ」という宣言とともにGucciが姿を現し、すかさず「地獄 feat. 釈迦坊主, Spada」に突入。なかばシャウトとも言えるハイカロリーなラップでオーディエンスの度肝を抜いたかと思えば、正真正銘のシャウトまでをも惜しげなく披露し、視聴者を一気にGucciワールドへと引きずり込んでいく。

「FXXKED UP feat. week dudus, Tade Dust & Bonbero」に続くMCでは、PAINとのコラボ曲「#エブリディアソビ REMIX」の担当ヴァースがTikTokでバズっている件に触れ、「歌ってんの俺なんすけど、みんな気付いてないみたいで。気付いてもらおっかなーと思って」と選曲理由を説明したのち、鬼気迫る圧倒的なパフォーマンスで同曲を披露した。その後も「CHATAN feat. SugLawd Familiar」「GAP feat. DABO」「NADESHIKO feat. KOWICHI, Merry Delo」と、曲によってさまざまに表情を変えるトラックを、難なくラップで乗りこなしていくGucci。ラストの「Bacon Part.I」では導入MCこそ軽く噛んでしまったものの、ビートに乗せて「噛んじゃったよ!」と愚痴るという機転を利かせるなど、フリースタイルラッパーとしてのスキルの高さを存分にアピールした。

ライブ後の藤田とのトークセッションでは、ややマニアックなヒップホップ談義に花が咲く。SOUNDALLYを通じて10月8日にリリースされた新作「HEROES」は、Gucci本人が「何かに抗うためにヒーローたちを集めました」と語るように、全曲でさまざまなアーティストを客演に迎えた意欲作。「DABOさんとやる曲はどういうトラックにするか悩んだけど、突然『Gファンクがいいんじゃないか』と思い付いた」「自分はUSと日本のヒップホップばかりに影響されてきたが、実はUKヒップホップもずっと好きだった」などといったエピソードが次々に飛び出し、2人のトークは終始和やかなムードのまま終了した。

Gucci Prince

Gucci Prince

SOUNDALLYとは

LINEが新たに運営するデジタル音源流通サービス。SOUNDALLYを介することで、インディペンデントアーティストや個人が配信費用0円かつ曲数無制限で楽曲をデジタルリリースすることができる。また楽曲の収益は100%アーティストのもとに還元されるほか、LINE MUSICといったLINEのエンタテインメントサービスと連携したプロモーション施策を行うことも可能。

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